受肉転生 ~宿儺と一緒に本気出す~   作:てとらとりす

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九十一話

 

人の気持ちに、寄り添えるようになりたい。

 

それは、ただ相手の表情を見て、声の高さを拾って、どの言葉を投げれば相手が黙るかを当てることとは、きっと違う。

 

それは相手を動かす方法であって、相手の痛みに触れているわけじゃない。

 

共感とは違うのだと思う。

 

動かすだけなら、弱いところを見つければいい。

そういうことなら得意だ。

 

相手の目の動き、声の高さ、返事までの間、手の置き方、息の吐き方。

そういう要素を見抜く。

いつもお兄ちゃんがやっていたことだ。

そこは私にも……そうやって色真似できた。

 

そうやって集めたものを、頭の中で並べて、そこから一番自分の意見が通tしやすい道を探すことなら前からできた。

 

私はその道の先に、相手の心ではなくて、私の欲しい結果だけを置いてしまえる。

 

けど、私がなりたいのは、そういう私ではない。

 

私は、相手がどうしてそこに立ち止まっているのかを知りたい。

どうして怒るしかなかったのか。

どうして言葉を飲み込んだのか。

本当は何を言いたくて、でもそれを言ったら何が壊れると思っているのか。

そういう、見えないところにあるものを、ただ見抜くんじゃなくて、自分の中にも置けるようになりたい。

 

人の中身を、ただ情報として拾うんじゃなくて、その人側から考えられるようになること。

 

共感っていうのは、たぶんそういうことなのだと思う。

 

まだ、はっきりとは分からない。

分からないけど、私はそうなりたい。

 

それは、そうしたい相手がいるからだ。

 

お兄ちゃんのことを、もっと分かりたい。

 

お兄ちゃんが笑っている時、その笑顔が本当に安心した時のものなのか、それとも誰かを安心させるために作ったものなのか、見分けられるようになりたい。

お兄ちゃんが困った顔をした時、私のわがままに困っているのか、自分の中の怖いものに触れられて迷っているのか、分かるようになりたい。

お兄ちゃんが無理をしている時、「大丈夫」と言われても、それをそのまま飲み込むんじゃなくて、その言葉の奥でどこが痛んでいるのかまで、ちゃんと見られるようになりたい。

 

私が甘えた時、お兄ちゃんはいつも受け止めてくれる。

私が手を伸ばせば、困ったように笑って、それでもちゃんと握ってくれる。

私が近づけば、ほんの少しだけ身構えて、それから力を抜く。

そういう小さな動きの中に、お兄ちゃんが私を大事にしてくれていることも、お兄ちゃん自身が少し無理をしていることも、両方入っていた。

 

昔の私は、受け止めてもらえることが嬉しくて、その中にある重さをあまり見ていなかった。

 

今は見たいと思っている。

 

だって、お兄ちゃんは私にずっとそうしてくれていた。

私が自分でも分からないまま怒っている時、その奥にある寂しさを見つけてくれた。

私が得意げになっている時、結果じゃなくて、そこに至るまでに私がどれだけ考えたかを拾ってくれた。

私が甘える時、それがただのわがままなのか、それとも不安で手を伸ばしているのか、私より先に気づいてくれた。

 

お兄ちゃんは、私の中にあるものを、私より丁寧に扱ってくれた。

 

……そうやって、いくらでも理由はつけられる。

 

でも、心の奥底にある気持ちは、やっぱり好きだからなのだ。

 

お兄ちゃんが好きだからそうしたい。

 

お兄ちゃんの傷がどこにあるのか。

何に怯えて、何を信じたくて、何を信じきれずにいるのか。

そういうものを知って、分かって、ただ撫でるだけじゃなくて、ちゃんとそこに届く言葉を渡したい。

 

お兄ちゃんに守られるだけの子じゃなくて。

お兄ちゃんが疲れた時に、私がそばにいてもいいと思えるような人になりたい。

お兄ちゃんが、私の前なら少しだけでも背負っている重いものを下ろしてもいいと思えるような、そういう人になりたい。

 

……なりたいのだ。

 

 

 

―――

 

 

 

フィットア領の難民キャンプが見えてきた時、私は馬車の中から外を見ていた。

 

転移が起こる前、ブエナ村で過ごしていた頃の私はずっと家の中や庭で遊んでいた。

お兄ちゃんの膝の上にいたり、庭に生えている草を適当に抜いたり、ルーデウスお兄さんのことを話すお母さんの声を聞き流しながら、全然別のことを考えていたりした。

まだ世界が壊れるなんて思っていなかった頃の、私の小さな世界。

 

前にここへ戻ってきた時の私は、浮かれていた。

 

もちろん、旅で疲れていたし、状況が普通じゃないことくらいは分かっていた。

フィットア領が大変なことになっているのも知っていた。

転移でたくさんの人が苦しんでいることも、家が前のままではないことも、頭ではちゃんと分かっていた。

 

それでも。

 

お兄ちゃんと一緒に、あそこに戻れる。

 

それだけで、私はすごく嬉しかった。

 

お兄ちゃんと昔の話をしたかった。

どこで遊んだとか。

あの時は、わざと転んでお兄ちゃんに起こしてもらっていたとか。

どの木の陰に隠れてお兄ちゃんを待っていたとか。

 

そういう小さなことを、ひとつひとつ取り出して笑い合いたかった。

私が覚えていることを話して、お兄ちゃんが覚えていることを聞いて、同じ場所を見ながら、同じ時間を懐かしむ。

 

懐かしいねって笑いたかった。

 

ただ、それだけだった。

 

昔いた楽しい場所に戻れば、その楽しさも返ってくるとバカみたいな期待をしていたのだ。

 

けれど、その時に返ってきたのは、楽しさなんかじゃなかった。

 

お兄ちゃんの両親が死んでいたという現実だった。

 

あの時のお兄ちゃんの顔を、私は今でも忘れられない。

 

大きく崩れたわけではなかった。

声を上げて泣いたわけでもない。

膝から崩れ落ちたわけでもない。

 

ただ、何かが抜けたような顔だった。

 

馬車が難民キャンプへ近づくにつれて、道の脇に人の姿が増えていく。

荷物を抱えた人。

子供の手を引く人。

布を干している人。

木材を運んでいる人。

そのひとつひとつを目で追いながら、私の頭は勝手に昔の場面へ戻っていった。

 

無理をするお兄ちゃんを私たちは武力行使で倒した。

 

やったことだけを思い返せばかなりひどい。

でも、あの時の私にとって、あれは正しいことだった。

お兄ちゃんは止まらなかった。

休まなかった。

自分がどれだけ傷ついているかを、無視しているようだった。

だから、無理やりでも止めなきゃいけなかった。

 

私たちは作戦を考えた。

 

お兄ちゃん相手に、なにがどれだけ通じるのか分からなかった。

それでも私は本気だった。

お兄ちゃんを止めるために、いっぱい考えた。

どうすれば意表を突けるか。

どうすれば油断を作れるか。

どうすれば最後の一瞬だけでも届くか。

 

そして、届いたのだ。

 

お兄ちゃんは倒れた。

 

それから、少しだけ、本当に少しだけ、胸の奥に溜め込んでいたものが外へ出た。

 

その時の私は、嬉しかった。

 

お兄ちゃんの役に立てたと思った。

お兄ちゃんを助けられたと思った。

お兄ちゃんが私たちの前で崩れてくれたことが、私たちを信じてくれた証に見えて、達成感を感じたのを覚えている。

 

でも今、難民キャンプの煙を見ながら思う。

 

あれは、傷に布を当てただけだった。

 

必要なことではあった。

あの時止ていなかったら、お兄ちゃんはもっと壊れていたかもしれない。

眠らせることも、泣かせることも、きっと間違いではなかったと今でも思う。

 

でも、それは根っこを治したわけじゃない。

 

血が出ているところに布を押し当てただけだ。

熱がある人に冷たい布を乗せただけだ。

痛みで暴れている人の手足を押さえただけだ。

 

私は、お兄ちゃんを眠らせることはできた。

けれど、お兄ちゃんがどうしてそこまで無理をしたのか、その奥へ届くことはできなかった。

 

そこが、今は悔しかった。

 

あの時の私が悪かったと言いたいわけじゃない。

あの時の私にできることは、きっとあれが精一杯だった。

だけど、それで満足していたことが、恥ずかしいのだ。

 

私が本当にできるようになりたいのは、対処療法なんかじゃない。

 

どうしてお兄ちゃんが、苦しくても一人で立とうとするのか。

どうして誰かに重さを預ける前に、自分の中で全部片づけようとするのか。

どうして助けてほしい顔をしているのに、助けてとは言えないのか。

そういうところを、ちゃんと自分のことのように分かるようになりたい。

 

分かったうえで、手を伸ばしたい。

 

お兄ちゃんが倒れる前に。

お兄ちゃんが笑って誤魔化す前に。

お兄ちゃんが「大丈夫」と言ってしまう前に。

 

そんなことを考えていたからか、キャンプのざわめきを見る目が変わっていた。

 

ここにいる人たちは、ただ困っているだけではない。

ただ疲れているだけでもない。

何かを失って、それでも動いている。

泣いている人もいれば、泣けないまま働いている人もいる。

子どもを抱いている人は子どもを見ているようで、その向こうにいない誰かを見ているのかもしれない。

 

そんなことを考えると、少し息が詰まった。

 

人の痛みを分かりたいと思ったばかりなのに、目の前に痛みがたくさんありすぎる。

どれも形が違って、どれも簡単には触れない。

見れば分かる、なんてものではない。

見たところで、分かった気になってはいけないものばかりだった。

 

私が黙っていると、お母さんが横から小さく声をかけてくれた。

 

 

「疲れましたか?」

 

 

「大丈夫。ちょっと、見てただけ」

 

 

「そうですか」

 

 

お母さんはそれ以上、無理に聞いてこなかった。

 

前なら、それが少し寂しかったかもしれない。

どうして聞いてくれないの。

どうして気づいてくれないの。

そう思っていたかもしれない。

 

でも今は、それが逃げ道を残してくれているようにも思えた。

 

全部聞き出されるわけではない。

全部分かられるわけでもない。

だけど、そこにいてくれる。

 

それはそれで、ちゃんと優しさなのだと思った。

 

そう考えたところで、私はまたお兄ちゃんのことを思い出してしまった。

 

お兄ちゃんだったら、今の私の顔を見て、何を考えるのだろう。

「大丈夫」って言った声の細さに気づいて、少しだけ目を細めるのだろうか。

それとも、何も言わずに隣にいてくれるのだろうか。

 

……だめだ。

 

そうやって私はすぐお兄ちゃんに戻ってしまう。

そう思って、私は軽く頬を叩きたくなった。

でも人前でやると変だから、代わりに荷物の紐をきゅっと握り直した。

 

 

 

―――

 

 

 

エリス姉とは、ここでお別れになる。

 

明日にでも、私たちはここを出て、イーストポートへ向かって、そこでお父さんたちと合流する予定だ。

 

エリス姉との旅は、短かったはずなのに、思い返すと妙にいろんな場面が浮かんだ。

 

旅の途中、髪が少し絡まっていた時に、エリス姉が不器用な手つきで櫛を通してくれたことがある。

力加減が少し強くて、何度か引っ張られて痛かったけど、エリス姉は私の髪を見ながら「綺麗じゃない」とぶっきらぼうに言ってくれた。

その時の声が優しかったのは覚えている。

 

私が作った料理を食べて、目を丸くしたこともあった。

「おいしいわね!」と大きな声で言ってくれて、それからすぐにもう一口食べた。

細かい味の違いを言う人ではないけれど、美味しいと思ったらそのまま顔と声に出る人だったから、私はそれが嬉しかった。

 

エリス姉は、まっすぐで、熱くて、迷わない人だった。

 

私は、そういうエリス姉のことが、かなり好きになっていた。

 

だから、お別れは寂しい。

 

でも、その寂しさをちゃんと感じる前に、別の空気が流れ込んできた。

 

難民キャンプの代表だというアルフォンスさんが来た。

 

それから、ギレーヌさんという獣族の女の人も来た。

 

アルフォンスさんは、前に来た時も見かけたけど、ギレーヌさんのことはあまり知らない。

 

エリス姉に聞くと素直に教えてくれた。

 

ギレーヌさんは、エリス姉の剣の師匠らしい。

立っているだけで、周りの空気が少し硬くなるような人だった。

体のどこにも隙がなくて、目が鋭くて、ただそこにいるだけで、戦う人なのだと分かる。

 

エリス姉は、久しぶりに会えたのが嬉しかったのか、ギレーヌさんに向かって走っていった。

 

アルフォンスさんは、私たちに丁寧に挨拶をした。

落ち着いていた。

必要な言葉を、必要な順番で言っていた。

大人の人の顔をしていた。

 

でも、その顔を見た瞬間、私は少しだけ胸がざわついた。

 

見たことがある顔だった。

 

言いたくないことを、これから言わなければいけない人の顔。

 

言葉を選んでいる顔。

どこから切り出せば、少しでも相手が壊れずに済むのかを考えている顔。

でも、どれだけ選んでも、結局その言葉が相手を傷つけることを知っている顔。

 

私は、その顔を知っている。

 

だから、思ってしまった。

 

もしかして、エリス姉の家族も……

 

私はエリス姉を見た。

 

エリス姉は、いつものように胸を張っていた。

けれど、その目の奥は、ほんの少しだけ揺れていた。

気づいているのかもしれない。

アルフォンスさんの顔に。

ギレーヌさんの沈黙に。

周りの大人たちが、少しずつ言葉を避けていることに。

 

エリス姉は、分かりやすい人だと思っていた。

 

嬉しい時は嬉しい顔をする。

怒った時は怒る。

気に入らないことがあれば、すぐ言う。

 

でも今のエリス姉は、分かりやすくはなかった。

 

苦しそうではない。

泣きそうでもない。

怒っているわけでもない。

 

ただ、何かを待つような顔をしていた。

 

アルフォンスさんは、身内で話をする必要があると言った。

 

だから、私たちは離れようとした。

 

けど……

 

「ルーデウスも一緒よ」

 

エリス姉がそう言って、ルーデウスお兄さんも一緒に奥の部屋に入っていった。

 

私は、離れたところへ行くべきだった。

 

お母さんも、ルイジェルドさんも、ノコパラも、ブレイズさんも、それぞれ距離を取った。

私もそうしなければいけなかった。

 

分かっている。

 

でも、足が動かなかった。

 

お兄ちゃんの時と同じだと思ってしまったから。

 

誰かが今、壊れるかもしれない。

誰かが今、自分では持ちきれないものを渡されるかもしれない。

そう思ったら、どうしてもその場から完全には離れられなかった。

 

私は、部屋の前から少し離れたところに立っていた。

 

壁に背中をつけて、手持ち無沙汰の両手をお腹の前でいじる。

指先が冷たかった。

喉が渇いているのに、水を飲みたいとは思わなかった。

 

どれくらいそうしていたのか、よく分からない。

 

急に扉が開いた。

 

エリス姉が飛び出してきた。

 

最初に見えたのは、赤い髪だった。

次に握りしめた手。

それから顔。

 

涙が見えた。

 

エリス姉が泣いていた。

 

それを見た瞬間、私は声を出せなかった。

 

止めなきゃ、と思った。

名前を呼ばなきゃ、と思った。

追いかけなきゃ、と思った。

 

でも、体が動かなかった。

 

だって、エリス姉の涙を止める言葉を、私は知らないのだ。

 

エリス姉は、私の前を通り過ぎた。

足音が荒くて、決して走っているわけではないのに速かった。

拳を握っていて、顔を上げていた。

 

私は、結局何もできなかった。

肩がぶつかりそうなほど近かったはずなのに、私は手を伸ばせなかった。

一歩も動けなかった。

名前すら呼べなかった。

 

ただ、エリス姉の背中が遠くなるのを見て立ち尽くしていた。

 

まただ。

 

また私は、見ているだけ。

 

分かることと、できることは違う。

 

お兄ちゃんの時も、最初はそうだった。

苦しんでいる顔を見て、何をすればいいのか分からなくて、ただ胸の中がざわざわしていた。

今回も同じだ。

分かりたいと思ったばかりなのに。

寄り添える人になりたいと思ったばかりなのに。

 

いざ誰かの痛みが目の前を走り抜けていったら、私は一歩も動けなかった。

 

悔しかった。

 

でも、悔しいなんて思うことすら、なんだか自分勝手な気がした。

 

今苦しいのはエリス姉なのに。

泣いているのはエリス姉なのに。

私が何もできなかったことで私が傷つくのは、いけないことのような気がした。

 

そういうところまで考えてしまって、余計に動けなくなった。

 

少しして、部屋からルーデウスお兄さんが出てきた。

 

顔が疲れていた。

 

いつものような変な軽さはなかった。

冗談を言って場を柔らかくしようとする余裕もなさそうだった。

目の奥に、見えない重さが沈んでいるみたいだった。

 

私は、ルーデウスお兄さんに近づいた。

 

 

「エリス姉は……」

 

 

そこまで言って、言葉が止まった。

 

どう聞けばいいのか分からなかった。

何があったのかと聞くのは違う。

大丈夫かと聞くのも違う。

エリス姉を追いかけた方がいいのか、ここで待つべきなのかも分からない。

 

ルーデウスお兄さんは、私の顔を見た。

 

それから、少しだけ息を吐いた。

 

 

「少し、休みましょうか」

 

 

その声は、静かだった。

 

私を安心させるための声なのか、自分に言い聞かせるための声なのか、私には分からなかった。

 

両方だったのかもしれない。

 

 

「うん……」

 

 

私は、ただ頷いた。

 

エリス姉の涙が、目の奥に焼き付いていた。

 

私は止められなかった。

 

その事実だけが、靴に入った小さな石のように挟まっていて、歩くたびに気になった。

 

しばらくして、アルフォンスさんがルーデウスお兄さんを呼びに来た。

 

ルーデウスお兄さんは、少しだけ目を閉じた。

それから、すぐに立ち上がった。

 

 

「すみません。少し行ってきますね」

 

 

そう言う顔は、まだ疲れていた。

 

 

「うん」

 

 

私は、また頷いた。

 

ルーデウスお兄さんがアルフォンスさんについて行ったあと、私はしばらくその場に立っていた。

 

動こうと思っても、すぐには動けなかった。

視線の先には、エリス姉の姿も、ルーデウスお兄さんの背中も、もうない。

なのに、私の目はまだそっちを見ていた。

 

 

 

―――

 

 

 

早朝、と呼ぶにはまだ空が暗すぎた。

 

夜の終わりかけ。

朝になる少し前。

そう言った方が近い空の色だった。

 

眠れなかったというより、目が覚めてから眠る方に意識が戻れなかった。

 

エリス姉の涙が、頭から離れなかった。

 

エリス姉は、火みたいな人だ。

 

でも、火だって消えそうになることはある。

燃えているからって、痛みがないわけじゃない。

明るいからって、暗いものを抱えていないわけじゃない。

 

そんな当たり前のことを、また後から知る。

 

私は、分かったつもりになっていることが多い。

エリス姉はこういう人。

ノコパラはこういう人。

ブレイズさんはこういう人。

お母さんはこういう人。

ルーデウスお兄さんはこういう人。

 

そうやって頭の中で型にはめておくと、相手を動かしやすい。

この人にはこう言えばいい。

この人はこう動く。

この人はこういう時に怒る。

この人はこういう言葉なら受け取る。

 

でも、それで人を分かったことにはきっとならない。

 

だから、涙を見た時に何もできなかった。

 

キャンプの中は人の気配が多すぎた。

声も、足音も、鍋の音も、木材が積まれる音も、全部が私の中に入り込んでくる。

さっきまでは、それぞれの痛みを見ようとしていた。

けれど今は、それが多すぎて、息が浅くなる。

 

私は森の方へ向かっていた。

 

難民キャンプの端を抜けると、人の声が少しずつ遠くなる。

代わりに、土を踏む音と、葉が擦れる音だけになってきた。

 

森は静かだった。

本当は虫の音も、鳥の声も、枝が揺れる音もある。

でも、人が作る音に比べると、ずっと私の中に入ってきにくかった。

こっちの音は、何かを求めてこない。

何かを考えろとも、答えろとも言ってこない。

 

だから楽だった。

 

後ろから、足音が二つついてきていた。

 

ノコパラとブレイズさんだ。

 

私はしばらく、気づかないふりをした。

二人も、声をかけてこなかった。

ただ、近づきすぎない距離でついてくる。

 

そういう距離の取り方をされると、ちょっと困る。

 

突き放したいわけじゃない。

心配してくれているのは分かる。

でも、今はその心配に返す言葉を持っていないのだ。

 

森を抜けた先に、墓地があった。

 

たくさんの墓石が並んでいる場所。

名前の刻まれた石。

まだ新しいもの。

少し土に馴染み始めたもの。

何か置かれているものもあれば、何も置かれていないものもある。

 

私は振り返った。

 

ノコパラとブレイズさんも、少し離れたところで止まっていた。

 

 

「ついてきてくれてありがとね。でも、この先は一人で行かせて」

 

 

ノコパラは眉を寄せた。

 

 

「……一人で大丈夫なのかよ」

 

 

「大丈夫かどうかは分かんないけど、今は一人がいいの」

 

 

私は正直に言った。

 

ここで大丈夫って言ったら、嘘になる気がした。

大丈夫だから一人になりたいわけじゃない。

大丈夫じゃないから、一人で考えたいのだ。

 

ノコパラは何か言いかけた。

それから、口を閉じた。

閉じた口の端が、少しだけ苦そうに歪んでいる。

 

私は、その顔を見て胸がちくっとした。

 

私は二人に、ちゃんと頭を下げた。

 

 

「ごめんね。頼れなくて」

 

 

「……悪いと思ってんなら、まあいい」

 

 

「いいの?」

 

 

「よくはねぇよ」

 

 

すぐに返ってきた。

 

 

「だが、一人で考えた方がいいもんもある。何でもかんでも口に出せばいいってわけじゃねぇ。頭ン中でも纏まってねぇ気持ちを言葉にした瞬間に、変になっちまうこともあるからな」

 

 

ノコパラはそこまで言ってから、面倒くさそうに頭をかいた。

 

 

「ただし、俺が納得してるかって言われたら別だ。文句はある。山ほどある。何を一人で抱え込もうとしてやがるとか、そういう顔すんなとか、言いたいことは普通にある」

 

 

「……うん」

 

 

「でも、お前が悪いと思ってて、その上で今は一人がいいって判断したんなら……まあ、飲み込んでやる」

 

 

ノコパラは、飲み込むという言葉の通り、本当に何かを喉の奥へ押し込むような顔をした。

 

その顔を見て、胸が温かくなった。

ノコパラは、私のために我慢してくれている。

言いたいことを言わないでいてくれている。

それは、何も言われないよりずっと分かりやすい優しさだった。

 

 

「ただ、いつでも頼ってくれ。いつでも力になるからな」

 

 

ブレイズさんが、そう付け足した。

 

私は、また頭を下げた。

 

 

「ありがとう」

 

 

顔を上げると、ノコパラがそっぽを向いていた。

 

ブレイズさんは頷いただけだった。

 

私は墓地の中へ入った。

 

そして、前に来た時と同じ墓の前で立ち止まった。

 

ガランさん。

セリスさん。

 

お兄ちゃんの、お父さんとお母さんだ。

 

私は膝をついた。

 

持ってきた布を取り出して、墓石の表面をそっと拭く。

石は冷たかった。

その冷たさが、手のひらからじわりと入ってきて、手の芯まで届いた。

 

文字の周りの汚れを落とす。

強くこすりすぎると、石を傷つけてしまいそうだから、布を魔術で湿らせて、ゆっくりと拭いた。

溝に入った土は、細い木の枝に布を巻いて取り除く。

草は根元を押さえて引き抜く。

小さな花が咲きかけているものは抜かなかった。

墓石の横に、そっと残しておいた。

 

 

「前の私なら抜いてたかな……」

 

 

私は二人のことを、よく知っているわけではない。

直接話した記憶も、はっきりとは多くない。

お兄ちゃんの口から聞いたことの方が、ずっと多い。

 

だから、墓石の前に立った時、最初に浮かんだのは二人の顔ではなく、お兄ちゃんの顔だった。

 

二人のことを話す時のお兄ちゃんの顔。

 

それは、普段のお兄ちゃんとは違っていた。

私やノコパラやブレイズさんたちの前で、場を整えようとしている時の顔ではない。

誰かの言葉を受け止めて、飲み込める形に変えて返そうとしている顔でもない。

 

上手くは言えないけど、強いて言うなら子どもの顔だった。

 

お兄ちゃんは、この人たちに感謝していた。

 

愛してくれてありがとう、と。

 

私は、そのことを思い出して手を止めた。

 

愛してくれてありがとう。

 

それは、すごい言葉だと思う。

 

それを言えるということは、愛されていたと信じているということだから。

この人たちが自分を愛してくれていたことを、ちゃんと受け取っていたということだから。

死んでしまって、もう声も聞けなくて、もう撫でてもらうことも抱きしめてもらうこともできなくなっても、それでも残っているものがあるということだから。

 

お兄ちゃんがちゃんと子どもの顔をできるくらいには。

感謝の言葉を言えるくらいには。

自分が愛されていたことを、疑いだけで塗りつぶさずにいられるくらいには。

 

信じていたのだ。

 

人を信じるのが怖いお兄ちゃんが、この人たちの愛だけは信じていた。

 

この人たちは何を渡していたのだろう。

 

どんなふうにお兄ちゃんを見ていたのだろう。

お兄ちゃんが泣いた時、どう抱きしめたのだろう。

お兄ちゃんが笑った時、どう笑い返したのだろう。

お兄ちゃんが失敗した時、どう叱って、どう許したのだろう。

お兄ちゃんが怖がった時、どんな声で大丈夫だと言ったのだろう。

 

この人たちは、お兄ちゃんが子どもでいることを許してくれたのかもしれない。

 

頑張らなくても。

役に立たなくても。

強くなくても。

ただそこにいる子どもとして、お兄ちゃんを見ていたのかもしれない。

 

私は墓石を拭く手を止めて、少しだけ唇を噛んだ。

 

よかった。

 

そう思った。

 

お兄ちゃんに、そういう場所があってよかった。

お兄ちゃんが、誰にもちゃんと愛されてなかったと思いながら生きてきたわけじゃなくてよかった。

お兄ちゃんの中に、信じられる愛が一つでもあってよかった。

 

本当にそう思ったのだ。

 

でも。

 

いいな。

 

……そう、思ってしまった。

 

また私は、自分のことを考えている。

 

私は、この人たちに嫉妬しているのだろうか。

 

お兄ちゃんの両親のお墓の前で。

お兄ちゃんが失った人たちの前で。

お兄ちゃんが感謝していた愛のことを考えながら。

 

いいなと思ってしまった。

 

お兄ちゃんにそんなふうに信じてもらえるこの人たちが、いいな。

お兄ちゃんが子どもの顔で思い出せるこの人たちが、いいな。

お兄ちゃんの中に、疑いじゃなく感謝として残っているこの人たちが、いいな。

 

羨ましい。

 

そんなことを思ってしまう自分が嫌だった。

 

だって、この人たちはもういないのに。

お兄ちゃんはこの人たちを失って苦しんだのに。

その前で、私は何を羨ましがっているのだろう。

 

本当に馬鹿みたいだ。

 

お兄ちゃんの気持ちを考えたい。

お兄ちゃんの痛みを分かりたい。

この人たちが、お兄ちゃんに何を渡してくれたのか知りたい。

そう思ってここに来たはずなのに。

 

こうやって、すぐに自分の欲が出てくる。

 

お兄ちゃんにとって、私もそういう存在になりたい。

 

お兄ちゃんが信じられる愛を渡せる人になりたい。

 

そう思ってしまう。

 

私は、こんなわがままで強欲な自分が嫌いだ。

 

私は墓石の前に座り込んだまま、濡れた布を膝の上で握った。

 

石についた汚れは落とせた。

名前の溝に入り込んでいた土も、草も、雨の跡も、ちゃんと取れた。

来た時よりも、墓石はずっときれいになったと思う。

 

でも、私の中はぐちゃぐちゃのままだった。

 

拭いても拭いても、別のところから滲んでくる。

ありがとうと思ったはずなのに、羨ましいが出てくる。

よかったと思ったはずなのに、私もそうなりたいと思ってしまう。

お兄ちゃんを安心させたいと思ったはずなのに、私を選んでほしい気持ちが混ざる。

 

こんなにブレブレで、お兄ちゃんの隣に立てるわけがない。

 

分かってる。

分かっているのだ。

お兄ちゃんの隣に立つことは、ただ近くにいることじゃない。

服の裾を掴んで、手を握って、眠くなったら寄りかかって、寂しくなったら抱きついて、そうやって受け止めてもらうだけの場所じゃない。

 

今の私はどうだろう。

 

お兄ちゃんが愛されていてよかったと思いながら、その愛を羨ましがっている。

お兄ちゃんが自由に選べるようになってほしいと思いながら、その選ぶ先に私がいない未来は嫌だと思っている。

お兄ちゃんを安心させたいと思いながら、安心できる場所として選ばれるだけでは嫌だと思っている。

 

欲しいものが多すぎる。

 

きれいな願いと、きれいじゃない願いが、私の中でぐちゃぐちゃに絡まっている。

ほどこうとすればするほど、別のところが絡まる。

これは違うと分かったそばから、でもそれでも欲しいと胸の奥が言ってくる。

 

こんな私がお兄ちゃんを支えるなんて笑ってしまう。

 

でも、立ちたいのだ。

 

どうしようもなく、お兄ちゃんの隣に立ちたいのだ。

 

お兄ちゃんを支えたい。

お兄ちゃんが背負っているものを、全部は無理でも、ほんの少しでも一緒に持ちたい。

お兄ちゃんが一人で笑って、一人で怖がって、一人で飲み込んでしまう前に、私が気づきたい。

 

そして、お兄ちゃんと愛し合いたい。

 

役に立つ子としてではなく。

昔からそばにいた子としてでもなく。

寂しがるから放っておけない子としてでもなく。

 

アイシャとして。

 

私の賢さも、弱さも、ずるさも、寂しがりなところも、欲深いところも、それでもちゃんと変わりたいと思っているところも、全部見たうえで、私を選んでほしい。

 

そんなことを心の中で形にした瞬間、視界がふっと滲んだ。

 

あれ、と思った時には、ぽたりと音がした。

 

墓石の前の土に、水が落ちていた。

 

最初は、濡らした布から落ちた水かと思った。

でも違った。

頬を伝う感触があった。

目の端が熱くて、鼻の奥がつんとして、息を吸うと胸が震えた。

 

泣いているのだと、少し遅れて分かった。

 

 

「はは……どうしちゃったんだろ、私」

 

 

小さく笑った声は、自分でも情けなかった。

 

泣いているのに笑っている。

笑っているのに、ちっとも楽しくない。

むしろ、自分が滑稽に見えて仕方がなかった。

 

私は天才のはずだった。

 

なのに、お兄ちゃんが関わったとたんに、なにも分からなくなる。

 

どうすればいいのか分からない。

どこへ向かえば正解なのか分からない。

強くなればいいのか、賢くなればいいのか、綺麗になればいいのか、大人になればいいのか、役に立てばいいのか。

 

たった一つの願いの扱い方さえ分からない。

 

 

「……お兄ちゃんのせいなんだよ」

 

 

別に責めたいわけじゃない。

本気で怒っているわけでもない。

でも、そう言いたくなってしまった。

 

私は、とても面倒くさい私になってしまった。

 

あんなに優しくして。

あんなに見てくれて。

私が自分でも知らなかった気持ちを、何度も見つけてくれて。

頑張ったところを拾って、頭を撫でて、嬉しい言葉をくれて。

 

そのせいで、私はこんなになってしまった。

 

お兄ちゃんがいなければ、私はもっと簡単な子でいられたかもしれない。

できる子として褒められて、役に立つ子として満足して、自分の中の寂しさにも欲にも気づかず、もっと楽に生きられたかもしれない。

 

なのに、お兄ちゃんが私を見つけてしまった。

 

 

「バカにされちゃったなぁ……」

 

 

今の私はきっと馬鹿なのだ。

もっと簡単に幸せになれたはずなのに、わざわざ難しい方へ来てしまった。

手に入れたいだけなら、やり方なんていくらでも思いつくのに、それじゃ嫌だなんて言い出している。

 

ほんと、どうしちゃったんだろ。

 

 

「責任、取ってほしいな……」

 

 

口からこぼれた言葉は、すごく小さかった。

 

言えるわけがない。

言っていいわけがない。

そんな言葉でお兄ちゃんを縛りたいわけじゃない。

 

でも、そう言いたいくらいには、今の私はぐちゃぐちゃだった。

 

私はもう一度、墓石を拭いた。

涙が落ちたところの近くに土が跳ねていたから、それも指でならしておいた。

最後に、抜かなかった小さな花の周りを整える。

白っぽい花だった。

名前は知らない。

きっとこれからも知ることはないだろう。

 

全部を終えてから、私は膝をついたまま頭を下げた。

 

立ち上がる時、足がしびれていた。

 

長く座り込んでいたらしい。

空は、来た時より少しだけ明るくなっていた。

夜の色が薄くなって、森の向こうに朝の色が広がっている。

 

膝についた土を払う。

指先に残った水気を布で拭く。

目元も、今度はちゃんと手をきれいにしてから拭いた。

 

墓地の入り口まで戻ると、ノコパラとブレイズさんはまだそこにいた。

 

ブレイズさんは、私の顔を見た。

 

 

「戻るか」

 

 

「うん」

 

 

 

――

 

 

 

難民キャンプに戻ると、朝の準備が始まっていた。

 

火を起こす匂いがする。

鍋を運ぶ人がいる。

木箱を積み直している人もいる。

誰かが子どもを叱っていて、別の誰かが笑っている。

昨日の夜に重たい話があっても、誰かが泣いていても、朝はちゃんと来てしまう。

 

それが少し残酷に思えて、でも救いにも思えた。

 

ノコパラとブレイズさんとは、キャンプの入り口近くで別れた。

 

 

「俺らはちょっと荷物を見てくる」

 

 

ノコパラがそう言った。

 

たぶん、気を遣って私に一人の時間をくれたのだと思う。

 

それくらいは、私にだって分かる。

 

 

「うん。ありがとう」

 

 

私がそう言うと、ノコパラは鼻を鳴らした。

 

 

「礼を言われることじゃねぇよ」

 

 

そう言って、少し早足で行ってしまう。

 

ブレイズさんは、私に一度だけ頷いた。

 

 

「無理はしていいが、無理しすぎるなよ」

 

 

「うん」

 

 

短いやり取りのあと、ブレイズさんもノコパラの後を追った。

 

私は二人の背中を見送ってから、自分のテントへ戻ろうとした。

 

でも、足が向かなかった。

 

ぼーっと座っていられる気もしなかった。

 

私はキャンプの中をぶらぶら歩いた。

 

ぶらぶら、なんて言うと何も考えていないみたいだけど、実際には目が勝手に動いてしまう。

あそこの水桶が少なくなっている。

あの荷物は通路にはみ出している。

鍋の横に置かれた薪が湿っていそう。

子どもが転びそうな場所に紐が落ちている。

 

見つけると、体が動く。

 

水桶を運ぶ人に声をかけて手伝う。

通路の荷物を少しだけ外側へ寄せる。

薪を乾いたものと入れ替える。

紐を拾って、近くの杭に掛ける。

 

誰かに褒められるほどのことでもない。

でも、手を動かしている間は、頭の中のぐちゃぐちゃが少し遠ざかる。

 

ああ……お兄ちゃんも、こうだったのかもしれない。

 

お兄ちゃんの両親が亡くなったと知った時。

お兄ちゃんは無理をして、難民キャンプの仕事をしていた。

目の前の仕事を片づけて、誰かのために動いて、自分が止まる時間を作らないようにしていた。

 

あの時の私は、それを「お兄ちゃんが無理している」と思った。

それは間違っていない。

でも、今なら別の角度も見えてくる。

 

止まったら考えてしまう。

考えたら胸の中にあるものが全部追いついてくる。

だから動くのだ。

体を動かして、目の前の問題を片づけて、少しでも自分の中の重たいものから逃げる。

 

お兄ちゃんは、そうしていたのかもしれない。

 

……結局私は後になってから気づくばかりだ。

 

その時は分からない。

目の前にいる時は、ただ「止めなきゃ」とか「助けなきゃ」とか、そんなことばかり考えてしまう。

そして後になって、自分が似たような場所に立って、ようやく分かってくる。

 

あまりにも遅い。

 

そのまま歩いていると、キャンプの端の方で、見覚えのある背中を見つけた。

 

ギレーヌさんだった。

 

その近くに、もう一人いた。

 

私は一瞬、誰なのか分からなかった。

 

だって、昨日までは、長い赤い髪を揺らしていた人だったから。

怒る時も、走る時も、剣を振る時も、その髪が一緒に動いていた。

燃えているように、ぱっと目に入る髪だった。

 

それが、短くなっていた。

 

エリス姉の髪がばっさりと切られていた。

 




アイシャ編は次回でいったん終わりです。
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