漏瑚の術式を持ってブルアカ世界へ 作:場取らず
――――便利屋68 事務所
「…………」
椅子に腰掛けたまま、アルは真っ白に燃え尽きたような表情で固まっていた。
「アルちゃーん。大丈夫~?さっきから白目向いたまま全然動かないけど?」
ムツキが目の前でひらひらと手を振る。
反応はない。
「社長、今回の依頼は諦めた方がいいって。推定ヒナ委員長クラスが二人。それに他のメンバーも相当な実力者だ」
「そーそー。しかもシャーレの先生の指揮能力まで加わっちゃったら、無理無理。依頼料もらっても割に合わないって」
カヨコの言葉に、ムツキも何度も頷く。
「……そういう訳にはいかないのよ」
ようやくアルが口を開く。
「詳しくは知らないけど、今回のクライアントは相当な大物らしいの。この依頼を失敗したら、今後の便利屋68の活動にも影響が……」
「そんなこと言っても、どうにもならないでしょ。少なくとも私たちだけじゃ勝てない」
「傭兵を雇うにしても、もうお金ないしね~」
カヨコが即座に切り返し、ムツキも肩をすくめる。
「仮に雇えたとしても、腕の立つ連中は炎帝とやり合うなんてリスクは避けるはず。受けるとしても、相当足元を見られるだろうね。逆に、安い報酬で飛びつくような三流を集めても意味がない」
「あーっ!もう!うるさいうるさい!だったら、お金を用意すればいいんでしょ!……融資を受けるわ!」
「融資って……どこで?中央銀行に行ったって門前払いでしょ」
ムツキが首を傾げる。
「他にも方法はあるわ!見てなさいよ……!」
アルはニヤリと笑うと、勢いよく事務所を飛び出していった。
「あ、アル様!?」
慌ててハルカが後を追う。
「……はぁ、今度は何を思いついたんだか」
「さぁ?でも放っとくと絶対ロクなことにならないしね~」
カヨコは深いため息をつき、ムツキも苦笑しながら立ち上がる。
結局、三人ともアルの後を追って事務所を飛び出した。
――――ブラックマーケット
「巡回、交代の時間だ」
「了解。今日も異常なし。皆、俺たちマーケットガードの世話にならない程度には上手く悪さをしてるよ」
「ま、ここで騒ぎを起こすような馬鹿はいないっしょ。何も知らない間抜けは、俺たちの世話になる前に身ぐるみ剥がされて路地裏行きだ」
「……まぁ、普通ならな」
「ん?何スか、その言い方」
「お前、新入りだったな。あの事知らないのか」
「何をです?」
「あの"炎帝事件"だよ」
「炎帝……?確か賞金稼ぎのガキですよね?あいつが何かやらかしたんすか?」
「ああ、その炎帝だ。ある日、奴に狙われた賞金首がブラックマーケットに逃げ込んできた。で、付き合いのあった犯罪組織が匿ったんだ」
「……それで?」
「組織ごと潰された。拠点もまとめて焼き払われるオマケ付きでな」
「うわぁ……」
新入りが思わず顔をしかめる。
「でも、それなら賞金首を捕まえて終わりじゃないんすか?確かに派手にやってますが、その程度の事は組織間の抗争とかでままありますし、事件ってほどじゃ……」
「俺達も最初そう思ったさ。ところがあいつ、賞金首だけじゃなく組織の構成員までまとめて拘束してな、そのまま全員俺たちの詰所まで連れて来た。で、『後はお任せします』つって帰ってった」
「…………何で?」
「知らねぇよ……」
新入り以外の全員が遠い目をした。
「しかも、それで終わらなかった」
「……まだあるんすか?」
「ああ。その後も同じようなことが何度も起きた。賞金首がブラックマーケットへ逃げ込む、匿った組織ごと炎帝が潰す、賞金首ごと構成員をまとめて俺たちへ引き渡す、毎回この流れだ」
「慣れたくないのに慣れちまったよ……」
別の隊員が疲れ切った声で呟く。
「中には炎帝を利用しようとする馬鹿まで現れた」
「利用?」
「敵対組織に賞金首を送り込んで、『炎帝に潰させよう』って考える連中だ」
「うわぁ……」
「だが、それはまだマシな方でな……」
ベテラン隊員の表情が険しくなる。
「炎帝に潰された組織の中に、当時ブラックマーケットで急速に勢力を広げていた連中がいてな。あいつら、前々から俺たちマーケットガードとも揉めてた。そのせいで、こんな噂が流れた」
『マーケットガードは炎帝と手を組み、邪魔な組織を始末した』
「……もちろん事実無根だ。でも、周りはそうは思ってなかった。自衛だ何だと理由を付けて武装を強化し始める組織が続出した。一歩間違えば、ブラックマーケット中の勢力が俺たちに牙を剥くところだったんだ」
「…………」
新入りは絶句する。
「だから上は決断した。『炎帝をブラックマーケット出禁にする』……とな」
「で、出禁っすか!?各学園を追われた荒くれ者や問題児、果ては犯罪者まで受け入れるブラックマーケットを!?」
「ああ。前代未聞の処置だろうな……」
「……そういや、炎帝に出禁を告げたの、アンタじゃなかったか?」
別の隊員が思い出したように口を開く。
「あ?」
話をしていたベテランが顔をしかめる。
「そうだった、そうだった。上から『お前が伝えてこい』って押し付けられてたな」
「……ああ、思い出させるな。チクショウ、最初に炎帝の対応した時、その場にいたからって理由で押し付けてきやがって……」
「で、どうだったんすか?」
「ぽかんとした顔で『え?何で?』だとよ……。何でじゃねぇんだよ……! 何ではこっちのセリフなんだよ!何が目的であんな騒ぎ起こしやがった……!」
ベテランは頭を抱えながら続ける。
「最後はこっちで捕らえた賞金首を差し出して、『頼むから帰ってくれ』って、こっちが頭下げる羽目になった。……そしたら、しぶしぶ帰っていって、それ以来ブラックマーケットには姿を見せてねぇが……」
「何がしたかったんすか?そいつ……」
「知らねぇよ……知りたくもない……」
「あんときは炎帝の名前を出すだけで空気が凍ってたもんなー」
「まぁ、今となっちゃ苦労話だ。二度と御免だがな」
その時だった。
「ク〜ロ、クロクロクロクロ」
場違いなほど陽気な笑い声が、周囲に響き渡る。
「な、何だ!?今の笑い声は!?……笑い声、だよな?」
隊員たちは思わず周囲を見回す。
「おい、あそこ!」
一人の隊員が建物の屋上を指さす。
そこに居たのは――。
「Bonjūru!ブラックマーケットに巣食う社会のダニの諸君!!私は愛と平和と真実を追い求める非営利団体【けまどりあ】所属の――《Cagoule Noire(カグール・ノワール)》!!その小バエ以下の脳ミソに、しかと刻みたまえ!」
「な、何だあの……今どき芸人でも着ねぇようなギラギラのスパンコールスーツは……」
「……何で目出し帽の上からサングラスしてんだ?」
「カグール・ノワール……?確かフランス語で『黒い目出し帽』だったか?名前までふざけやがって……!」
「先輩、意外と学あるんすね……」
「チッ!変人の相手なんぞしてられるか!おい、お前ら!とっとと片付けるぞ!」
ベテランの号令が飛ぶ。
他のマーケットガードたちも即座に応じ、一斉に屋上の怪人へ銃口を向けた。
そんな光景を見下ろしながら、ノワールは肩を竦める。
「Déplorable……。言葉を交わすより先に武器を向けるとは……所詮は人の道を外れた獣か」
ゆっくりと両腕を広げ、まるで舞台役者のように大仰な仕草で宣言する。
「ならば――少々躾けてやろう」
パチン――。
頭上に掲げた右手で指を鳴らした、その瞬間。
「!?うわっ!」
マーケットガードたちのすぐ傍らに積み上げられていたガラクタの山が、何の前触れもなく轟炎を上げる。
「な、何だ!?何をした!?」
パチン――。
今度は通り沿いに放置されていたバラック小屋が、一瞬で炎に包まれた。
パチン――。
朽ちかけた店の看板が火柱を上げる。
パチン。
パチン。
乾いた指鳴らしが響くたび、あちこちで炎が噴き上がる。
積み上げられた廃材、放置された廃車、積荷の木箱、錆び付いたドラム缶――。
ブラックマーケットに溢れる無数の可燃物が次々と燃え上がり、瞬く間に周囲は業火に呑み込まれていく。
「ク〜ロ、クロクロクロクロ……。Très bien」
芝居がかった所作で、炎を見渡す。
「火――それは人類が生存と進化のために初めて手にした、偉大なるエネルギー革命の第一歩」
まるで講義でも始めるかのように語り始める。
「暖を取り、獣を退け、闇を照らし、食を育む。文明とは、火と共に歩んできたと言っても過言ではない」
そこで一拍置き、マーケットガードたちへゆっくりと視線を向ける。
「――どうかね?諸君らも、この文明の恩恵を身をもって理解できたのではないか?もちろん――」
両手を大きく広げ、燃え広がる炎を示す。
「使い方を誤れば、このような惨状を招くことも含めて、だがね」
***
(演技とはいえクッソ恥ずい!!)
燃え盛る炎を背に堂々とポーズを決める《Cagoule Noire》――その正体である俺、倉戸ケンジは、誰にも悟られないよう内心で悶絶していた。
(何だこの格好!何だこのセリフ!何だこの笑い方!ノリと勢いで始めたはいいけど、冷静になればなるほど羞恥心がヤバい!)
絶対今、耳まで真っ赤だ。
覆面で隠せて本当に良かった。
ナイスだ、シロコ。
けど、そもそもこんなことになった元凶はお前だったな。
ふざけんなよ、シロコ。
「周りから急に炎が……まさか……炎帝!?」
「炎帝?Non。Non!Non!!」
ノワールは大袈裟に肩をすくめ、やれやれと言わんばかりに首を振る。
「あんなGosseと、この私を同列に語っていただいては困る。アレが炎を語るには、一万年ほど早い」
(ざっっっけんな!!何のためにこんな真似してると思っていやがる!!)
「た、確かに炎帝は炎を操っていたが……手から放ったり、自分の周囲に炎を生み出して飛ばしたり……何かしら炎が生み出される起点があった。いきなり離れた場所を燃やすなんて聞いたことがねえぞ……」
「言っただろう?同列に語っていただいては困ると」
種明かしをすると、これは俺の術式の技の一つ ――対象へ熱を与え、自然発火へと導く強制発火能力だ。
もっとも、この技はキヴォトスの住人、特にヘイロー持ちには神秘の影響なのか効果がない。
触れた相手の体温を上げることくらいはできるが、それなら殴るなり炎を撃ち込むなりした方が早い。
だから実戦で使う機会はほとんどなかった。
この能力を知っているのも、ごく一部の人間だけだ。
しかも連中の認識は、「冬場に周囲を暖める暖房代わり」だの、「湯を沸かすケトル代わり」だの、完全に家電扱いである。
……まあ、その評価自体は間違っていない。
だが、相手がヘイロー持ちではなく、そこら中に転がる可燃物だったなら話は別だ。
「ご理解いただけたかね?」
再び芝居がかった仕草で両腕を広げる。
「このキヴォトスにおいて、最もArtistiqueで、最もDanger、そして最もFascinantな炎使い――それこそが、この《Cagoule Noire》であると!!」
(……もはや自分でも何言ってるのか分からん)
パチン――。
そう思いつつも、周囲を燃やす手は止めない。
通りの向こうに積まれていた木箱が燃え上がり、放置された廃車が黒煙を噴き上げる。
さらに積み上げられた廃材や木製の屋台までもが次々と炎に包まれ、ブラックマーケットの混乱はさらに加速していった。
「ク〜ロ、クロクロクロクロ……。さて、何時までも君達にばかり構ってもいられない」
炎を背に、ゆっくりと踵を返す。
「今日ここへ来たのは、世間様から日陰者扱いされているここの住民にも、たまには"火"の光を当ててあげようと思ってね。――では、Salut」
ひらりと手を振り、悠然とその場を後にした。
退散するからといって大人しく帰るつもりはない。
道すがら、目についた可燃物を片っ端から燃やしていく。
ずっと裏声で怪人を演じ続けていたせいで喉が限界だった為、途中で近くの自販機で飲み物を買い、一息。
束の間のチルタイムを満喫する。
そして飲み終えた後、もうちょい燃やしとくかと最後に数か所へ火を放ち、ブラックマーケットの混乱へ最後のひと押しを加えると、目的は果たしたと判断し、そのままマーケットを離脱した。
~~~~~~~~~~
「クソッ! あの覆面野郎、逃げやがった! ……熱っ!!」
「追うな! 今は消火が先だ!」
ベテランが怒鳴り声を上げる。
「新入り! 応援要請して、ありったけの消火剤を持ってこさせろ! 他の奴は俺と一緒に重機を持って来い! まだ燃えてねぇ建物を壊して延焼を防ぐぞ!」
「こ、壊すって……い、いいのかよ? そんなことして……」
「馬鹿野郎!」
ベテランは反論してきた隊員に、燃え盛る炎を指差した。
「マーケットで扱ってる兵器や薬品に万が一引火してみろ! ここの連中がまともに保管してると思うか!? 一つ誘爆すりゃ次から次へと爆発して、本当にブラックマーケットが焼け野原になるぞ!」
「りょ……了解!」
隊員達は顔を青ざめさせながら駆け出していく。
「糞が……!」
燃え広がる炎を睨みつけ、ベテランは忌々しげに吐き捨てた。
「炎帝といい、あの覆面野郎といい……炎使いにロクな奴がいねぇ!」
――余談だが、この一件をきっかけに、彼は上層部から《Cagoule Noire》対策責任者という、とんでもない貧乏くじを押し付けられることになる。
~~~~~~~~~~
スーツとサングラスを焼却処分し、証拠隠滅。
覆面は……こんなんでもカワイイ後輩のお手製なので懐にしまい直す。
ブラックマーケットから少し離れた場所に待機している車へ戻ると、アヤネがほっとしたように胸を撫で下ろした。
「お帰りなさい、ケンジ先輩!ご無事で何よりです」
「ただいま。そっちは?」
「はい。帳簿は予定通り回収。作戦は無事成功です」
「……そうか」
安堵の息が漏れる。
あれだけ恥を忍んで怪人を演じた甲斐があったというものだ。
どうやら陽動は予想以上の成果を上げたらしい。
ブラックマーケット各所で相次いで発生した火災への対応を優先するため、銀行へ配備されていたマーケットガードの一部まで消火活動の増援へ回されていたという。
その結果、銀行の警備は当初の想定よりも手薄となり、ホシノたちは大きな抵抗を受けることなく目的を達成したのだった。
――ただ。
「現金も強奪したぁ!?」
思わず素っ頓狂な声が漏れる。
「その……行員の方が混乱してしまったみたいで……帳簿をバックに詰める際、現金も一緒に渡してしまったそうなんです」
「マジかぁ……」
「それで…今、その処置で揉めてしまっていて……」
通信の向こうでは、どうやら意見が割れているらしい。
セリカの主張は単純明快だった。
そもそも、この金はアビドスが真っ当に稼いで返済した金。
このまま銀行へ戻したところで、また巡り巡って犯罪組織の資金になるだけ。
それなら、このまま借金返済に充ててしまった方がいい。
ノノミもその意見に賛成していた。
一方、アヤネは「それは本当に犯罪です!」と真っ向から反対。
そしてシロコは――。
『ん。自分の意見を言うまでもない。先輩たちが反対するだろうから』
言い出しっぺ、まさかの反対表明。
お前、銀行強盗を発案して、そのための下準備や逃走経路まで真剣に考えて、銀行強盗に情熱を燃やしてたのに、肝心の現金を持ち帰ることには反対なのか……。
まぁ今回はあくまで狙いは帳簿だからかもしれんが、まさか銀行強盗は金を奪うためじゃなく強盗そのものが目的じゃないよな?
(……現金に手を付けることへ大反対なのは俺も同意だし、正しいんだけどさ……)
紙幣は番号で管理されている。
仮にその問題をどうにかできたとしても、慢性的な資金難に喘ぐアビドスが突然一億円もの大金を動かせば、確実に足が付く。
時期を置くにしても数年、下手をすれば十年単位で寝かせなければならないだろう。
そんなリスクを背負うくらいなら、帳簿から犯罪の証拠を確保した方が遥かに確実だ。
『うへぇ、シロコちゃん、おじさんたちのこと分かってるねー。私たちに必要なのは書類だけ、お金じゃない』
流石ホシノだ。
普段は悪ふざけすることもあるが、こういう一線だけは決して踏み越えない。
この現金に手を付けることのリスクをちゃんと考えて――。
『今回は悪人の犯罪資金だからいいとしても、次はどうするの?その次は?一度でも手を付けちゃったら、「盗む」って選択肢がこの先の生活に入り込むと思うよ?』
(…………)
『おじさんとしてはカワイイ後輩にそんな道を歩んで欲しくないな~。そんな方法で学校守って何の意味があるのさ。と、いう訳で書類だけ頂いてバックは置いていくよ。これはアビドスの生徒会長としての命令だよ~』
『ホシノ先輩……。そうですね……きちんとした方法で返さないと、アビドスがアビドスでなくなってしまいますね……』
『あーー!!もう!わかったわよ!……ったく変な所で真面目なんだから……』
ノノミが静かに頷く。
セリカも不満そうに頬を膨らませながらも、それ以上反対することはなかった。
『"何だかんだ、しっかりホシノが皆の手綱を引いてるんだね"』
「はい。私たちのリーダーですから」
アヤネは少し誇らしげに答えた。
「……先生」
『"ん? どうしたの、ケンジ"』
「大人になるって、悲しいことですね……」
『"急にどうしたの!?"』
この後、何故か便利屋68のアルが現れ、向こうで何やらやり取りをしていたらしい。
だが、社会の荒波に揉まれ、自分が思っていた以上に純粋さを失っていたことを突き付けられた俺は、ショックでそれどころではなかった。
―――便利屋side―――
融資を受けるため、ブラックマーケットの闇銀行を訪れていた便利屋68。
しかし運悪く――いや、運良くと言うべきか。
彼女たちは【覆面水着団】による銀行襲撃の真っ只中へ居合わせることとなった。
無駄のない連携。
大胆不敵な犯行。
そして、闇銀行を狙うという豪快さ。
その一部始終を目の当たりにしたアルは、覆面水着団へすっかり心を奪われてしまう。
彼女たちの後を追い、話をし、彼女たちが去った後も、その興奮は収まることを知らなかった。
「ヤバいわ!超クール!カッコ良すぎるわ!!」
「「「…………」」」
「このご時世にあんな大胆なことが出来るなんて……しかも『我が道が如く魔境をいく』がモットーだなんて……感動的だわ!!」
「ねぇ、あの子たちって……アビドスだったよね……?」ヒソヒソ
「……一体どういうつもりで銀行強盗なんか……」ヒソヒソ
カヨコとムツキが小声で顔を見合わせる。
そんな二人をよそに、アルはさらに熱弁を振るう。
「しかも聞いた!?ブラックマーケットを火の海にすべく放火して回った謎の怪人まで現れたそうじゃない!くぅぅーーー!真のアウトローと言える人たちが、世の中にはまだこんなに……!」
「ねぇ、その怪人ってさ……」ヒソヒソ
「……実際に見てないから断言はできないけど、状況からして炎帝だろうね。……何してんの、あの人?」ヒソヒソ
「激ヤバだわ!私たち、とんでもない連中と同じ時代に生まれてしまったわ!!」
「事実を伝えるべきなんだろうけど……いつ伝える?」ヒソヒソ
「面白いから、しばらく放置で♪」ヒソヒソ
ムツキが悪戯っぽく笑うと、カヨコは小さく肩をすくめた。
その時、不意にハルカが足元のバッグを持ち上げる。
「あ、あの……ところで、このバッグ……あの人たちが置いていったみたいなんですけど、どうしましょうか?」
「え?まさか覆面水着団が、私のために!?」
「……なわけないでしょ」
「何だろ?結構重いけど……」
ハルカがおそるおそるバッグを開く。
次の瞬間。
バッグいっぱいに詰め込まれた札束が、その姿を現した。
「……………………」
アルの思考が停止する。
そして――
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
便利屋68社長・陸八魔アルの絶叫が、ブラックマーケット近郊一帯へ高らかに響き渡った。