夜明けのプリンシパル ─ウインバリアシオンと彼女に惚れ込んだトレーナーのお話─ 作:鵜鷺りょく
「トレーナーさんって、前に……他に担当してた子がいたって本当ですか?」
【1】
だんだん夜も更けゆく頃。静かな室内には、こつこつとペン先の走る音だけが響く。
合宿所内の自習室。いくつか長方形のテーブルと丸椅子が並び、奥の壁に本棚の設置されたそこは書庫の役割も果たしており、合宿中は専らトレーナーたちの仕事場になっている。
さすがにこの時間は少ないな……などと、そんなことを考えていたら、ふと後ろから誰かが近づいてくるのに気づいた。
「ダンスにアスレチック、それに古武術か。トレーニング教本以外にもこんなに用意しているとはね」
「勝手に見るな」
「いいじゃないか。君と僕の仲だろう?」
「…………」
「冗談だよ冗談。……本気で引くのは止めてくれない?」
こんな時間にあまりゾッとすることを言わないでほしい。
姿を現すや否や妙な絡み方をしてくるそいつは、お馴染みの同期である
「しかし、ここのラインナップがこんなに充実しているとは知らなかったな。どこかに隠し部屋でも見つけたかな」
「そんなわけないだろ。誤解させるのも何だから言っておくが、そっちは学園で借りてきたやつで、合宿所のじゃない」
「学園で……え、持ってきたのかい? この量を」
「おかげでスーツケースが一つ増えた」
そう言うと、天池は苦笑いを浮かべていた。たまには軽いジョークも言ってみたつもりだったが、あまり意味はなかったようだ。
「情報は多い方がいいからな。秋に間に合わせるなら、それだけトレーニングメニューも工夫する必要がある。それこそ、まだ確立されていないような理論に手を出してでもな」
「……まあ、言いたいことは分かるけどね。ただ、そういったものは良くも悪くも未知数なものだ。下手なことをすれば、最悪ケガのリスクにも繋がるよ」
「ああ。……だから、俺が居るんだろ」
そこまで話したあたりで、一旦ペンを下ろす。広げていた書物をたたんでまとめると、自分は少し慌ただしく席を立った。
「おや、僕と一緒はそんなに嫌かな」
「そういうんじゃない。一区切りついたから、ちょっと出てくるだけだ」
「出てくる? こんな時間からどこに」
「外」
「いやそうじゃなくて……」
何か言いたげなその呟きも通り過ぎて、入口へと向かう。
少し淡泊すぎる返しかとも思ったが、まあ大体いつも通りだろう。
「
「?」
「最近ろくに寝てないだろう。知らないよ、また倒れても」
「……ちゃんと気を付けてる」
一瞬だけ足を止める。後ろを振り返りはしなかった。
もう一度歩み出して、最後に一言だけ言い残すと、自分は今度こそ自習室をあとにした。
「心配しなくても、合同トレーニングに支障は出さないさ」
【2】
「ふんっ……だぁぁぁぁッ!!」
夏合宿が始まってから、もう四度目になる合同トレーニングの日がやってきた。
合宿所近くのコース。これまで以上に気合いを込めた脚で、精一杯に地面を蹴り上げながら走り抜ける。
「はぁ……はぁ……くそっ、また」
「相も変わらず愚直なものよ。だが、これでは幾度試そうとも変わらんな」
「! このっ、次こそは……」
「ふん」
今日に入ってからの併走もこれで何度目か。合宿が始まった頃に比べればあたしも疲れにくくなってきたものの、目前のオルフェさんはそれ以上に涼しげな顔をしている。
そう簡単にはなくならない確かな実力差。あたしが懸命に進む間も、あちらはただ立ち止まって待ってくれているはずはないんだから、それも当然だ。
でも、今日は何だか気持ちが軽い。
それだけでも、以前に比べれば大きな進歩に思えた。
悔しさに歯噛みしてはいても、それでもまず一勝をもぎ取ってみせるんだと。そんな風に前向きな自分が、確かに胸の中にいる気がして。
「はいはい。ちょっと待ってね」
程々に息を整えて、スタート位置まで戻ろうとしたところ。不意に背後からそんな声がかかる。
振り返ると、離れたところで見ていたトレーナーさんたちがすぐそこまでやってきていた。
「燃えているところ悪いけど、もうその辺りにしておこう。……というか、いくら何でも飛ばしすぎだよ、二人とも」
「む?」
「お互い、この後の予定もあるしな」
「えー……」
つい不満げな声が零れ出てしまっていた。心なしか、隣のオルフェさんも何か言いたげにしているように見える。
一方で苦笑いを浮かべているトレーナーさんたち。その場に漂う微妙な空気に少しずつ冷静になってくると、そういえばもうどれくらい時間が経ったんだろうと考え始めて。
……ひとまず、そこは大人しく頷くことにした。
──────────
今日の予定について、もう一度頭の中で振り返ってみる。いつも通りに併走とタイム計測を終えたこの後は、確か少し変わったメニューが組まれていた。
担当トレーナーを入れ替えての基礎練習。つまり、今日の残り時間はあたしのトレーナーさんがオルフェさんの練習を見て、逆にあちらのトレーナーさんがあたしの方を見てくれることになるのだ。
いつもと違う視点から分析を行って、お互いに今後のトレーニングメニューをブラッシュアップしていくための試み。それは、ちゃんと分かっているんだけど。
「……」
練習を開始してからしばらく。指示通りにいくつかのメニューをこなした後、最後にコースを何周かしてから元の場所まで戻ってくる。
「お疲れ様。それじゃあ、この辺りでそろそろ講評にしようか」
「は、はいっ」
「よし、ちょっと待ってね……」
そう言って、目の前のその人は手元の資料をパラパラと捲っていく。
何だか緊張するな……。
天池トレーナー。うちのトレーナーさんの同期であり、言うまでもなくあのオルフェさんのトレーニングを取り仕切ってきた人だ。
常に緊迫した空気を漂わせるウマ娘の方とは違って、雰囲気は柔らかく落ち着いた人には見えるけど。
『トレーナーとしての実力は確かだし、十分に信頼の置けるやつだよ。きっと、シオンのためになる意見がもらえると思う』
トレーナーさんだってそう言っていたし、変に不安がることもないのかな。
……ちら。
なるべくは気にしないようにしていたつもりだった。だけど、目端に見慣れた後ろ姿が見えた気がして、だんだん視線がそちらに吸い寄せられてしまった。
向こうのコースでも、こちらと同じようにして二人が向き合っている。予定していたメニューが一通り終わったところなんだろう。
どんな風な話をしているのか。耳を澄ませば聞こえる距離ではあるけど……それも、何だかな。
「あっち、気になるかい?」
「! す、すみません。余所見しちゃってて」
「はは、いいね。トレーナーと違って分かりやすくて」
大して怒った様子も見せず、天池トレーナーはむしろ愉快そうに笑って言った。
果たしてそれは褒められているのか。一瞬そんな引っかかりはあったけど。
「まあ、今日は僕で勘弁してくれ。
それでまずはフォームの方だけど……君の場合、まず体幹と柔軟性が抜群だね。小さい頃からダンスでも習っていたのかな? 今でも十分だけど、その強みを活かすならもう少し──」
淀みない口ぶりで、手元の資料にまとめていた内容を読み上げていく天池トレーナー。今度はちゃんと気を引き締めて、そちらに耳を傾ける。
改めて、トレーナーさんの言った通りだと思った。
あたしがダンス──バレエを昔習っていたこと。走り方の癖もあって爪先に負担が行ってしまいやすいこと。他にも色んな特徴について、ほとんど的確といえる範囲で言い当てられていく。
途中、いくつか質問もしてみた。そちらにも丁寧に答えてくれて、仮にも敵陣営のウマ娘相手の指南にもかかわらず、総じて真摯に対応しようとしてくれているのが伝わってもくる。
「──と、まあこの辺りかな。今日あらためて見て思ったけど、やはり良い走りをするね。以前のレースから見違えるほど成長しているし、これは松早が夢中になるのも頷けるな」
「あ、ありがとうございます……!」
一通り講評を述べた後に、そんな褒め言葉が付け加えられる。それは素直に嬉しかったし、反射的に飛び出したお礼の言葉にだって嘘はなかった。
……でも、何でかな。
まだ心のどこかで、まだ少し距離をとろうとしているような自分がいる。
「まったく、これからが楽しみでならないよ」
「
それでも少しは気を許しかけていた、その時だった。
さらっと零れ出た一言。一瞬だけ思考がフリーズする。
「…………は?」
なに、糧?
あたしが……オルフェーヴルの?
頭の中で何度かその発言を思い返してみる。もしかしたら聞き間違いかとも思ったけど、どうも明らかにそうじゃない。
いや、確かにおかしな話じゃない。トレーナーとして、この人が担当ウマ娘のことを第一に考えているのはちゃんと分かる。……だからって言うか普通。しかもそんなはっきりと。
『……ただ、たまに一言か二言余計な時があるから。気を付けて』
今になって、トレーナーさんの言っていた補足情報が追いついてくる。
自分の中で、この天池トレーナーという人に対する警戒度が急激に上がっていくような気がした。
「……。」
「あ、すまない。気を悪くしたかな?」
「いいえ? そんなことないっすよ?」
精一杯の余裕を装って答える。
そうだ、振り回されちゃいけない。ここは何とか表に出さないようにだけは気を付けて。
……覚えてろよ、担当ウマ娘ともども。
「本当にすまない。君とこうして話していると、何だか感慨深くてね。つい色々話しすぎてしまうんだよ」
「……?」
「その、松早とは上手くやれているかい?」
ついとか今さら言われても……それに、急に変なことを聞いてくる。
すっかり疑り深くなっている自分に気づきつつ、あたしはことさらはっきりとした声を返した。
「もちろんっすよ。厳しい時もあるけど、ちゃんと誠実に向き合ってくれますし。いつもあたしのことを考えてくれてて……あと、変な嫌味とかも言わないし」
「ははは……」
零れた笑い声は少し抑えめで、本当にどこか気まずそうにしている気配は感じ取れた。
「あいつらしいね。どうやらいい関係が築けているようだ」
「……そういえば、お二人は昔からのお知り合いなんでしたっけ?」
「お、そういうことも話してるのかい?」
何だかちょっと嬉しそうな天池トレーナーに、そんな質問を投げかけたのは半ば無意識のことだった。
意外そうな反応の先に続いた言葉は、どこか軽快に楽しそうで。
「養成所の頃からの友人なんだ。一年目で一緒のクラスになった頃からだから……そうか、思えばもう結構長い付き合いになるな」
「長い、付き合い……」
「僕が言うのも何だけど、当時から少し変わってて面白いやつでね。気になって絡みに行っていたらだんだん話してくれるようになった。そこからはもう、二人でうら若き青春時代の多くをともにしたものだよ」
話の勢いが徐々にエスカレートしていく。ちょっと大げさな物言いがどことなく胡散臭かったけど、やっぱりそうして話すのが楽しいのだと、そういう印象もあった。
……何だか、ちょっとだけもやっとする。
出会ってからまだ一年と少し。そんなあたしと比べれば、それはそうなんだろうけど。
この人は、あたし以上に
「彼のことで気になることがあれば大体答えるよ。さっきのお詫びと言ってはなんだけどね」
「……いいっす。遠慮しておきます」
「えー、そうかい?」
そうノリノリで聞き返される。……確かに、全く気にならないと言ったら嘘になるけど。
そこで素直に頷くのも、何だか気に入らなかった。
「例えば、そう、こんなのはどうかな」
そうやって素っ気なくしていれば収まると思っていたのに。天池トレーナーはそのままの勢いで話し続けようとする。
何なんだほんとに。内心呆れかえりつつ、もう一度はっきり断ろうと口を開きかけて、
「昔、
「……え」
そこでつい、言葉が出なくなってしまった。
──────────
ガッ
「痛っ」
「さっきから何話し込んでるんだお前は」
しばらく続いた沈黙の後。ニッとした天池トレーナーがまた口を開きかけたところで、その後頭部にバインダーの背表紙がヒットする。
「こっち終わったぞ。散々呼んでるのに無視すんな」
「おっと、それはすまない。こっちも口頭で伝えられる分は終わったよ。でもまだ早いようだったから、この際に親睦を深める世間話でもどうかと思って」
親睦を深める……?
さっきまでの会話にそんな意図があったのか。あたしはすっかり首を傾げていた。
「……まあいいけど。ほら、これ」
「そちらの分析結果だね。どれどれ……おぉ、色々書いてくれてるじゃないか」
二人がお互いの持っていた資料を交換する。
中身をあらためると、天池トレーナーは興味深そうにそう言った。
「普段オルフェの走りを見ても、みんな完璧だーとか非の打ち所がないーとかばかりでね。ちゃんと指摘もしてもらえているのは助かるよ」
「…………」
「トレーナーさん……?」
一方のトレーナーさんは、何だかさっきから調子が悪そうに見える。そう尋ねると、お腹の辺りに触れながら答えてくれた。
「いや、俺も口頭で伝えられるところはそうしたんだけど……胃が」
「あぁ……慣れないうちはくるよね。お疲れ様だ」
「大丈夫なんすか!?」
慌ててトレーナーさんの傍に寄りそう。隣で静かに頷いている天池トレーナーの表情は、何だかすごく同情的で。
……そっか。トレーナーさんの方だって、あのオルフェさん相手に同じように講評を伝えていたはずなんだ。天池トレーナーが舌を巻くほどの講評に指摘も含めて、それを正面から言葉にして。
肌にビリビリくるようなあの威圧感と、目の前で対峙しながら。
「ほう? 貴様もそのように思っていたとはな」
「!? オルフェ、いつから……」
びくりと、あたしの方も肩が跳ね上がっていた。
振り向くと、いつの間にかオルフェさんはすぐ近くまで来ていたのだ。
「よい。それより次だ。此度の余興はここまでであろう」
「そ、そうだね。行こうか」
そう言うオルフェさんに連れられて、天池トレーナーもコースを離れていく。
……余興。
二人の後ろ姿を見送っていると、最後のその言葉を含めて、そこまでの諸々が頭によみがえってくる。
次は絶対に負かしてみせると、そう改めて気が引き締まる気がした。
「体幹と柔軟性、それらを活かした改善案か……あいつ、今日だけでここまで」
「トレーナーさん?」
隣で何かを呟くのが聞こえて、そちらを見る。トレーナーさんもまた受け取った資料に目を通しているようだった。
呼び掛けると、すぐにいつもの穏やかな笑顔に戻って。
「ごめん、何でもない。……俺たちも次に行こうか」
【3】
「っ……そう、いえば、なんすけど」
「?」
オルフェさんたちと別れ、合宿所屋内のジムへと移動してからしばらくのこと。
力んで変な息づかいになりながらも、足に掛かる重りの負担にもやや慣れてきたところで、あたしは隣のトレーナーさんに語りかけた。
「トレーナーさんって、前に……他に担当してた子がいたって本当ですか?」
「え……」
合同トレーニングの時、天池トレーナーがちらつかせていたその話題。結局話はうやむやになってしまって、途中までどころか、本当に最初の部分しか聞けていなかったわけだけど。
中途半端すぎて、やっぱりすごく気になる。
そこで筋トレ中なら(ちょっとキツいけど)落ち着いて話せそうだったし、思い切って本人に尋ねてみることにしたのだった。
「?? いや、初耳だな」
「…………えぇっ!?」
返ってきた答えはある意味衝撃のもの。つい足のリズムが狂ってしまいそうになる。
トレーナーさんはひたすら訳が分からないと言いたげな顔をしていた。それこそ、実際に頭の上にハテナマークが浮かんで見えてしまいそうなくらいには。
……ひょっとして、騙された?
落ち着いて考えてみると、あたしをスカウトした去年の時点では、トレーナーさんはまだ新人だったはずだ。学園に赴任してからそんな時間も経っていなかっただろうし。
それに、あの人の言ってたことだしなー……。
そんな風にして前提まで疑い始めたところで、ふとトレーナーさんが何かに気づいたように俯いた。
「……その話、もしかして天池から聞いた?」
「え。はい、そうっすけど」
「なるほどな……あいつまた適当なことを」
あたしが頷くと、トレーナーさんは呆れたように溜め息を吐く。
「一応言っておくと、俺が正式にトレーナーとして担当したのはシオンだけだよ。だからあいつが言ってたのは……多分、養成所時代の研修のことじゃないかな」
「研修?」
「授業の一環で何度かあったんだ。どこかしらのレース倶楽部に行って、そこの生徒たちにトレーニングをつけるみたいな実地研修。言うなれば、トレーナー業務の体験版ってところか」
毎回エグい量のレポートを書かされたっけなー……と。ポツリとそう零したトレーナーさんの横顔は、何だか哀愁が漂っていた。
「とはいえ、基本は倶楽部のスタッフさんの傍についてトレーニングを手伝うだけだった。まだ未熟な学生の身で、大事な生徒たちのことを任せてもらうわけにもいかなかったし。
……だから、今考えると、本当はよくなかったんだろうな」
「?」
「担当してたって言うと大げさだけど。確かに一人、そのウマ娘には心当たりがあるよ」
昔を懐かしむように、トレーナーさんはそう言った。
当時のことを思い返しているんだろうか。少しの間会話が途切れて、まだ人気の少ないジムには無機質な金属音がよく響いていた。
「……どんな、子だったんすか」
つい、そんな質問を重ねていた。
それは純粋な興味からだったのか……もしかしたら、ちょっと拗ねているところもあったのかもしれないけど。
「そうだな……とても頑張り屋な子だった。周りにどれだけ差をつけられても、目の前のことをコツコツと積み重ねて、決して前に進むことを諦めない。そういうところは、君とよく似てたかな」
「……」
がこんっ がこんっ! がこんっ!!
「……シオン、何か怒ってる?」
「怒ってないっすよ」
メニューも佳境に入ったことで落ちかけていたペースが、だんだん元に戻っていく。逆に力がみなぎってくるみたいで、重りの上下はむしろそのまま速まりつつあった。
「ただ、負けてられないっすから」
見ず知らずの誰かに対抗心を燃やすなんて、おかしな話だろうか。もしかするとそれは少しだけ歪なところもあって、キレイとは言い難いような感情なのかもしれないけど。
今はそれも力に変えて。いつか、トレーナーさんが言ってくれたみたいに。
「……それでも、シオンはシオンだ」
「だって、俺は君に──」
「? 何か、言ったっすか」
小気味よく続く金属音の中に、うっすらとトレーナーさんの声が聞こえた気がした。
振り向くと、気のせいだったのか、トレーナーさんの視線はもう手元のバインダーへと移ってしまっている。
「……今日はまだペース上げられそうだな。あともう十セット、追加で行ってみるか」
「えっ、ここからっすか!?」
「シオンならやれるって信じてるよ」
「っっ……もうっ、分かったっすよ!!」
半ばやけくそ気味に言いながら、あとは無心でひたすら足を動かす。ふと目の端に映ったトレーナーさんは、そんなあたしを何だか嬉しそうに見守っているようだった。
その表情にどんな思いが込められていたのか。この時のあたしには、それを考えていられるだけの余裕はなくて。
※2026/3/23追記
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