漏瑚の術式を持ってブルアカ世界へ   作:場取らず

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2話

ブルアカ世界に転生して、もう少しで一か月。

基本的な呪力の操作と術式を使いこなすべく日々鍛錬をしていたのだが、思わぬ恩恵があり、呪力関連については当初思っていたよりも大きな成果を得られた。

 

呪術師同士の戦いでも、最後に勝敗を分けるのは肉体の強度だ――と、どっかのメロンパンも言っていたので、

ランニングや筋トレといった基礎体力強化もしっかりと行ってきた。

呪力による身体強化はもちろん、生得術式である炎や熱を操る術式も問題なく使えるようになった。

 

掌から高出力の炎を放つ。

手や足に爆発する炎を纏わせ、打撃と一緒に叩き込む。

燃える火山弾(拳程度)を生成し、撃ち出す。

任意の場所に小型の火山を具現化させ、火炎放射を放つ。

 

これらはさほど時間をかけずにできるようになったのだが、苦戦したのは『火礫蟲』だ。

一体どうやって爆発する虫を生成するのかが分からず、もうとにかく「こんな感じで!!」

と頭の中にイメージしたものに呪力を込め、試行錯誤した結果、

それっぽいものは何とか形になった。

 

ただ、原作のようなデカい羽虫ではなく、炎で作られた紙飛行機のような見た目のもので、

一応複数体生成し、自分で操って追尾弾のように使用できるのだが、音によるスタンは再現できず、アニメでやっていたように火礫蟲に運ばせて空を飛ぶこともできなかった。

 

だが、埒外の幸運で得られた能力がある。

それが『反転術式』だ。

 

習得が非常に困難で、扱える人物は一握りしかいないこの高等技術。

習得にどれほど時間がかかるか、そもそも覚えられるのかと不安だったが、僅か二週間ほどで習得することができた。

 

推測だが、要因は二つあると思う。

一つは、俺が転生という形で一度“死”に触れ、呪力の核心を理解していたため。

そしてもう一つは、この世界のヘイローを持つ生徒たちが纏う力それが反転術式に必要な、いわゆる『正のエネルギー』に似ていたことだ。

 

気付いたきっかけは、呪術操作ができるようになった頃、

街でヘイロー持ちのキヴォトス人を見かけた際に、呪力をまったく感じず、代わりに呪力とは異なる力を纏っていることに気付いたことだった。

その力を直感的に、呪力とは逆のものだと感じたのだ。

 

『負のエネルギー』である呪力を掛け合わせることで生まれる『正のエネルギー』。

その“サンプル品”のようなものを観測できたことが、前述の能力と噛み合い、短期間で反転術式を習得できたのだと思われる。

 

そして、反転術式が使えるようになったことで試せたことがある。自身を呪力で強化した際の肉体の強度だ。

 

呪術廻戦原作で、アメリカ軍が東京第一結界で呪術師と交戦した際、グレネードやテーザーガン、50口径の銃弾ですら効果が薄かったと、黒人女性の隊長さんが言っていた。つまり、ある程度は銃撃に耐えられるはずなのだ。

――まあ、術師としての実力がピンキリの“ピン寄り”なら、の話だが。

 

いつも訓練で使っている近所の空き地に移動し、地面にケースを置いて中身を確認する。

 

「リボルバー、手榴弾、対物ライフル。冷静に考えたら、何やってんだって話だな」

 

呟きながらも、手は止まらない。

呪力を意識し、全身に巡らせる。

 

「まずは軽いところから」

 

リボルバーを手に取る。

銃口を左肩に向け、引き金を引いた。

 

乾いた発砲音。

 

衝撃はある。

だが、肉を貫く感触はない。

 

「通らないな…」

 

弾頭は潰れ、地面に転がっていた。

服の表面が焦げ、肌に赤い痕が残るだけだ。

 

次に腹部。

結果は同じだった。

 

「通常弾は、ほぼ無効か」

 

呪力を少しだけ緩めて撃つと、軽い痛みとともに表皮が裂けた。

 

「出力管理は必須だな」

 

次は手榴弾。

 

「……やるか」

 

短く息を吸い、意を決してピンを抜く。

足元に落とし、そのまま呪力を最大まで引き上げる。

 

爆音。

 

衝撃が下から突き上げる。

爆風で身体が宙に浮き、着地と同時に砂が舞った。

 

「……っ!」

 

腕や脚に擦過傷はあるが、致命的な損傷はない。

鼓膜が少し痺れる程度だ。

 

「足元でこれなら……十分だな」

 

最後は対物ライフル。

 

流石に手で持って自分に向けるのは無理がある。

銃を地面に固定し、狙点を太腿に合わせる。

 

そして、トリガーに長い棒を当てる。

 

「はたから見たら、とんでもなく間抜けな構図だな」

 

自分で言っておいて、少しだけ苦笑する。

呪力を太腿に集中させ、棒で引き金を押し込んだ。

 

轟音。直撃。

 

「……っぐ」

 

膝が僅かに折れ、体勢を崩しかける。

太腿の表面が裂け、血が滲んだ。

 

「さすがに……効くな」

 

だが、貫通はしていない。

致命傷には程遠い。

 

すぐに反転術式を起動する。

正のエネルギーが傷口を覆い、裂けた皮膚と筋繊維が元に戻っていく。

 

「回復も問題なし」

 

深く息を吐く。

 

結論。

呪力で強化した状態なら、小火器はほぼ無力。

爆発物も即死には至らない。

対物ライフルクラスで、ようやく“通る”。

 

「銃撃戦が日常の世界で、これは相当だな」

 

ただし、過信は禁物だ。

あくまで呪力で強化した状態なら、の話であり、素の肉体の強度は前世と大差ない。

流れ弾一発で致命傷になりかねない。

 

「慢心したら終わり、か。てかキヴォトス人、常時これ以上の耐久力ってどうなってんのさ……」

 

そう呟き、俺は対物ライフルをケースに戻した。

 

「明日はいよいよ入学か……学校生活……大丈夫かな……」

 

メチャクチャ不安である。

このアビドス自治区、砂漠化で廃れていることは調べて分かっていたが、無法地帯と言っても過言ではないほど治安が悪い。

自宅周辺はまったく人気がなかったため、しばらくその事実に気付かなかったのだ。

 

転生して初めての買い物で街を訪れた際、二人組のスケバンに絡まれ、カツアゲされそうになったことを思い出す。

 

 

~~~ 回想 ~~~

 

買い物を終え、街を歩いていると、前方に二人組のスケバン風の生徒が立ち塞がった。

 

「おい、そこの」

 

フルフェイスのヘルメットを被った片方が声をかけ、もう一方は隣でニヤニヤと笑っている。

最初は男子が珍しいのかと思ったが、ヘイローを持たない俺を確認すると、途端に露骨な態度に変わった。

 

「ちょ~っと今、手持ちがなくてさ。金、貸してくんね?」

「ダイジョブ、ダイジョブ。ちゃんと返すからさ。気が向いたら」

 

(うわー、漫画やアニメでしか聞いたことねぇセリフ……ここ、ゲームの世界だったわ)

 

前世でも遭遇したことのない、あまりにもコテコテなカツアゲに思わず呆然としてしまう。

そんな俺を見て、二人組は「怖気づいた」とでも思ったのか、さらに調子に乗り始めた。

 

「オイオイ、そんなにビビんなくてもいいじゃ~ん。いい子にしてりゃ、痛い目は見ずに済むからサ!」

「ヘイローもない上に、銃すら持ってないとかさ~。アビドス以上のド田舎出身か~? そんなんで出歩いたら危ないでちゅよ~? ぎゃははは!」

 

(スゲェ、見た目も言動も《ザ・三下!》って感じの不良が本当に存在するんだ。この世界)

 

ある意味で感心していると、まったく反応を返さない俺に痺れを切らしたのか、片方が銃口をこちらに向けて凄んできた。

 

「おい! いつまでもぼさっと突っ立ってんじゃねぇ! とっとと金出せっつってんだよ!!」

「優しくしてあげてるうちにさぁ……言うこと聞いた方が、お得だよ?」

 

パァン!と乾いた銃声が響き、俺の足元近くに弾丸が叩き込まれた。

 

このままいけば、本当に撃ってくるだろう。

殺す気はないようだが、怪我をさせることには一切の躊躇がなさそうだ。

 

(こっちは一発でも貰った大事だってのに…ったく)

 

呪力を全身に回し、相手を見定める。

やはりヘイロー持ちの生徒からは正のエネルギーに似た力が発せられているのを感じる。だが…。

 

(正直大した力は感じない…大体この位の出力でいけるハズ…)

 

「テメェ!いい加減n ボゥ!!

「………は?」

 

ノーヘルの方のスケバンが、突如として炎に包まれた。

一瞬遅れて炎は収まり、そこに残っていたのは――

全身をコンガリと焼かれ、地面に倒れ伏すスケバンの姿だった。

 

「…え?いや…?ハぁ!?」

 

突如相方が炎に焼かれ、混乱しているもう片方を警戒しつつ、倒れているスケバンに近寄る。

呼吸はしているし、脈もある。どうやら気絶しているだけのようだ。

 

内心「殺っちまったか!?」と焦ったが、

よく見ると表面に煤が付着しているだけだった。

少し拭うと地肌が現れ、火傷らしい箇所も見当たらない。

 

(火力調整はバッチリと…。うん、術式の制御は問題ないな)

 

そんな事を考えていると、ヘルメットの方がようやく我に返ったらしく、こちらに銃口を向けてきた。

 

「テ、テメェ!!一体何しやがった!?」

 

「……」

 

俺は無言でゆっくりとヘルメットスケバンへと近づく。

 

「く…来るんじゃね熱ッ!

 

掌から放った炎で、軽く炙りながら距離を詰める。

 

「な…何だ…何なんだよぉ…」

 

「オイ」

 

ビクッと身体を震わせ、こちらを見るスケバン。

フルフェイスのため表情は分からないが、怯えきっているのは明らかだった。

 

俺は、地面に倒れている相方を指さす。

 

「そいつ連れて、とっとと失せろ」

 

「…へ?」

 

「聞こえなかったか?相方連れて、消えろって言ったんだ」

 

掌に炎を浮かべたままそう告げると、ヘルメットの娘は短い悲鳴を上げ、倒れた相方を担ぎ上げる。

そして振り返ることもなく、一目散に走り去っていった。

 

 

~~~ 回想終了 ~~~

 

 

 

(その後も何度か同じような目に合うわ、不良同士が街中破壊しながら暴れまわるわ…、前世でも治安の悪さで有名だった都市でもここまで酷くはないだろ…。アビドス高校、ヤンキー校じゃないよな?全国の不良ども纏め上げて頂点(テッペン)取るとかそんな感じの…。)

 

早い段階で呪力を使った実戦が出来た事は僥倖だが、環境的には最悪である。

キヴォトスは数千の学園が存在する巨大学園都市、

バリバリのヤンキー校が出てきても不思議ではない。

 

「不安だ…」

 

小さく息を吐き、俺は空地を後にした。

明日のことを考えると、期待よりも不安の方が上回り、足取りは重かった。




主人公君、呪力出力が高いです。
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