数は五。
「――!」
福音は広域殲滅を目的としたレーザー兵器[
「速さなら負けてませんことよ!」
「――!?」
弾幕を引きつけている箒とは反対側を飛んでいたセシリアが今まで抑えていた速度を上げ、現在の機体の目的を果たす。
強襲用高機動パッケージ[ストライク・ガンナー]。セシリアは普段の戦闘でビットによる多角攻撃を主としていたが、ストライク・ガンナーは、六機のビットをスラスターとして使い機動力を上げている。その分だけ低下する火力を補うため、レーザーライフルもスターライトmkⅢから大型のスターダスト・シューターに変更し補っている。
セシリアは薄い弾幕を掻い潜り、福音の周囲を円を描くように周りながら銃撃する。セシリアが福音の背後を取り注意を引きつけた所で追いついてきた鈴が砲門を開く。
「食らいなさい!」
機能増幅パッケージ〔崩山〕をインストールした甲龍は衝撃砲を二門から四門に増設してある。普段は不可視の砲弾が、崩山の機能により赤い炎を纏っている。彼女の性格らしく苛烈な攻めは福音の動きを止めたが、直ぐに銀の鐘が掃射される。牽制目的の広域攻撃にセシリアと鈴はたまらず距離を離そうとするが、直ぐにソレは射線確保の為の移動になった。
「やらせないよ」
シャルロットは実体シールドとエネルギーシールドを展開し機動力のやや劣る鈴を中心に守る。ラファール・リヴァイヴ防御専用パッケージ、〔ガーデン・カーテン〕の防壁は鈴を逃がすための時間稼ぎになるが、弾幕の激しさから二枚ずつある二種類のシールドが徐々に削られる。戦力を一人潰す為に砲撃に専念する福音だが、一発の砲弾により姿勢を崩す。
「――!?」
「初弾命中!」
隻眼でありながら長距離射撃を成功させたのは砲戦パッケージ[パンツァー・カノニーア]を装備したラウラ・ボーデヴィッヒ。いつもより大型のレールカノン[ブリッツ]は威力は勿論だが射程距離も向上している。動きが止まった所を鈴の砲撃とセシリアの狙撃が再開され、シャルロットのアサルトライフルも加わり包囲する。その中心を――。
「おおおッ!」
箒が雨月、空裂の二刀を構え突進する。福音は砲撃を一旦止め、二本の刀を掴んで防ぐ。その間にセシリア、ラウラ、シャルロットが狙撃し、鈴が双天牙月を連結させて箒の反対側から切りかかる。しかし、福音はスラスターを微調整して箒を空中で巴投げの要領で流す。
「グウッ!?」
「きゃあ!?」
展開装甲の調整次第では福音の投げも相殺できたが、ISの操縦経験が圧倒的に不足している箒には上下の感覚をひっくり返された所で腹を蹴られては抵抗できずに振りほどかれる。その先にいた鈴に激突し二人のシールドエネルギーが僅かに減少する。
「危ない!」
福音は二人に向けて追い討ちの銀の鐘を放つがシャルロットが間に入って防御する。一枚の物理シールドが割れたところでラウラの砲撃支援が入る。
「助かったよ」
「陣形を崩すな! 奴が逃げるぞ!」
「させません!」
ブリッツの砲撃を急加速やロールで回避しながら逃走する福音だがセシリアが何とか追いすがる。互いに回避をしながら方や射撃、方や弾幕を相手に向かって放つ。煩わしく思ったのか福音はセシリアに距離を詰める。距離が近くなればその分だけ弾幕の密度は濃くなり範囲は狭まる。セシリアが得意とする狙撃に向いた距離を維持するならば離れるのが得策だが、ある目的の為にあえて自ら距離を詰める。
「くっ」
「無理をするなセシリア!」
「させん!」
レーザーの弾幕を掻い潜りなんとか反対側へ抜けたセシリアだが、その機体は大きくエネルギーを減らしていた。下手をすれば撃墜されてもおかしくなかったが、五人の中でも速度に秀でる箒が福音の頭上から雨月の刺突レーザーを放ち、福音の注意を引いたおかげで撃墜を免れた。
「そっちに行きなさい!」
「セシリア! 僕の方へ!」
「わかりましたわ!」
セシリアがいた位置に鈴が入り崩山の砲撃でラウラと共に福音を追い立てる。シャルロットはサブマシンガンとショットガンで引き撃ちしながらセシリアが後退する時間を稼ぐ。
福音の戦闘プログラムでは複数の敵を相手取る場合はシールドエネルギーかAPが低い敵を優先的に攻撃して数を減らすようにされているため
「う~ん。みんな頑張っていますね~」
「…………」
クリストフとジョルジュは遠くで撃ち合う六機の機影を眺めながら自機の確認をしている。二人は無人の孤島群の一つで待機している。
「今にも飛びたくて仕方がないって顔だな」
「……顔なんて見えナイだろう?」
「見えなくてもわかるさ。ウズウズ……いや、イライラしているのがわかる」
ジョルジュはアリーヤの複眼をフェンシングのマスクの様な形状をしたランスタンのヘッドパーツに向ける。その下にある金髪の男は恐らくこれからやることが楽しみでしょうがないだろう。
「まぁ……まずはコレをお見舞いするから見とけって。もしかしたらこの一発で終わるかもしれないだろう? あっ、もし落としても恨むなよ? 一番効率がいいんだからな」
「……ならば早くヤレ」
アルビートルの目の前に置かれているのはスナイパーキャノンよりも長大なトーラス製巨大コジマキャノン。ここまでデカいのは球状のコジマコンデッサー[ADDICT]のような物がオプションとしてゴテゴテに付いているのが原因だ。コレが付いているという事はネクスト本体に内蔵されたジェネレーターだけではこの兵器を動かせないという意味だろう。
クリストフはそんなコジマキャノンに自機を合体させると興奮の声をあげる。
「ヤベェよ! アルビートルは追加整波装置を三機積んで、本体の整波性能をフルチューンしてんのにどんどん持ってかれるぜ!! まるで『ネクストの為の兵器ではなく、兵器の為のネクスト』じゃないか!!」
背を反らせてゲタゲタ笑い出すクリストフとグルグル回りながら砲身にコジマを送るコンデッサーが不気味に動く。ふざけている様だがクリストフは試作コジマキャノンのオーバーヒートやコジマの漏れに気を配っている。それでも歓喜している事は変わりないが。
「ヤベェッ! 良いぜ! まるで製造禁止されたソルディオスキャノンを持ち運べないかと情熱を尽くした開発スタッフの想いが伝わるぜェ!!」
《もうすぐっ、ポイントだよ! 準備は、出来てる!?》
シャルロットの苦しげな通信が入る。先行した五人の目的は運搬とチャージに時間がかかる巨大コジマキャノンの準備する時間を稼ぐこと、そして発射可能状態のソレを福音に当てるために射程範囲に追い込むこと。そして銀色の機体はオレンジと青の二機を追い回していた。
「いいぜ! いつでも撃ちたいぜ!」
「……味方に当てルなよ」
《十秒後にたたみかけるから二人はその間に逃げて! クリストフ、あんたキッチリやりなさいよ!》
鈴の通信によりタイミングが決まった。恐らく理解しただろうがクリストフは別の事を口走っていた。
「撃つのはいいが、コイツには名前が無いな……」
《七……六……》
砲身はいよいよ溜め込んだ力を解放できるのかと緑色の光を一層強く輝かせる。
「そうだな……お前の名前は……」
《一……ゼロ! 今よ!》
カウントゼロと共に赤い砲弾が銀色の上から無数に降り、オレンジと青が出せる限りの速度でその場を離れる。その瞬間。クリストフは叫ぶ。まるで産まれたばかりの我が子に幸あれと親が名を付けるように、高らかに謳う。
お前は何であるかを――。
「エヴァグリイイィン!!」
[常緑]の意を持つその響きを与えられた砲身は圧縮された膨大なコジマ粒子を吐き出し、福音を飲み込んだ。まるで海を割るかのような勢いで引かれた一筋は放射された後も太く濃くなっていく。
《あっぶないわね!!》
《危うく巻き込まれるところでしたわ!》
《流石にあんな攻撃は防御パッケージでも防げないよ!》
「悪い悪い。まぁあんだけ範囲が広ければ威力も十分だろ。これで終いだな。それにしてもいい景色だな~」
その攻撃範囲は砲撃をしていた鈴や回避して一息入れていたセシリアとシャルロットを危うく巻き込みかけた。全員にはエヴァグリーンの推定照射範囲を知らせてあったにも関わらずそんな事が起きるという事は理論スペック以上の性能を引きだしたという事だ。やがて照射が終わり辺りに緑色の粒子が霧散していく。
ある意味、幻想的な風景ではあるがその余韻に酔いしれているのは約一名のみだ。
「待て。残骸すら見当たらないぞ」
ラウラの指摘通り、濃密な緑が晴れていくが福音の影は見当たらない。圧縮粒子によって消し飛ばされた可能性はあるが各自周囲を警戒する。
そのとき海中より大量の海水が巻き上げられ小規模な竜巻が起きる。
「馬鹿な!? アンナモノを食らってまだ動けるのか!?」
「待ってください箒さん。あれはまさか……!?」
その影は見つけた時と同じく膝を抱えた姿。それからどういう発音器官を搭載しているかわからないが高い音で鳴き声を上げ、エネルギーの翼を五対展開する。
「まずい。
本来ISと操縦者の相互成長により解放されるセカンドシフトがこの時になって行われた。各種性能の向上や
「――!」
「!?」
セシリアのスターダスト・シューターを遙かに凌ぐレーザーをまともに受けた箒は墜落する。弾幕も脅威であったが、あれだけ拡散させていたエネルギーを一点に受けるとこうも違う。着水寸前で箒を受け止めた鈴が悲鳴のように声をあげる。
「クリストフ! 二発目を!」
「無理だ。コジマの再充填にさっきの倍以上かかる」
「それではもう一度みなさんで時間を……」
「セシリア!」
目標がセシリアに変わり収束レーザーが彼女に放たれるがラウラが庇う。本来、遠距離からの砲撃・狙撃対策として備え付けられていたた2枚の物理シールドがこの一撃で破壊される。お互いを庇い合うので精いっぱいになりつつあり、とてもじゃないが時間稼ぎの為に戦えそうにない。
ならば――。
「行くしかないよな……」
「システム戦闘モード。対象を潰ス」
クリストフは自機とエヴァグリーンの連結を解除し、ジョルジュは我慢を止めた。
一夏は空にいた。雲が少ないどこまでも青い世界。自分が立っている場所が鏡でソラの色を写しているのかもしれないが、そんな所にポツンと一人でいた。
「ここは……どこだ?」
呟いたとき。自分の足元から世界の色が変わり始めた。
開かれたのは夕陽に焼かれた赤い砂浜。大きな夕陽の前には白い甲冑を身に纏い体の横に大剣を立てた騎士がいた。顔をバイザーのような物で隠しており表情は窺えないが、長い髪から女性と判断できる。
その女性は初めて見るのだが、不思議と初めて会った気がしなかった。戦う格好をしているが穏やかな雰囲気を感じる。その女性が唐突に質問を落とす。
「力を欲しますか?」
何故そんな事を聞かれるかわからないが、一夏は力を欲している。だから素直に頷いた。すると女性は二つ目の質問をする。
「何のために? 何をする為に力を欲するのですか?」
一夏は漠然とした考えの元でとにかく力を求めている。それを表現するにはどうしたらいいか悩みながら女性の質問に答える。
「守るためだな……友達……仲間を……」
「仲間?」
「えーと……人それぞれで色々違うけど、理不尽な事っていっぱいあるから……そんなモンから、みんなの助けになりたい」
家族の有無、関係、出生。身近に居る人達はそこら辺が普通の人と違って悲惨な部類に入る。その上で自分の存在をプライドを目指すモノの為に必死に頑張っている。
「俺……いつもみんなに助けられているから、少し悔しいんだ。この世界で一緒に生きているのに俺ばっかりって……だから助けられてばっかりは嫌だから。だから力が欲しい」
「……そう」
俺の答えに女性は頷くとまた世界がソラに戻った。
「だったら、行かなきゃね」
いつの間にか髪も着ている服も帽子も白い少女が一夏の隣に立ち、小さな手を伸ばしていた。一夏が呆けていると少女が「ね?」と首を傾げてくる帽子のせいでこの子も表情が見えないが、一夏はその手に邪気を感じず素直に取った。その途端に世界に白い光が広がっていく。
「もし、あなたとその仲間の世界が違うとしたら、あなたはどうしますか?」
「え?」
光の広がりにより見えなくなりつつある女性が最後にそんな質問をする。何の事かわからずに答えられずにいると回答を求めていなかったのか女性は続けた。
「あなたの戦う理由はわかりました。しかし、その理由を向ける相手が……」
最後を聞きとることができずに世界が真っ白に染まった。
サブタイトルはアニメ十二話からですが、ヘンナモノに付けていますね。