ソラを繋ぐ翼   作:ホワイト・フラッグ

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オリキャラ増えた。



10.フランスに泳ぐ者達

ある音声会議――――

 

「老人達は取引に応じたよ。あとは哀れな娘が到着するのを待つだけだ」

 

「それで、誰が行くんだ?」

 

「既に彼が発った」

 

「ん? ああ……あの男か、いつも会議に参加しないが珍しく動いたな」

 

「フランスということもあって、思うところもあるのだろう。口が利けない訳ではないのだから、この件はあの男に任せておけばいいだろう」

 

「この取引の御かげでフランス政府に潜む[奴ら]をあぶり出し口止めとして活動資金を得られる」

 

「向こうからすれば後ろめたい事ばかり。それを始末する便利な手が伸びてきた。掴まずにはおれんだろう。我々の思惑は一致していた。それだけだ」

 

「それにしても国を振り回す程とは、奴らの影響力も侮れんな」

 

「恐らくだが貴方が産まれるより前から奴らは潜伏していたのかもしれない。それだけ底が知れない」

 

「成程、木の葉を隠すなら森の中……とは言うが、種の段階から隠しておけば、それはわからんよな」

 

「そうだ。こうして少しずつ排除しているが、既に手遅れだ」

 

「団長の帰還はどうする? オーメルに潜む奴らは始末したのだろう? そろそろ戻ってもいいんじゃないか?」

 

「それについては段取りが整いつつある。まぁ……今回と同じような方法だがな」

 

「芸がないな」

 

「だが、効果的だ。それで候補者の選定はどうなっている?」

 

「一人、面白そうな経歴を見つけた。既に実力を計る為に呼び出した。といっても足元を[さ迷っていた]のだがな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デュノア家本邸――――

 

「お父さん……」

 

シャルル・デュノアは本邸に呼び出されていた。学年別トーナメントが終わった日の夜。一夏と夕飯を食べている時に迎えの役員が来た。デュノア社の社長にしてシャルルの父親が倒れたというのだ。何が起きるかわからないので直ぐに来てほしいとのことで、フランス政府が急遽手配した飛行機に乗って日本を発ったのだ。

 一夏にこれからの事を話そうと決心した矢先に来た迎えが恨めしかったが、命には変えられないので指示に従った。

 

 本当はある理由からフランス政府ともデュノア社とも縁を切ろうとしていたが、今は亡き母が愛していた(ヒト)が最後かもしれないと思うと、非情になれなかった。

 

「こちらです。ここからはお一人で……」

「……ありがとうございます」

 

 屈強な体格をした案内役が父親がいる一室の前から下がる。治療の際にシャルルと血の繋がりの無い義母が病院ではなく自宅を要請したそうだ。

 

 フランスに到着したのは02:00だが、移動している間に明け方になっていた。それでも見舞うように政府の役員が催促したのでシャルルはここにいる。

 ゆっくりと扉を開ける。部屋にはベットで寝る父と傍らにもう一人男が座っていた。

 

「初めましてシャルロット・デュノアさん」

「……!?」

「驚くことはない私は秘密を共有する者だよ」

「……そうですか……」

 

 シャルルには秘密があった。本名:シャルロット・デュノア、デュノア社社長の愛人の()として産まれ、会社の広告塔と織斑一夏のIS白式のデータ奪取の為にIS学園に送られた。

 その際にフランス代表候補生として送られているので、政府もこの件には一枚も二枚も噛んでいる。

 

「父の容体は……?」

「今は落ち着いている。薬の効果で眠っているよ」

「そうですか……」

 

 シャルルは一安心した。家族としては余りにも希薄な関係にあったが、どうやら自分は心配していたらしい。だが、それを知ったはいいが、これからどうしようと考えた。普段は別邸に住んでいた為、本邸(ここ)での居場所はない。

 目の前の男が話しかけてきた。

 

「IS学園での生活はどうですか?」

「……充実しています」

「それは良かった」

 

 

 男はしばらく月並みな内容ではあったが、初対面な自分との緊張をほぐそうと、会話を続けた。そして肝心なことを聞かれた。

 

 

「データは盗れましたか?」

「いいえ。チャンスがなくて」

 

 シャルルの答えに目の前の男はあからさまにガッカリしたが、ハッと何かに気付いたように再度問う。

 

「じゃあさ。彼とヤッタりした?」

「……なんの事ですか?」

「ナニって、愛人の子なら得意でしょ? そういうの」

「お母さんを悪く言うのは止めて下さい!」

 

 母を侮辱されてシャルルは激昂した。愛人の事を何も教えてくれなかったとはいえ十年近く自分を育ててくれた大好きな母を悪く言われるのは嫌だった。それに同室の自分に居場所を提示してくれた少年との関係をからかわれたようで腹が立つ。

 

「マジかよ。元から無茶だと思っていたけど、何の成果も無しかよ。使えなかったな」

「……使えなかった?」

 

 過去形で語られるのがおかしい。それではまるで――。

 

「用済みなんだよ君ら」

「何を言って……!?」

 

 男は眠る父親の頭をグリグリ撫でながら楽しそうに語る。

 

「社長の容体? ウソウソ。薬で眠らせたのは事実だけど、元気にしているんだよ彼」

「……え?」

 

 呆ける中性的な子供の顔を見て男は笑い出す。

 

「『IS学園特記事項、本学園における生徒はその在学中においてありとあらゆる国家・組織・団体に帰属しない』だってさ。この特記事項は君が本国への帰国命令を突っぱねる手段になり得る。使いようによってはそのまま三年間学園に居座ることもできる。まぁそんな馬鹿な真似しても意味ないけどね」

 

「!?」

 

 シャルルは戦慄した。見抜かれていた? 確かに今の操られる生活から抜け出す為に、その特記事項を使って時間を稼ぎ、なにか交渉のカードを探そうとはしていたが、父親の仮病を使っておびき寄せられた。

 特記事項は頑丈な盾だが、本人が反応するような事態を用意すれば簡単にすり抜けられる盾でもあった。

 

「ハハ……アハハハハ! いいね! その表情。もしかして本当に居座ろうとでも? 馬鹿だよね~青春は早く過ぎるから三年なんてあっという間だよ。それに君はここで終わりだから」

 

 男はシャルルに銃を突きつける。

 

「!?」

「ある筋から君が、男ではなく女であるとバレちゃってね。公表される前に情報だけでもと思ったんだけど。何も無いとはね……せめて対象を色仕掛けできていれば、君の体に付着したであろう遺伝子を使って解析を……」

 

 そこまで言いかけて男は野卑な笑みを浮かべた。

 

「ちょっと待てよ。ヤッテないなら、女としての価値は高いな。なら殺したり牢屋に送り込むよりどこかに売り飛ばした方が……その前に僕が……」

「や、やだ。嫌だ!!」

 

 銃をしまった男がゆっくりと近づく。シャルルは――シャルロットは女の声を上げて後退りする。そんな様子を嗜虐的な目で見た男は少女の後ろにある扉にむかって命ずる。

 

「この娘を取り押さえろ! 後でお前にも分けてやる!」

「……は」

「ひっ……!?」

 

 扉が開き。先ほどの屈強な案内役が立っていた。代表候補生として生身での戦いは修めているが、体格が違いすぎる。雰囲気からしてかなり腕が立ちそうなのは会った時から察した。出口にこんな男がいては逃げられない。

 

 案内役が一歩前に出る。シャルロットは恐怖で身が竦み、目を瞑る。心の中で祈った。

 

(お母さん……一夏……助けて……)

 

 亡き母との十数年の思い出。

 

 数日間の学園での生活。

 

 帰りたいと願った。

 

 心から信頼できる人達はそれぞれ別の意味で遠くにいる。助けを乞うても物理的に叶わない願いであった。

 案内役の影がシャルロットに伸びて――。

 

 

 

「お、おい!?」

「?」

 

 先ほどまでの優位性はどこへ行ったのか男が急に狼狽えた。

 恐る恐る目を開けると、案内役が倒れていた。大柄な案内役の陰に隠れる形になっていたのだろう。その後ろに立っていたのは――。

 

「……」

 

 日本刀を持った黒い髪と眼の青年だった。

 

「な、なんだ!? お前はッ、お前なん……」

「……疾ッ」

「か……ぁ!?」

 

 シャルロットは風を浴びた。感じたのはそれだけ。

 青年は十メートル近くの距離を一瞬で詰めて、再び銃を取り出そうとした男の胸に日本刀の柄を打ち込む。距離もさることながら、青年と男の間には倒れた案内役と自分がいたのに、それを避けて走ったことになる。青年の身体能力、戦闘技術を物語る五秒だった。

 

「……」

「あ、あの……」

 

 男が気を失い。助けられたのはわかるが、青年はこちらをじっと見て動かない。一体どういう状況なのだろう。混乱するがシャルロットは礼を言おうとする。

 

「た、助けてくれて……」

「……シャルル・デュノア」

「は、はい!」

 

 礼を遮るように名を呼ばれる。シャルルの名で反応できるように教え込まれたので、反射的に返事をする。青年は今まで抜かなかった日本刀を抜くと、簡潔に用件を告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……死せ」

「……え?」

 

 抜身の日本刀が金髪に振り下された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フランス某ホテル――――

 

「フランスに来てもな……することなんて……」

 

 レイレナード社が会社のジェット機を用意してくれたが、フランスに着いたのは現地時間の02:00。ジョルジュはレイレナードのスタッフにホテルに案内された。準備が整っていないということで、二日の待機時間――ほぼ自由時間――を与えられた。

 一日目は大分マシになったがAMSの過剰接続の後遺症回復に努めたり本を読んだりと、インドアな休日を過ごした。だが、部屋に篭ってばかりも流石に飽きが来るので、散歩に出かけた。

 

「これも何かの機会だ。挨拶に行って来よう」

 

 ただぶらつくのも味気ないので、目的地を決めた。幸いホテルから離れていないので簡単に行ける。途中で花を買い、一度だけ師匠に連れてこられたその地へ向かう。

 

「……?」

 

 目的地は普段人気が少ないところだ。そこに一人だけ先客がいた。黒い髪と目を持つ青年。日本人だろうか。その青年は用が済んだのか、ジョルジュが立っている出入り口に歩く。

 

「……」

「……」

 

 同じ場所に用があるだけの赤の他人なので、声をかけたりはしない。だが、すれ違いざまに二人は同じことを気にしただろう。

 

首。

 

 チョーカー型AMSコネクタを付けていた。リンクスがここに訪れることは珍しくはなかった。此処はそう言う場所なのだから。ジョルジュは目的の場所に立つと、花を添えた。

 

「なにこれ?」

 

 そこには独特の匂いを発する香が煙を揺らしていた。

 

 

 

 

 

 

翌日、レイレナード・フランス支社――――

 

 

 

 

 

 

 ジョルジュは休憩室の長椅子に横たわって呟く。

 

「……疲れた」

 

 支社に行くと、レイレナード・フランス支社の専属リンクス達三名がお出迎えしてくれた。

 

シュミレーションによる連戦というお出迎えを――。

 

 最初に三人全員とタイマンでやり合った後に状況を変えて、一対多を行った。ノーマルを含む十三機を相手にしたり。仮想防衛目標を設けて守ったり攻めたり。時間制限を付けられたりと軽くシゴカれた気分だ。

 

 喉の渇きを覚え、自販機へ行こうかと考え出したところ、対戦相手の一人がコーヒーを持って休憩室に入って来た。

 

「お疲れ様です。サンソンさん」

「ありがとうございます。マドレーヌさん。[さん]は付けないでください。僕の方が歳が下なので」

 

 身を起こしコーヒーを受け取る。マドレーヌはレイレナード・フランス支社所属のリンクスで、白金色の髪を腰まで伸ばした泣き黒子が特徴的な女性だ。彼女は二十三歳。ジョルジュは十五歳だ。

 

「でも、訓練プログラムを全勝した凄腕じゃない」

「それでも年上の人に敬語とか[さん]付けは困ります」

「謙虚ね。じゃあ、ジョルジュ君って呼んでもいい?」

「はい」

「じゃあ、そうするわ。でも、少しは誇ってくれないと支社最強のお姉さんの立つ瀬がないのだけど」

 

 今回、ジョルジュがフランスに飛ばされたのはフランス支社のリンクスとシュミレーションで訓練するためだ。時折こうして専属リンクスと契約リンクスとの間で戦力把握と交流を目的に企業が行う行事だ。

 勿論、このことはIS学園は了承している。

 

 

 企業が専属にする理由は彼女のような信頼に足る(●●●●●)人材を企業が常備軍として確保するためと、企業独自でネクスト技術を開発するためである。

 

 ジョルジュはレイレナード社と支援契約を結んだ身だ。契約内容はカラードマッチおよび、その訓練などで消費する武器弾薬・機体の修理を負担してもらう代わりに、その戦力を契約する企業に提供すること。

 正式な専属とは給金が違うことぐらいだ。

 

「一応、支援者として一段下の立場ですから」

「それでもやっぱりアスピナの人って事で皆ジョルジュ君の事、一目置いているわよ」

「まるで他の養成機関の人達は違うみたいですね」

「そりゃね。かつてのレイレナードは少数精鋭を謳っていたけど、今じゃそれなりの奴を抑えるために必死だもの」

 

 AMSは先天的な才能によるものだ。よってその才能に鼻をかけて野心的な人物がいたりする。高い戦力だとしても企業が扱いに困る者なら抱えていても不利益しか生まない場合がある。

 そんな人達は支援契約として一段下の扱いで一応傘下に抑えておく。専属になってもっと金が欲しいなら、相応の結果を示して企業に貢献しろという意味もある。

 

 

 ちなみにジョルジュはレイレナード社とアスピナ機関の二つの組織からお金を貰っている。

 

 

 アスピナ機関はオーメル社からの支援で運営しているが、他の企業からも資金・物資の支援が行われている。その為、AMS適性が高い。もしくは何か特異であったりすると、研究のために金を払って招待される。

 しかも衣食住は勿論、若者には一般的な教育も行う。そのおかげでジョルジュのような孤児でもそれなりの生活ができる。

 もっとも、リンクスになる為のAMS手術によって我が子を改造人間にしたがらない親が大半なので、アスピナ機関には元孤児が多い。

 

 上記の理由からジョルジュの生活は悪いものではない。企業の専属になる必要を本人は感じていないし、彼の師匠が『立場を固めてしまうと見えなくなる事実もある。若いうちは沢山の事を見なさい』という事でジョルジュは専属になることを遠慮している。

 

 コーヒーを飲み干した頃、マドレーヌが時計を見ながら立ち上がる。

 

「そろそろ時間ね。着替えましょう」

「何処かへ行かれるのですか?」

「何を言っているの? ジョルジュ君も出席するのよ」

「…………は?」

「もしかして聞いてないの?」

 

 どこかへ行く予定など聞いていない。フランス支社のリンクスとシュミレーションで訓練するとしか聞いていない。

 

「これからフランスの主だった企業が集まるパーティーがあるのだけど、うちから(レイレナード)は支社長と私、そしてジョルジュ君が出席するのよ」

「は? パーティー? ちょっと待ってください。正装なんて持ってませんよ」

「大丈夫よ。支社から貸し出されるから。ほら、行こう」

 

 案内された更衣室にはベスト付きの黒いスーツが用意されていた。身長体重を始め、その他の身体的特徴はレイレナード社に登録されているのでサイズは丁度だった。師匠に連れて行かれて何度か参加したことがあるのでパーティーは初めてではない。そのおかげで年配の人への対応も学習した。

 ただ水面下の腹の探り合いとかを見ていたので、あまり楽しい印象はない。

 

 更衣室を出てしばらく待つと、マドレーヌが隣の女子更衣室から出てきた。

 

「よく似合っているわ」

「ありがとうございます。マドレーヌさんも、綺麗です」

「ふふ、ありがと」

 

 マドレーヌの衣装は胸元と背中が開いた赤色のイブニングドレス。後頭部をリボンで装飾し、わざわざ調整室に行ったのだろう。首のチョーカー型AMSコネクタも華美な柄になっている。ジョルジュは自分の格好を見直して、尋ねる。

 

「本当に可笑しなところないですか? 初めてじゃないのですが、ドレスマナーに疎くて」

「大丈夫よ。いい男してるから自信持って。それにパーティーと言ってもそんなに厳しくないらしいから」

 

 マドレーヌはそう言って、ジョルジュの腕を組む。化粧によって更に美しくなった顔が近くなり、ジョルジュは慌てる。

 

「え、ちょ!?」

「エスコートよろしく! どうしたの? 初めてじゃないんでしょ?」

「パ、パーティーは初めてじゃないですけど、その……女性の同伴は……」

「それは嬉しいわね! お姉さんが初めてなんだ!」

 

 ジョルジュは嬉しそうに燥ぐマドレーヌに引かれながら、支社の車に乗り込んだ。

 

 

 




飛行機の時差は航空会社の便を計算しておおよその数字を出したのだが、間違っていたらスマン。

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