強者がありふれた世界   作:超高校級の切望

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英雄を讃えよ、偉業を願う獅子蛇よ

 置いていかれた。

 追いつけなかった。

 共に駆けたかった。

 

 僕も何時か、彼等のように戦いの中で死にたい。強さを証明したい。してみせる!

 

 不老不死故に彼等と共に歩めなかった獅子は、それ故に極限の意志……渇望を宿す。

 

 棒振りだけで最強に至ってしまった彼が千年待ち続けた好敵手。永劫の生の牢獄を打ち壊すであろう竜を前に、叶えてやる義理などない身勝手な願いを聞いくれた剣士を前に、獣の英雄は覚醒する。

 

 

 

「……………あ?」

 

 神代魔法を持つハジメ達は感じ取る。理に触れる術者だけが理解した。今この瞬間、世の理が乱れた。

 

 本来なら全ての条件を満たして手に入れる理を追加する権利。それを、渇望が塗り替える。ソウジは理から逸脱し、故に膨大な気配を纏うレグルスに斬りかかる。

 

 己の状態を確認するかのように腕を見つめていたレグルスに反応を許さない超速。レグルスが気付いて動くには遅かった。

 

 が、()()()()

 

「がぁっ!?」

 

 ソウジより遥かに遅く動いてゆっくり振り上げた剣が先に斬った。

 因果が反転する。過去と未来が入れ替わる。

 

 背後に移動したレグルスへ剣を振るう。音を置き去りにする高速の斬撃をその絶技にて捌く。

 

 ステータス換算では恐らくレグルスは2000を超えるものは一つもない。だが、1000年鍛えた絶技はステータス数値など誰が決めたかしれない数値など一笑に付す。

 

「楽しいね」

「────!!」

 

 強者の余裕ではなく、本当に戦いが楽しくて笑うレグルス。

 ソウジも一方的に斬られている側とは思えないほど楽しそうに笑みを浮かべる。

 

「…………?」

 

 振り上げた腕が斬られる。剣は振られてなかったはず。

 

()()()()()

 

 そう言えばさっき、何もない場所に何故か剣を振るっていた。

 斬撃が残るような魔法ならソウジは感知できた。何の前触れもなく斬撃が出現した。過去から斬ってきたのだろう。それはつまり、シア同様未来が見えている。

 

 極所時間支配。それこそレグルスが自動再生という再生魔法の欠片を元に顕現させた逸脱魔法『英雄を讃えよ、偉業を願う獅子蛇よ(アインヘリヤル・アイオーン)』。

 

禍地(まがつち)禍炎(かえん)………!!」

 

 大地がひび割れ、炎が噴き出す。

 高熱のマグマが大地に刻まれた無数の堀を流れ、ソウジの敵を飲み込まなんと蛇のように飛び出した。

 

「〝獅子爪翔〟」

 

 切り刻まれる。無数の獅子の爪痕が大地に刻まれる。溶岩の中から飛び出して来たソウジが斬りかかるもそっと剣に触れ、受け流され、勢いを利用した蹴りを食らう。

 

 相手の力を受け流し利用する柔術の極致………()()()()()()()

 

 荒野の方向に吹き飛ばされ隕石でも激突したかのように山より巨大な土煙が上がる。レグルスは()()()()、吹き飛ばされたソウジを追った。

 

 

 

「あ、あの………異世界の方ってあんなに規格外なんですか?」

「それを言うならお前んとこの剣士もだろ………」

 

 香織とユエが貼った結界の中でその光景を眺めるハジメ達。この世界でも有数の実力者である彼女達の障壁がなければ、流れ弾ですらない余波で何度死んでいたか。

 

「この世界ラクショーとか俺TUEEEとか思ってたらこれだよ。異世界YABEEE………」

 

 核兵器持ってきても勝てねえんじゃねえか。そう思える相手と戦うソウジも中々だが。

 

「…………窮屈な思いさせてたんだな」

 

 本当に楽しそうに笑っていた。ベヒモスの時と同じだ。子供が雨の中泥だらけで遊ぶように血に汚れながら笑っている。

 

「…………遠いなあ」

 

 自分には無理だ。精神的な話じゃない。そりゃ戦いを楽しむなんて本来インドア派のハジメには理解出来ない。だが、理解出来ても意味がないのだ。

 

 だってハジメはソウジより弱いのだから。

 

 

 

 

 土煙の中をソウジが駆け抜ける。音速を超え、固まった空気は次の瞬間には破壊され土煙が吹き飛ぶ。ただの移動ですら万軍を蹂躙するだろう。

 

 対するレグルスは、土煙に揺らぎを生じさせない。空気すら揺らさぬ無拍子。音より速いくせに空気の壁をすり抜ける。

 剣を究めたという言葉すら侮辱にあたる至高の領域の先にある剣技。1000年の研鑽の果て。

 

「はあああああ!!」

「おおおおお!!」

 

 竜骨の剣と撃ち合う剣など本来はどこにも存在しない。神の刀ですら逆に砕けるだろう。

 そんな剣と打ち合えている理由はただ一つ。剣の時間を止めているのだ。折れず、曲がらず、それだけの剣でソウジと渡り合う。

 

 ()()()()()。神魔神仏からすれば瞬きの間でしかない時を実戦経験も少なくほぼ棒振りに費やした身でありながら、その剣は神にすら届くだろう。

 

「はは!!」

「!!」

 

 だが相手は竜だ。ソウジが振るった剣が空間を切り裂く。

 

「…………!」

 

 単純な理屈だ。ソウジがレグルスの領域に迫っている。

 千年ただ棒を振り続けるのと、1の実戦。どちらがより経験を積めるかなど、改めて考えるまでもない。ましてやその実戦の相手がレグルスで、それを受ける相手はソウジなのだ。

 

 嗚呼、なんて強い。まだ強くなるのか、君は!

 竜を名乗る剣士。なるほど君の強さは嘗ての竜人族達すら凌ぐだろう。真実厄災の化身、力の塊と讃えられるだけの力を持っている。

 

「〝空獅子(からじし)ぃぃぃ〟!!」

「〝空獅子(からじし)〟」

 

 世界を断つ2つの斬撃。技量ではレグルスが勝り、それを覆す圧倒的なソウジのスペック。

 

 打ち勝ったのはソウジ。概念すら断つ一撃は、レグルスの不死身すら断ち切った。

 

 嗚呼、本当になんて凄い!

 

 君と戦えたことはこの上ない幸福。異界の竜よ、君と戦えた事を誇りに、漸くあの世の皆に自慢……………()()()()()()()()()

 

 

 

『毎日振ってるがなあ、やっぱり実戦に勝る修行はねえぞ! 戦いは経験値だ!』

 

 知ってるよ。僕も、死病に侵されなければ毎日だって君達と共に戦場にいたかったさ。

 

『この若さで、これ程とは…………』

 

 違うよ。僕は君より年上なんだ。

 

『次だ。次ここに現れる聖騎士は、私より強い、必ずお前を!!』

 

 ああ、それは楽しみだ。

 

 

 強い奴と戦えたことよりも、勝って自慢したい。

 何よりもこの戦いを終わらせたくない。故に…………

 

 

 

「〝空獅子(からじし)ぃぃぃ〟!!」

「〝空獅子(からじし)〟」

 

 世界を断つ斬撃が放たれる。迎え撃とうとしたソウジの腕が切り裂かれた。

 

「…………あ?」

 

 また過去からの斬撃? いや違う。ここに斬撃は通っていない。

 

 鮮血に染まりながらソウジは混乱する。()()()()()()()()()()()()

 

「まだだ。終わってないよ、続けようよ!」

「…………ひひ。ああ、そうだなあ!!」

 

 獣の英雄と竜の転生者。戦いはまだ終わらない。




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