ソラを繋ぐ翼   作:ホワイト・フラッグ

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戦闘がちょっと拙い。武器のルビに()で開発企業名を入れときます。


3.ネクストの実演

「本日は追加カリキュラムとして午前は各クラスでACネクストの座学、午後は全クラス合同訓練を行う」

 

 ジョルジュ達が転入した次の日のことだ。織斑先生がSHRでこう切り出した。何でも今回のACとISの競技合併実験をするにあたってIS学園の生徒たちにACについて理解させることを目的とするらしい。彼女たちはこれまでISの勉強をしてきたが、ACについては疎いようだ。

 

「まずACは主力兵器に遊撃戦適正を求めた結果、人型汎用兵器として生まれた。だが白い閃光事変でこれまでのACを凌駕する性能を持った新たなAC、ACネクストが世に出た。これまでは昨日の授業でやったな」

 

 今日の授業は山田先生ではなく織斑先生が講義している。彼女の方がネクストに詳しいのだろうか?

 

「ネクストはこれまでのACを[ノーマル]と区別させる程の性能差というが、具体的にはQB(クイックブースト)による瞬間的機動力や粒子装甲PA(プライマル・アーマー)による攻撃の無力化・軽減が理由だ」

 

 このあたりはISと似通った機構なので生徒たちは理解しているようだ。QBはコジマ粒子をプラズマ化させ瞬間的な推力でダッシュさせる機構で、ISで言う瞬間加速(イグニッション・ブースト)と似ている。

 

 そしてPAは絶対防御に類似している。

 ISはシールドバリアというエネルギー装甲を纏っている。そのシールドバリアが破壊・突破された場合は絶対防御という操縦者の死亡を防ぐ正に絶対の防壁があらゆる攻撃を受け止める。発動に大量のシールドエネルギー(試合の勝敗を決定する数値)を消費してしまうが、その防御機構はすばらしい。

 

 ネクストの防御も二段階ある。一段目がPA、これはコジマ粒子を機体周辺に安定的に還流させることで粒子による防御膜ができる。攻撃を受けると減衰してしまうがジェネレーターから生成されるコジマ粒子の供給により再展開が可能である。だがPAは貫通力に優れるスナイパーライフルやレーザー兵器には効果が薄く、マシンガンなど小規模な火器による連続した弾幕や、爆風・破片などは容易に軽減可能であるものの、PAが減衰してしまいやすいという弱点がある。

 

 そこで二段目の防御AP(アーマード・ポイント)がある。PAが通してしまった攻撃から操縦者を守る防御機構でこれがなくなると戦闘不能になるというモノだ。

 

「そんなネクストを開発したのはアクチュエータ複雑系を担当したアルドラ社、実用燃料電池を担当したレイレナード社、コジマ技術を担当した旧アクアビット社、AMS(アレゴリーマニュピレイトシステム)を担当したアスピナ機関、そしてそれらを統括したのがアナトリア機関のイェルネフェルト教授だ。かの教授はコジマ粒子の無害化を成功するなどAC業界の第一人者として知られている」

 

 織斑先生が言う通りイェルネフェルト教授はネクスト・ノーマルに関わらずACを扱う者は知らぬ者などいない偉大な教授である。ちなみにコジマ粒子は[コジマ]という教授の助手が生成方法を発見したのでその助手の名前がつけられている。

 

「であるから……」

 

 そこからはアクチュエータやAMSなどジョルジュはすでに知っているネクストの細かい機構を講釈し始めた。クラスの女子達は眉をしかめたりしながらもマジメにノートを取っている。

 窓際の一番後ろという学生に人気の高い席にいるジョルジュは欠伸を噛み殺しながらも、教材を読み返して退屈を凌ぐ。ページをめくっていると教材に載せられた一枚の写真を目に止める。懐かしい人物が写っていたからだ。

 

(ん? フィオナ姉さん)

 

『フィオナ・イェルネフェルト。イェルネフェルト教授の長女にして教授の助手。研究分野はAMSによる脳や精神への負担軽減……』

 

(あの姉さん、こんな研究をしているのか……理由は俺達か……)

 

 ジョルジュは首に掛かっているチョーカー型AMSコネクタを触りながら、感慨に更ける。そこで何かが破裂するような音が鳴り響いた。音がした前列を見れば案の定、居眠りしていた一夏が織斑先生の出席簿を受けているところだった。

 

 

「ISのこともワケが分からないのにACのことも勉強するとか大変だぜ」

「……そうか」

 

 昼休みの食堂で一夏は和食セットを食べながらぼやく。ジョルジュはカレーを食べながら相槌を打つ。同じ男だからと引っ張られたが一夏の周りには女子が多く居心地が悪い食事をしている。

 

「織斑先生の授業で居眠りする奴が悪い」

 

 同席している箒はもっともな意見を述べる。

 

「しかし、ACの機体構成なんて学んで役立つのでしょうか?」

 

 ジョルジュはセシリアの意見に同意する。自分が既に知っている事だからというわけではなく。ここはあくまでIS学園でISの操縦者を育成するところだ。途中で技術者を志す者もいるかもしれないが、結局はISの道に行くのだ。ACの構成を聞かせたところでどうなる?

 

「お嬢さん、先を見据えて考えてごらん」

「だ、誰です!?」

「これは失礼、初めまして二年生のジェラルド・ジェンドリンだ。そちらのお嬢さん隣いいかな?」

「あ……はい!」

 

 セシリアの意見に横から答えたのはジョルジュ達の先輩、ジェラルドだ。クラスメイトの相川清香(あいかわ きよか)に断りを入れてジョルジュの向かいの席に座る。相川はジェラルドの整った容姿をまじまじと見ている。

 

「ジェラルド先輩、先とはこの実験が上手くいった後のことですか?」

「そうだな。今はIS学園に我々だけが送り込まれている状況だが、本格的にACネクストとISの競技が合併したらどうだろう? 相手の使う機体について知らなくては戦いようがないんじゃないか?」

 

 そう考えると午前の授業も納得がいく。いざ合併競技が開催されても違いのある機体を扱うのだから、細かい戦術やチームワークを考える上で重要なことだ。午前の授業は少し難しかったが相手を理解することから異文化交流が始まるのと同じ? なのだろうか?

 

「なるほど……申し遅れました。私はイギリスの代表候補生、セシリア・オルコットと申します。ジェラルド先輩はどうしてここに?」

「ああ、他の男達に用があってね」

「?」

 

 まぁこの人が一年生に用事があるとしたら自分たちがここに飛ばされる理由になった織斑一夏か、アスピナ機関からの後輩であるジョルジュとクリストフだろう。

 

「織斑一夏君だね? 君には挨拶をしておこうと思ってね」

「あ、これはご丁寧にどうも」

 

 一夏は背筋を正して会釈する。その一夏の態度にジェラルドは苦笑いしながら右手を差し出す。

 

「硬くならなくてもいいよ。学園内で数少ない男なんだから仲良くしよう」

「は、はい! ありがとうございます」

 

「キターー!!」

「イケメン同士の握手!」

「貴族と平民で身分が違う少年達の……」

 

 紳士的なジェラルドの笑顔に一夏は感激して右手を握り握手する。遠巻きに様子を見ていた一部の女子生徒がなにやら寒気がするオーラを出しているのでジョルジュは慌ててジェラルドに質問する。

 

「そ、それで、僕らにはどんな用件ですか?」

「ん? ああ、午後からネクスト同士の対戦をするだろ? その激励だ」

 

 そう、午後の合同訓練では実際にネクストの動き・戦いを見せようというのだ。当然、戦うのはジョルジュとクリストフだ。この試合は撮影されて二・三年生向けに参考映像として記録される。

 

「後で観るから無様な試合をするなよ」

「勿論、負ける気はありませんよ」

「ところでクリストフは?」

「アイツは部屋に戻ってソルディキャンディーを食ってます」

「ああ……気合いを入れているのか」

 

 何故かソルディキャンディーを食った後のクリストフはあらゆるパラメーターが上昇する。体調は勿論だがAMSの調子も良くなる。あんな不味いキャンディーを食ってどうして調子がよくなるかわからない。

 

「じゃあ、用件も終わったから失礼するよ」

 

 ジェラルドはそう言って席を立った。それまで顔を赤くして黙っていた相川がジョルジュに向き直り真剣な目つきで申し出た。

 

「あの先輩が好きなこと教えて!」

 

 ここにクリストフがいなくて良かった。いたらジュリアスに余計なメールを送ってジェラルドを困らせただろう。相川には適当にジェラルドの好きなレーションを教えておいた。

 

 

 昼休みが終わり。一年生は全員グランドに集合させられた。

 後でISを動かすのだろうか? 全員がISスーツを着用し第二世代型IS[打鉄]が三機置いてある。ISスーツは水着のような形状なのでスタイルの良い女子が着ると目のやり場に困る。その中でも特にグラマラスな外見をした女子がジョルジュに近づいてくる。

 

「ジョルジョルのスーツって~ゴッツイね~」

「……なんだその呼び方は?」

「ジョルジュだから~ジョルジョル~」

「……」

 

 確かこの女子は同じ一組で布仏本音(のほほとけ ほんね)といったか? 間延びした口調で常に眠たそうにしているせいか、のほほんとした雰囲気をしている。一夏も「のほほんさん」と呼ぶくらいだ。そののほほんさんはジョルジュのスーツが気になるようで、肩や腹をぺちぺち触ってくる。周りの女子も気にしているようなので答えておく。

 

「……対G・防弾を考慮された特殊スーツだからな、ネクストはそこまで万能じゃない」

 

 ネクストの装甲が多少は人体を保護するとしても、備えたことに越したことはない。ISもACも軍事転用されているのだから搭乗機体が破損しても戦えるようにスーツには拳銃(勿論今は所持していない)が装備できるようにも作られている。のほほんさんの手を払っているとジャージ姿の織斑先生が現れた。

 

「これよりネクスト同士の対戦を見てもらう。サンソン、ローエン、機体を運ばせている。準備しろ」

「「 了解 」」

 

 二台のAC運搬用のトラックがコンテナを運んで来る。女子達は皆息を飲む。ISとは違い少し無骨な機体が開いたコンテナの中に待機していた。

 二人はそれぞれの愛機に近づきそばにある作業用パネルをコントロールしてコアパーツの装甲を展開させる。開いたコアパーツにに体を入れ、足をレッグパーツに突っ込む。ヘッドパーツから伸びるAMSケーブルを自身のコネクタに接続する。アームパーツに手を入れたら後はAMS経由でコンテナに付いている作業用アームでヘッドパーツを被り、コアパーツを閉じる。

 

「AMS接続良好。システム通常モードで起動」

 

 ジョルジュは声に出して自機の調子を確認する。いつもの癖なのだ。通常モードで起動するとジェネレーターが起動しコジマ粒子を生成する。

 

「ジェネレーター起動確認。無害化装置も正常に機能している」

 

 AMSから送られてくるコジマ汚染測定数値は無害を知らせている。無害化装置が正常に起動していなければ直ちに使用を停止しなければならないので、しっかり確認する。

 

「粒子放出……PA展開完了」

 

 ネクストの大事な防御手段が構築できたので作業用アームを動かしてマシンガンを持ってこさせる。右手でマシンガンを装備すると全体の武装を確認する。

 

R-ARM 01-HITMAN(マシンガン(レイレナード))

L-ARM 02-DRAGONSLAYER(レーザーブレード(レイレナード))

R-BACK  無

L-BACK TRESOR(プラズマキャノン(旧アクアビット))

SHOULDER 051ANAM(フレア(BFF))

 

 問題はない。

 

「拘束を解除……出撃」

 

 AMS経由で作業用コンテナのロックを外し、数歩歩いてブースターを噴射させる。隣を見ればクリストフも出撃してくる。

 

R-ARM AXIS(コジマライフル(旧アクアビット))

L-ARM KB_O004(コジマブレード(オーメル))

R-BACK JADORE(追加整波装置(旧アクアビット))

L-BACK JADORE(追加整波装置(旧アクアビット))

SHOULDER EUPHORIA(追加整波装置(旧アクアビット))

 

 見事にコジマ尽くしだ。

 

「準備完了だ」

「二人の胸のパーツが似ているけど……どうしてだ?」

 

 初めて目の前で動いているネクストを見て女子達はざわついているが、一夏は機体の特徴に疑問を持ったようだ。

 

「俺の機体は旧アクアビット社の[ランスタン]がベースになっているんだが、[ランスタン]のコアパーツはレイレナード社の[アリーヤ]を流用しているんだ。そしてジョルジュは[アリーヤ]ベースの機体を使っているから同じなんだぜ」

 

 一夏の質問にはクリストフが答えている。

 

「右手の銃はわかるんだが、二人の左手に付いてるのはなんだ?」

「わかりにくいと思うが近接武装だ。俺のはレーザーブレードのドラスレと言って「俺のはコジマパンチってやつで素晴らしきコジマ兵装だ!」……おい止めろ」

 

 いかん。コジマの話になると変態が本領を発揮する。どうにかして止めなければ……。

 

「へ……へー、俺の専用IS[白式(びゃくしき)]は剣一本しかないから戦い方を参考にしてもいいか?」

「ああ! 勿論いいぞ! 俺の機体は近接戦闘が主体だから存分に見ておけ!」

「二人共! 準備ができたならさっさと配置に着け! 始めるぞ」

 

 よし! ナイス織斑姉弟。クリストフが水を差されて残念そうな顔をしているが、このまま放置したら午後の授業中ずっとコジマの話になるところだった。

 

「配置に着きました」

「ジョルジョルに同じく」

「お前っ! 聞いていたな!?」

「静かにしろ! それではネクストによる模擬戦を行う。合図を出すからそれに合わせて始めろ」

 

 あの野郎、のほほんさんが付けた変なあだ名を覚えやがった。そんなクリストフがオープンチャンネルで通信してきた。

 

「一夏のオーダーだ。開始と同時に格闘勝負と行こうか? ジョルジョル」

「……ああいいぜ。どうせ勝つのは俺だ。システム戦闘モード」

 

 コジマの演説をしながらもクリストフは周りの声を聞いているようだ。耳ざといヤツめ。通常モードはジェネレーターと各種ブースターの起動、そしてPAの展開だけだ。戦闘モードはその名の通り、装備の安全装置を解除して戦闘ができるようにするモードだ。

 

「ジョルジュ・サンソン、[ジュスティス]潰すぞ!」

「クリストフ・ローエン、[アルビートル]コジマを振り撒く!」

 

 開始のブザーが鳴り響くと二人は同時に動いた。

 

「ノーチャーーーージ! コジマーー!」

「シュート!!」

「おい! さっきの格闘宣言はなんだ!?」

 

 一夏が驚くのも無理はない。クリストフはコジマライフルをノーチャージで、ジョルジュはプラズマキャノンを発射したからだ。お互いにやることは読めていたようで両者共に回避した。

 

「不意を突けると思ったか!?」

「いーや、どっちでも良かった」

 

 クリストフは本当にどっちでも良かったのだろう。当たってもノーチャージのコジマライフルは威力が低い。それでもPAの貫通はするので当たったらラッキー程度だ。ジョルジュはマシンガンを乱射しながら接近する。

 

「クッソ、乱れないな」

 

 マシンガンの弾はPAに減衰されてしまいクリストフへのダメージは少ない。だがマシンガンは元から威力が低いのでダメージソースとしては期待していない。ネクスト戦においてマシンガンの役割はPAのコジマ粒子をかく乱してPAの展開を妨害すること。要するに防御を剥がすことを目的としている。

 アルビートルがベースにしているランスタンという機体はPA整波能力が高いことが有名だ。そんな機体にクリストフは三台の追加整波装置を搭載していて容易にPAが剥がれないようにしている。

 

「しかも……当たらねぇ!?」

「どんどん緑がっ! コジマが蓄えられてー!?」

 

 貫通性能がありPAに対して有効なプラズマキャノンを撃っているが、クリストフは距離を離しながら避けていく。その間も右手のコジマライフルはチャージされ、いつ撃たれるかわからないプレッシャーを与えてくる。

 

「フルチャーーーージ! コジマーー!!」

「うおおおお!?」

 

 危なかった。こちらのプラズマキャノンが出す閃光に紛れながら撃ってくるとは、もう少し間合いが近ければ終わっていた。そんなやり取りが数回繰り返される。

 

「じゃあ、そろそろご希望に答えてやるか」

「それしか無いんだろうが? 来いよ。コジマの洗礼をしてやる」

「ぶった切るッ!」

 

 ジョルジュは決意を固めて左腕のドラスレを展開する。ジュスティスの本来の戦いは、このドラスレを中心に相手を斬り伏せるのが常道でジョルジュの得意戦法でもある。できれば相手より豊富な火器を用いて安全に戦いたかったが、プラズマキャノンの残弾数が乏しくなってきた為、方針を変えねばならない。

 

「セイッ!」

「シッ!」

 

 ドラスレの斬撃をコジマパンチで受けられる。コジマパンチは粒子を纏ってドラスレのレーザーに拮抗してくる。右から、左から、上から、アルビートルを切りつけんと剣を振るが、その全てを対応される。

 

「!?」

「ホラ!」

「チィッ」

 

 近距離武器の連撃中もチャージされていたコジマライフルを向けられると、おもわず回避距離を取る為に退いてしまう。そうやって退いたジョルジュにクリストフが逆に距離を詰めてコジマパンチで殴りかかる。凌ぐことができたが、まともに食らったら一撃必殺。コイツの武器はどちらも凶悪だ。

 

「オイオイ? ワン・オン・ワン(一対一)でお前が負けてちゃカッコつかねぇよ」

「ウルセエ」

 

 クリストフの言う通りだ。ジュスティスのようなブレード装備の近接戦闘型機体は一対一の時にその真価を発揮する。対してアルビートルは本来、集団戦でこそ真価を発揮する機体だ。チーム戦では味方がいて敵の注意を引いてくれる。その間にコジマライフルをチャージし不意を突いて敵を戦闘不能するのが役割だ。

 つまり機体コンセプトではこちらが勝っているべきなのだ。

 

「……」

「おおっと!? 退くのか? 別にいいぜ、どうせ何もできやしない」

 

 ジョルジュは挑発に乗らず、距離を取ってマシンガンで攻撃する。相変わらずアルビートルのPAは堅牢で乱れない。プラズマキャノンを撃つがクリストフは堅実に回避する。

 

「ここなら!」

「当たらねぇ、フォー!!」

「ぬっ!? おお!!」

 

 またしてもプラズマの閃光に紛れて撃たれたが、QBが間に合い回避に成功。

 アルビートルの武装はチャージしないと撃てず単発のコジマライフル。近接武器コジマパンチの二つだけ。クリストフは攻撃せず機動するだけなので、回避に専念できる。そして遂にジュスティスのプラズマキャノンが尽きた。

 

「レフトバック残弾ゼロ、パージ」

 

 背部武装のロックを外し、無用の長物となったプラズマキャノンを投棄する。パージすることで機体が軽くなり僅かであるが軽快に動けるようになった。武装がマシンガンのみとなったが、機動力を活かしてクリストフの周囲を飛び回り乱射するがやはり効果が薄い。その間に次のコジマがチャージされる。

 

「当たらない、当たらないって言うけど、撃ってこないな?」

 

 クリストフの動きに僅かな焦りが生まれる。

 

「そのフルチャージのコジマライフル。最後の一発だろ?」

「まぁな総弾数が六発しかないからな」

 

 そう、クリストフにとってもこの一発を確実に当てなければ、唯一の射撃武器を失い機体性能で不利な近接戦闘を強いられる。それもフェイントのコジマライフルを失った状態でだ。

 

「じゃあ、精々温めておけ……行くぞ」

「!?」

 

 QBを前、右、前、左と連続で噴かしコジマライフルの標準をかく乱しながら接近する。

 

「にッギイイ!?」

「何回目で終わるかな?」 

 

 一合、二合と交差する度に切る場所を変える。腹に向けて突き、左手を狙った切り上げ、気を反らす為に顔の近くを掠めるように払う、首を落とすように上空から切り落とす。そのどれもをクリストフはコジマパンチで凌いでいく。よく耐えるがそろそろ終わらせる。

 

「ファイナル・コジマー!!」

「ッ」

「チッ」

 

 八合目の後退でワザと動きを鈍くし、コジマライフルを誘うとクリストフは引っかかり最後のコジマを虚空に放つ。飛び道具を消失したクリストフに一気に迫る。クリストフも唯一の武装となったコジマパンチを構え突進する。

 

「「 おおおお!! 」」

 

 二人の咆哮が重なり九合目を迎えようとしていた。観戦する一年生全員が固唾を飲む。

 

「吹き飛べぇぇ!!」

 

 球状の閃光が生徒たちの視界を奪う。

 

「きゃあ!? 何?」

「たぶん……AA(アサルトアーマー)ってやつでゲームのオーラ攻撃みたいのだよ」

 

 一年一組の鷹月静寐(たかつき しずね)が言う通りクリストフが発動させたAAだ。PAとして自機の周辺に展開していた濃密なコジマ粒子を周囲一帯に爆発させる攻撃だ。勿論PAが濃密であればその分威力が増す。

 

「どうなったの?」

 

 閃光が晴れていく中で皆が結果を知りたがる。だが勝負はまだ決着していなかった。

 

「せぇぇい!!」

「なんだと!?」

 

 何故ならジョルジュはAAを直撃しなかったからだ。ジョルジュはAAが発動する前にOB(オーバードブースト)を噴かし、AAが発動した時にはクリストフを抜き去っていた。OBはジェネレーターから生成されるコジマ粒子を使った瞬間的な超加速で、PAに回しているコジマ粒子までも使用する為、PAが減衰してしまう弱点があるが、その速度はQBを超える。

 OBで一気に近づいたならば、ブレードで切り捨てればよかったのだが、ジョルジュもとっさのことで回避を優先してしまったのだ。

 そしてAAの範囲から逃れた後はQT(クイックターン)で素早く振り返り、再度OBを発動。AAの余波でコジマ粒子が漂っていてPAが減衰してしまうが、それは向こうも同じだ。AA発動後はPAの再展開が時間がかかる。

 再度突進してきたジョルジュに今度こそコジマパンチで対応しようとクリストフは構えるが、それをQBを噴かして飛び越える(●●●●●)

 

「そう簡単にはッ!」

 

 クリストフは飛び越えてQTで振り返ったジョルジュにコジマパンチで裏拳を放つ。

 

「な、に……!?」

「終わりだ」

 

 ジョルジュは裏拳をドラスレで受け止めると、右手のマシンガン01-HITMANをアルビートルに突き刺し(●●●●)トリガーを引く。PAも無いネクストしかも装甲が薄いランスタンに至近距離でマシンガンが撃ち出されアルビートルのAPが底を着いた。

 

 

「すごい! すごい!」

「ナイスファイト!」

「カッコよかった!」

 

 試合はジョルジュの勝利だが一年生全員が二人の健闘を拍手で称賛した。

 

「すげえよジョルジュ! あの戦い方教えてくれよ!」

「参考にしようにも、一夏には銃が無いじゃないか」

「でもちょっとでいいから接近のしかたを教えてくれよ」

 

 ジョルジュに教えを乞う一夏に箒が窘める。当のジョルジュは少し考えてから、

 

「わかった。俺の戦い方より難易度が高いが、なにか良いコンバット・パターンがないか考えてみよう」

「やった! ありがてえ、よろしく頼むぜ」

「しかし、大丈夫なのですの? ISとACでは勝手が違うのでは……?」

 

 箒の次はセシリアが食い下がる。

 

「俺のネクストの操縦を指導してくれた人は、自分と戦い方が違う俺に教えてくれた。あの人のように上手くできるかわからないがやってみよう」

「貴方に操縦を教えた人ってよほどすごい方なのですか?」

「すっげー人だぜ。なんたって……」

「止めろクリストフ。あの人はあまり過去の戦いに触れられると嫌がる」

「……ヘイヘイ」

 

 セシリアの問いにクリストフが余計な事を言いそうになったので、釘を刺しておく。

 その後の授業はISを交えた機動練習や弾道学の実演などに移行した。

 




次は企業連の構成やらを説明したいなー。レイレナが残っているし、なんか説明が続いているような……。なんか申し訳ない。
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