戦場の笑顔 作:匿名
ローター音が、砂漠の静寂を切り裂いていた。
切り立った広い岩場の上にその音の主は地面の近くで浮遊している
正面には大口径の機関砲
両脇に四門のミサイルランチャーを装備した
映画や資料で見るような軍用の戦闘ヘリコプター。
「こちらピークォド。
ランディングゾーンに到着。待機する」
無線の向こうで、落ち着いた声が応じる。
ヴェノム・スネークは
ヘリの開いたハッチの前に立ち、短く告げる
「さあ、乗れ」
この戦場には、あまりにも不釣り合いな存在に。
「えっ、いいんですか!? ヘリコプター!」
真っ先に反応したのは、ココアだった。
「すごーい! 本物だ! テレビでしか見たことない!」
躊躇いなく、ぴょんと機内へ乗り込む。
―――警戒心がなさすぎる。
スネークは無意識に
周囲の警戒を続けながらその様子を見ていた。
「ココア、座って! 落ちる!」
「大丈夫だって!
ねえねえ、えっと…軍人さん!」
「…スネークだ」
「スネークさん!
これってどこに行くんですか?」
「……マザーベースだ」
「マザー……? お母さんがいっぱい?」
「違う」
そのあまりの緩け切った雰囲気
緊張感の無さに操縦席からも困惑の視線が垣間見える
「上昇しろ」
「了解」
スライドドアを閉じヘリが浮上する。
重力が身体を押し付け、
地面から機体が離れていく
「わあっ! 飛んだー!」
心愛は目を輝かせ、窓に張り付く。
一方で、リゼはシートベルトを確認しながら周囲を見回していた。
「……高度、安定してる。操縦も丁寧」
「先輩、どうしてそんなに冷静なんですか……?」
シャロは顔を引きつらせていた。
「私、こういう“逃げ場のない乗り物”苦手で……
これ、落ちたら確実に終わりですよね!?」
「そんなことないよシャロちゃん!」
ココアが振り返る。
「落ちたら、その時考えよう!」
「考える余裕ないやつー!」
だが――そのやり取りを聞いて、リゼの肩から力が抜けた。
「まったく…ココアはココアだな」
つられてシャロも苦笑する。
「こんな状況でこれなら、逆に安心するかも……」
ココアは首を傾げる。
「え? 私、なんかした?」
「してる(わ)」
二人同時だった。
※
チノは一番奥の席で
窓の外をじっと見つめていた
流れていく砂漠。
遠ざかる戦場。
見たことの無い景色。
知らない風景。
ここは、どこなのかな?
「……本当に、帰れるのかな」
誰にも聞こえない声。
すると、隣に座ったスネークが低く言う。
「帰る場所は……ある」
チノは少し驚き、彼を見る。
「……信じて、いいですか」
「……ああ」
それ以上は、言わなかった。
※
砂と土の大地が離れ
やがて、海が見えた。
それからどのくらいの時間が経っただろうか
揺れ続けるヘリの窓からはやがてひとつの建造物が見えた
「うわあ! 海の上に建物がいっぱい!」
「え、浮いてる!?落ちないの!?」
「あれが、マザーベース…ですか?」
海上に浮かぶ基地。
中心の巨大な建物から伸びる多数の施設。
遠目から見ても巨大な基地だと窺える
中心のヘリポートに近付き
ヘリはゆっくりと降下を始める。
鋼鉄の甲板。
武装した兵士たち。
そして――
その中央に降り立つ、四人の少女。
スネークは最後に降り
その光景を見渡した。
(……俺は今、何を連れてきた?)
兵器でも、兵士でもない。
――日常そのものだ。