遊戯王5ds Seven Later 〜龍亜龍可兄妹とアナザー疾走決闘録〜 作:SOD
(5dsは)初投稿です。
続きは高評価が来たら考えます。
ジリリリリ…………!!!!
けたたましい爆音か鳴り響いている。音の元凶は雇い主の起床を健気に待つ哀れな目覚まし時計だ。
「グオオオオオ〜!!!!!」
目覚まし時計の健気な
これがもし安アパートや学生寮などであったなら、苦情やご近所トラブルの一つも引き起こしたことだろう。だがここは金持ち、セレブ、VIPの住まう土地。ご近所トラブルなどと言う負け組貧困層の悩みとは無縁の豪邸だ。そして両親は仕事で殆ど家には居ない。
そんなわけで、この起きない爆音目覚まし時計の被害者となるのはただ一人。今朝もバタンと扉が開き……。
「〜〜っっ、
「ーーんぁっ!?」
爆音の被害者、少年の双子の妹である
デュエル・アカデミア海外支部。実技ルーム。
「いっけー! パワー・ツール・ドラゴン! クラフティ・ブレイク!!」
「エンシェント・フェアリー・ドラゴンで攻撃。エターナル・サンシャイン!」
「ノオオオーー!!」
「アアアーーンッ!!」
アカデミア生徒 LP0
アカデミア女生徒 LP0
「GREAT! 龍亞も龍可も見事なデュエルでした」
「当然だぜ!」
「ありがとうございます。先生」
「一学期最期のデュエル実技でしたが、二人とも一度も敗北することなく夏休みを迎えるなんて。先生は驚きです。
皆さんも龍亞と龍可のドラゴンブラザーズに負けないように、夏休み中もしっかり自分のデッキと向き合い、ライバルと競い、レベルアップに励んで下さいねー!
それでは、一学期最期の授業はここまでです! 良い夏休みを!」
ゾーンとの戦いが終わり、遊星とジャックのデュエルから五年が経過した。
龍亞と龍可の兄妹は海外へ渡り、両親と同じ家に住み、地元のデュエル・アカデミアに通いながら日々を過している。
「よし、一学期中の実技負けなし。流石はオレとパワー・ツール・ドラゴンだな!」
龍亞は将来、憧れたデュエリスト達と同じ世界に飛び込むべくデュエルの実力を向上させている。デュエルの大会等にも精力的に参加しており、地元の同年代では知らぬ者のいないデュエリストになっていった。
「負け無しなのは良いけど、調子に乗り過ぎないようにね。龍亞。
”独り善がりのデュエルはしない”って、いつも忘れてないか心配になるんですけど?」
「もちろん分かってるって。
いつかあの二人みたいなデュエルをするんだ。その為にも、相手のことも考えられる遊星みたいになって。ジャックみたいに力強いデュエルをするんだ!」
「分かってるなら良いけどね」
「あとはライバルだよなー。
オレ、遊星とジャックみたいな『ライバル』と呼べる相手がいないんだよなぁ……」
龍亞のこれは、決して思い上がりや周囲を軽んじる発言とは違う。
互いに競い合い、意識しあい、高め合い、そしてぶつかりあえる魂の競争相手。そういう相手をこそ、ライバルと呼称する。
今の龍亞には、そういう相手がいないのだ。
今以上に更に実力を上げたい龍亞にとって、ライバル枠の空白は大きな損失だ。自分と同じかそれ以上の実力を持ち、尚且つソイツには絶対に負けたくないと言う闘争心の源泉。そういう存在のいないデュエリストは、いずれ必ず頭打ちが来てしまう。
限界を越えるために、限界が必要なのだ……。
「だから今夜からイくんでしょ?
「ーーうん!」
「毎日毎日今日が納車今日が納車って、聞かされ続ける日々からやっと解放されるわ……」
「そうなんだよな〜! やっと今日納車されるんだ。オレの人生初めてのDホイールが!!」
「一度家に帰って、準備が出来たら行きましょう。
初めてのライティング・デュエルだからって、テンション上げて転ばないでよね。いきなりスクラップなんて笑えないわよ?」
「分かってるって! 今日の日の為にライティング・デュエル用のデッキも構築したし、楽しみだな〜!!」
「Heyドラゴンブラザーズ! 今夜ライティング・デュエルに行くってのかい? Hooooー?」
龍亞が楽しみすぎて危うく粗相の一つもしそうな喜び方をしていると、クラスメイトの色黒ジョニーが話しかけて来た。
「やあジョニー! 今日ようやくオレのDホイールが納車するから
「HAHAHAHA☆ そいつは愉快な話だZE☆ ドラゴンブラザー!! オウイエィ!! 今夜は宴だなぁ、プルルルルルラアアアアーーwww」
「イエーイ!! プルルルルルラアアアアーーwww」
「一体なんのノリなのよこれ!?」
「プルルルルルラアアアアーーwww」
「プルルルルルラアアアアーーwww」
「ーー止めておけ、危険だ龍亞」
「危険って、どういうことだよジョニー!?」
「貴方達の情緒こそどういうことなのよ!?」
「良いか、ブラザー?
この街の夜は戦場さ。ここらのアカデミアのアウトロー達の集まるDホイーラーの『チーム』が幾つもあって、一番速くて強いイカれた……もといイカした『チーム』はどこかって競い合ってる」
「そんなやつら、オレがシャキーンとドミノ倒しにしてやるぜ!」
「まあ聞けブラザー。スタンディングならウチの最強候補のお前だが、ライティング・デュエルは初めてだろう? だって言うのにそんな調整期間をわざわざアウトロー達でデンジャーにしなくても良いってもんだろう? フレンドがブレイバーなのは知ってるが、世の中には『しなくて良い苦労』ってモンがある。満員電車の痴漢被害とか、街で酔っ払いに絡まれるとかな?
そして、ここからが本題さブラザー。
最近、街のデュエルロードには【魔王】が出るってウワサなのさ。メーン」
「「魔王?」」
「YES。ソイツは赤髪に、赤い服……なんでも、ブラザーズの故郷の『トップク』とか呼ばれる上着を着た、Dホイーラーと呼べるのかすらもよく分からないクレイジーなデュエリストだ」
「Dホイーラーと呼べるか分からないって何よジョニー?
ライティング・デュエルをするんなら、Dホイーラーなんじゃ……?」
龍亞と龍可は子供の頃にスケートボードに乗って擬似的なライティング・デュエルをしたことがある。
その類のものなのかと、一瞬思考する龍可。
「確かに、【魔王】はライティング・デュエルを行う。デュエルのルールだって、ちゃんと『スピードワールドCLEAR(試作型)』に支配されたままだ。
けど、【魔王】が跨がるバイク。アレはDホイールには見えないんだよな」
「Dホイールに見えないバイクって……ライティング・デュエルが出来てるんだから、どんな見た目だろうがDホイールなんじゃないのか?
日本でもそういうのよくあったし。ジャックのホイールオブフォーチュンとか、ボマーの戦車みたいなのとか。クロウの飛行機みたいなのとか」
「アーハン。そう言うのとは違うのさ。
なんというか……ロートル。或いは、ヴィンテージ?
とにかく
「同じ時代の創造物じゃない……ねえ」
「なるほどな。ありがとうジョニー。よく分かったよ!」
「分かったって、何がさブラザー?」
「話を聞いてもオレにはなんにも分かんないことが分かった!!」
「ウップス!?」
「…………龍亞」
「だから取り敢えず観に行ってみるぜ!!」
「……………………。
HAHAHAHA☆ 怖いもんを知らないな、ブラザー!
けど、男が腹括ったならUnderstand! 行ってその目で確かめてくると良いさ!
けど、二学期でブラザーのデスクが亡くなってるってのだけは勘弁願うぜ、アーハン?」
「オウ! 任せとけ!! 六番目のシグナー、龍亞。ライティング・デュエルの初陣ついでに魔王見学だ!」
「ハァ……ちゃんと私のこと、守ってよね。龍亞」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
キーーーーーーーーン…………!!
夜の街Dホイール専用ハイウェイで、龍可を乗せてDホイールで
「っっ……」
「これが、遊星やジャックが見ていたスピードの世界……!」
しがみついている密着する龍可をそこそこに、龍亞はDホイールの運転とあの日憧れていたイメージの中の遊星達を追い掛けるのに夢中だ。
「ホントに、男の子なんだから……」
「遊星、ジャック! オレ、今から追い掛けるよ! パワー・ツール・ドラゴン達と一緒に!! 」
アクセルを空けて、更にスピードを上げる。コーナーが来る度に車体を傾けて曲がる。
「ちょっと龍亞!! ねえ!! 怖いってば!! もう少しゆっくり!!」
「いいや。まだだ! まだ行ける!! もっと速く
「怖いしゆっくり走ってって、龍亞の双子の妹さんは教えてあげてるんですけど!?」
「未来のデュエル・キングに、オレはなるーーーー!!!!」
「未来に辿り着く前にクラッシュするーー!!!!」
キーーーーーーーーン!!!!!
「あ? 何だ??」
龍亞のテンションは壊れたメーターのように振り切っている。
目の前にはアカデミアでジョニーが教えてくれた『チーム』と思わしきDホイーラーの集団。総勢30機。
「イエエエエエエエエエーーーー!!!!」
「キャアアアアアアアアーーーー!!!!」
「うおっ!?」
「な、何だ!? どこのチームのカチコミだぁ!?」
龍亞はアクセルを全開にしたまま、目の前のチームの群れの隙間を縫ってあっという間に追い抜いて行った。
「おっ先ー!!♪」
「アァ!? 何だあのガキャア!?」
「オレらチーム『KIRIKOMI』に喧嘩売ろうってかぁ!?」
「よっしゃあ買ったらぁ!!」
「ヒャッホーウ!!」
「ねえ! ちょっと龍亞!! アレってジョニーが言ってた不良チームの暴走族じゃないの!?
何ケンカ売ってるのよ!!」
「え? 何のことだよ龍可? オレちゃんとお先に失礼ってしただろ?」
「あんな連中にそんなこと言ったら、煽ってるようにしか聞こえないでしょ!?」
「えーそうなのかー……でもまあ、良いじゃん。
【魔王】はチームのデュエリストを倒して回ってるんだろ?
だったらこっちの方が目立って探しやすくなりそうだし!」
「〜〜〜このっ……バカ龍亞ーー!!!!」
双子カップルがイチャイチャしている間に、チームの一人が龍亞に追い付いて来た。
二人が気付かぬ内に、Dホイールを操作するチーマー。
「ナマイキに彼女とニケツなんかしやがってあの小僧……ライティング・デュエルはなあ、そんなチャラチャラするもんじゃねえんだよ。
ボッシュウだよこの野郎ー!! 強制デュエルモード、ON!!」
嘗て、セキュリティーだけが持っていた強制デュエルモードシステムだが。汚職して懲戒免職となり金に困った元セキュリティがシステムを盗み売っ払ったことで技術が漏洩。今では悪ガキ相手に商売するヤクザ崩れどもの売り物となっていた。
『強制デュエルモード・ON スピード・ワールドCLEAR(試作型)SET UP』
「え!?」
「何でセキュリティーの強制デュエルシステムが発動してるの!?」
驚く龍亞と龍可。更にDホイールの画面にフルフェイスのDホイーラーの姿が写し出された。
「よう僕ちゃん? さっきはドーモ。
オレラをナメてっとどうなるか、キョーイクしてやっからよぉ?」
「ほらー!? やっぱりケンカ吹っ掛けられたじゃないのー!」
「あっちゃあ……あのーごめんよ。別にそんなつもりじゃなかったんだよ。
謝るからさ、許してよ?」
「ダメだね。チームはメンツが命だ。コケにされたと思ったらそれが事実かどうかなんざ関係ねえ。
オレらが納得するまでイジメてやんだよ!」
「ありゃあ……」
話が全く通じない相手に、苦笑する龍亞。悪気が無いとは言え、こんなカタチで初めてのライティング・デュエルをすると言うのも気乗りしない………………。
「ついでに? そこのケツに乗ってる彼女は、オレらが全裸にひん剥いて全身しゃぶり尽くして愉しませて貰うぜえええええーーーー!!!!」
「あ……」
「ア?」
ゾワリ。突如相手のDホイーラーの背筋に悪寒が走った。
「ッッッ!? な、何だ今のは……??」
「………………もう良い。遠慮するのにツカレタ」
「ハァ……」
龍亞は子供の頃から常に、双子の妹である龍可を守るヒーローで有り続けてきた。
命すら掛けて来たその覚悟は、ただの11歳の子どもだった龍亞を神話の『赤き龍』が『存在しなかった筈の六番目のシグナー』として異例の覚醒をさせる領域に立っている。故に。
「龍可は……オレが守る」
龍可に害をなす者の存在は、龍亞の力を全開以上に覚醒させる。
「な、何だコイツは……!?」
「さあ、デュエルがしたいんだろう? やろうか」
「くっ……このっ……舐めんなアアアアアアアーー!!!!」
今、この時。龍亞のDホイーラーとしての初めてのデュエルが開幕する。
そしてこの夜は、後に龍亞が自身の決闘者としての人生を振り返った時、もっとも必要な夜だったと懐かしむことになる夜となる。
「よっしゃあ! 特攻隊長があのガキ捉えてんぞ!」
「そんじゃあオレらも景気付けにあのガキ煽ってやっかぁ!?」
「「「ギャハハハハハハハ!!!!」」」
ブウウウウウゥゥゥゥゥゥゥーーーーー…………!!!!
「あ? 何だこの音は? またどっかのハリキリボーイのお出ましかぁ〜?」
「…………けど、Dホイールにしては音がおかしくねえか?」
「ああ。なんかこう……燃料が小さく連続で爆発しまくって動いてるような音っつーか…………?」
ブウウウウウゥゥゥゥゥゥゥーーーーー…………!!!!
「「「「ーーってかこれ、Dホイールじゃなくて普通のバイク音じゃね??」」」」
「「ーー
生涯のライバルが……此処に近付いている。
スピードワールドCLEAR(試作型)のルール
ホイーラーはDホイールの最高速度をどれだけ維持しながら減速せずに疾走し続けられているかで、そのターンに発動・使用出来るモンスター効果・魔法カードの発動回数が決定する。
最初のターンはお互いにモンスター効果・魔法カードを合計二枚しか発動出来ない。
プレイヤーは相手から受けたライフダメージ500に影響を受け、Dホイールが減速させられる。
Dホイールの速度は 停止(敗北) 準速(最高速以下全て) 最高速 の3段階のみ。
最高速度で走り続けて自分のドローフェイズを迎えた場合、モンスター効果と魔法カードを三回ずつ効果を使用可能。
年間、世界中で合計100人程度の死者が出ている。大体がコーナーを曲がり切れないか、相手からの攻撃や罠などの影響を受けた操作ミスによる自滅。
やはり正気の沙汰では無い。