八重樫雫は強い少女である。自分がクラスメート達の心の支柱の一柱である事を自覚し、故に弱さを見せないと決めた。
八重樫雫は弱い少女である。魔物を初めて殺した日、洗っても洗っても血の匂いが落ちた気がしなくて、眠れなかった。
本当は弱いのに、誰かの為に強くあろうとしてしまう少女。それが八重樫雫。
もしも、奈落に落ちたのが南雲兄弟だけだったなら彼女は親友である香織の為に強くあろうとしたかもしれない。香織が南雲を生きていると信じ力を貸してと請えば折れずにすんただろう。
だがそうはならなかった。ならなかったんだ。
だから話はここでおしまい。
彼女は強いから立ち上がると信じている勇者は、彼女を手に入れる最後の機会を不意にして少女は一人、部屋に引きこもり出てくることは………
「これからの話しの時間だオラァ!」
扉が蹴破られた。飛び込んできたのは中村恵理だ。
「ちょ、エリリン!?」
鈴が慌ててピョコピョコついてくる。
「…………恵里」
「………………〜〜〜〜〜〜〜!!」
雫を暫く睨むように見つめた恵里はガシガシと苛立つように頭を掻きむしる。そして、唐突に胸ぐらをつかむ。
「…………………………………………………………………力を貸せ」
それでもよほど言葉にしたくなかったのか、貯めに貯めてその言葉を絞り出す。
「……………え?」
「ソウジ君は生きてる」
「……私も、私だってそう思いたいわよ。でも!!」
「そう思いたいんじゃない。生きてることを知ってるんだよ、僕は」
叫びそうになる声を押し留めるような声色でそう告げた。
「僕の天職は降霊術師。魂の残滓とかに干渉するけど、自分の魂をちょっと分けることも出来た………」
ちなみに普通は出来ない。彼女の能力が非常に優れている故に、
「それをソウジ君につけた。ある程度近付けば場所も分かるし、感情の種類も読み取れる」
「エリリン。鈴、それってストーカーだと思うの」
「そして、だから解る。ソウジ君はまだ生きている」
「…………………ほん、とに………?」
「手掛かりはオルクスにある。そして……そしてぇ、僕にはあそこを攻略すら力なんてないし、あの
恵里は今の雫に必要な言葉を選び直す。
「
仮にあの奈落から地上に繋がる手段があるにしろ、場所までは分からないのなら結局手掛かりは奈落の底だ。
「………会えるの?」
「お前が僕をそこまで連れて行くならね」
「…………………」
雫は1度目顔を伏せる。ポタポタの涙がこぼれ、乱暴に拭き取る。
「ソウジが生きているなら、香織も、ハジメ君だって生きている可能性は、あるのよね」
「まあ、そうなるね…………」
とはいえステータス差が大きい以上確率はその分下がるが。
「…………ええ、解った。解ったわ………恵里、ソウジに合わせて。代わりに、貴方は私が守るから」
「………………僕君の妹になるつもりないんだけどな」
恵里の頬がちょっと赤くなっていた。流石シズシズだ、と鈴もはわわ、と顔を赤くしていた。