リプレイ:ケイオス   作:凍星 奏雨

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DX3「Hollows Snow」⑦

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ENDING PHASE

 

バックトラック。戻り道を意味する言葉であり、その名の通り、ここはオーヴァードによる日常への帰路。

 

笹原:侵蝕率281。

GM:過去最高じゃない? これ、上昇侵蝕率。じゃあ早速Eロイスだけど、合計で13個。

笹原:カウントよりちょっと多い。ちょっと多いだけ! 先ず13d10……お! 75。ちょっと上振れ。

GM:ほうほうほうほう。この上振れ偉いな。

笹原:『メモリー:故郷の人々』宣言。侵蝕率を10下げる。えー196。二倍振りを宣言。

GM:はい。68、上振れてはいるが……。

笹原:追加振りを宣言。6d10。

 

Eロイス13個。

残存ロイス6個。

31d10(&メモリー)を存分に振るい――。

 

笹原:いぃや帰ってきたァッ!!

GM:93……はっは(笑) おかえり!

笹原:ただいま!

GM:すごいね、メモリーなかったら終わってたね。

笹原:メモリーなかったら終わってた。伏せられてたEロイス二つがなかったら終わってた。

二人:ロイス一つでも切ってたら……(笑)

GM:じゃあエンディングに行きますかー。

笹原:あー、欲しいシーンがあるかも。

GM:ふんふん。

 

 

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Introduction

 

 

小さな支部の、小さな少年少女の、大きな悲劇。

その少年には幼馴染がいた。

同年代のUGNチルドレン。ハヌマーンとノイマンの力を持ち、所謂感覚派型の剣士。

少年はオルクスとサラマンダーの力を持つ、所謂理論派。

 

「ベーッ! 夏樹のばーか! もう顔も見たくない!」

 

――故に、何度もぶつかりあった。

 

その日もいつも通りの喧嘩をして、細宮夏樹は支部から出ていった。

結局のところ、二人の家は同じなのだから、じきに顔を合わせるのだが。

 

その日の家出は夜まで続いた。その事が幸運だったのか、それとも不幸だったのか。

戻ってきた細宮夏樹を出迎えたのは――“メドゥーサ”に殲滅された支部だった。

幼馴染の遺体はなく、残されていたのは血痕と、腕と、レネゲイド反応のみ。

 

 

細宮夏樹はハヌマーンの力を継承し――復讐の道を歩んだ。

 

 

やがて支部長となった細宮夏樹は、その時が来たと知る。

部下を率いて宿敵の“メデューサ”と相対する。

“メデューサ”とは機構。オーヴァードの力を利用した悪辣な機構だった。

 

 

復讐心に身を焦がし、ひたすらに豪雪を見舞う。

遂に破壊した。

遂に復讐を成し遂げた。

 

 

達成感を上塗るように、“メデューサ”の身体が開かれた。

そこに『居た』のは、機構に身体を融合させ、黄金の痣を作っている人の形。

目を縫い合わせられて、尊厳を殺され尽くした人の形。

 

 

「――――ずっと、ずっとオマエを否定することばかり、考えていた」

 

 

幼馴染の形をしたモノが、そこに居た。

 

 

もしも復讐以外の道を辿っていれば。

ここで理性を取りこぼすことは、無かったのかもしれない。

 

 

――――――――――――――――――――――

Scene10・虚心坦懐

 

戦闘直後。

凍り付いた空気は、決して氷上に居るが故のものではなかった。

 

GM:緊張が走る中、彼はそっと腕を降ろす。「UGNも、合流する頃合いか」

笹原:「そうだね」

GM:「(自分の身体に『虚鏡』を収納する)俺は行くよ。ややこしい目に遭いそうだ」

笹原:「うん。そうしてくれると助かる。あくまで有志のカフェ店員だからな」

GM:「あぁ、でもその前に伝えておこう。残念なことだろうが、あの男……“スコープレス”は殺していない。キミの言った通り、俺の仕事は給仕だからね」

笹原:「大丈夫だ。流石にそこまでやってもらっちゃ、こっち側の背が立たないよ」

 

 

元支部長へ歩み寄る笹原を一瞥した後に、カフェ店員は姿を消した。

昔取った杵柄――有数の暗殺者が見せるエンジェルハィロゥの隠密迷彩は、そう見破れるものではないだろう。

 

 

笹原:細宮元支部長の身体を抱き上げて、弔うためにも抱えて戻っていこうかな。

GM:うん。

笹原:UGNが来てるんだったら、ま、多少騒がしくなってるだろうし。あとそろそろ張ってる氷がいつ割れるかわかんなくなってくるし(笑)

GM:そうだね(笑)

笹原:《軽巧》*1《構造看破》*2辺りを使って、踏んでも大丈夫なところを走り抜けていこうかな。

GM:では、貴方は八人と戦闘部隊大勢に心配されながらも合流していく。

 

 

分厚い積乱雲はあっさりと晴れていき、目に痛いほどの夕焼けが飛び込んでくる。

元凶を倒しても、異常気象に見舞われたB市は一晩で元通りになる事は無いだろうと、笹原は悟っていた。

 

 

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Scene11・禍福倚伏

 

あれから数日後、細宮夏樹のもたらした天災はどうにか世に知られずに済んだ。

B市へ足を運んだUGN日本支部長霧谷(きりたに)雄吾(ゆうご)へ、B市支部長は再三の報告をしていた。

 

 

GM:「異常気象の方は対応できる人材が見つかりました。きっと多くの人の心に残る季節外れの雪になりましたが、それが悪意によってもたらされたものと、思われたことはないでしょう。」

笹原:「この時期なら……うん。ギリギリは、異常気象って済ませられるくらいでしょうしね」ま、自分で言っておいて無理あるな、と若干思いつつ(笑)

GM:「(苦笑して)彼も、どうにかしてみせると息巻いていました。……例の大湖沼も生態系の復現は可能だそうです。やや時間はかかるでしょうが、いずれ元通りになっていくでしょう。」

笹原:「そうですか、それは良かった。ま、市民の憩いの場となればそこを守るのも、我々の仕事ですしね」

GM:返事をした霧谷さんの表情が少し硬くなる。「“マスターマモン”はこれにて完全に途絶えた。とは……言えないのでしょうね」

笹原:「ええ。残念ながら“スコープレス”は、今回の事件の途中で行方をくらましてしまいました。個人的な協力者が、撃退には成功したとのことなんですが」

GM:「(目を細めて)個人的な協力者、ですか」

笹原:「本人の要望もあって、直接誰かを言うことはできないんですけどね(肩を竦めながら)」

GM:「…………貴方がそういうのであれば。現場の判断に任せます」

笹原:「ええ助かります」

GM:「そうしたあなたの指示のおかげで、今回はあらゆる悲劇を未然に防ぐことができました。ありがとうございます。“一切両断”」

笹原:「こちらこそ、“リヴァイアサン”」

GM:「そこで、提案があるのですが」

笹原:「ええ、なんですか?」

 

 

UGN日本支部長の瞳は真剣なものであった。

ノイマンシンドロームに関わらず、その申し出が真実なのだと分かる。

「貴方の腕ならばきっと各所でも活躍することができるでしょう。

 ――本部に、勤務の誘いが来ています。」

「……本部に?」

日本支部を一足飛びにして、優れたエージェントばかりが集まる本部へ、直々に。

 

 

GM:「ええ、本部に。一時的な派遣ではなく、あなたを本部エージェントとして、正式に招きたいと考えているそうです」

笹原:ちょっと、考え込もうかな。どうしようかなあ……。んん~~(笑)いやあ、でも流石にか。

GM:うん。

笹原:「ありがたい申し出なんですが。今回の、“マスターマモン”の一件。いえ、正確には前回の、というべきですが」

 

 

細宮支部長らと打倒した“強欲の悪魔(マスターマモン)”は、ジャーム化した“豪雪の化身”に無理矢理継承させた。

どのような犠牲を払ってでも、賢者の石を人の手に貶める――罪深き欲望を。

果たして『強欲』セルは、第二の“マスターマモン”を倒しただけで、鳴りを潜めるだろうか。

雪の降る春、微睡みに囁いたように――笹原の力は、否と答える。

 

 

笹原:「これはただの直感なんですが、まだ終わっていない気がするんです」

GM:「(目を見開き)そうですか。その件において、あなた以上に頼れる勘はないでしょう」

笹原:「この機を逃してしまえば、本部栄転の道が閉ざされてしまうとしても。もうしばらくは……この辺りに留まっていたいんです」

GM:「分かりました。ええ、B市支部員も、そう何度も支部長が変わってしまうのは不安になるでしょう。そのことは私も気掛かりでしたから、実のところ、安心しています」

 

 

柔らかく微笑むと、霧谷は鞄を持って立ち上がる。

「これにて虚構の雪はやみました。これからも日本をよろしくお願いします」

「――ええ、任されました」

 

 

――――――――――――――――――――――

Extra Scene

 

GM:予定しているエンディングは終わり。エクストラシーンだ! 朝露君に刀を返してもらうシーンだね。こっちから持ってくる?

笹原:持ってくるでも方が自然かな。多分。いざとなれば棒切れで戦うか、みたいなことは若干考えつつ。

GM:あはははは(笑)

 

 

場面は豪雪の止んだ一週間程後。

戦闘も控え、侵蝕率が落ち着いた頃合いに、笹原支部長は資料室に居た。

一人で二、三年前の資料を漁っている笹原の耳に、部下と友人の話し声が届いた。

 

 

GM:資料室の扉が開けられると、目新しい竹刀袋を肩に掛けた朝露がやってくる。

笹原:はーい。珍しいもの持ってるなぁと思っている。

GM:「(周囲を見渡して)ふむ、支部長が一人で資料漁りかい」

笹原:「ああ、正直あの事件に関わった人数はそう多くないし。他の人の手を煩わせるような一件でもないからね」

GM:「声をかければ、喜んで働いてくれる人は何人もいるだろうに」

笹原:「個人的な感傷だからね」と、傍には結構な数のファイルが積み上がってる。

GM:「……ま、さっき案内してもらった人にも言われたけど、俺はここの資料を好き勝手に閲覧できる権限は持っていないからね。ただ冷やかしに来たってわけでもない」

笹原:「じゃあ、経過観察は終わりってことでいいのかな」

GM:彼は目を伏せて笑うと、竹刀袋を手渡す。「愛刀が人の体から出てくるのはあまり気持ちのいいものではないだろう」

笹原:「ま、それもそうか(受け取って)」

 

 

『虚鏡』……笹原慧専用にチューニングされたカーボンブレード。

鞘から抜いて、ひと時の間、念入りに状態を確かめる。

技量が上がるにつれて、彼は武装を変え――更なる力を求めた。

それは因縁を断ち切ったからと言って、不要になるものではない。

腰に佩いて、笹原は零すように息を吐いた。

 

 

笹原:「ふぅ……。ま、正直一人でやるべきではないとは分かっていたんだけどね。……これも含めて、あまり支部長としてやるべきではないことと分かってるんだけど、個人的な感傷がね」

GM:「(壁にもたれながら)それでも君は部下に支えられつつ、ああして事を成したんだろう。それは、俺みたいな一端がやっても起こるようなことじゃない」

笹原:「…………ま、それもそうか」

GM:「今回ばかりは、正しき報いをもらった、ということで、もう少し自分を褒めてもいいんじゃないか」

笹原:「ま、その賞賛はこの一件が終わってからするよ」と言いながら、次の書類に手を伸ばそうかな。

GM:「――あの時の権限が残ってるんだったら、手伝うけど」

笹原:「ああ。あまり頻繁にログインされちゃ困るけど。ま、ここなら足もつかない」

 

 

朝露は資料に近付いていく。

彼は今、支部の表の顔であるカフェ『SnowDome』の店員でしかない。

然して過去の話をすれば――最高危険度のジャーム部隊殲滅に携わった功労者でもある。

当時の調査に使われた特殊権限は、今も彼に残っていた。

裏切者で、元暗殺者である朝露花火の善性を信用されて。

 

 

笹原:「一つ探してる記録があってね」

GM:「聞こうか」

笹原:「“強欲の化身(マスターマモン)”。いや、細宮元支部長には幼馴染がいて、彼がジャームになった事件で……その遺体はUGNの手によってどっかに葬られたはずなんだけど、折角なら同じ墓、とはいかなくても近くには埋めてやりたいだろう?」

GM:……じゃあ、彼はそうだなぁ、豆鉄砲を食らったようにパチクリと驚きを見せて、軽やかに笑う。「ふっ……なるほど。それは確かに、おいそれと他の人には言えないな」

笹原:「個人的な恩義への報いだし、言っちゃ悪いが、三年前の被害者を何処に通したか、なんであまり覚えていたいような内容でも、覚えてる内容でもないしね」

GM:「違いない。その点でも都合が良かったな……。以前から彼を知っている間柄に寝床を吹聴されれば、恥じ入るもんだろ」

笹原:「それもそうか」って言いながら、次見ようとしていた分厚いファイルをそのまま渡そうかな。

GM:片手で受け取り、穏やかな顔で目を通していくよ。

 

 

パリパリと、ファイルに保護された紙面を確かめていく二人の青年。

当人に緊張感はないものの、何処か独特な空気が流れていたのは確かだった。

それを知ってか知らずか、朝露は口を開く。

友人としての言葉でもあり、UGNに仲間を処理され裏切った――暗殺者としての言葉でもあった。

 

 

GM:「今回で因縁を立ち切ったようだけど。……まあ、俺という悪例を踏まえて話すのもなんだけれどね。きっと君が燃え尽きたら――君自身が集めた部下は大変なことになる。その点は問題ないかな。支部長?」

笹原:「ま、今回の一件が終わったB市はある程度、可能な人員から徐々に方々に散っていくと思うよ。ある種、今回の一件……ジャーム化した元支部長を葬るために......。いや、退治する時のことを考えて集めた人員だ。正直、こんな一支部に留まらずとも、もっと活躍できる場が存在する子たちはいるし」

GM:「確かに。あの頭が忙しい女の子*3とか、まあまあ裏で愚痴ってるからな……(笑)」

笹原:「本人のためを思ってるんだけどなぁ。彼女には割と……うん、期待している」

GM:「俺もその姿勢で行くべきだと思うよ。なんというか、目を離したら自滅しそうだ」

 

 

それからは少し、感傷とは似ても似つかない、希望ある懐旧の時間が過ぎた。

東京都の一角を任された支部長、“一切両断(スラッシャー)”笹原慧は、支部員一人一人の名前を挙げて、その有望さを、そして未来の展望を語っていく。

友人のそんな話に、ただのカフェ店員は(時折茶化しつつ)しみじみと耳を傾けている。

 

 

GM:じゃあこんなところでシナリオ終了と――。

笹原:いや。

GM:ほう…………?

笹原:シーンタイトルこっちがつけていい? 最後。

GM:いいよー? (確認する)……あっはは……!(笑)

 

 

 

 Scene12・因果応報

     &

 『Hollows Snow』

――――END――――

*1
軽やかに動くハヌマーンのイージーエフェクト。

*2
物の構造を見て理解するノイマンのイージーエフェクト。

*3
林道華燐




後書き。
笹原慧の呪いを解きたい。
そんなシナリオでした。


一つの存在に執着して力を集めた点において、新旧B市支部長は同じとも言えると思います。
何処か違うのかでいれば、ロイス――人の繋がりが、笹原慧を日常へ帰したのだろうと、私としてはかなり納得感の行く終わり方でした。


日常への楔の役割。それは細宮夏樹、林道華燐、そして朝露花火。私のPCだけではまだ及ばないでしょう。
NPCカードやマスターシーンに登場させる為に『闇鍋鯖』の色んな方のお力添えを頂きました。
この場をお借りして感謝申し上げます。


そして、ここまで読んでいただいた方に重ねて感謝申し上げます。
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