仮面ライダー龍騎 ~EPISODE Kanon Another~   作:龍騎鯖威武

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第2話 「雪の街」

 

 

朝の7時頃、一人の赤と黒を基調とした服を着た少年が年季の入った橙色のスクーターを走らせている。

「7年ぶりかぁ…」

 

「龍崎竜也」

 

この物語の主人公である。

彼は7年ぶりに自分の故郷「雪の街」に帰ってきたのだ。

…というのも、彼はある事情で、ふるさとを離れなければならなかった。

彼がこの街に戻ってきた理由は二つ。

一つは、行方不明や神隠しをはじめとした怪奇事件がこの街で頻繁に起こり始めたため。

もう一つは、最近ある夢を見るからである。

夢の内容はこうである。

 

 

7年前の幼い日の自分が泣きじゃくる少女をなだめ、一緒にたい焼きを食べている。しかし、その少女の名前も顔もまったく思い出せないのだ。まるで記憶の中から誰かが意図的に抜き取ったかのように。

 

 

この夢に竜也はどうしても思い出せない7年前の記憶にまつわるのではないかと思い、この夢の真実を突き止めるため、そして怪奇事件を「防ぐ」ためにこの街に舞い戻ったのだ。

 

この街に来てから30分もせずに、自分が住んでいた家に到着した。

あまり大きくなく、標準の家よりやや小ぶりであるが、両親との思い出が詰まった大切な家である。

そこには沢山の郵便物が詰め込まれていた。ほとんどが、広告やチラシである。

持っていた鍵を開けてドアノブに手を触れ、握りしめる。

もしかすると、そこには両親がいるかもしれない。

少しの時間をかけてドアノブを回し、扉を開いた。

しかし、彼を迎えたのは家具と誇りだけであった。

「いるはず…ないよな」

両親とは別れた。

と言っても、喧嘩別れや勘当されたわけではない。

彼の身には危険が降りかかる。それから両親を守るために自ら離れたのだ。

その後の両親がどうなったかは知らない。何も言わずに彼らのもとを離れたため、おそらくは自分のことを探しているのだろう。

まず彼には、主のいなかった家の大掃除が課せられた。

幸い、家の中に掃除道具は不都合のない程度だが揃っており、掃除は何とか行えるようだ。

…一人なので、かなり時間がかかるようだが。

半日経った夕方頃、家の掃除が終わった竜也は、まず自分が空腹であることに気がついた。

「お腹すいた…」

彼は自分で稼いでいた。幸い手先が器用であり、購入した材料で作った編み物、小物等を売ることで収入を得ていた。決して楽ではない、生活するためにギリギリの収入だ。

彼は食材を買う為にスーパーまで歩くことにした。

街は7年前とずいぶん変わっていた。当時、よく遊びに行っていた商店街も、随分と風変わりした。

そして…

 

「…スーパーが無くなってる」

 

スーパーマーケットがあった場所は本屋になっていた。今現在、どこに何があるのかさっぱり分からない。時間の経過の恐ろしさを竜也は身に染みて感じた。

「探し歩いてみるか。駄目だったときは、誰かに聞けば良いし」

「ねぇ」

ふと声を掛けられた方を向くと、そこにいたのは同い年くらいの2人の男女だった。

少年のほうは竜也よりほんの少し背が高く中性的な顔つきであり、少女のほうは腰までかかる青い髪で少々眠そうにしていた。どうやら声をかけてきたのは少女の方らしい。

「君、もしかしてスーパーを探してるの?」

「名雪、よせ。関係ない人間に声をかけると、面倒なことになるぞ」

少年がそっけなく名雪と呼ばれた少女を止める。だが、それは何となく本心で言っている様ではない。竜也にはそう見えた。

「祐一、ひどいよ…。スーパーなら、わたし達も今行くところだったの。よかったら一緒に行く?」

「良いの?」

「もちろんだよ。困った時はお互い様だよ」

「名雪、知らない奴について行ったら、誘拐されるぞ」

対する祐一と呼ばれた少年は、名雪のように素直な親切はしないが、よく冗談を言うのだろう。

「わたし、もう子供じゃないよ」

「い、いや、おれ誘拐犯じゃないんだけど…」

困りながら祐一の言葉を否定するが、彼はそんなことお構いなしに続ける。

「分かったよ、名雪に免じて道案内してやる。誘拐犯」

「いやだから…」

変わった二人組みだと竜也は思ったが、今は相沢祐一と水瀬名雪に頼むしか方法はなかった。

…実際、交番の道も分からなかったので。

 

歩いて十数分ほどすると、スーパーに辿り着いた。

「7年前とだいぶ変わったな。あの頃と全然場所が違うし。ありがとう、祐一に名雪さん」

竜也は、この時間の間に親しくなった二人にお礼を言った。

「気にするな、迷子の一人や二人、朝飯前だ」

「そうだよ~。イチゴサンデー前~」

「何でイチゴサンデー…?」

竜也は疑問があったが、買い物をするうちに忘れてしまった。

その後はそれぞれ、家路に着く。

「またね~。今度、うちにおいでよ」

「だったら、機会があったらお邪魔するよ。じゃあ、またね」

「さらばだ、孤独な少年。おれは家族のいる暖かい家庭へ帰ることにする」

「祐一、極悪人だよ。もう、早く行くよ」

「うお、引っ張るな名雪!買い物袋が落ちる!」

「はは…」

竜也は、人一倍寂しがりやであり、孤独でいるのは苦手だった。今では随分慣れたが、嫌いであることに変わりはない。祐一に悪意はないだろうが(からかうつもりはあったが)、先ほどの一言がひどく辛く感じた。

先ほどより重く感じる買い物袋を持って、改めて家路に着く。

と、そこへ…。

 

「そこの人っ!」

 

幼そうな少女の大きな声が聞こえる。だが竜也は、その声が自分にかけられたモノとは思わず、無反応だった。

「どいて、どいて~!」

「…?」

2度目の声でやっと気づくが、時すでに遅し。少女は目の前だった。

「うわぁ!?」

「うぐぅ!どいてぇ!」

 

ドシンッ!

 

「いって!」

「うぐっ!」

二人はものすごい勢いでぶつかり、竜也は豪快に尻餅をつき、少女は竜也の上に倒れた。

 

「あたた…あっ、大丈夫!?」

「うぐぅ…痛いよぉ…」

竜也の目線の先には、赤くなった鼻をミトンの手袋でさする、ダッフルコートに赤いカチューシャの少女がいた。手に持っていた紙袋はとても温かそうに見えた。年齢はよく分からないが、竜也より年下だろうか。

「ごめんね。怪我はない?」

「ひどいよぉ、避けてって言ったのに…」

自分のことを非難する少女だが、鼻が赤くなったこと以外に外傷はない。無事だろうと判断した。

だが、だからと言って何も言わないのであれば、なんとなくこの少女に悪い気がしてとりあえず謝る事にした。

「ほんとにごめんね。考え事してて・・・」

適当な理由をつけておけば、その罪悪感は薄れると考え付け加える。

女の子を半泣き状態にまでさせるとは、どうやら、今日はツいてないらしい。

「あっ!話しはあと。走って!」

「へ?うわっ!ちょ、ちょっと!?」

少女に強引に引っ張られ、家路とはまったく違う方向に連れて行かれた。

 

少女は、竜也を連れてどんどん進んで行く。

辺りは夕日に染まり、道に少し残っていた雪は橙色に煌いていたが、竜也と少女にはそれを気にする余裕がなかった。

「待って、どこまで連れて行くつもり!?」

「いいから走って!」

 

それからどれくらい走っただろうか…。

近くにあった喫茶店の中に入った。「百花屋」という名前だった。この店は7年前から存在している。よく両親と外食に出かけていた。

二人は店に入って、すぐ傍にあった2人がけの誰もいない席に座った。

「はぁ…はぁ…ここまでくれば…もう大丈夫だね…」

「ぜぇ…ぜぇ…いったい、何がどうしたの?まったくわけが…」

理由を尋ねようとすると、少女の表情から全力疾走による疲労感が消え、不安、恐怖、焦りを代わりに浮かべた。

「追われてるんだよ…。キミも一緒に走っているところを見られたとしたら、キミも危ないよ…」

少女は思いつめた顔で、竜也の質問に答えた。

彼女の表情からして、只事ではないと竜也は感じた。彼女は危険な目に遭っている。自分にも危険が及ぶほどだから、相当危ない筈だ。

 

もしかしたら、自分が追う行方不明事件と繋がりがあるかもしれない。

 

不意に、ウェイトレスがメニューとお絞りを持ってやってきた。

…竜也は喉がカラカラで、一刻も早く水が欲しかったが、残念ながら、彼女は持ってきていなかった。

「いらっしゃいませ、ご注文は…」

「しーっ!あとで…!」

少女が追い払おうとするが、竜也はそれを引き留める。

「あ、店員さん、水ください。この娘の分もお願いします」

「かしこまりました。少々お待ちください」

ウェイトレスが離れると、竜也は本題に入った。

この少女の事情を聞かないことには、彼女の危険を取り除いてやることも出来ないだろう。

「ところで、追われてるって一体…」

「…あっ!」

竜也が少女に尋ねると彼女は外を見て、不意に顔を隠した。竜也が外に目をやると、辺りを見まわすエプロンをつけた男性が見えた。中年くらいの男性だが、彼からは悪意は感じられない。というより、とても気前が良く、優しそうな男性だった。視線を戻すと、いつの間にか水が置いてあった。少女はずっと顔をテーブルにつけたままであるのをみると、まともな挨拶は出来なかっただろう。

竜也は少し申し訳ない気持ちになりながらも、その話題には触れずに最初の話題に入った。

「追われてるって、あのエプロンをつけたおじさんに?」

「…うん」

「おれの見る限りでは、優しそうなおじさんだけどなぁ…」

「人は見た目で判断しちゃだめだよ…!」

声は小さいが、強く言う少女に押されて、何故か少し納得した。しかし、エプロンをつけているところがどうしても解せなかった。

「あの人、何でエプロンつけてるのかな?」

「たい焼き屋さんだからだよ…」

「…たい焼き屋?」

たい焼きという言葉とともに、視線の先にあった紙袋を見て、竜也には嫌な予感がした。

事情を聞いてみると、

「あのおじさんのたい焼き屋さんでたい焼きを買ったんだ。…でも、お金がないことに気がついて…」

言葉を遮ることはしなかったが、ここまでの内容からすると全て予測できる。彼女があんなに急いでいたのも、これが原因だったのだろう。

「そのとき、猫ちゃんがやって来て、置いていたたい焼きをつまみ食いしようとしてたの…。そしたら、おじさんがものすごい怒って、それで怖くなって…」

「走って逃げて、おれにぶつかった?」

「…うん」

決まった。この娘は食い逃げで自分は悪事に手を貸した。彼女に悪気があるかどうか置いておくが。

「いや、それって…食い逃げだよ」

「うぐぅ、他にも理由があるんだよぉ」

「理由?」

「複雑な事情なんだけど…」

「聞くよ。言ってみて?」

「話せば長くなるけど…」

「大丈夫、時間はあるから」

彼女の理由がまともである事を期待して聞くが、その答えは・・・

 

「すっごくお腹がすいてたの」

 

…続きが語られない。

「それで…」

「それだけ」

「それだけ?」

「それだけ」

 

3分後。

「うぐぅ~!」

竜也は少女の手を引っ張りながら、たい焼き屋まで歩みを進める。彼は人一倍正義感が強いので、こういうことは解決しないと気が済まないのだ。

「ほら行くよ!たい焼き屋さんに謝らないと!」

「明日、ちゃんと行くも~ん!」

「明日じゃダメだよ!おれも一緒に謝るし、お金も払ってあげるから!」

とは言え、この少女が悪い子には見えなかったので、一緒に謝ってあげるつもりだ。

 

たい焼き屋さんに謝った後…。

「やっぱりたい焼きは焼きたてが一番だよね!」

「そうだね…」

たい焼き屋のおじさんは、自分が怖がらせてしまったと言う事から、あっさりと少女を許した。

だが、少女は懲りていないのか、謝った後はまるでキラキラするような笑顔でたい焼きをほおばっている。しかし、彼女の笑顔を見ていると責める気にはなれない。むしろ、一緒に笑いたくなる。

そう思っていると、ふと気がついた。ここがどこだか分からないのだ。

「…ところで帰り道は?」

「え?ボクはキミについていってるだけだよ?」

「おれも同じ…ってことは」

竜也にとって今日は厄日のようだ。

「もしかして君も知らないの?」

「おれ、今日この街に帰って来たんだ」

「帰ってきた?」

少女は不思議そうな顔で尋ねるが、その表情は気にせずに答えた。

「うん。7年前までここに住んでたんだけど、しばらく遠くに住んでたから、この街のことがよく分からないんだよ…。随分と変わってたし」

竜也の言葉に少女は期待するような表情に変わる。

「もしかして…竜也くん?」

「え…どうしておれの名前を?」

その直後、少女は少し涙ぐむ。

「やっぱり…あの時と似てたもん。ボクのこと心配してくれるし、優しいし・・・」

「一体、君は…!?」

続きの言葉を紡ぐ前に、頭の中で閃光が瞬く。それと同時に軽い頭痛を伴った。

「痛っ…!」

「だ、大丈夫?」

そして、心配そうに自分を見つめる少女を見た途端、痛みの引きと共に一部の記憶が鮮やかに蘇った。彼女のことがすぐに分かった。目の前に居る少女こそ、夢の中で出会う少女だった。少し成長しているようだったが、面影はしっかりと残っていた。彼女の名前は…

「…あゆ?」

そう「月宮あゆ」だった。彼女は、幼い日に出会ったあゆだったのだ。

「うん、そうだよ!」

「久しぶりだね…あの時とぜんぜん変わらないね」

「うん、キミも…おかえり、竜也くん!」

感極まった彼女は、竜也を抱きしめようと両手を広げて走り寄ってくる。

だが…

「あ、あゆ!」

「うぐ!?」

それを手で止めた。拒絶のつもりではなかったが、理由はただ一つ。

「わ、びっくりです」

…とおりすがった少女に見られたからだ。なんとなく恥ずかしい。そんな気持ちからあゆの行動を止めた。

「あっ…」

あゆもその少女の視線に気づき、顔を真っ赤にしてあわてて竜也から離れた。思い返すとやはり恥ずかしいのだろう。

「あ、ごめんなさい。では」

ストールを着た少女は気まずそうに、この場から離れようとする。

竜也はボーっと彼女の姿を見送るが、そこでふと思い出した。

「あ、ちょっと待った!」

「はい?」

「帰り道を教えてくれないかな…」

彼女に道を尋ねなければならない。自分たちは迷子だったからだ。

 

彼女は道案内をするとともに、この町のいろんなところに何があるのかを教えてくれた。これで道に迷うことはないだろう。

道案内をしていく間に誤解は晴れ、さらに互いの自己紹介もした

ストールを着た少女は「美坂栞」。竜也より一つ年下で、この近くの高校に通っているらしい。彼女はとてもロマンチストな性格で、竜也とあゆの再会を「運命の再会」とまで言うのだ。

「カッコいいですね。運命の再会って」

「運命ってそんな…」

「うん!ボク、竜也くんにいつも会いたかったもん」

二人の少女は共感して笑い合っているが、竜也はそれに困り果てている。

そのとき…

 

キイィィン…キイィィン…

 

 

竜也にしか聞き取れない音が聞こえた。何時しか、竜也の顔は険しいものとなる。

「どうしたんですか竜也さん?」

栞が尋ねるが、竜也の耳には入ってこない。なぜなら耳鳴りのようなその音に集中しているからだ。対照的にその音が聞こえない栞たちは、竜也の表情の変化に困惑する。

 

 

刹那

 

「キシャアアアアアア!」

「「きゃあああっ!」」「危ない!」

蜘蛛のような姿をした、異形の生物が現れた。だがそれは物陰等ではない。窓ガラスから飛び出してきたのだ。

「だあぁっ!」

ドガァッ!

「グェッ!?」

竜也は二人を突き飛ばして異形から守り、次に異形を蹴ることで窓ガラスの中に再び戻した。

「何だったの!?」「オバケ…!?」

あゆと栞はその怪物に怯えるが、竜也はそうはいかなかった。彼には役目があるからだ。

「逃げて、早く!」

竜也は今まで何度もそうしてきたように、二人を逃がした。しかし、二人とも竜也の事が気がかりで、近くの物陰から見ていた。

 

そして、彼女たちは目撃する。もう一つの異形を・・・。

 

竜也は手のひらに納まるほどの黒く長方形の物体を取り出す。それには龍の顔のようなレリーフが刻まれていた。

それを窓ガラスの前に突き出すと、窓ガラスに映った竜也の腰に白銀のベルトが現れ、それと同時に実際の竜也にもベルトが装着される。

「え…!?」

 

「変身っ!」

 

竜也がそう叫び、手に持っていた「カードデッキ」をベルトの中央に装填する。

3つの銀色をした虚像がオーバーラップするように現れ、竜也を眩い光で包み込む。

あゆと栞の眼に竜也の姿はもうなかった。そして居たのは、赤いスーツを身に纏った異形だった。

名は仮面ライダー…「仮面ライダー龍騎」。

「しゃあっ!」

意気込んだ龍騎は、異形を追って窓ガラスに飛び込んだ。

雪の街に、龍の騎士が降り立った瞬間だった…。

 

 

 

 

 

 

 

続く…。

 

 

 

次回!

 

                          龍騎…

 

仮面ライダーナイト…!?

 

                          竜也くんは何をしているの!?

 

今見たことは忘れて欲しい。

 

このカードがあれば、あの怪物から身を守れる。

 

約束だよ…。

 

                          ボクは…見ないフリできない!

 

第3話「力になりたい」

 

 

 

戦わなければ生き残れない!

 

 

 

 




キャスト

龍崎竜也=仮面ライダー龍騎

月宮あゆ

相沢祐一

美坂栞
水瀬名雪

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