数分で読める、風呂で思いついたすっっっごい短めの小説。
・Project Moonにおける、『薬指』の独自解釈
・2025/12/20時点では詳細の判明していない『野獣派』の登場
・所謂『淫夢語録』と呼ばれる構文の登場
・薬指の階級、内部設定の独自解釈
それらを許容できる人はぜひ読んでください。
よろしければ感想と評価よろしくお願いします。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
クソほどに眠い。しかし、課題のためには睡眠すら惜しい。
私は野獣派の薬指だ。昨日は私の課題の締め切りで、今日は住民の課題評価の日だった。
今回も住民共はクソみたいな作品ばかり持ってきている。眠い私でもわかるのだから、こいつらにはつくづく落胆させられる。成績不振なスチューデントの私でも、あのクソよりはもう少しまともな作品が作れるだろうに。
「眠いのか」
私より上の階級である、ドーセントという階級の方が声をかけてくださった。
この方はいつも作品には厳しいが、それ以外には甘い。まぁつまり、薬指にしては優しい方だ。
「昨日は課題の締め切りだったな」
「…少し見たが、評価はあんまりだろうな」
「良くてC+が限界だろう」
「徹夜して作った頑張りは認めるが、出来は別だ」
『…精進します。』
私は住民共のクソ作品を見てため息をつき、ドーセントは私のクソ作品を見てため息をつく。なんちゅう不幸な連鎖だ。
きっとこの後の私も今のドーセントのようになるのだろうと思うと、少し住民には憐れみを覚えた。
「眠いなら休め」
「マエストロには私が報告する」
そう優しい気遣いをしてくれてはいるが、ただでさえ成績不振なのに課題評価にも出ないのはあまり好印象ではないだろう。そもそも、今回呼ばれて快く承諾したのは私なのだ。
『いえ…出来ます。』
「本当か」
『はい、出来ます。』
「本当か」
『勿論、出来ます。』
「本当か」
こうしてクソ眠い中、課題評価が始まった。
結論から言うと、ほぼ全員があまりいい評価でなかった。見るに堪えないクソ作品が一部だけだったのは救いだ。
『うっすい色彩だな。落第点だ。』
この住民は割と新しい奴だった。文句を言いたそうな目で去っていった。
『何だこれは。独創性の欠片もない。既製品のコントラストを強くしただけのもんを作品とは呼べない。落第点。』
写実派向けの課題だったらまぁまぁな点は取れていただろうに。
『薬でもキメながら描いたのか?色がぐっちゃぐちゃだが。』
しかし、今日見た中では一番まともだった。不本意だが、D+はくれてやった。
『…まぁいいんじゃないか。この表現は美しいものだし、俺は結構好きだが、あくまで課題に沿っていなければならない。』
個人的にはかなり好きな作品だったものの、課題の題材からは少し逸れていた。
厳しい奴ならDらへんだったろうが、一応情けでCはつけた。
そんなこんなでどんどん進み、課題の評価も終盤らへんに差し掛かっていた。これだけ多くの住民を相手するとなると、流石に疲れる。ただでさえ私は徹夜したんだぞ。飯くらい食わせろやカス。
そう思いはしたものの、課題を汚す可能性があるため、この場に食料や蓋のない飲料は持ち込みが禁止されていた。住民の血は例外らしい。まぁそもそも飲むものじゃないし。
ドーセントやほかのスチューデントは一足先に外へと出ていた。あいつら俺に全部押し付けやがったな。死んどけクソ野郎共。
そんな中、何度目かの落第者が出た。しかもこの落第者は今回が三回目だそうだ。
薬指の規則を知っている者ならご存じの通り、三回落第点を取ったものは…
『…残念だが、過去の作品から見ても成長が見られない。落第点。』
「は、はは…。」
驚いたことに、住民は怯えるそぶりすら見せなかった。こういうやつは偶にいる。見栄を張っているのか、運命を受け入れているのか、知る由はない。
しかし、いくら見栄を張っても運命が変わるわけではない。
『…最後に言い残したいことはあるか?』
「…」
『無いようなら』
「…あ」
そいつは俯きつつも、言葉をはっきりと聞き取れるように話した。
『…あ?』
「ありがたいナス…ありがとナス!!!!!!!」
大声を上げられ、反射的にそいつの首を切り落としてしまった。
─────
結局、あの言葉が何を意味するのかは分からなかった。
どんな意味を持っていたのか、少しの間は殺さずに聞いたほうが良かったのでは?という心がある一方、変な意味を語られて時間稼ぎをされるのも癪だし、反射で殺して正解だった。と思う自分もいる。
結局のところ、あいつは死んだ。終わったことだ。なのに、こんなことを昨日から考えさせられているのに少々腹が立った。
今日も課題作品を描画しつつ、そんなことを考えていると…ドーセントが、私の後ろを通った。おそらくどのような作品を作っているかの視察に来られたのだろう。
ドーセントが私の後ろに立ち、私の作品を…表情は分からないが、少なくともじっくりとご覧になられた。
「今回ばかりは、良い作品になりそうだな」
「確定していないのにこう言うのはあれだが、少なくともB-は取れるのではないか」
今日はそうお褒めくださった。とても珍しい。
『…ありがとナス。』
ずっとありがとナスについて考え事をしていたからか、ついその言葉を口走ってしまった。
辺りは沈黙に包まれる。
ドーセントが視察に来ていることを寝ている隣の奴に必死に教えようとしていた奴も、いっつも点描のほうがいいだの立体派の方が優れているだの言い争っている奴らも、全て。
「…ありがとナス?」
『…ええ。』
水が満杯に入った筆洗よりも重い声。私は、今回ばかりは生きて作品を完成させられない可能性があると感じた。
「なんだ、それは」
『ありがたいナス、ありがとナス…です。』
「馬鹿にしているのか」
『まさか』
重力が数百倍になったとも思える沈黙の中、私が遺言を必死に考えていると、いつのまにかドーセントは退室しようとしていた。
その直前、ドーセントが呟いた一言を、とても小さい声だったが──私は確かに聞き取った。
「ありがとナス…か。」
それ以来、マエストロが禁止をするまで「ありがとナス」という言葉を聞かない日は無かった。
私は今なら、あの住民にはA-の評価を付けてもいいと思っている。
少し低めなのは…課題の題材からは少し逸れていたから、だ。
風呂場で寝かけていたら思いつきました。
この小説を読んでくださってありがとうございます。
正直言って、これを創作物と呼んでいいのかは少し疑問に思っています。個人的に、こんなん読んでも特に何も得られるものはないと思っています。
でも、まぁ、暇つぶしにはなってくれたことを願います。
あわよくば、少しでも笑ってくれたらこの小説は個人的にはA+です。