戦場の笑顔 作:匿名
全員を降ろしたヘリはそのまま飛び去り
甲板に残るのは潮の匂いと金属音。
――マザーベース。
戦争のためだけに作られた、浮かぶ要塞。
そこに――
四人の少女が降り立つ。
「……すご……」
視界いっぱいに広がる鋼鉄の構造物。
整然と並ぶクレーン、武装兵、監視塔。
すべてが非日常の、まるで映画のような光景。
「おかえりなさい、ボス!」
整列していた兵士の1人がそう言い
スネークに敬礼をし
続けて全員が敬礼をする
(スネークさんって、もしかして偉い人?)
※
「……ボス」
低く、硬い声。
甲板の端から歩いてくる男がいた。
義足が金属床を叩く音が一定のリズムで近づく。
カズヒラ・ミラー
彼は、スネークではなく少女たちを見た
服装。
立ち振る舞い。
視線の動き。
(……違和感だらけだ)
兵士でも、捕虜でもない。
だが、完全な民間人とも言い切れない。
「民間人と聞いていたが」
ミラーは、スネークにだけ言った。
「現地で発見。
戦闘区域に迷い込んでいた」
「……迷い込む?」
ミラーの口調が、わずかに尖る。
「あの地域に。偶然にあの場所で、偶然あの時間に、四人揃って迷い込んだ?」
疑念は当然だった。
「こんにちは!」
場違いなほど明るい声。
ミラーの視線が、ココアに固定される。
「……何だ」
「ここ、すごいですね!」
ココアはくるりと一回りしてみせる。
「映画みたい!秘密基地って感じで!」
―――笑っていた。
屈託のない少女の笑顔に
ミラーの内側の何かが軋む
不快感とは違うその例えようのない感覚に
軽い苛立ちを覚える
「ここは遊び場じゃない」
「戦場だ。一歩間違えれば、死ぬ」
(子供だ)
(だが――)
ミラーは、スネークを見る。
「……ボス」
低い声。
「しばらく、俺の管理下に置く」
「構わない」
「だが」
ミラーは少女たちを見る。
「“保護”だと思うな。
ここは戦場だ。お前たちだって、それは例外じゃない」
ココアが驚きながらも頷く。
「は、はい!ちゃんと気をつけます!」
(……気をつける、か)
ミラーは背を向ける。
「居住区を用意してある」
「案内しろ。簡易居住区だ」
兵士が動き出し
四人も促され移動を始める
その背中を見送りながら、
ミラーは思う。
(……これは拾い物じゃない)
(爆弾だ)
(……面倒な爆弾だ)
※
――――――マザーベース:副司令室
カズヒラ・ミラーは件の四人の情報を纏めていた。
デスクに書き留めていた情報と
録音した音声データの再生を交互に行い
4人の話に齟齬がないか重点的に調べている
「熱心だな。ミラー」
その一室に入ってきたのは
リボルバー・オセロット。
ダイアモンド・ドッグズの戦術指揮官
「必死にもなる」
「あまりにも偶然が重なり過ぎている。
…あれは未知の存在だ。」
「ただの子供だ」
「砂嵐の中から現れた子供がか?
それにやつらの言動にも不審な点は残る」
「異世界か」
あろうことか『異世界から来た』と少女は言っていた。
いくら夢見がちな年頃だとしても
この生と死が隣り合わせの戦場においてそんな大法螺を吹いて自らの立場を悪くするような真似などまともな神経をした人間はやらないだろう
「そんなものは信用していない
だが砂嵐のことについては気掛かりではある。
対象を選べてはいないようだが
遠方より人間を連れ去り、事実アフガニスタンにまで移送が行えてしまっている。そんな技術が確立されては厄介だ」
「諜報班には引き続き調査と砂嵐の兆候を独自で」
「それについてなんだが」
遮るようにオセロットが声を挟む
その手に持っていた1枚の用紙をミラーのデスクの上に乗せる
「あの4人が現れてからは
砂嵐の発生が止んだ。以降は確認されていない」