戦場の笑顔 作:匿名
砂を踏みしめる重い音。
岩陰から現れた影。
筋肉質な体躯。
義手。
顔に残る傷跡と、冷え切った片目。まるで角のように頭から突き出た破片。
ヴェノム・スネーク。
諜報班の予想通り砂嵐は起きた
極短時間。それも一分とも掛からずに
砂嵐は過ぎ去る
そして
そこに
その場所にはいるはずのない子供が佇んでいた
色違いの統一された制服。
しかし軍服のような規律や厳格さはない
胸元にはリボンのあしらわれた
戦場には似つかわしくない愛嬌さを見せるデザイン
彼は、迷いなく銃を構え――
しかし、引き金は引かなかった。
(……捕虜か?)
いや、違う。
年齢だけなら十代前半。
だが、その服装、表情、反応――
どれも、戦場のものではない。
「動くな」
低く、命令するような声。
その声音は逆らえば死ぬと本能に訴えてくる。
「ひぃーっ!?」
ウェーブヘアの子供が悲鳴を上げる。
スネークの視線は、4人を冷静に観察していた。
――火薬の匂いはしない。軍事訓練の痕跡もない
――だが……この場にいる理由の説明がつかない
「……誰だ。どうやってここに来た」
「あの、こんにちは!」
場の空気を破ったのは、桃色の制服の娘だった。
「えっと。ここ、どこか分かりますか?」
「……質問はこっちだ」
彼の眼が、4人を静かに観察する。
「お前たちは、どこから来た?」
「えっと……それが……」
彼女は手を顎に当て思考を巡らせるが
首を傾げて困ったように笑い、正直に答えた。
「たぶん…異世界?」
「ココアさん!?」
「ココアあ!」
「えぇー!で、でも本当のことなんだよ!?」
一瞬、沈黙。
風が吹き、砂が舞う。
スネークは、銃口を下げない。
――嘘をついている様子はない
――だが、信じる理由もない
無線に手を触れ、マザーベースに繋ぐ。
「ボス、何かあったか?」
カズヒラ・ミラーの声。
スネークは短く答える。
「……説明のつかない連中を見つけた」
「説明のつかない?」
「民間人の子供だ。だが、この戦場にいる理由がない」
ミラーは一拍置き、低く言った。
「ヘリをランディングゾーンに向かわせる
放置しておくわけにもいかない」
「だが――気をつけろ。
“理由がない”存在ほど、危険なものはない」
無線が切られる。
このまま『何もいなかった』ことにするのは容易なこと
しかし件の砂嵐の起こる場所に、戦域に、民間人が偶然居合わせるわけもない。故意か無意識かなど関係無くあの砂嵐に関わっていることは明白だった
「……説明は後だ」
「この辺りはPFの巡回が近いし発砲許可も出ている。お前たちをここに置いてはいけない」
「こっちだ。基地へ案内する」
※
信用するな
それが、この世界で生き残るための唯一の原則だ
「…で?
本気で“突然砂漠に現れた子供”だと言うのか?」
カズヒラ・ミラーは無線越しに吐き捨てた。
輸送中のヘリには、
問題の4人と、ボス――ヴェノム・スネークが乗っており
まもなく帰還すると報告があった
「そうとしか説明がつかない」
「ボスが言うには砂嵐の起こる直前まで100m先にも車両も人影すらも確認されなかった。それが突然4人もだ。徒歩で来るには無理があるし、何より衣服に汚れが無さすぎる」
「モデルガンが一丁、だがそれは市販されてある同タイプのもので改造は一切行われていない。
その他武器はなし。敵意もないそうだ」
オセロットはそう補足する
ボスの声は、いつも通り落ち着いていた。
だからこそ、腹が立つ。
「戦場に“無害”なんてものは存在しない」
義足を鳴らしながら、どかりと椅子に座り込み
苛々しげに呟いた
「スパイか? デコイか? それとも……」
言葉を濁した瞬間、脳裏に最悪の可能性が浮かぶ。
「同情はしない。
見た目が子供だろうが、女だろうが――」
このマザーベースに害を為す存在ならばそのときは。