強者がありふれた世界   作:超高校級の切望

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ブルックの町

 フェアベルゲンにレグルスの遺体を送り、義理は済ませた。

 ソウジの服も《自動修復機能》により元通り。かなりボロボロだったが、流石オスカー製オルクス工房印入り!

 

 刻まれた術式ぶっ壊れたのに平然と術式まで復活してる。ハジメからしても意味が分からないレベルだ。

 

 とはいえ、これで街に入るのは問題ない。

 

「恵里に手紙の一つでも書いてやらんとか。一応、恋人だし………後、ハタセンセー」

「私も雫ちゃん達にも………」

「いやいや、待て待て。そりゃ駄目だ」

 

 ソウジの天職は神子。おまけに技能には神の寵愛。教会にて神聖しされて、死んだことになっていた神の子が実は生きてました、なんてなれば間違いなく教会の連中はソウジを担ぎ上げるだろう。

 

「邪魔なら潰せばよくない?」

 

 ザ、ドラゴン。

 

「殺す気で向かってくんならともかくなあ………」

 

 殺しに来たら殺してもいいや。

 

 南雲兄弟の対応に香織はあはは、と笑う。

 

 まあそういうわけで、あまり知られるわけにはいかない。なんならソウジは、いっそ偽名を名乗った方がいいかもしれない。

 

 後一緒に落ちたハジメや香織が生きていると知られるのも本来なら避けたいところだが…………まあソウジや光輝は兎も角、ハジメと香織の名は王城にしか知られていないだろう。

 

「まあそういうわけだ。ソウジ、町中では目立たないようにな。ほら仮面だ」

「おう」

 

 龍の骨をかたどった仮面で目元を隠す。ただの仮面ではない、ソウジの烏の濡羽の如き美しい艷やかな黒髪の色を変えるアーティファクトだ!」

「照れる」

「ん?」

「ハジメ君………」

 

 ハジメは最後の方、口に出していた。

 因みに髪の色はハジメとお揃いの白髪だぞ! ソウジは竜の力に目覚めてから目がホオズキの如く赤いからそこもハジメとお揃いだ!

 

「ハジメ、お揃いでうれしそう」

「ねー」

「………………皆さんが仲がいいのは何よりですが、私はあんまり楽しくありません」

 

 と、シアがぶーたれる。理由はその首についた首輪だ。

 

「でもシア、樹海に住んでたお前にはわからない感覚かもしれないがな、帝国兵いたろ? あれ、罪にならないから」

「ほえ?」

「つまり誰でもあれをしていいんだよ」

「……………え」

「ただ、その首輪があればシアは兄貴のものになるから、他人の物に手を出すのは駄目だろ?」

「は、ハジメさんのものなんて………」

 

 照れてクネクネしだすシア。香織とユエはむッと顔を歪める。

 

「わ、私も………ソウジ様の、物?」

「まあそうなるな」

 

 キャスはえへへ、とはにかむ。女子一同、かわいいなこの生き物と思った。

 

 キャスパリーグ。滅びの獣………一応はレグルスと並べられ両翼とされていたらしいが、ソウジ曰くユエ達以上、武装した兄貴未満とのことだ。何気にハジメでも素のスペックでは負けているらしい。まあ、ハジメはそもそも錬成師だし。

 

「拾ったからには責任は持つ。それが親の教えだ」

「拾ったって……そこはもう助けたからにはって素直に言ってあげましょうよ」

「いや、そこはほら。俺恋人(恵里)に人を助けること禁止されてるし………」

「恵里ちゃんが? え、なんで?」

 

 そりゃ、そう約束したからとしか言えない。

 

 

 

 

 そしてブルックという町に到着。門番にステータスプレートを提示する際、数値と技能を非表示にするのを忘れるというちょっとした問題は起きたが、問題なく通れた。

 

 ステータスプレートの紛失自体は簡単に話が通った。よくある話らしい。

 

 換金のために冒険者ギルドに向かえば美人の4人に加え仮面の性別不明を連れたハジメに多くの視線が集まる。

 

「女か………?」

「男にかけるね。じゃねえと気がどうにかなっちまいそうだ!」

「そうとも、男は一人じゃねえ!」

 

 騒がしい。それはハジメが樹海の魔物の素材を出した時により謙虚になった。

 

「先日の樹海から放たれた一撃や、樹海に向かう竜………何か知らないかい?」

「さあ? 怖いよな〜」

 

 あれで隠す気はあるのんですか? とシアが弟のソウジに視線で問いかける。ないよ、とソウジは首を振って返した。

 

 

 

 さて、そんなこんなありつつ受付嬢(おばちゃん)からもらった地図でおすすめの宿に向かう。マサカの宿という名前の宿で、まさかの出来事が起こった。

 

 なんと二人部屋と3人部屋しか空いてなかったのだ。そこまではまだいい。

 

「3人部屋2つでたのむ」

「な、なんだと!?」

「まさか、3人で!?」

「シアはキャスとソウジと同じ部屋」

「チィ! あっちもか…………待て、彼奴どっちだ!?」

「髪長いしなあ…」

「男の可能性も…………」

「俺仮面女子好きなんだよ」

「性癖の開示、本気だね!」

 

 周囲が騒がしい。後最後の……この世界、変態が多いな。そしてなぜそのネタを知っているのか。

 

「仕方ない。アハジメと香織、ユエが3人部屋でシアを床に転がしておこう」

「ころがっ!? ひ、ひどいですぅ!」

 

 シアが抗議するがユエは取り合わない。香織は私のベッドで少し狭いけど、と、提案する。

 

「だけどハジメ君に手を出したら駄目だよ?」

「ぴぇ………」

「手は出させないのは当然として、邪魔がいるとハジメと香織と出来ない」

「う〜ん。まあ、ユエのおかげかな。私別に見られるのはそんなに気にしないし」

「え、私、見るだけなんですか!? 私だってハジメさんとエッチなことしたいです!」

 

 エッチなことしたいです!

 したいです!

 です!

 

 ハジメがウジを見る目を向けた。

 

「二人部屋と3人部屋な。俺とオロチ……ユエ、香織、キャス。シアは倉庫にでも仕舞っとけ」

 

 

 

 さて翌日。シアとキャスに新しい服を買うためにユエと香織がついていく。そこで4人は未知なる生き物(漢女)に遭遇することになるのだが、それはまた別のお話。

 

 服屋の帰り、甘味屋で菓子を食べて昼間っから酒を飲んでいるソウジを見つけた。

 

「ソ………オロチ君、お昼からお酒?」

「飲んでない飲んでない。消毒作用のあるただのジュース」

 

 香織の言葉にソウジは酒は飲んでないと言い張る。思っきり飲んでる。

 

「服買えたんだ。似合ってるぞキャス」

「私は!?」

「ア…ハジメに最初に褒めてもらえ」

「そ、そうですね。そうします!」

 

 シアはむん、と気合を入れた。

 

「ハジメはチョロいから、押していけばそのうち落ちるぞ」

「え、そう? 結構時間かかったけど」

「前はな。今は違う………何故なら………ん?」

 

 何時の間にやら周囲に人だかりが出来ていた。すっごい邪魔だ。これでは進めない。

 

「シアちゃん、キャスちゃん、ユエちゃんに、香織ちゃんだよね?」

「むっ……」

 

 ソウジをスルーした事にキャスとシアの亜人コンビが眉毛を寄せユエ達も不満そうに男を見る。

 

 亜人族のシア達までちゃん付けした男。シアは戸惑い、ユエが何のようかと尋ねる。

 

 男は振り返り、他の男達に頷く。男達も覚悟を決めたように一歩前に進む。

 

 

「「「ユエちゃん、俺と付き合ってください!!」」」

「「「シアちゃん! 俺の奴隷になれ!!」」」

「「「香織ちゃん! 毎朝俺の飯を作ってくれ!!」」」

「「「キャスちゃん! 辿々しく罵ってくれ!!」」」

 

 なんとびっくり。大胆な告白であった。告白かなぁ、と思うのも無いわけではないが。

 

 というか奴隷の所有権は主人にあるのだが………先日のやり取りで奴隷が望めば幸せを優先してくれる主人とでも思ったのだろうか。後キャスに関しては意味が分からない。

 

「……シア、香織、道具屋はこっち」

「あ、はい。一軒で全部揃うといいですね」

「え、あ………ま、まあ色んなお店を回るのもいいと思うよ」

「ソ………オロチ様、行こう?」

「ん? 俺はもう少しここで飲んで食うぞ?」

「じゃあ、私も………」

 

 何事もなかったかのように歩みを再開するユエ、香織、シア。ソウジの隣に座るキャス。誰一人として男達の勇気に応えない。

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれ! 返事は!? 返事を聞かせてく──」

「断る」

「断ります」

「ごめんなさい、私、恋人がいるから」

「私、貴方達知らない………」

「……ぐぅ……」

 

 眼中にないその態度に男達は項垂れていく。周囲に四つん這いの男達が………ソウジは昔家族で行った動物園のヤギのふれあいコーナーを思い出した。

 

 さて、諦めが悪い奴はどこにでもいる。まして、4人の美貌は他から隔絶したレベルだ。暴走するものだって現れる。

 

「なら………なら! 力づくでも俺のものにしてやるぅ!」

 

 暴走男の雄叫びに、他の連中の目もギンッと光を宿す。4人を逃さぬ様に取り囲み、ジリジリと迫ってきた。

 

 そして遂に、最初に声を掛けてきた男が、雄叫びを上げながらユエに飛びかかった。

 

「あっ、ルパ○ダイブ」

「う、嫌な思い出が………」

 

 日本人のソウジとオルクス迷宮でのゴリラを思い出した香織が反応した。

 

 ユエは冷めた目付きで一言呟く(唱える)

 

「〝凍柩〟」

 

 直後、男が首だけを残して氷の柩に閉じ込められ、重力に引かれて落下した。

 

「グペッ!?」

 

 情けない悲鳴を上げて地面に転がる男。

 

 周囲の男連中は、水系上級魔法に分類される氷の柩を一言で発動したユエに困惑と驚愕の表情を向けていた。

 

 ヒソヒソと「事前に呪文を唱えていた」とか「魔法陣は服の下にでも隠しているに違いない」とか勝手に解釈していく。

 

 ユエは、ツカツカと氷の柩に包まれる男のもとへ歩み寄った。周囲には、ユエの実力に驚愕の表情を見せながらも、俺なら! と言わんばかり身構えている男連中がいる。なので、ユエは、見せしめをすることにした。

 

 ユエが手をかざすと男を包む氷が少しずつ溶けていく。それに解放してもらえるのかと表情を緩める男。さらに熱が籠っていったようで、先程よりも熱を孕んた瞳をゆえにむけた。。

 

「ユ、ユエちゃん。いきなりすまねぇ! だが、俺は本気で君のことが……」

 

 未だ氷に包まれながら男は更に思いを告げようとするが、その言葉が途中で止まる。なぜなら、溶かされていく氷がごく一部だけだと気がついたからだ。どこかって?

 

「あ、あの、ユエちゃん? どうして、その、そんな……股間の部分だけ?」

 

 そう、ユエが溶かしたのは男の股間部分の氷だけだ。他は完全に男を拘束している。嫌な予感が全身を襲い男が冷や汗を浮かべる。

 

「まさか、ウソだよね? そうだよね? ね?」

 

 そんな男に、ユエは僅かに口元を歪めると……

 

「……狙い撃つ」

 

 そして、風の礫が連続で男の股間に叩き込まれた。

 

 

───アッーーー!! 

───もうやめてぇー 

───おかぁちゃーん! 

 

 

 男の悲鳴が昼前の街路に響き渡る。周囲の男は、囲んでいた連中も、関係ない野次馬も、近くの露店の店主も関係なく崩れ落ちて自分の股間を両手で隠した。

 

 ソウジは無視して菓子を食ってる。

 

「ユエ、そこまでだよ」

 

 と、香織が止めた。

 

「それ以上は、本当に潰れちゃう」

「潰してしまえばいい」

「ユエ、今の貴方は王族じゃないんだよ」

 

 まるで王族として好き勝手振る舞っている、と言われたようでユエは思わずキッと香織を睨み、しかし自分を蔑むどころか心配する目に思わずたじろぐ。

 

「ユエには分かりにくいことかもしれないけど、痛いのは、辛いんだよ?」

 

──アレーティア。自動再生を持つ君は、きっといつか痛みを忘れてしまうだろう。だけど覚えておいてくれ

 

「『痛みを与えることになれないで』」

 

 嘗て叔父に言われた言葉を思い出すユエ。謝罪したから全てを許せとは言わないが、謝罪した相手を痛めつけることに愉悦を持つのを香織は見過ごせない。それはユエの為にもならないからだ。

 

「……………ごめんなさい」

「うん。貴方も、次からこんな事をしないで下さい。今回は私達のほうが強かった…………でも、冒険者の貴方は相手を簡単に傷つけてしまう。体だけじゃなく、心も………」

 

 そう言って男の傷を癒してやる香織。

 

「…………女神様」

「はい?」

「女神様! 俺、心を入れ替えます! 貴方の方が胸大きいし!」

「はい!?」

「あんな男と別れて俺と──」

「今ハジメ君ヲ馬鹿ニシタノカナ? カナ?」

「うぎゃああああ!? 足の小指の肘のあそことこめかみに謎の痛みがああああああ!?」

 

 ソウジは気にせず菓子を食べる。キャスにも食うかと渡そうとしたら何を勘違いしたのか口を開けるのであ~んしてやる。と…………

 

「オロチ、だったかな?」

「ん? おう」

「キャスちゃんをかけて俺と決闘しろ!」

「……………ほう? ほう、ほうほう! 決闘、決闘! 闘って、勝者を決めるか!」

「お、おう?…………おう!」

(おれ)からものを奪う為に、剣を取り戦いを挑むか! いいぞ。彼奴に比べて弱かろうと、俺は俺に挑む全てに応えよう!」

 

 ユエ達は思った。ご愁傷さま、と……。

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