イナズマイレブン ROAD TO VICTORY 作:linez
恥ずかしながらオリ主ものを書くのは初めてでして、予想外の閲覧数の伸び方に内心ビビってます。
イナイレの新作、楽しんでますか?自分はクロニクルもストーリーも中々楽しめております。
まだまだ始まったばかりですが、新年の目標の1つとして本作もやれるところまで駆け抜けようと思います。
速攻でサッカー部への入部届を職員室にいた担任の教師に提出し、帰宅した焔は母にサッカー部へ入る意思を伝えた。
「やっぱりさ、俺サッカーやるよ。部活できるっていうから、入部希望出してきた。まだ入部できるかは決まってないけど」
「あら、本当に?」
「あんな頑なに辞めるとか言っといて、今さら何をって思われるのは分かってる。でも、やっぱりサッカーは辞めたくない」
「…何か、入るきっかけがあったのかしら」
「サッカーはその…えーと、飽きたかなーなんて思ってたんだけど、今日そんなのが全部変わっちゃうくらいすごい試合を見てさ」
「ああ、噂になってる野球部とサッカー部の決闘だっけ?」
「そう。その試合がとにかく凄くてさ。サッカー部の戦術も巧かったし、何よりいがみ合ってたはずの野球部も最後は楽しそうに試合してて。とにかく、そいつらと一緒ならサッカー続けたいって思ったんだ。その時の野球部の人みたいに言うなら、誰が何と言おうと、俺はやる!…………みたいな?」
柳生の渾身の叫びを真似してみたが、全くウケる様子がなかった。それどころか、母は浮かない顔をしている。
「それは良いんだけど、やっぱり気になるわ。どうして、サッカーから離れるって言ったの?どう見ても、飽きたって感じじゃないわよね」
「それは、その」
「責めるつもりなんてないわ。むしろ、自分に素直になれたっていうのは良いことだもの。でも、辞めるって言ってたことだけが引っかかる。ねえ、やっぱり何かあったのよね?私に言えない、言いたくない理由が」
「…!」
「それにこの先、自分に嘘ついてまで辞める…なんてことがあったら困るのよ。周りも、何より焔自身もね?」
クールに見えて元々向上心や好奇心の高い母のことだ。こうなると問い詰めてくるタイプゆえに、だんまりを決め込んだが最後いつまでもこの話は終わってくれない。
そもそも、この手の質問に関しては焔なりの答えを出したつもりだ。
「俺だけのサッカーを、見つけてみたいんだ」
「焔だけの…?」
「もちろん、飽きた…っていうのはさすがに言い過ぎたよ。今さっきも言ったけど。でも結局サッカー用具だって持ってきてたんだから、本当はやりたかったんだ」
「そう、やっぱりね。それで?」
「確かに俺は母さんにサッカー教えてもらって、実際そのおかげでかなり良いところまでは行けたと思う。でも、それは母さんのサッカーがあったからで。それじゃ本当の俺はどこにいるんだ…って。もしかしたら、俺に才能なんてないのかもしれない。母さんのサッカーが悪いなんてことは絶対にないだろうけど、周りのみんなも上手くなってたし、限界を感じてた。俺には…その先がなかったから」
「ああ、そういうこと…。じゃあ、新しいあなたのサッカーを見つけたくて、またやるってことね?」
「それが言いたかった。きっと、母さんも見たことないような必殺技を習得して、ガンガン上手くなってやるさ!」
「へえ、なかなか良い考えね。でも焔、ひとつだけ覚えておいて」
「うん?」
「自分だけのサッカーは、見つけようとして見つかるものじゃない。周りがあなたのサッカーを作っていくの。きっとこれから出会う仲間、相手…。それを大切にしてね」
「あ…うん。分かった、覚えておくよ」
「分かったなら良し。頑張ってね。試合、応援に行くから!」
そう言うと、母は焔の頭に手をポンと乗せた。どうやら納得してくれたようだ。
…納得してくれたようなのに、何でだろう。
思っていたことを話したはずなのに、このどこかもやもやするような感じは。
まあ、やると決めた以上考えても仕方がない。焔は心のもやを強引に振り払うと、母から頼まれた洗濯物を取り込みにベランダへと向かった。
***
翌日。
サッカー部への入部届を出した生徒たちに向けたプリントを、担任の教師が渡してきた。面接およびテストのため、各自体操服着用の上陸上部トラックに集合、と書いてあった。
放課後にグラウンドへと向かうと、かなりの数の参加者が集まっていた。
入部希望者は想像以上に多かったようで、噂によると40人を超えていたらしい。流石に多すぎると判断されたのか、実績や経歴などで考えた、いわゆる書類選考によって焔を含む16人がサッカー面接へと進むことになった。
それらを4人ずつA、B、C、Dの4グループに分け、各グループごとに面接を行う形式となっているようだ。
体力テストかと思いきや、雲明が提示したのはサッカー面接。本当にサッカーをしながら質問に答えるという形式で、しかもあの桜咲と競り合いながら雲明のパスを受け、答えながらパスを返す、という突拍子もない内容だった。
焔は最後のDグループに配置されたため、当分は他の入部希望者の面接の様子を見ることになった。
この学校のことだから、サッカー経験者などまずほとんどいないだろう。油断気味だった焔の自信がどんどん削がれていくほど、面接には個性的なメンバーが揃っていた。
幕下照、牛島突五郎のような巨漢や、同じクラスの判目才人や鉄野ケルビンなどの小柄な生徒、黒原玲文、妖士野銀郎、弁天九郎丸といった独特すぎる言動のメンバー、さらには井馬里陽愛、雨道未理科、古手打七海ら女子生徒も積極的に自分をアピールしている。
サッカー経験もないというのに、よくもまあここまではっきりと言えるものだ。
さて、どうしたものか。彼らほど人間としての個性に自信があるわけではない。というか、全くと言っていいほどない。イリュージョンだの突進だのと、一体どんな人生を歩んだらあんな答えが出てくるのだろうか。
だが、サッカー部に入りたいと言った以上やらなくてはならない。
ならば、単純なサッカー選手としてアピールするまでだ。他の面接者にないアドバンテージといえば、そこしかないのだから。
「次の人!」
いよいよ焔の番がやってきた。形式は変わらず、桜咲との競り合いから始まる。
雲明がパスの体勢に入ると、焔は桜咲の身体にぴったりと張り付いた。さすがに桜咲も手加減しているようだ。この体格のフォワードと真正面から競り合ってしまったら、まず間違いなく勝算は薄い。
「なぜサッカー部に入りたいんですか?」
二回り以上は大きいであろう身体を押し切って素早く桜咲の前に出ると、左側を手で示した。直後に雲明からパスが飛んでくる。
何とも質の良すぎるパスだ。強さといい回転といい、こんなパスを出せる同い年の人間がいるのか。驚くほどトラップしやすい。
「自分のサッカーを、中途半端で終わらせたくないからです」
「こいつ…」
桜咲が焔を見下ろして呟き、返球をトラップした雲明は数回首を縦に振った。
「おい」
「ひゃい」
不意に桜咲から声をかけられ、焔は素っ頓狂な返事を返した。
近くで見ると、ますます怖い。本当に人でも殺してそうな雰囲気がある。
「次はもうちょっと本気出すぞ。良いな?遠慮しねえで来い」
「…はい」
桜咲も焔のサッカー経験を察したのか、2回目は本腰を入れて競り合ってきた。さっきとは段違いのパワーだ。
「あなたの特技はなんですか」
同時に、雲明の質問が飛んでくる。
特技。特技と言われても、サッカー以外にはない。
だったら、サッカーのまま突っ切る。
体勢を低く構えて桜咲の圧力に耐え、身体ごと桜咲を押した反動で右側へと逃げた。
「ボール奪取が一番得意なプレーです」
雲明にパスを返す。
桜咲が追いかけてくることはなかったが、正直今のプレーは甘かった。本気で取りに来られたら競り負けていただろう。
3回目、これがラストの質問だ。
「あなたの未来にはどんなサッカーがありますか」
難しい質問だ。だが、やってやる。
「上!」
要は、桜咲にボールを取られなければいいのだ。
素早く桜咲の前に足をねじ込み、焔は膝を曲げてジャンプの姿勢を取った。
「…と見せかけて左!」
桜咲の膝がジャンプしようと伸びかけたところで素早く体勢を低く構えなおし、桜咲の後ろ側を通り抜けてボールを受けた。
「自分だけのプレー…特にディフェンスで、このチームに大きく貢献できると思います」
思います、は余計だったか。
他のメンバーの濃さに押されて少し自信を無くしてしまっていた。
「はい、OKです。お疲れ様でした」
無機質な雲明の一声と共に、焔の面接は終了した。
少し答えが怪しかったかもしれないが、何はともあれ言いたいことは正直に言った。
見たところ面接を受けたメンバーの中ではサッカー経験者は焔だけのようなので、これで落ちてしまっては末代までの恥さらしだろう。
…どうか、受かってますように。というか落ちたらどうするんだろう。
不安でそわそわしていた焔だったが、そのまた次の日にはあっさりとそれが消えていた。
「おめでとう、合格です。これからよろしくお願いします」
「よろしく、雲明君。ダンスバトルと野球部の試合観てたよ。本当に上手いんだね。フィールドも良く見えてるみたいだし」
「そこまで伝わってくれたなら光栄です。それじゃ、また放課後部室に来てもらえますか」
「もちろん。サッカーやろうぜ…ってね」
「うん、やろう!」
制服を来た雲明が、直々に焔のところに合格を言い渡しに来たのだ。
嬉しいような、ほっとしたような。
安堵の表情を浮かべて、雲明と握手を交わした。
***
やっと、サッカーに戻って来れた。別にそこまで長い間離れていたわけではないのだが、外でサッカーボールとゴールを見るのは随分と久しぶりに思える。
他の合格者より、少し部室に来るのが早かったようだ。
サッカー部員らしき生徒を探していると、近くのベンチに腰掛けた桜咲に声をかけられた。
やばい、怖い。でも、面接の様子を見る限り悪い人ではなさそうだ。
「おう、来たか。まあ座れよ」
焔が露骨に警戒しているのを察してから、桜咲はベンチの右側に座り直して自分の隣に来るよう促した。
「別にイビろうなんて小物くせえことはやらねーよ。大事なチームメイトなんだからよ」
「すいません、失礼します」
ぎこちなく隣に焔が座ると、桜咲は屋上の方を見上げる。その眼差しには、強面の奥に優しさが垣間見えるような気がした。
「忍原と雲明のダンスバトルやった時、屋上にいたな」
「…バレてました?」
「妙にそわそわしてる奴がいるなって思ってよ。ま、あれが入部のきっかけになったっていうんなら、やった甲斐はあったってもんだ」
「はい。あの時も、野球部との試合も、見てて熱くなりました。だからまたサッカーやろうって思えたんです。凄かったですよ、あのシュート。あんなの神奈川でも見たことないです」
「おだてても何も出ねーよ。にしてもお前、面接やった感じだとサッカー経験者…どころか、中々いい所にいたんじゃねーか?1人だけ手ごたえが違うから驚いたぜ」
「それもそのはず、です」
ダンスバトル以来すっかり気に入ってしまったのか、早くもチャンプオンの限定ジャージに着替えた雲明が部室から出てきた。
「雲明、こいつのこと知ってたのか?」
「いえ、直接面識はありませんでしたが、あの後彼の素性を調べさせてもらったんです」
「またかよ…。で、結局何が出てきたっていうんだ」
既に焔の素性は調べ上げられていた。まあ、あそこまで計算高いことができるのなら知られて当然だろう。
雲明はスマホの写真を桜咲に見せ、焔の母親の名を口にした。
「仁藤焔くん…。元女子サッカー日本代表、仁藤穂香さんの息子」
Q.なんで他にキャラがいっぱいいるのにアニメにすら未登場のボニトナを母親にしたんですか?
A.ボニトナが好きなキャラだから