ソウジと恵里が魂の加工勝負した場合恵里の圧勝。
ソウジは奪ったり与えたりが得意なドラゴンです。
結局フェアベルゲンから追放されることとなったハウリア族。今後、彼等は自分達の身は自分達で守らなくてはならない。
まあ、ソウジが顕現させた怨霊曰く、そもそもまともに守られていたわけではなかったらしいが。
「ちなみに戦士の立場利用して女奪ったりもあったぜ、主に肉食動物系亜人」
「知りたくなかったな…………」
ケモミミ大好きオタクなハジメ君は亜人達の闇にゲンナリ。恋人の香織がヨシヨシ撫でるよ。
「まあ自分が弱者側だと認めたくねえなら、自分より弱い奴を虐めてアピールするしかないだろ? ほら、檜山とか」
「あ〜……」
ハジメは内心小悪党組と呼んでいた連中。実際彼奴等は小悪党でしかない。他の学校の不良に喧嘩を売ったりもしないし、なんなら不良校と有名な場所には近付かない。
実際ハジメも帝国兵を一方的に殺した時に彼等の気持ちも分かったし………。
「でも俺はお兄ちゃんだからなあ……」
弟に、弱い物虐めして笑う兄の姿など見せられない。弟が間違った道に進まぬように、前を歩く必要があるのだ。
まあ、弟の方が強いけど。でも弟を攻撃する奴は許さん。
「そういうわけで、俺は今からめっちゃ間違った道を行く。この道を歩くなよ、弟よ」
「? ああ」
ハジメはふぅ、と大きく息を吐くとゴムっぽい弾を食らって倒れているカムを心配して集まるハウリア達を睨む。
「貴様らは薄汚い『ピー』共だ。この先『ピー』されたくなかったら死に物狂いで魔物を殺せ! 今後、花だの虫だのに僅かでも気を逸らしてみろ! 貴様ら全員『ピー』してやる! わかったら、さっさと魔物を狩りに行け! この『ピー』共が!」
ソウジはソウジでキャスパリーグことキャスに吸魂の出力調整を教える。
魂を吸う、などと物騒な名前だが実際彼女が吸えるのは生命力、魔力、体力、体温だけ。ソウジのように魂魄に干渉するほどの力はない。
「どうした! もうへばったか、体力のないお嬢ちゃん達だ! 貴様等は戦士ではないのか!」
「「「「さ、さー! イエッス! サー!!」」」」
「違う! 貴様等は戦士ではない! 枯葉の裏に群がる虫けらだ、この虫けらども!」
「ぴぇ」
と、ハジメがハウリア達を鍛錬している方向から聞こえてきた怒号に涙になるキャス。フェアベルゲンの生物兵器として帝国の、聖騎士の、魔物の敵意にさらされ続ける人生だったが、それでもなれないらしい。
性質は臆病。なれど、何度も戦いに参加した。その気になればフェアベルゲンなど
「あ、あの…………こ、これ。お花……き、綺麗です、ね」
「ああ。兄貴が撃ちまくってたがな」
訓練中に虫だの花だの踏まないようにする危機感のないハウリア達の目の前で踏みにじったり撃ち抜いたりしてた。
「わた、わたし………初めて知りました。あ、ありがと、ございます。ご主人様………」
オドオドとした態度。すぐに泣く泣き虫さ。
美しい見た目も相まり、帝国兵も聖騎士も、なんなら魔物すら加虐欲求を覚えさせる。
その結果彼女に意識を向け、意識を向けられ精神的な繋がりが濃くなり吸収率が上がるわけだが。
それを利用し、ソウジに強く意識を向けさせればいい。別にソウジのみである必要はない。彼女がどんな感情であれ意識を向ける相手にソウジを1番に据えておけば、ソウジ一人で吸収量の限界を超えるのだ。
「ごしゅ、ご主人様は、どうして私を………」
「……………似てると思ったからかな」
うろ覚えの前世なれど、自分が特別強い存在であったことは覚えている。ドラゴンの中での突然変異なのか、或いは生物としてではなく現象として発生したのかは覚えていないが、同胞もなく、身を揺らせば簡単に砕け、潰れ、死ぬ。
望まずとも死を振りまき他者と触れ合えぬ彼女に既視感を覚えたのだ。ソウジは強い竜なので。
「その内技能に吸収操作でも生えりゃ、晴れて自由。恋したり子供作ったりすりゃいいさ」
「お、おと、お父さんみたい、です………」
まあキャスにとっては与えられた本で知っているだけだが。何せ本物の父はキャスを抱きあげたその時に死んだのだから。
「子供なぁ………いたような気もする」
ん? つまり自分には
ハウリアはどれだけ傷ついても問題ない。何故なら香織が治すから。
丁度いいとばかりに香織も回復魔法ではなく魔術を使用したり教えたりしている。因みにシアはユエが鍛えている。
そんなこんなで10日。ソウジはふと、樹海の奥に向かう。
「キイイイ、ギイイイ!!」
「ヒャハハ! いぃ〜声で鳴くじゃねえか!」
「おら! 逃げられると思ってんなよ!」
「さっきまでの生意気な態度はどうした! あぁん!?」
「ぴええ………」
ソウジから離れすぎると周囲の生命力を吸ってしまうが故におんぶされていたキャスはその光景に涙目になる。
目がガンギマッタ兎人族達が魔物を狩っている。それも、出来るだけ痛めつける形で。
「おら! 牙と爪よこしな!」
「ギイイ!!」
「ぴぃぃ………」
キャスが恐怖で溶けそうだ。ソウジはふむ、とハウリア達を見る。
「おお、これはソウジ様」
「……………何やってんの?」
「ああ、ボスの試練でしてね、魔物を狩ってこいと」
ハジメやソウジからすれば雑魚なれどこの辺りの魔物としてはそこそこ上位。
「…………何匹?」
「一匹でいいとのことでしたがね、お仲間がわらわら出てきやして……生意気にも殺意を向けてきやがったので丁重にお出迎えしてやったんですよ。なぁ? みんな?」
「そうなんですよ、ソウジ様。こいつら魔物の分際で生意気な奴らでした」
「きっちり落とし前はつけましたよ。一体たりとも逃してませんぜ?」
「ウザイ奴らだったけど……いい声で鳴いたわね、ふふ」
「見せしめに晒しとけばよかったか……」
「まぁ、バラバラに刻んでやったんだ、それで良しとしとこうぜ?」
ソウジはふむ、と彼等を見る。
「お前達は魔物や帝国兵に仲間殺されてたもんな。生存率上がる方法を教えてやろう」
「おお、ソウジ様からも助言をいただけるんですかい!」
ハウリア達はこいつぁ楽しみだ、と言葉を待つ。複数の視線に晒され人見知りのキャスが溶けた。
「ああ、まあ簡単だ。死にたくなけりゃ戦わなきゃいい」
「……………はい?」
思っていた言葉とは違い困惑するハウリア。
「だってそうだろ、戦えば相手は殺しに来る。そりゃ戦わなくても殺しに来るが、こっちから戦いに行かなきゃ死ぬ可能性は減るわけだ」
「い、いや、そりゃそうですが…………」
「でもお前等は戦った。掟から、娘を守る為に」
「「「「!?」」」」
隠していただけ。逃げただけ。
今のハウリア達にとって屈辱的な弱者の時代をソウジは戦っていたと、そう称した。
「生きるためじゃなく生かすため。俺も
「ソ、ソウジ様…………我々は………」
「今のお前等は殺す為に、苦しめる為に戦ってる。帝国兵や檜山にそっくりだな」
その言葉にナイフを落とし己の手を見るハウリア達。魔物の血で汚れたその手はきっと、同胞を痛め付けた帝国兵達と同じ色をしているのだろう。
「取り敢えず、歯ぁ食い縛れ」
「「「「え?」」」」
「で、お前はなんなんだ?」
「お兄様の方も素晴らしいかったですが…………やはり、やはり貴方のほうが!」
「…………………」
「あひっ。ろ、路傍で死にかけた虫を見るみたいに………」
なんか喜んでるのはフェアベルゲンの神子リーステナ。
「そ、そのですね。熊人族が逸ったようでして………どうぞ、止めることも出来ぬ役立たずの神子を踏んで詰って蔑んでください! ジンにしたように!」
「…………………」
はぁはぁ、と足に縋り付いてくるリーステナがなんか気持ち悪かったので踏み付ける。涎を垂らしながらビクビク痙攣するリーステナ。
「今回以前に何故前から止めなかった。お前、見れるんだろ?」
「そ、それは………」
「まさか、彼奴等と同じで弱いから死んでもいい、とか?」
ミシッと踏み付ける力が強くなる。リーステナはますます興奮しながらも、問われた問いに答えを返す。
「し、所詮神子に与えられる役目など罪人を裁くか魔力持ちを見つけるかだけですよ………」
確かに神子として崇める者はいる。だが、本気で敬っている者は少ない。だって戦わないから。
「なのに形だけ敬って、国の掟だからって………いっそ『チッ、役に立たねえなこの神子』と詰ってくれれば!!」
「ええ……」
「その点、ご主人様は彼奴と同じでフェアベルゲンなんて滅ぼせるから、敬う理由もないでしょう? あんな国でも守りたいと思ってますから、いっそこの身を差し出して…………」
「……………彼奴」
ソウジはその言葉に目を細めリーステナから足をどける。あ、と切なげな声を漏らすリーステナ。
「行くぞ、キャス」
「ふにゃ!? あ、はい!」
ソウジがリーステナを踏んでいるところを見ないように目を閉じていたキャス。名を呼ばれ慌てて立ち上がる。
「あ、あの………」
「なんだまだいたのか。さっさと失せろよ」
「あふん!」
熊人族はハウリア達により倒された。怪我人はいるが死者はおらず、熊人族達は最弱のはずの兎人族に負けた事を包み隠さずフェアベルゲンに広める事を条件に見逃された。もちろん、それだけではない。貸し一つ。何時か取り立てに行く。
その後大樹に向かったが真の迷宮はそもそも入場出来なかった。
〝四つの証〟
〝再生の力〟
〝紡がれた絆の道標〟
〝全てを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう〟
そう記された石板。恐らくは攻略の証を4つ持ち、再生魔法を手に入れてから亜人に案内してもらうのが本来のルート。
オスカーも解放者に関しては教えてくれても攻略に関してはあまり教えてくれなかったのだ。
仕方ないと引き返す。ハウリア達がついてこようとしたが、ハジメは更に鍛えろと命令する事で何とかなった。
「え、シアついてくんの?」
「ハイです!」
「…………いいのか、兄貴?」
「良くねえよ………なんで香織とユエは…………二人ってだけで俺は相当覚悟決めたぞ」
どうやらシアがついてくることを許可したのは香織とユエらしい。ハジメとしては結局香織のみならずユエを受け入れてしまったことを「最低だ…俺って」してたのにその2人が許可を出したことにショックを受けている。
まあ王族として妾制度に理解あるユエは知らないが、香織の方はこれ以上譲る気はなさそうだ。
「兄貴が靡かないって信じてるのかもな」
「そうか? そうかなぁ……」
と、シアに導かれるまま樹海の外に近付いてくる。
一人の男が立っていた。
獅子人族の男。確かリーステナの護衛だった男だ。
獅子人族にしては線の細い男。何故ここに、と困惑するハジメ達と異なりソウジは一歩前に出る。
「もう国を去るのかい?」
「ああ」
「ゆっくり観光していけばよかったのに………とは言えないか」
敵意は感じない。むしろ親しげ。
もしかして知らないうちに仲良くなったのだろうか?
「初めてみた時から気になってたんだけどさ、君って強い?」
「そうだ。俺は竜だ」
強いか聞かれて竜であると答えるソウジに、男は嬉しそうにそうかと頷く。
「じゃあ僕と殺し合おう。今すぐ、この場で、殺し合おう」
「うん。ああ、解った。殺し合おう、獣の英雄。どちらかが死ぬまで、全力で」
遊びに誘うかのように軽く放たれた言葉をハジメ達が理解する前に、ソウジは遊びに誘われた子供のような笑みでフェアベルゲンに来てからずっと出していた剣を構えた。
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