戦場の笑顔 作:匿名
「……ここ、どこ?」
保登心愛が最初に感じたのは、焼けつくような暑さだった。
次に、乾いた風と砂の匂い。
そして最後に、どこまでも広がる荒野と岩の壁。
「コ、ココアさん… ここって……ラビットハウスじゃ、ないですよね……?」
傍らには共にラビットハウスで働く香風智乃。同じく
その小さな声が震える。
見渡す限り、瓦礫混じりの大地。遠くには崩れた建物、黒煙を上げる燃え跡。
いつもの街並みも、石畳も、ラビットハウスもない。
「えっと……夢……じゃ、ないような……?」
困惑は更に広がる。いっそのこと夢であればこんなおかしな状況にも納得がいくはずなのに
照りつける暑さ、砂の匂い、その全てが嫌でも現実なのだと思い知らされる
「待った。何か音が聞こえる」
天々座理世。彼女の耳が、遠方から鳴る音を正確に聞き取る。
「あれって…?」
その言葉が、空気を凍らせた。
――アフガニスタン北部:カブール周辺。
「―ボス。諜報班より報告がある」
ヘリの内部には迷彩服を身を纏う隻眼の男が
耳にイヤホンを指しのカセットテープを再生する
「数日前から北部、カブール方面で
不審な砂嵐が目撃されている」
「天候、気温、全てが異なる状況で
同じ時間、同じ場所に発生しているらしい」
「この現象は異様だ
自然に起きているものとは考え難い」
「あの辺りはPFの巡回ルートでもある
何かの兵器か、あるいは実験か
サイファーが噛んでいる可能性も考えられなくはない」
「発生地点にマーカーを設置してある
砂嵐の調査を頼む、ボス」
ブリーフィングを聞き終えると傍らにあるAM-69 AAS RIFLEを担ぎスライドドアを開け、足を外側に出し降下の準備を行う
「…」
マーカー地点を双眼鏡で確認する
そこにあるのはなんの変哲のない地面と岩場
諜報班の情報通りならばそこは数十秒後には砂嵐となる
やがてランディングゾーンにヘリが到着し
シートベルトを外し、降下する
「どうかお気をつけて、ボス」
※
「みんな、固まって動かないで」
リゼが前に出て、即席の指揮を執る。
「敵か味方か分からない人が来る可能性がある。私が合図するまで、走らない」
「て、敵って…?」
「リゼ先輩……」
桐間紗路の声は強張っていた。ココアは無理に笑顔を作る。
「だ、大丈夫だよ! きっと、なんとかなるよ! ねっ!」
その時だった。
――ザッ。
背後の岩陰で、明確な足音。
リゼは即座に振り返り、身構える。
チノは固まり、ココアは呆けて見ていた
「え…?」
隻眼。
顔に残る無数の傷。
腰から下げられたアサルトライフル。
岩陰から現れたのは
迷彩服に身を包んだ男。
「軍人…?」
「動くな」
低く、掠れた声。
その男こそ――
ヴェノム・スネーク。
ダイアモンド・ドッグズの指揮官にして、“伝説”の名を背負う兵士だった。