アイズさんは好きだけど負けヒロインが可哀想すぎるからいっその事誰も選ばない展開にしてやろうという妄想こじつけ話。 作:わさびこんぶ
第3話
「どういう事か説明してください。」
リリが低い声で問いかける。
春姫さんが倒れてしまった事で冷静さを取り戻し、一旦フレイヤ・ファミリアをリューさんが追い返した。そして、今はホームのリビングで正座させられている。目の前には恐ろしい形相のみんな。
「フィーは、みんなが想像してるような事はなくて、その──────」
ことのあらましを簡単に説明する。重い沈黙が流れた。
「……そんな事があったのか…。あの時宴会を飛び出したのはそういう理由だったんだね。」
説明したのは、死んだ兄姉の子供を育てる事になったという内容だけ。死んだのではなく殺された事や、復讐の話はしなかった。
「それで……その、この子を僕が育てたいんです。」
「!」
「いきなりの事ですし、難しいのは分かってます……。ここで生活すると迷惑がかかるならホームを出るので、だから……!」
みんなの顔を見ることができない。ぎゅっと拳を握りしめる。
(……情けない。)
口では出ていくと言いながら、本当は受け入れて欲しかった。この先もこのホームにいたかった。だが、みんなの優しさにつけ込むような真似は絶対にしたくない。
「……ベルくん。育てると言うけれど、子供の面倒をみるってのはそんなに簡単じゃない。ちゃんと分かってるのかい?……本当に、1つの命を預かる覚悟はできてるのかい?」
「……!」
今まで英雄としてたくさんの命を預かってきた。だが、その覚悟とは明確に違う。救う覚悟じゃなく守る覚悟────愛し抜く覚悟はあるのかと問われているんだ。
(……正直、確証は無い。それでも、)
「この子は兄と姉が命をかけて守り、僕に託した命です。この子の存在が、僕の救いなんです。だから僕は、何があってもこの子を守り抜きます。その覚悟はできています。」
神様の目をまっすぐ見つめて宣言する。
「……そっか。わかったよ。」
神様はしょうがないとでも言うように息を吐いて微笑んだ。
「僕は受け入れたいと思うよ。みんなはどうだい?」
「俺はいいと思うぜ。そろそろコイツらだけってのにも飽きてきたところだ。」
「わたくしも、良いと思います。」
「私も問題ない。」
「私も賛成です!新しい風ってやつですね!」
みんなが口々に賛同してくれる。
「ここにいて、本当にいいの?我慢してない……?」
「……リリは、実は赤ん坊は苦手です。」
「っ!」
「でも、この子を受け入れる事に賛成します!」
「え……!」
「赤ん坊は苦手です。でも、赤ん坊とはろくに関わった事ありません。つまり、私の”苦手”はただの想像でしかないんです……。」
「リリ……」
「そんな不確定なものでベル様と離れるくらいなら、私は多少の不快は受け入れる覚悟です!赤ん坊と一緒に生活するよりもベル様と離れる方が嫌だから!だから、ベル様とずっと一緒にいたいです!」
リリがほとんど叫びながら言った。その大きな声が室内に反響し、エコーがかかる。
……沈黙。
「いいい今のナシで!!!」
「随分と熱烈だな?」
「へー、ちょっと感動だよ。あの天邪鬼なサポーター君がこんなにも素直になるなんて!」
「……誰しも成長することができるということだ。」
「あ"あ"あ"あ"黙ってください!」
リリの絶叫に、みんながさらに顔をニヤつかせる。それを見ていると、すっと肩が軽くなったように感じた。
(嫌な気持ちをさせたら終わりだと思ってた……。)
我慢させたらダメ、なんてのは少し僕達の絆を見誤っていたかもしれない。リリは苦手意識があるけどそれでも賛成してくれた。僕を、必要としてくれた。嬉しくて胸が熱くなる。────ずっと一緒にいたいと思っていたのは僕だけじゃなかった。皆んなも思ってくれていたのだ。リリの言葉はまるで、僕を丸ごと肯定してくれたみたいだった。
「ありがとう、リリ!僕もみんなと一緒にいたい!」
再び、沈黙。
「はぁ〜……。」
「おいベル、さすがにそりゃあ……」
「?」
「ま、ベル様がこのくらいで気づくはずないですもんね。だって
「…鈍感兎。」
「え、え?」
「う。」
「フィーまで!?」
また僕はやらかしてしまったらしい。暖かい空気が一瞬にしてトゲトゲしいものに変わってしまった。フィオリアですら若干呆れた目をしている気がする。
「さすがベルさんですねぇ」
「っシル何某くん!!」
またひょっこりシルさんだ。不可侵条約はどうしたんだろう。
「安心してください、団員達は入ってきてませんので。」
「そういう問題じゃな───」
「この子はそういう経緯だったんですね。」
「だ!」
「まぁ!」
シルさんが僕の腕の中のフィオリアを覗き込む。ヘスティア様の抗議も何処吹く風だ。
「これからは、ベルさんがお父さんになるんですね!」
「あ……えっと、そうですね。」
「じゃあお母さん役は私がしましょうか?」
「え」
「は、はぁぁぁぁ!!??」
「なな何を言っているのですか、シル!!」
「私は孤児院で子供の扱いには慣れていますし、ちっちゃい子は好きなんですよ!リリさんと違って。」
「ぐはっ!」
シルさんはやはり爆弾魔らしい。シルさんさえいれば退屈なんて無くなるんじゃないだろうか、と遠い目で思う。
「あの、ベル様……。フィオリア様を抱いてみてもよろしいでしょうか?」
「春姫さん。」
「あ、私も私も!」
フィオリアをそっと受け渡す。
「小さいですねぇ」
代わる代わる抱いてはフィオリアを撫で回す。
「ふえぇん」
ぐずってしまった。赤ん坊は匂いに敏感なため、色んな人にタライ回しにされて驚いたんだろう。
「……な、泣いてる……!」
未知のモンスターでも相手にしているのかと思うほど恐る恐る近づくリリ。思わず苦笑が漏れる。
「リリも抱っこしてみる……?」
「へっ!いや、いいです!!」
「リリルカ、恐れる必要はない。いい子ですよ。」
そういうリューさんも、エルフ故か触れようとはしていないのだが。
「いいからサポーター君、抱っこしてみなよ!」
「持ち方はこうで──────」
神様に押されてゆっくりとフィオリアを抱き上げる。
「……」
おっかなびっくりな様子のリリ。
「んぎぎ!」
「まぁ、かわいらしい声でございますね。」
「なんだかご機嫌みたい。」
リリが、ゆっくりと人差し指を近づけてみる。
「あっ!」
「掴んだ!」
フィオリアのまんまるな目がリリを見上げる。ふくふくなほっぺには小さなえくぼができていた。
「んぶぅ、きゃあ!」
ズキュゥゥゥン!
「「「「かわいぃ〜!」」」」
「確かにこれは、かわいい……かもしれません」
リリも思わずといった感じで声を漏らした。
(……どうやら、上手くやっていけそうだ。)
リリのその言葉に、ほっと息を吐いた。
話し合いが終わって、フィオリアを寝かしつける時間になった。ベビーベッドが無いため、万が一ベッドから落ちてしまうのを避けるために春姫さんの勧めで床で寝ることにする。少し抵抗はあるが、自室の板張りではなくリビングルームの絨毯の上だし、布団だって敷いている。案外寝心地は良さそうだ。
「ベル。」
「リューさん、どうかしましたか?」
白くてシンプルな寝間着に、ベージュのアウターを羽織ったリューさんが訪ねてきた。フィオリアは既に寝息を立てていた。お互い声を潜めて会話する。
「この年頃の子は夜泣きをするというのは正しい情報でしょうか?」
「はい、この子はなかなか酷い方ですよ……。」
苦笑しながら言った。
道中の野営はそれはもう大変だった。皆が長旅で疲れているというのに、夜は赤ん坊の泣き声のせいで寝れないし、その声のせいでモンスターに気づかれる緊張感もあった。黒竜のいない中で地上のモンスターなどたかが知れてる。が、それは僕達の感覚で彼らにとっては違う。溜まるストレスと止まない泣き声。もちろん、皆いい人達ばかりだったので問題が起きる事は無かったが、疲労はひしひしと感じていた。
「私も共にここで寝よう。」
「……え?!」
突然の申し出に目を白黒させる。
「こ、ここで寝るって……!」
「へ、変な意図はない!夜泣きというものは本来夫婦で支え合って乗り越えるもの。だから私が、その、母親役としてサポートしようと思ったのです。」
なるほど、確かにそうだ。いくらステータスがあるとはいえ、メンタルをゴリゴリ削られていくのが夜泣きだ。サポートがいればどれほど心強いだろう。
(……だけど、そうとはいえ、ダンジョンでもないのに女性と寝具を共にするなんて、なんだかダメな気がする。それに、リューさんはエルフだ。フィオリアに触れる事はできないみたいだし……)
僕が何も言えないでいると、
「ベル、確かに私はまだフィオリアに触れる事ができません。けれど、貴方を支えたいという気持ちに嘘偽りはない。」
「リューさん……。」
「私にできることはまだ何も無い。赤ん坊の肌にも優しい手袋は明日必ず手に入れてきます。技術も、貴方から盗んでみせる。だから……今日はただ、貴方の隣でいましょう。」
隣にいる。どれ程心強い言葉だろう。そして、どれ程儚い言葉だろう。フィオリアの隣にいるべきだった彼らはもういない。なら、僕がずっと隣にいてみせる。じゃあ僕の隣は……?
ぎゅっと手を握られる。
リューさんの柔らかい微笑みが目に映った。それと同時に、こちらに走ってくるリリ、ニイナ、春姫さん、シルさん、神様。あとヴェルフ。
「なぁにをしているんだぁぁ!!」
再び騒がしくなるホーム。
(みんなが、居てくれる。)
少しだけ、視界がぼやけた。
翌朝。
「幹部の皆さんには私から説明しておきました。ついでにフィーちゃんの護衛もお願いしましたよ。」
「……ありがとうございます。」
もうあんな目に合うのは嫌だったから、シルさんが手を回してくれて助かった。しかも、フィオリアの護衛までしてくれるなんて……。とても心強い。
「……それにしても、ヘスティア様は随分フィーちゃんに懐かれていますねぇ。」
シルさんが、僅かに頬を膨らませて言った。確かにどこにいても視線がずっと神様に固定されている。
「フィー、こっち向いて?」
僕も声をかけてみた。
チラっ、ふいっ。
結果、惨敗。少しばかりショックを受ける。
「はっはっはぁ!僕はなんたって家庭を守る女神なんだからね!やはりこの子の母親に相応しいのは僕しかいないってことさぁ!」
そう言いながらフィオリアを抱き上げる。どうやらフィオリアは、その豊満な胸に安心感を抱いているようだ。みんなの目線が自然と真下へ向く。僕は無理そうだな。そもそも男だし。
「いや、なんでベルまで確認してんだ……?」
ヴェルフが冷静に指摘する。
「……母親、やっぱり必要かな……?」
みんながそう言うから、少し気になってしまった。一人二役はできなさそうだ。
「俺は必ず必要とは思わないな。お前がフィオリアの母親になって欲しいって相手に出会ったらでいいんじゃねぇか?」
「わざわざ出会わなくても、すぐそこにいるかもしれないけどね!」
「……。」
ヴェルフがフィオリアを抱き上げる。
「にしてもちっちぇ手だな。フィオリアが持てるような剣を作るとしたら……」
「何を言い出すんですかヴェルフ様!?ぜぇっったいにそんな馬鹿な事しようとしないでください!!」
「じ、冗談だ。」
(母親、片親、役割、子供の将来……)
ぐるぐると思考が流れた。
ははーん、母親を探しいたのはべるきゅんだったネ
ってか、皆さんKoiキャラクター診断しました?私「夢見がちこじらせ隠者ナマケモノ」でした!ど悪口!!!