サイドポニーなら茶髪が最良、編み込みなら砂金が好ましいです。
結局、分類がポニーテールなら基本的に何でも好きになると思うんですけどね。
まったくポニーテールは最高だぜ!
光が払われた時、俺は炎の中で佇んでいた。
陽月学園の制服は何処かに消え、体を襲っていた痛みと灼熱は今だ名残があるが、だくだくと流れていた血も止まっていた事から多分癒えているのだろう。何であれ今、万全に動けるのは有難い。そう思って拳を軽く握ると、微妙な違和感に気が付いた。
手が小さくなり、視界も僅かに低い。これだけなら勘違いで済ませる事は出来ても、俺はもう一つの違和感に引き摺られていた。
何か、後頭部を緩く引っ張られるような感覚がある。確認しようと手を周そうとして___
ふわり、と擬音が付きそうな動きで、純白の髪が舞い上がった。
その時、うっすらと悟る事ができたのは、既に観束という先人がいたからだろう。持ち上げた腕は真っ白な布地とプロテクターで覆われていて、所々露出している地肌は自分のものとは思えない程のツヤと潤いをもっていた。視界の端にうつったのは、自分のものとは思えない胸部の豊かな傾斜。
……よし、これはもう弁解のしようがないな。たぶん俺は今、ポニーテールの超絶似合う美少女になっている。
……………………………うん、ポニーテールが増えたならいいや。
「よし、行くか」
内心の気分を盛り返す為に呟き、眼前の状況を再確認する。
俺が変身してから実際のところ数秒しか経ってなかったのか、今だに
今なら、あのトカゲに一撃お返しできるかも知れないな。
そうと決まれば善は急げ。炎の中で棚引くポニーテールに歓喜と頼もしさを感じながら、俺はスタンディングスタートのポーズを取り、全力で踏み込む。
瞬間___俺の体は音を置き去りにする流星になった。
アスファルトを砕く轟音を遠くに聞きながら、もう寸前まで迫った怪人へ向け、蹴りを見舞う。
腰の捻りを加えて放つ、穿つような回し蹴り。それは炸裂音を越えた爆発音を伴って怪人の鳩尾を貫き、遥か先にあるマクシーム宙果の壁へ激突させた。
一瞬の出来事で呆然とする観束(幼女)に視線を寄越す。彼女となった彼の反応や視線は、まるで本当の少女のようで、普段なら愛らしくすら感じるのだろうが、今の俺にはそれが腹立たしい。あんな、
そう思った俺に、一つのアイデアが浮かぶ。すこし冷たい激励かもしれないが、まぁこんな事を思い浮かばせた観束が悪いので、俺は躊躇いなくその言葉を言い放った。
「その程度か」
「………え?」
「お前のツインテールへの愛は、その程度か?誰かのツインテールが奪われるのを、我が身可愛さで全部切り捨てるのか?…………それが、お前が夢見たツインテールの姿なのか」
そう言って、きびつを返すように振り返る。反論する暇も与えなかったのは、少し卑怯だったかも知れない。
そうやって戻した視線の先には、瓦礫を払いながらこちらを睨むトカゲ怪人の姿があり、彼は怒りを気炎となって立ち上らせながらゆっくりと歩いてきた。
「貴様ぁ……我と幼女の逢瀬を邪魔するだけではなく、明らかな不意打ちなど断じて許せん‼︎ 我が名はリザドギルディ!さぁ、名をなのれぃ!」
「________テイル、ホワイト」
リザドギルディの問いに、驚くほど簡単に口から言葉が滑り出す。
きっと今の俺は、まだ熱に浮かされてるのだろう、でなければ、こんな風に構える事なんてあり得ない。
俺はポニーテールが好きで、ただそれだけの男なんだ。自分がなるとは思わなかったが、絶世のポニーテールを手に入れる事が出来たんだ。本当なら家に帰ってこのまま愛でる筈なのに、
「成る程、戦場の礼儀は理解しているようだな。よかろう、では________参る!」
「ッッはぁ!」
なんでこんな風に戦ってるんだろう。
いや、そんな事考えなくても答えは出てる。今の観束は不甲斐ない、けど親友だ。その親友が愛し、俺もその美しさを認めたツインテールが奪われる、そんな事が許せなかっただけなんだ。
振るわれるリザドギルディの拳は、的確に俺の鳩尾を狙ってきている。意趣返しのつもりなのだろうそれを、俺は体を前に沈み込ませ、踏み込むと同時に背中から体当たりをぶちかます。
「ぬ、ぉっ」
「ぜりゃあああっ!」
体制が僅かに崩れたその隙に、残した右足で小さく跳躍して空中で身を捻る。そして叩き込むのは、プロテクターに覆われた左の蹴撃。
リザドギルディは咄嗟に左腕でガードするも、体制がずれて踏ん張りが効かない奴と、体重及びポニーテールへの愛情で強化された俺の蹴りでは威力が違う。防御の上から姿勢を崩され、リザドギルディはアスファルトを捲りあげながら小さく地をバウンドした。
そこに着地した俺が、素早く手を空へと翳す。ポニーテールへの愛情を整え・伸ばし・結い上げたのは、今の俺の身長にも迫る一本の大太刀。何故か本能的にこの武器が自分のものだと分かった俺は、その刃を立ち上がろうとしたリザドギルディに向かって振り下ろす。
「何だと⁉︎」
「喰らっとけ!」
しかし、奴も歴戦の戦士。片手で小跳躍を果たして断頭の刀を寸前で躱すと体制を整え、再び徒手空拳で襲いかかってくる。その拳をなんとか受けようと身構えた俺は____
横からきた炎の斬撃に視界を奪われた。
「ぐ、おおおおおおお⁉︎」
「すまない、待たせた!」
戦いの場に現れたのは、先程まで怯えていたツインテールの戦士。
少女となった観束は俺が誰なのかも分からないまま、まるでそれが当然という風に俺と轡を並べる。
そして、俺の方を見上げると感謝の意を浮かばせた目で言葉をかけてきた。
「ありがとな、さっきは助けてくれた上にツインテールへの愛を、思い出させてくれて。お陰で、あの変態と戦う決心がついた」
「…………そうか、受け取っておく。さっきは試すような事を言って、悪かった」
リザドギルディの方に視線を戻してそう呟くと、少女となった観束は天真爛漫という表現がぴったりな表現で笑ってみせる。
それを横目に確認すると、炎上する駐車場からリザドギルディが立ち上がり、雄叫びを上げて突進してきた。
「先程に続き二度目の不意打ちとは、もう容赦せん!顔とツインテールは傷つけぬよう努力するが、しばらく立ち上がれぬようにしてやろう!ぬうううう………ふん!」
そういってリザドギルディが突撃しながら行ったのは、背中部分に乱立するヒレを分離させ、鞭やトンファーを思わせる動きで光の帯で繋がれたそれを攻撃に混ぜ合わせるものだった。
一つ一つがまるでリザドギルディの思考と独立しているようにあらゆる角度から襲いかかる。
「ぉぉぉおおお!」
「だああああああ!」
俺たちはそれぞれ別の動きでその迎撃にあたる。俺はリザドギルディの拳を最優先で回避しながら、ヒレと背中を繋ぐ帯を、薄い光の粒子が舞う大太刀で斬り断ち、地に落ちようとする先端を蹴り上げてリザドギルディの攻撃を妨害し、ツインテールの戦士となった観束は俺の背に背中を合わせながら炎を纏った直剣で同じように繋ぎ目を斬り捨てていく。
その姿に何を思ったのか、リザドギルディは興奮しながら鼻息荒くまくし立てた。
「このように髪が激しく舞う姿…素晴らしい!今日のこの日は未来永劫忘れぬであろう!すまぬが記念写真を頼む!一人がポニーテールというのは悔恨の極みだが、二人とも俺の肩にこてんと頭を預けてだな、」
「ポニーテールの何が悪いーーー‼︎」
今こいつ明らかにポニーテールを侮辱しやがった!
許さん、私情八割だがこいつの武器剥奪してぶった斬ってやる!
「トゥアール!こいつは倒しても大丈夫なのか⁉︎ツインテールはどうなる⁉︎」
こんなヤバい事態で、まず気にするのは敵の打倒よりツインテールの安全か。やっぱりこいつは観束総二だ、俺の親友で筋金入りのツインテール馬鹿、観束総二だ。
当たり前ながら何時もの観束が戻ってきたことに喜びを感じて、俺は口元を小さく緩ませた。そして観束は通信を上手く終える事が出来たのか、数々と降り注ぐヒレの爆撃を斬り伏せながら叫ぶ。
「ホワイト!どうやらあいつを倒しても、ツインテールを奪ったリングを壊してもいいらしい!あれは仮の倉庫みたいなもので、壊したらツインテールが戻ってくるんだ!」
「よしきた、ツインテールについては任せろ。お前は______」
「テイルレッド!俺は、テイルレッドだ!」
「___テイルレッド!お前はけじめに、あの変態トカゲに引導渡してこい!これは………置き土産だ!」
俺はそう叫んで大太刀から湧き出す光の輝きを上げ、この武器に宿っていた能力を解放する。
それは、単純な速力強化。
全身の動きを圧倒的な馬力で加速させ、リザドギルディの展開していた全てのヒレを繋ぐ帯を斬り裂き、閃光となってリザドギルディ本体の胴を一閃して走り抜ける。
「が、ああああああああああ!」
「!ここだ、オーラピラー!」
背後で聞こえた苦悶の声と何かの音を背後に、俺は会長たちのツインテールが収められたリングへと突き進む。途中であらわれる黒子のような雑魚を一刀の下に斬り捨てて、対に二メートル程まで巨大化したリングのもとまで辿り着いた。
俺は大太刀に込める愛情の力を強めて、際限なく輝く刃を大上段に振りかぶる。
「はあああああああああああ!!」
背後の爆炎と共に振り下ろしたのは、夜空に浮かぶ星々が集う、銀河の如き白銀の光。
身の丈に近しい長大な曲刀に込められたそれは、機械のようなリングと衝突し、引き抜く動きで紙かなにかのように容易く両断した。
すると、輪は粉々に砕けて中の光が粒子となって溢れ出す。それはツインテールを奪われて倒れていた少女たちの下へ行くと、溶けるように浸透していく。
これで、このツインテールは守れたんだな________。
心の内から沸き上がる達成感に身を押されて、ふらふらとレッドのもとへと歩いていく。
その先には生徒会長の神堂慧理那がレッドに対して憧れの表情を浮かべながら礼をしていて、それに合わせて盛大にテンパったレッドが何かを言っていた。……ううむ、炎ような赤さと背丈を超える長さの髪、毛先は良く纏まっていながら、近未来的なデザインの戦闘服やバレッタとの違和感をその圧倒的なツインテールの魅力で推進剤へと変えている。いいツインテールだ、本当に今までで一番良いツインテールと言えるぞ。
そして、と自分の姿を写せるように無事だった車のサイドミラー越しの自分の姿を見る。
小学生のような体躯のレッドと比べて、圧倒的に大きな身長だ。女子としても比較的に大きい部類だろう、恐らく165の大台に乗っているぐらいの高さだ。
顔も、自分の面影が僅かにある程度でかなり変わっている。凛とした雰囲気をもった造りだが、琥珀色の瞳や小さめの口も合わせて可愛さを見出すことが出来るだろう美少女っぷりだ。
全身は白を基調、というか殆ど真っ白な布風の戦闘服に関節付近と太腿付近を守るプロテクターで覆われていて、縁のところにアクセントとして黒いラインが引かれている。
というか、胸が結構デカい。津辺に見られたら殺されそうなくらいある、身長を考慮しても大体Dくらいか?しかも服の構造が胸の上部分から肩にかけて殆ど布地が使われてない、つまりは白磁のような肌が丸見えで、少々恥ずかしい。
最後に、なんといってもポニーテールだ。これまた純白の髪を結わえ上げたポニーテールは、一般的なストレートポニーで、光を受け取って水晶のようにキラキラと輝く様相はまるで女神に祝福されているかのようだ。
ふと、髪を棚引くように掻き上げる。
…………おぉ。太陽の光を反射して輝く髪そのものは勿論のこと、纏められたポニーテールが優雅に舞う様は無軌道のように見えてハリや芯のある、いまだ気の強い姫のよう。そして、触った感触は絹のような上質な手触り。結わえてある繊維が固めのリボンを含めて、絶妙なコントラストを際限している。まさに、この髪ならではの黄金比だ。
僅か四秒で自分の状態を把握し、かつポニーテールへの愛情を高めた俺は、事を終えた会長がこちらにも歩いてくるのを見つけて即座に視線を鏡からずらす。
やってきた会長は、一先ず俺に礼をするとなにやら感動した様子で俺を見上げてきた。
「助けていただいて、ありがとうございます。お名前をお聞きしたいのですが、貴女は一体……」
「いえ、しがない正義の味方ですよ。ここはまだ車なんかも燃えてて危ない、出来るだけ安全な道を選んで、早くお帰りになってくださいね」
熱を持った会長の声にちょっと素っ気ないかな、と思いながらも営業スマイルで対応する。
正義の味方とは言ったが、俺は俺の信じるポニーテールという正義の味方であって、別に大衆正義に味方している訳ではない。中々に最低だが、ポニーテールは俺の中で何よりも優先するべきものの一つなのだ、これぐらいは勘弁して欲しい。
「そうですか……重ねて、助けていただきありがとうございます!もう一つ、お聞きしたいのですが宜しいでしょうか?」
うん?何かあっただろうか、ツインテールの様子からして敵や憧憬を抱いた時の感じでは無いようだが、純粋な疑問を呈するにはあまり俺と会長は接触してない筈だ。
「構いませんよ、何かありましたか?」
「はい、私と同じ制服を着た、一年の白束という男子の事ですわ。あなたが、彼の飛んでいった炎の中から出てきたので、彼はどうしたのかと思いまして」
……見てたのかよ、気絶してなかったのかな会長。かっこ悪いから嫌だなぁ……。
兎に角、俺は焦る事なくポニーテールを右手の甲で掻き上げると、落ち着けるように声を柔らげる。
「ああ、あの彼ですね。重症だったので、安全なところに避難し終えてから駆けつけました。こちらの技術で傷は治しましたので、明日には元気に学校に行けると思いますよ」
「そうですか!よかった……」
俺の適当な嘘で安堵した会長は、遠くの方から聞こえてきた女性の声に反応すると再度頭を下げ、その方向へ小さく駆けていく。
それを見送った俺は、物陰の方で津辺に抱かれて眠りにつこうとするレッドの方へ向かって歩いていった。
原作一巻の一章終了。
リザドギルディって結構真面目に強いんですよ?原作では。
まぁ変身したレッドに速攻で敗れたせいでかませの烙印を押されましたが、今作では耐久力と原作で出てきたミサイルを使う強敵に仕上がりました。
小ネタですが、トカゲといえば尻尾切りなのでこの耐久力はその恩恵だったりします。
それでは、次回は説明回。ツインテイルズの武装であるテイルギアと、白束祐一が使っていた「ブースト」という変身技術について言及します。