その後何やら浮かぶ台座で地上へ降りた。どうやら標高の高い山の上にいたらしい。
神山と呼ばれる山の麓に存在する国の名はハイリヒ王国。勇者達を受け入れる準備をしているらしい。
その国の王は謁見の間にて立って待っていた。イシュタルの手にキスしたりと、この世界では神の権力が強いらしい。
「実在するならそうだろうよ。別に歪でもあるまい」
居もしない神を崇めて誰が作ったともしれぬ法を絶対とするならともかく姿を見せないとはいえ異世界に干渉するだけの力を持つ神がいるなら被造物はそれに従う事に歪みなどあるまい。
「え? ああ、そうか………ここ、神様がいるんだもんね」
「まあその神が本当に全能者かは知らんし、仮にそうでも他所の我々には関係ないことだが」
「教会の人達の前では言わないでね………」
そのまま話は進んでいき歓迎の宴が催される。
後、一先ず衣食住は保証されるらしい。まあ異世界から呼んで戦えと言っておいて其れ等を保証しないとか意味不明だし。
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翌日。早速訓練が始まる。まずは自分の客観的なステータスを知るためにとステータスプレートというアーティファクトが渡された。これは身分証にもなるらしい。
そう説明したのは「これから戦友になろうってのにいつまでも他人行儀に話せるか!」と豪放磊落な様子で笑う男、騎士団長メルドだ。
「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 〝ステータスオープン〟と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」
「アーティファクト?」
アーティファクトという聞き慣れない単語に光輝が質問をする。
アーティファクトと言うのは、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のこと。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われているそうだ。
そのステータスプレートもその一つであり、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクト。
普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからだ。
ソウジは早速血を垂らしてみる。
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南雲ソウジ 17歳 男 レベル:1
天職:神子
筋力:990
体力:850
耐性:860
敏捷:780
魔力:1900
魔耐:2000
技能:
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最初の3つを読んでタンク型と思いきやどちらかと言うと魔法寄りのステータスだなとハジメは見せてもらいながら思う。因みにハジメは
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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1
天職:錬成師
筋力:10
体力:10
耐性:10
敏捷:10
魔力:10
魔耐:10
技能:錬成・言語理解
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である。弟の差がすっごい。
落ち込んでいる間にもメルドの説明は続く。まずレベルは上がるとステータスが上がる、ではなくステータスが上がるとレベルが上がり100に達すればそれは限界まで己を鍛え上げた結果らしい。
ステータスは日々の鍛錬か魔法や魔法具で増やせるらしい。因みに魔力が多いものほどステータスが優れている傾向にあるらしい。ところでレベル1の平均は10って………ははぁん、これ自分はチートねぇな?
まあ弟はすんごいチートだけどね! でも神の寵愛ってすんごい不安なんですけど。
で、天職は分かりやすく言うなら才能。技能はそれ紐づいた物が多いらしい。もちろん火属性適性を持つ『剣士』だっていたりするわけだが。
さて、説明が一通り終わるとまずは光輝が呼ばれる。
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天之河光輝 17歳 男 レベル:1
天職:勇者
筋力:100
体力:100
耐性:100
敏捷:100
魔力:100
魔耐:100
技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
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「弱いな………」
「ソウジが強すぎるだけだよ………」
実際メルドはめちゃくちゃ褒めているし。
他の生徒達も中々チート揃い。ハジメは異世界人ディフォルメの言語理解のみ。ところでうちの弟だけ超越言語ってなってませんかねぇ?
順番は進みハジメの番。ホクホク顔で新たな規格外ステータスを楽しみにしていたメルドはんん? と首を傾げた。
見間違いや故障を疑ったのかコツコツ叩いたり光に翳したり。
「ああ、その、なんだ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか……」
歯切れ悪くハジメの天職を説明するメルド団長。
その様子にハジメを嫌っている男子達が食いつかないわけもなく。鍛治職ということは明らかに非戦系天職。クラスメイト達全員が戦闘系天職を持ち、これから戦いが待っている状況では役立たずの可能性が大きい。
檜山大介が、ニヤニヤとしながら声を張り上げる。
「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦系か? 鍛治職でどうやって戦うんだよ? メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」
「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」
「おいおい、南雲~。お前、そんなんで戦えるわけ?」
そのままステータスを見せろとメルドからステータスプレートを奪い、その低いステータスにゲラゲラと笑う。
「こらー! 何を笑っているんですか! 仲間を笑うなんて先生許しませんよ! ええ、先生は絶対許しません! 早くプレートを南雲君に返しなさい!」
ちっこい体で精一杯怒りを表現する愛子先生。その姿に毒気を抜かれ、プレートがハジメに返された
愛子はハジメに向き直ると励ますように肩を叩いた。
「南雲君、気にすることはありませんよ! 先生だって非戦系? とかいう天職ですし、ステータスだってほとんど平均です。南雲君は一人じゃありませんからね! ほらっ」
そう言って愛子はハジメに自分のステータスを見せた。
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畑山愛子 25歳 女 レベル:1
天職:作農師
筋力:5
体力:10
耐性:10
敏捷:5
魔力:100
魔耐:10
技能:土壌管理・土壌回復・範囲耕作・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混在育成・自動収穫・発酵操作・範囲温度調整・農場結界・豊穣天雨・言語理解
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とどめを刺された気分だ。
「凄いな、畑山先生。なんというか、名前に相応しい天職。これで『私の生徒に手を出したら作物枯らすぞ』と落とせば戦争に参加したくない奴等の不参加を勝ち取れる」
「だ、駄目ですよ!? 皆さんのご飯がなくなっちゃいます!」
だから脅しになるんだろう。
ハジメは僕は役に立ちそうにないなぁ、と落ち込む。
「兄貴、別に戦う必要もないだろ。非戦闘職なら後方支援をしてもらえばいい」
「何を言ってるんだ! 皆が戦う中、1人だけ安全な後ろにいるなんて!」
「確かによくないな。異世界の子供が戦う中後ろにいる連中と一緒に前線に引きずり出すべきか」
「俺達には戦う力があるんだぞ!」
「? 兄貴にはないだろ」
此奴は何を言っているんだろうか、と言いたげな顔を向けるソウジ。
「此奴は何を言っているんだろうか」
あ、口に出した。
「言ってることはコロコロ変わるし、話している内容は空っぽだな、お前。自分が一番正しいと思い込んでそれ以外を過ちだと勘違いしてやがる」
「それがなんだ。俺は間違ったことを言ってないだろ!」
「戦う力のない者も戦えというならこの世界の連中にも戦わせろ。戦う力が無い奴を戦わせるのは可哀想だというのなら兄を戦わせるな。反論があるなら言ってみろ」
「む、ぅ…………ク、クラスメートが戦ってるのに1人だけ………」
「お前クラスメートを守るって言ってたよな?」
皆は俺が守るよ、キラッ! と宣っていた光輝。なのに戦う力がなくても皆のように前に出ろは矛盾している。
「へっ、そう言って戦いたくないから適当言ってるだけだろ! 兄貴でこれだもんなぁ、お前はどんな雑魚なんだ!」
と、檜山が叫ぶ。ソウジはほれ、とステータスプレートを見せてやる。
「こ、これは!? 全部勇者を大きく超えるステータスに、レベル1で4桁が2つも!? 4桁ってマジか! それに、神子に神の寵愛だとぉ!?」
ところで神子って神職につく女の事じゃなかったか。いや、巫覡も含まれてはいるか。とはいえ何よりの問題は神の寵愛。
神のいる世界でその寵愛を受ける者など面倒事の匂いしかしない。
メルドは大慌てで走っていき、しばらくすると司祭がやってきた。ステータスプレートを見てドバドバと滂沱の涙を流す。
「神の子よ………どうぞ我が目をお潰しください。最後に見る光景が貴方様であるのなら、この上ない幸福でございます」
跪き靴にキスしようとした司祭を蹴りとばすソウジ。気持ち悪いよね、仕方ないよ。
「お前! なんてことをするんだ!」
「おお、神子様が直々に私に傷をつけてくださった!」
光輝が叫ぶが、とうの司祭はなんか喜んでる。一応は上司だろうにその司祭を無視して一人の女が前に出てくる。銀の髪と瞳を持つ美しい修道女だ。
「アウスナメと申しますわ。神子様のおはようからお休みまで、胎盤から死後の世まで誠心誠意お仕えし従い、支配され、尽くすことこそ我が本懐。身も心もお捧げいたします。どうぞ心ゆくまでお使いくださいな」
優雅なカーテシー。言ってることはくっそ重い。
「はぁ? それは僕の役目なんだよ。引っ込め、ポッと出のクソ激重女。重い女はもう僕達がいるんだよ」
と、恵里。重い自覚はあったらしい。