「…………………」
「ソウジがモニョっとしてる!?」
竜に挑む勇士達をドラゴンらしく受けて立ったがどいつもこいつも挑んできておいて怯え逃げ出す。
普段ならまあ仕方ないで済ませていたのだろうが、レグルスという最期を求めて、しかし勝とうと全力で抗った勇士とやったばかりなので弱い物虐めしてる感じを本人が誰よりも感じたらしい。
「また戦いたいものだ………」
「彼奴並みの強さの奴等がポンポン現れなら勇者なんて必要ないと思うがなあ。まあ、吸血鬼の遺した2つの厄災とかもあるらしいが………」
少なくとも2つ、あの強さを持つレグルスが警戒する何かがあるということ。
「俺は素のスペックじゃこの中じゃ3位だしな。俺達は現状アイテムで強化するしかねえわけだ………」
と、ハジメが先ず最初にシアに渡したのはドリュッケンという戦鎚型アーティファクト。短い取っ手は魔力を流すと伸びるのだ!
「…………? そこ伸縮性にしたら強度が落ちるのでは?」
「頑丈な鉱石使ってるし………」
「だとしても、そこに収納するスペースをもっと有効活用出来るじゃないか」
「……………持ち運び」
「宝物庫があるのに?」
「〜〜〜〜! かっこいいと思ったんだよ、悪いか!」
「なるほど、変形機構はロマンか………俺の剣にも付けるべきか。こう、開いて厄災を放つとか」
因みにソウジの 技は主に漢字の『禍』が入る。その辺りにこだわるのは両親の影響だろう。
「ハジメ君、私はいいと思うよ!」
「ん、元気出して」
「わ、私もかっこいいと思ってますよぉ!」
ハジメの事が好きな女達が慰めていく。
「つーか、お前の剣改造できるのか?」
「ははは。兄貴、お前自分の骨自由に形変えられるのか?」
「普通はそもそも外に出せねえけど………まあできないって事は伝わった」
そして一同はライセンの迷宮を探す為に再び大峡谷へ。
オスカー曰くミレディ・ライセンの迷宮があるらしい。
魔力分解が起こる魔法の使えぬ地。魔法という人類が魔物に抗う術を奪うこの地での試練。これまたオスカー曰く『初心者向け』。
なんなら本来は一番最初に攻略される予定の迷宮らしい。まあそんな迷宮を探す事すら困難なのだが………。
「一撃必殺ですぅ!」
シアがドリュッケンで魔物を叩き潰す。兎が………ハンマー、叩きつける…………今は夜なので月も出ている。
「…………ペッタンコ」
「!?」
ポツリとソウジが呟くとユエがハッと胸を押さえて振り返りソウジを涙目で睨む。かと思えばズーンと落ち込み始めた。
「ユエ、違うよ! 今のは違うから元気出して、ね!」
ゆささ!
「しっかりしてくださいユエさん!」
たぷん!
「〜〜〜〜〜!!」
ユエが二人に襲いかかりその胸を揉みしだく。何してんだろ彼奴等、と目を向けるソウジ。
「キイイイイ………」
敵がいる場所で騒ぐユエ達にハイベリア達も呆れる。ソウジ達が大峡谷に来た際に、やってきたのだ。
ソウジと何やら話し合い、ソウジ曰く交渉の末移動の際に背に乗せてくれることもなった。
交渉内容は魔物の討滅。子育てに備え縄張りを変えたいとのことだ。時折降りて野営をする。その際に周りの魔物を狩り、その肉はハイベリア達と分ける。
「キキィ、キイ………ギイイ!」
と、この前長にしばかれていたハイベリアがやってくる。長いわくあの一件以来危機感を持つようになり、群を率いる次の長に相応しい考えをするようになったとか。
「ふむふむ。なるほど………この近くに横穴があるってよ。そこに入った魔物を出てくるの待ってたけど何時の間にかいなくなってたって」
「もしかして………」
そして一行はその洞窟へと入っていく。ソウジはハイベリア達が見えなくなるまで手を振っていた。竜種として何か通ずるものがあったのだろう。普通に話してたし。
さて、ハイベリアが示した場所は洞窟というよりは窪みだ。崖に向かい倒れた大きな一枚岩と崖の隙間にある。動物からすれば左右に壁、上にも岩があれば洞窟なのかもしれない。
見つけやすいと思えるが、前提条件として魔法の使えぬライセン大峡谷で、飛行魔物に乗っても数日かかる距離を歩かなくてはならない。そう考えればまあ、キツイだろう。
「「「「…………………」」」」
窪みの壁に刻まれた〝それ〟を見てハジメ達は顔を見合わせる。
〝おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪〟
丸っこい女の子らしい文字が刻まれている。オスカー曰くミレディ・ライセンは確かに女性と言っていたが…………。
なんでこんなにチャラいんだろう? 仮にも神に逆らった集団のリーダー。明るいとは聞いてこそいたが、ハジメ達の中では女傑として固まっていたのだろう。
ソウジは壁をコンコン叩いていると不意にぐるりと壁の一部が回転した。
「おお」
パタンと閉じソウジの姿が消える。
一方ソウジは飛んできた黒塗りの短矢を受け止めていた。数は20。暗闇で見えにくいが、ライセン大峡谷の中域を数日歩ける人間を殺せるほどの威力があったとは思えない。
そこは10メートル四方の部屋で奥へと真っ直ぐに整備された通路が伸びていた。そして部屋の中央には石版があり、看板と同じく丸っこい女の子文字でとある言葉が掘られていた。
〝ビビった? ねぇ、ビビっちゃった? チビってたりして、ニヤニヤ〟
〝それとも怪我した? もしかして誰か死んじゃった? ……ぶふっ〟
「むむ、精神攻撃か…………」
オスカーがミレディについて話す時ムカついていたのは仲間にもこういう性格だったのかもしれない。
とはいえ先ずはハジメ達と…………。
「……………………」
ピタリと足が止まる。瞳孔が縦に裂けた竜の瞳が迷宮の奥へと向けられた。
「ソウジ!」
最初に飛び込んできたのは当然ハジメ。弟の姿を探すが、いない?
「また勝手に、あの野郎!」
ハジメは呆れると同時に、嫌な予感がしていた。
ソウジが勝手にいなくなるとはつまりソウジの興味を引く何かがあったということ。
キャスだって素のスペックではハジメを凌駕するらしいし、その後ソウジが興味を示したレグルスはあれだった。
この迷宮に、それだけの何かがいると言う事だ。
ライセン迷宮。奥の奥。
それは蠢いていた。歩いていない。立っていない。大凡生き物の形をしていない肉の塊。ズリズリと自重で押し付ける肉を石畳で削りながら、時折作動した罠に傷をつけられ、しかしすぐに再生する。
迷宮内を彷徨い続ける異形。それは300年前から迷宮に封じられた存在。ライセン迷宮を正しく
「混じってるな………いや、一つ? なんだこれ」
肉塊の動きが止まる。目の前に何かが現れたからだ。
時折迷い込む魔物とも、ある場所に近づくと襲ってくる人形とも異なる存在。
キレイだなぁ………顔につけていた仮面を取りマジマジ見つめてくる生き物に、肉塊はそんな感想を抱く。
こんな姿に成り果てた自分がこの生き物の前にいるのが恥ずかしい。
だから、嘗ての姿に自身を変成していく。
肉塊の一部が剥がれ、白魚のような指が生え、地面を掴み肉塊から自らの体を引きずり出す。べチャリと溢れ出した体液で濡れた床を足が踏む。
美しい金の髪を流し、豊満な胸が揺れ、ペタペタ自分の顔を確認していき目が無いことに気付き赤い瞳を生み出す。
「わ、わた「わたし「わた」た」わたしは「た」「わ「わ「た」たし」………
一つの口から奏でられ声は全く同じでいて複数人の声。ソウジはジッと言葉を待つ。
「私達は、
「南雲ソウジ。それで、どうしてここに?」
「私達は此処に押し込められました。ここは魔法が使えません。私達は出られなくなりました」
英文を翻訳してるみたいだ、と感じるソウジ。言葉がやけに機能的というか。
「
「はい。私達は大勢なのですから」
謎の美少女アレーティアちゃん
彼女は何者なのだろうね?
ちなみに見た目は最終決戦ユエinエヒトと普段のユエの中間ぐらい。