イナズマイレブン ROAD TO VICTORY   作:linez

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馬鹿な奴ら

 

「お前、いつまでその技使ってんだよ」

 

「それってさ、別にお前のサッカーじゃなくね?」

 

「マザコンだろ!」

 

「てか、お前の母ちゃんも別に大したことねーよな」

 

 うるさい。うるさいうるさいうるさい。

 どうして?

 サッカーが好きだから。強くなりたいからこうしているだけなのに。

 どうして?

 この前まで、一緒に試合してたじゃないか。

 ゴール決めて、試合に勝って一緒に喜んだじゃないか。

 

「マザコンサッカーは入ってくんなよ!」

 

「やーば!」

 

 気がつけば、1人になっていた。

 こんな事、誰にも言えやしない。

 サッカーへの情熱は、わずか1ヶ月足らずでぽきりと折れてしまった。

 

 

 

***

 

 

 

 放課後になると、生徒が窓の外に集まるようになったのは最近のことだ。

 なんでも、この南雲原中屈指の花形クラブである野球部のパフォーマンスを見物するためらしい。

 野球部のパフォーマンスといっても、派手な打球や捕球を披露するわけでもなく、サッカーボールをバットで打ったりと乱雑な扱いをした後に、野球部のエースである柳生が足でそれを蹴り返す、という内容だった。

 一体、この馬鹿丸出しのパフォーマンスはいつまで続くのだろうか。いくら何でもボロボロのサッカーボールをバットで打つなんて。しかも、野球部なのに思いっきりサッカーのように足を使うという荒唐無稽ぶりである。

 こんな奴らが全国準優勝、多くのファンを抱える学校の花形クラブとは、世も末だ。もしかしたら入る学校すら間違ってしまった可能性もある。

 入学早々ネガティブな事を考えていると、廊下に集まった野次馬たちのどよめきが異様に大きくなった。何かと思って彼らの背中越しにグラウンドの方を見ると、いつもよりもっと無茶苦茶な事をしている奴らがいた。

 野球部のパフォーマンスに憤り、その光景を見ていた誰もが戦慄するであろうシュートを披露した学校一の不良。そしてその隣にいた、野球部に決闘を申し込んだとんでもない奴だ。

 野球部にシュートをぶち込んだ不良は桜咲丈二で、決闘をふっかけた方は確か、隣のクラスに遅れて入学してきた笹波といったか。

 後になって聞くと、ますます驚いた。

 笹波は個人的な恨みから野球部に報復をしようとしていたわけではない。ただ、サッカーを貶されたのが許せなかっただけなのだと。

 なんて、馬鹿なやつなんだろう。

 サッカーやる環境も何もないのに、どうしてそんな短絡的なことをやってしまうのか。しかも、わざわざ花形クラブである野球部を敵に回してまで。

 どいつもこいつも、馬鹿ばっかりだ。

 

 

***

 

 

 

 父親の転勤によって、焔と両親はこの南雲原に引っ越してきた。ちょうど小学校を卒業するのと同じタイミングだった。

 商店街の付近に構えられた新居は、引っ越す前のそれと比べると一回り大きい。なんと焔の自室まで与えられるほどの広さだ。こんなに良い家が建てられたのも、努力家な両親のおかげだろう。

 焔が新しい部屋の荷解きと整理をしていると、段ボールの箱からサッカーシューズとボール、練習着が出てきた。

 サッカーは、小学校卒業と同時に辞める。両親にもそう伝えたはずだ。それなのに何を血迷ったのか、段ボールの箱をわざわざ丸々1つ使ってまでこの南雲原の新居にまで持ってきてしまっていた。

 焔は無造作に練習着を広げると、しばしの間手を止めた。

 野球部と不良と新入生の一件を目撃したのは、ちょうど昨日のことだ。その時の光景がまるで頭から離れようとしない。

 高く飛び上がった桜咲が野球部にお見舞いした、もはや芸術ともよべるほどの鋭く、重く、速いシュート。あんなシュートを撃てるのは、数十万人に1人と言っても過言ではない。

 そして、はっきりとは聞き取れなかったが、桜咲がシュートを撃つ前に何かを訴えていた笹波雲明の姿。何を言ったら、学校一の不良をあそこまで動かせるのだろうか。

 

「…………」

 

「……焔?」

 

 様子を見にきていた母親の呼びかけに気が付かず、焔はびくりと身体を震わせた。

 

「何かあった?そんなに固まっちゃって。それに、サッカーは辞めるって言ってなかったっけ?」

 

「あー、いや、その…」

 

 これはまずい。焔は言葉につまってしまった。

 母は特に掃除や身だしなみなどには厳しく、 少しでも散らかっているものがあれば整理整頓をするように再三注意してくる。それはもう、怖いを通り越して鬱陶しいほどに。

「使わないのなら、さっさと捨てなさい」。しこたま言われたその言葉がまた飛んでくる。中途半端なことを何よりも嫌う母のことだから、きっと自分には必要なくなったはずのサッカー用具を眺めていた事も怒ってくる。

 

「サッカー続けたいの?」

 

 焔の背中越しに、母が尋ねてくる。怒っているのか、悲しんでいるのか。単純に疑問に思っているだけのような。どれも当てはまりそうな、そんな声色だった。

 

「それは…ごめん、まだ分からない」

 

 言葉に行き詰まりながら、焔はそう返した。

 

「迷ってるなら、続けても良いんじゃない?どっちにしても応援するけれど…でも、やるからには中途半端なことはしないこと、良い?あと帰宅部も禁止。部活には絶対入りなさいね?それから、夕飯までにはこのあたりのものは全部整理しておくこと」

 

「分かってる」

 

 元アスリートの母らしいきびきびした言葉の後に、部屋のドアを静かに閉める音がした。

 

「はぁ…」

 

 焔は練習着を丁寧にたたみ直すと、箱の中に戻した。

 馬鹿と思っていた割に、こんなものを持ってきている自分も馬鹿なんじゃないのか。

 まあ、とりあえず保留でいいか。サッカー用具一式を一度隅に追いやると、焔は持ってきていた他の私物の整理に移った。

 とはいえ、持ってきた私物がそもそも少ない。せいぜいゲーム機といくつかのソフト、最近読み始めた『シグド戦記』の全巻セットか、あとはサッカー漫画が何冊か。小学校の時はほとんどサッカーが勉強に費やしていた焔には、あまり趣味と呼べるものはない。

 そんな自分からサッカーを取ったら、こうも何も残らないとは。

 本当に何もやる気が起きない。

 しかし、母さんにあれこれ言われるのはもっと嫌だ。説教を回避したい一心で、焔は手を動かし続けた。

 

 




主人公の焔はとある無印キャラクターの息子です。ほむらだからと言って帝国のマスクの人とは関係ない。
あとヒロインが斜め上のキャラかもしれない。
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