受肉転生 ~宿儺と一緒に本気出す~   作:てとらとりす

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五十話

 

この一週間、俺は師匠の家の一室を借りて泊まっている。

 

師匠たちの方から、かすかな笑い声が漏れていた。

ノルンちゃんとアイシャと師匠の三人で談笑している。

 

師匠は、捜索団の仕事で忙しいらしいが、

一日ぐらい娘たちといさせてやりたいという、

団員たちの配慮で一日だけ休暇をもらい、

アイシャとノルンちゃんと過ごしている。

 

アイシャは最近、師匠に甘えることが増えてきた。

多少ぎこちなく、甘える子供を演じているような節があるが……

クレアさんに「妾の子」と言われたことで、自分の立場を測りかねているのかもしれない。

まあ、どんなやり方であれ親子の距離感が縮んでいるのは、誰の目から見ても確かだ。

この一週間じゃ短すぎるが、いつの日か妾の子なんてことを気にしないで甘えられる日が来るはずだ。

 

そんな三人を横目に、俺はいつものように剣の手入れをしていた。

腰を下ろし、膝の上で静かに剣を横たえる。

この剣は、俺が五歳のときに師匠からもらったものだ。

どこにでもある普通の鉄剣。

装飾もなければ銘もない。

 

けれど、ずっと使い続けてきたせいか、

今ではこれ以上にしっくり手に馴染む剣はない。

呪力を込めて振るっているおかげで、

切れ味だけなら並の名剣より上だ。

 

――気持ちを込めて長く使っていたら、呪具化する。

 

そんな感じのことを昔、宿儺がぼそっと言っていた気がする。

 

その理屈について本人も「知らん」と言っていたから、専門的な根拠があるわけじゃないのだろう。

 

この剣も、いつかそうなるのだろうか。

そう思うと、刃を磨く手にも自然と力が入る。

 

宿儺……あいつは今頃何をしているのだろうか。

転移事件が起き、俺が不甲斐ない姿を見せた時以来、宿儺は姿を見せていない。

 

完全にいなくなったわけじゃない。

気配はあるのに声がまったく聞こえなくなった。

話しかければ返ってくるわけでもなく、

ただ、沈黙だけが続いていた。

 

俺は小さく息を吐き、

気持ちを切り替えるように剣へ視線を戻す。

布に油を含ませ、刃にそってゆっくり滑らせていく。

こうして丁寧に磨けば、いつもの光が戻る。

何度も戦って、何度も傷つけて、

それでも折れずにいてくれる愛剣だ。

 

サラ……と布の走る感覚が止まり、

油の伸び方が急に悪くなった。

 

油壺を傾けて覗くが、底に薄く光る膜がかろうじて残っているだけだった。

 

買いだめしていたはずなのに、と思ったが、

すぐに記憶が訂正する。

 

買いだめしたのは魔大陸の頃だ。

あっちでは毎日のように斬っていたせいで、

油の消費量なんて予想よりはるかに多かった。

使い切るのはむしろ当然か。

 

今日は街に出る予定はなかった。

だが油が切れたまま剣を放置するのは、さすがに落ち着かない。

 

どうしたものか、と思案していたそのとき。

 

 

「ねぇ、お兄ちゃん」

 

 

すぐ隣から声がした。

さっきまで師匠のところにいたはずのアイシャが、

いつの間にか俺の横に立っていた。

 

 

「もしかして、油きれちゃった?」

 

 

「よく分かったな」

 

 

「『どうしよっかな〜』って顔してたもん」

 

 

「そんな顔してたか……?」

 

 

「してたよ。すっごくしてた」

 

 

言い切られてしまうと反論の余地もない。

アイシャは得意げに、俺を見上げてくる。

 

 

「油、買ってこなきゃだよね?」

 

 

「まぁ……そうだな。今日は出るつもりなかったんだけど」

 

 

「ね、お兄ちゃん。私一人で買ってきてもいい?」

 

 

「一人でか?」

 

 

「うん、一人で。だめ?」

 

 

アイシャにそう言われて、ふと手が止まった。

思えばアイシャは一人で買い物をしたことがなかったな、魔大陸で過ごしたあの頃、子どもをひとり歩きさせるなんて論外だったし、俺自身も心に余裕がなかった。

あの頃の俺なら、

間違いなく首を縦には振らなかっただろう。

 

だが、今はミリスだ。

治安は決して完璧じゃないが、

魔大陸と比べれば雲泥の差だ。

人通りの多い通りを歩き、

よほどへんぴな路地裏に入りさえしなければ、

影に式神を仕込んでおくだけで十分に守れる。

 

もちろん心配がゼロになるわけじゃない。

胸の奥に小さな不安が残るのも、親代わりみたいなことをしている以上、仕方のないことだ。

 

それでも――

 

成長を止めるほどの過保護は、必要ないだろう。

ただ危険を避けさせて抱え込むだけじゃ、

いつか本当に必要な時に足がすくんでしまう。

ただ守るだけじゃなく、一歩を踏み出す機会を持たせたほうがいい。

 

ほんの数秒の逡巡のち、俺は静かにうなずいた。

 

 

「……よし。じゃあ頼んだぞ、アイシャ」

 

 

「うんっ! まかせて」

 

 

アイシャはいつものにぱっとした笑顔をした。

その笑顔だけで、背中を押す決断が間違いじゃなかったと思えてくる。

俺は小さな革袋を取り出し、中の硬貨を数枚取り分けて手渡した。

油代には十分な額だ。

 

 

「……あれ? これ、多くない?」

 

 

「ああ、余った分は好きに使っていいぞ」

 

 

「……ほんとに?」

 

 

「ほんとに」

 

 

「さっすがお兄ちゃん! ふとっぱら~!」

 

 

「急がなくていいけど、寄り道はほどほどにな」

 

 

「わかってるってば!」

 

 

「アイシャ、いってらっしゃい」

 

 

俺がそう言うと、アイシャは一度だけこちらを振り返った。

 

 

「いってきます!」

 

 

元気な声を残して、扉が閉まる。

足音が遠ざかっていくのを、

俺は少しだけ耳で追う。

 

……静かになったな。

 

そんな感想が頭に浮かんだ直後、

背後から分かりやすく落ち着きを失った師匠が近づいてきた。

 

 

「おい……本当に一人で行かせて大丈夫なのか?」

 

 

「大丈夫ですよ」

 

 

「いや、そうは言ってもだな……何があるか分からないだろ。人攫いとか、変なやつとか……」

 

 

「それはそうですけど、だからといって、ずっと手を引いて歩かせるわけにもいかないでしょう」

 

 

「分かってる。分かってるんだが……それでも、心配なもんは心配なんだよ」

 

 

「……最初から、完全に一人で行かせるつもりはありませんよ」

 

 

「どういうことだ?」

 

 

「つまり、俺がついていくってことです。もちろん、気づかれないようにですけど」

 

 

「はぁー、それを早く言えよ。てっきり本気で一人きりにするのかと思っただろうが」

 

 

「アイシャ本人にはひとりだと思ってもらわないと意味がないですから」

 

 

万が一、というものは必ず想定しておくべきだ。

 

それが起きないことを祈るのと、

起きたときに対処できる準備をしておくのとでは、意味がまるで違う。

起きないことを祈りながら、

起きた時の準備をしておく。

それが今の俺にできる、いちばん現実的な答えだった。

 

 

「……お前も、結局は俺と同じくらい心配してるってわけか」

 

 

「ええ。そこは師匠と同じです。ただ……それを理由に、機会を奪うわけにはいかないってだけです」

 

 

「そりゃそうか……」

 

 

師匠はそう呟いて、少しだけ視線を泳がせてから、俺を見た。

 

 

「お前がついていくなら、俺は安心してノルンを見てられる」

 

 

「……あれ? 師匠は、ついていかないんですか?」

 

 

「ん?」

 

 

「てっきり、俺と一緒についてくるのかと思ってましたが……」

 

 

「俺は不器用だからな、どっちも気にしてたら、どっちも中途半端になりそうだ」

 

 

「そんなことないと思いますけど……」

 

 

「それに……お前を信用してるからな。俺がこんなこと任せるのは、ルディとお前ぐらいだ」

 

 

「なんか買い物ぐらいで大げさな気がしますけど……任せてください」

 

 

「おう、任せた!」

 

 

師匠はそれだけ言うと、踵を返した。

背中越しに手をひらりと振り、

師匠は家の奥へ戻っていった。

 

師匠の背中を見届けてから、俺も外へ出る。

冷たい空気が頬を撫で、街のざわめきが耳に入ってきた。

 

ミリシオンの通りは、今日も相変わらずだ。

石畳を打つ靴音、呼び込みの声、

露店から漂ってくる香辛料と肉の匂い。

人の流れは多いが、押し合うほどではない。

 

俺は意識を一段落とし、気配を極力薄くする。

 

少し先――

通りの向こうに、アイシャの姿が見えた。

きょろきょろと周囲を見回しながらも、足取りは軽く、怖がっている様子もない。

 

横道に逸れそうになる気配もなく、

人の多い通りを選んで進んでいる。

師匠に甘えるようになってから、

少し幼くなったかと思っていたが、

こういうところは相変わらず要領がいい。

 

……いや、違うな。

幼くなったんじゃない。

必要なときに、ちゃんと子どもでいられるようになっただけだ。

 

アイシャはやがて、目的の店が並ぶ通りへと足を向けた。

武器屋、防具屋、道具屋が固まっている一角だ。

剣油や研磨剤、簡易修理用の道具を扱う店も、この辺りに集中している。

 

アイシャは一度だけ足を止め、通りを見渡した。

選んだのは、派手さのない小さな店だった。

古い木製の扉、油壺の絵が描かれた控えめな看板。

アイシャの判断基準は分からないが。

値段と品質で勝負するタイプ、そう判断したのだろう。

 

俺は通りの反対側、日陰に身を寄せたまま、

右目に意識を集中させ透視眼を使う。

壁越しに店内の輪郭が浮かび上がり、棚に並んだ油壺や工具。

カウンターの向こうで腕を組んでいる、

店主と思われる初老の男の姿がはっきりと見えた。

 

同時に、影の中に潜ませている玉犬と感覚を繋ぐ。

視界ではなく、聴覚の共有だ。

 

店内に入ったアイシャは、少し背伸びをするようにカウンターに近づいた。

 

 

「いらっしゃい」

 

 

「こんにちは。剣のお手入れ用の油ってありますか? 兄が剣士なんです」

 

 

「じゃあ、これだな」

 

 

店主が棚から油壺取り、値段を告げる。

標準より、やや高めだな。

 

そう思った瞬間、アイシャは首を傾げた。

 

 

「……ちょっと高くないですか?」

 

 

「嬢ちゃん、これは質のいい油でね。そこらの安物とは違う」

 

 

店主の言葉を聞いて、アイシャはすぐに言い返さなかった。

油壺に視線を落とし、ふむ、と小さく唸る。

その沈黙は迷いではなく、考えるための間だった。

 

 

「……そこらの安物、じゃないんですね」

 

 

ぽつりと、確認するように言う。

否定でも肯定でもない、ただの復唱。

 

店主は小さくうなずいた。

 

 

「そうだ。刃を傷めにくいし、持ちもいい。安い油とは作りが違う」

 

 

「たしかに、ほかの店で売ってる油とは色が違います」

 

 

「まったくだ。あっちの通りの店なんて、薄めた油を平気で売ってやがる」

 

 

吐き捨てるような言い方だった。

自分の品と、他所の品をはっきり線引きする口調。

 

アイシャはそこで、即座に値段の話に戻らなかった。

油壺を見つめ、少し考えるように間を置く。

 

 

「そうなんですね……じゃあ、やっぱりここで買いたいです」

 

 

「分かってるな、嬢ちゃん」

 

 

「でも……私、兄のお使いで来ててそこまでのお金は持たされてないんです」

 

 

「ふむ……」

 

 

「安い油を買えば済むって話かもしれませんけど、せっかく、ちゃんとした油があるのに。分かってて安物を選ぶのは、嫌なんです」

 

 

言葉を濁すが、意図は十分に伝わる。

 

 

「じゃあ、この値段ならどうだ?」

 

 

「っ! ……ありがとうございます!」

 

 

「いいってことよ、その代わり、剣油が要るならまたここに来な。安物で済ませるなよ」

 

 

「はい、もちろんです!」

 

 

元気よく返事をして、アイシャは財布から硬貨を取り出す。

数はきっちり。迷いも、数え直しもない。

店主はそれを受け取り、油壺を手渡した。

 

アイシャは油壺を胸に抱え、もう一度ぺこりと頭を下げる。

そして、店の扉を押し開けた。

 

俺は建物の影から、その背中を見送りながら少し距離を詰め、

そのまま、アイシャの斜め後ろを歩く。

 

……間違いない。あれは、ノコパラから学んだ交渉術だな。

 

思い返せば、ノコパラはよく言っていた。

「値段を見るな。相手の“大事にしてるもの”を見ろ」と。

 

さっきの店主の言葉。

「そこらの安物」「薄めた油」。

あれで、だいたい分かる。

 

あの店主は、自分の商品に強いプライドを持っている。

そして同時に、他所の店、

特に質の低い商品を売る連中を内心では見下している。

 

つまり、あの店主にとって大事なのは

「値段」よりも「格」だ。

 

だから、値段の話にいきなり踏み込まなかった。

先にやったのは、価値観の共有。

 

――他とは違う。

――あなたの店の油は、特別だ。

 

そう言葉にして、

「客」と「店主」という立場を一度壊し、

同じ価値観を持つ側に自分を置いた。

 

人は、自分を理解してくれる相手に対して、

無意識に味方意識を持つ。

 

その状態を作ってから、

ようやく自分はお金をあまり持っていないと伝える。

 

普通の客なら、ここで終わる。

「じゃあ売れない」で話は切られる。

 

だが、この時点で店主にとってアイシャは、

ただ値切ってくる客じゃない。

分かってくれる側の人間だ。

しかも、相手は子ども。

 

さらに、「分かっていて安物を選ぶのは嫌だ」

という言葉で、店主のプライドを守った。

 

値段を下げることは、

商品を安物にすることじゃない。

 

分かっている客に譲る。

それは、この店主にとって、

もっとも気持ちのいい選択だった。

 

結果、値段は下がり、店主は満足し、

アイシャは安く、良い油を手に入れた。

 

……完璧だな。

 

正直、感心した。

値切れたことそのものよりも、

誰も嫌な気分にならずに終わらせたことに。

 

少し前までのアイシャは、

人の気持ちに決して器用なほうじゃなかった。

賢いし、頭の回転も速い。

けれどそれは、どちらかといえば「計算」に近くて、相手がどう感じるか、どこで気分を害するか、そういう部分には、正直なところ鈍感だったと思う。

 

悪気がないのは分かっている。

合理的すぎただけだ。

 

相手がどう感じるかよりも、

どうすれば結果が出るか。

どうすれば目的を達成できるか。

 

それを最短距離で考える癖があった。

それが悪いわけじゃない。

生き残るためには、必要な資質でもあった。

魔大陸では特に。

 

だが今のアイシャは違う。

相手が何を大事にしているかを見て、

どこで譲れば気分よく動いてくれるかを考えている。

 

相手の立場に立つ、というより――

相手の価値観を尊重した上で、自分の立場を通す。

 

それができるようになっている。

それは、以前のアイシャにはなかったやり方だ。

 

……きっと、関わってきた人たちの影響だろう。

 

ノコパラの、相手をよく見る交渉。

ブレイズの、誠実さと気遣い。

師匠の、感情を隠さない分かりやすさ。

 

そして――

俺自身も、少なからず影響しているはずだ。

 

そんなふうに、少しばかり感慨に浸っていた、その時だった。

 

アイシャが、ふいに足を止めた。

 

通りの端。

炭火の匂いが漂う、小さな屋台の前だ。

串に刺さった肉がずらりと並んでいる。

何の肉かは分からないが、香ばしい脂が滴っていて、見慣れた……というよりも、どこの街にもある、ごく普通の串焼きだ。

 

アイシャは一度だけ周囲を見回し、

それから財布を取り出した。

 

硬貨を数え、屋台の親父に差し出す。

受け取った串は――二本。

 

食いしん坊だな。

というか……あの串、普通に美味そうだな。

 

炭と肉の焼ける音に、思わずお腹が鳴りそうになる。

俺は空腹を誤魔化すように視線を逸らし、

今日の献立を考える。

 

……その瞬間だった。

 

視線を戻すと。

いつの間にかアイシャが、目の前まで来ていた。

 

 

「お兄ちゃん、胡椒ちょうだい」

 

 

「……ああ、はい。胡椒」

 

 

完全に反射だった。

影に手を伸ばし、いつもの小袋を取り出して、そのまま差し出す。

 

渡してから、思考が追いつく。

 

 

「……って、え?」

 

 

胡椒を受け取ったアイシャは、串にぱらぱらと振りかけながら、

にやりと笑った。

 

 

「やっぱり、ついてきてた」

 

 

「……バレてた?」

 

 

「うん。バレバレ」

 

 

「……いつ気づいたんだ?」

 

 

「お店出て、ちょっとしてからかな、お兄ちゃんがさ、普通に人混みにいるんだもん」

 

 

「考え事してて、油断してたな……」

 

 

アイシャはニヤニヤしながら俺を見上げ、

もう一本の串を差し出した。

 

 

「はい」

 

 

「……いいのか?」

 

 

「うん。ついてきてくれたお礼」

 

 

「俺がついてきてたこと、怒ってないのか?」

 

 

「なんで?」

 

 

きょとんとした顔。

本気で、分からないという表情だった。

 

 

「だって、一人で行かせたって言いながら、実は後ろから見てたわけだろ」

 

 

「お兄ちゃんが心配性なのは、知ってるし、何かしたわけじゃなくて見てただけでしょ?」

 

 

「……まあな」

 

 

「じゃあ、別にいいじゃん、ちゃんと一人で買い物できたんだし」

 

 

そう言って、アイシャはくるりとこちらを向き、

手にぶら下げていた油壺を、俺の方へ差し出してきた。

 

 

「ほら。ちゃんと買ってきたよ」

 

 

「……ありがとな」

 

 

俺は、串を受け取り、油壺を影にしまう。

空いた手で、そっとアイシャの頭に手を置いた。

くしゃっと、いつもの調子で撫でる。

 

 

「さすがアイシャだ」

 

 

「えへへ……」

 

 

「じゃ、帰るか」

 

 

「うん!」

 

 

元気よく返事をして、並んで歩き出す。

アイシャにもらった串を、食べる。

炭の香りと一緒に旨味が口いっぱいに広がった。

胡椒がしっかり効いていて、やっぱり美味い。

 

……うん、いい買い物だ。

 

俺の尾行は、完全に失敗だ。

隠れきれず、気づかれ、最後は普通に並んで歩いている。

 

だが――アイシャのお使いは、完璧に成功した。

 

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