魔法少女リリカルなのはEins 覇王の記憶を受け継ぐ少女   作:ヒアデス

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第10話 模擬試合

「フェイトさん、久しぶりに手合わせ願うぜ!」

 

「レツヤ、望むどころだよ!」

 

 会敵早々、以前より厳つくなったバルディッシュを持つフェイトさんを前に、俺は愛刀《落葉》を抜きながらタメ口で宣戦しフェイトさんも得物を構える。

 他の場所でも――

 

「ミウラさん、いっちょ胸をお借りします」

 

「受けて立ちます、リオさん!」

 

 

傀儡創成(ゴーレムクリエイト)――来て、巨神《ゴライアス》!」

 

「さっそく傀儡(ゴーレム)を繰り出す気ね。さすがクレッサ・ティミル博士のお孫さん。なら私も――おいで、機神《トール》!」

 

 コロナが地中から黒色の傀儡(ゴライアス)を召喚した直後、ルーテシアも上空に浮かべた魔法陣から紫の傀儡(トール)を召喚する。

 

 

『フェイトさんとレツヤ君、リオちゃんとミウラちゃんが対峙。さらにコロナちゃんとルーテシアちゃんが召喚したゴーレムが相まみえましたー! 他の場所でもスバルさんとノーヴェさん、ヴィヴィオちゃんとアインハルトちゃんが闘いを始めています。素人目には互角にしか見えませんが、メガーヌさん今のところどちらが優勢なんですか?』

 

『今ぶつかっている中ではベテランが偏ってる『赤組』*1が有利かしら。でも、未だ敵と遭遇してないエリオ君とキャロちゃんの介入で流れが変わるかもしれないわね』

 

『と、とにかく、皆さん無事でいることを祈ります』

 

 リホとメガーヌが解説を交わす中、ただ一人場についていけてないイクスは適当な返事を返す。そんな彼女の後ろでオットーとディードは苦笑を零した。

 

 

 

 

 

ストップ!

 

 得物を振り下ろし、フェイトさんに迫りながら叫ぶ。

が、言い終わる前にフェイトさんが掻き消え、側面から斧状の鉄塊(バルディッシュ)が叩きつけられた。俺は反射的に落葉を持ち上げる。

 その瞬間、落葉とバルディッシュがぶつかり、ギィィンと耳障りな金属音が響きわたる。

 ――速い、あの距離で躱されるなんて。

 

「はあああっ!」

 

 フェイトさんが打ち下ろしてくるバルディッシュを受け止めつつ、刃先を突きだして反撃するが、フェイトさんは難なく躱して反撃を繰り出し、俺は身をよじってそれを避ける。

 そんな応酬を数撃繰り返し――

 

「カートリッジロード!!」

『応!』

 

 カートリッジの力で威力を上げた落葉を振るい、バルディッシュとフェイトさんを弾き返す。

 直後、落葉を真横に構え――。

 

「はあああっ!」

 

 声を張り上げると同時、フェイトさんに向けて無数の魔力弾を放つ。

 が、フェイトさんは瞬時に体勢を立て直しバルディッシュを振るいながら弾幕を弾き、俺の視界に収まらぬ速度でジグザグに動きながら弾を躱し、ついに俺の真上まで到達する。

 

「レツヤ、覚悟――!」

 

 フェイトさんは両手でバルディッシュを振りかぶり、勢いよく降下してくる。

 が――

 

「待ってたぜ――ストップ!

「――っ!」

 

 その一言を叫んだ瞬間、フェイトさんは見えない糸に絡み取られた蝶のように空中でぴたりと動きを止める。

 そんな獲物の下で刀を構え直す――。

 

 

「させるか――はあああっ!」

 

 ――エリオ!

 槍を突き出しながら迫ってくる奴に気付き、俺はその場から飛び上がり彼の突進を(かわ)す。

 エリオはその場で動きを止め、術が解けたフェイトさんと並んで俺と対峙した。

 

 

『おおっと、フェイトさんあわやピンチのところで弟分(エリオ)君が駆けつけてきたぁ! 他の場所でも一部を残して、赤組選手が二人がかりで青組選手を囲んでいます!』

 

 ――2対1。俺のところだけじゃなく皆のところまで。これは絶対ルーテシアの作戦だな。

 

「エリオ、このままレツヤの相手をお願い。私が後ろに回り込んで逃げ道を塞ぐ」

「はい!」

 

 フェイトさんの耳打ちを受け、エリオは槍を構えながら一歩踏み出す。

 その二人を前に――

 

キャロ、今だ!!

 

『はい――フリード!』

 

 女の子の声が響いた瞬間、フェイトさんたちは巨大な影に覆われる。たまらず上を見上げた二人の頭上には巨大化した白い竜が浮かんでいた。

 キャロの転送魔法で送られてきたフリードリヒだ。

 

「グオオォォッ!」

 

 フリードは低い唸り声を上げながら口を開く。それを見て――

 

「やばい! 今すぐ逃げ――」

 

 エリオが声を上げたところでフリードの口から炎が噴き出し、真下を炙り焼く。フェイトさんとエリオは素早く飛翔し逃れるが――

 

「かかったな――はああああっ!」

 

 俺はフェイトさんのもとへ滑り込み躊躇なく刀身を叩きつける。直後、フェイトさんは鈍い悲鳴を上げながら落下し、地面に叩きつけられた。

 

 フェイト

 LIFE 0

 

 残るは飛べないエリオ一人。

 俺は獰猛な笑みを浮かべながら残った敵に落葉の刃先を向ける。が……

 

《青組一同に通達!》

 

 耳元に突如、指揮官(なのはさん)の声が響く。同時に街の片隅に桃色の光が膨らんでいるのが見えた。

 

収束(チャージ)が終わりました。分割多弾砲(マルチレイド)で敵残存勢力を殲滅します! みんなすぐに離脱してください!》

 

 一方、反対側からも茜色の光が膨張する。それを見てエリオも目を見張った。

 

《こちらティアナ、私の方も散布完了。広域砲でなのはさんの収束砲を相殺します! 動ける人は急いでそこから離れて!》

 

 離脱ってどこにだよ!? 指示になってねえぞ!

 俺もエリオも脳内で互いの指揮官に突っ込みつつ、泡を食いながらその場から離れる。

 フィールドの周りでも――

 

『ブレイカー警報! ブレイカー警報! 観客と売り子の皆さんも急いで会場から離れて! 非殺傷設定ですが、巻き込まれたら死ぬほど痛いですよーー!!』

 

 叫びながらウズリポとメガーヌも一目散に逃げ、オットーたちもイクスを抱えてその場から駆け出す。それを見るまでもなく観客や売り子たちも我先に会場から逃げていく。

 その合間にも両サイドに浮かぶ光はどんどん膨れ上がっていった。

 

 

 

「モード《マルチレイド》」

「シフト《ファントムストライク》」

 

 なのはとティアナはおびただしい光を放つデバイスを構え、互いに向け合う。

 

「スター……」

「……ライト」

 

 

 

「「ブレイカーーーッッ!!!!」」

 

 レイジングハートから放たれた桜色の奔流が、二丁のクロスミラージュから撃ち込まれた橙色の砲撃が衝突した瞬間、二色の光は互いを圧し潰そうと膨張しフィールドを呑み込んでいく。

 

 直後、限界を迎えたように光が爆発し、辺り一帯の地面を揺らし、けたたましい轟音が響き渡った。

 

 

 

「えーと……皆さん生きてますよね?」

 

 跡形もなく吹き飛んだフィールドを見て、イクスは唖然と呟く。

 さすがのウズリポも呆然としたまま、それでもマイクは握ったまま答えた。

 

『一応そのはず。でも地球人目線だと、あれに巻き込まれて生きていられる方が不思議なんだけどね』

 

収束砲(ブレイカー)同士が激突すればねぇ……一応確認と戦況のまとめも兼ねて。さっきレツヤ君にやられちゃったフェイトちゃんを除けば……」

 

 ひきつった声を漏らしながらメガーヌはモニターから状況を確認する。

 

 

 コロナ

 ゴーレム戦に敗れて敗退。

 

 リオ

 ミウラとアインハルトのタッグに敗退。

 

 ミウラ

 リオとの戦いで消耗したところを砲撃に巻き込まれて戦闘不能。

 

 ノーヴェ

 ヴィヴィオとスバルに敗れて敗退。

 

 スバル

 ヴィヴィオを庇って撃墜。

 

 エリオ

 砲撃から逃げきれず撃墜。

 

 キャロ

 砲撃戦前にティアナに撃墜され(見つかっ)てリタイア。

 

 ティアナ

 スターライトブレイカーを相殺しきれず撃墜。

 

 

 

 

 

 なのは

 LIFE 200

 ファントムストライクを相殺するも爆発の余波を喰らって大ダメージ。

 

「危なかったー……でも、ここを凌げば」

 

 なのははひやりとした声で安堵の呟きを漏らす。が、

 

「ヴィヴィオさんのお母様、今度こそ一槍入れさせていただきます!」

 

 不意に声が響き、なのははそちらを見る。視線の先には体を焦げ付かせながらも1700ものLIFEを残して駆けてくるアインハルトの姿が見えた。

 

『おおっと、ここで覇王様が現れた! エースオブエース、覇王に陥落してしまうのかぁ!?』

 

 リホの実況も耳に入れずなのははすぐさまレイジングハートを構え、アインハルトに射撃を撃ち込む。が、アインハルトは左右に跳んで弾を躱し、まっすぐなのはに迫っていく。

 だが――

 

「させませんっ!」

 

 敵将と同じ髪型をした金髪の少女――ヴィヴィオが現れ、虹色の光弾をアインハルトに撃ち込む。

 その一発でアインハルトのLIFEは950まで下がった。

 しかもそのうえ……

 

「危なかったぜ。飛行用加速魔法を覚えてなかったらあのままやられてるところだった」

 

 ヴィヴィオの反対側からレツヤが下りてくる。あちらも服と体を焦がしているがまだ戦えそうだ。だが、

 

「おっとー、女の子同士の戦いに入り込むなんて野暮なことはさせないわよ。レツヤ」

 

 その声とともに真後ろからズシンという足音が響き、紫色の傀儡(ゴーレム)とその肩に仁王立ちする紫髪を下ろした少女が現れる。それに気付き、レツヤは跳躍してアインハルトから距離を取りながら口を吊り上げた。

 

「やっぱりまだ生きてたかルーテシア。あれぐらいでやられるタマじゃないだろうと思ってたぜ」

 

 

 

 レツヤさんの相手をルーテシアさんとトールに任せ、私は改めてヴィヴィオさんと対峙する。お母様(なのはさん)の射撃にも十分注意しないといけないけど。

 

「ヴィヴィオさん、さっきの決着を付けさせていただきます」

 

「望むところです、アインハルトさん!」

 

 ヴィヴィオさんが構えた――直後、彼女のもとへ跳び、拳を叩きつける。が、彼女は両腕をクロスして攻撃を受け止め、顔面めがけて打撃を打ってきた。

 衝撃に頭を揺らしながらも、返しざまに彼女の胴に一撃入れる。

 

――相手の動きを覚えて対策する学習能力。早くて精密な動作。強い腕力を活かした攻撃重視だったオリヴィエとはやはり違う。

 でも、相手の反撃を恐れず前に出て打ち込める勇気は彼女によく似ている。

 

「はあああっ!」

 

 顔面目掛けて勢いよく右腕を突き出す。しかし、ヴィヴィオさんは真横に逸らして躱し、カウンターを当てる。その衝撃でふらついてしまった所へ――

 

「今だ――一閃必中、アクセルスマーッシュ!!」

 

 強く握りしめた右拳が迫るが、意識を振り絞り顔を傾かせる。ヴィヴィオさんが突き出した拳は顔面すれすれを通り抜けた。

 その瞬間、右手をまっすぐ開き――

 

「――覇王断空拳!!」

 

 胴体に掌底を叩き込んだ瞬間、ヴィヴィオさんの目から光が消え、ゆっくりと倒れる。それを見て勝利を確信した瞬間、彼女が振り下ろした右腕が頭に直撃した。

 その衝撃のせいか目の前が真っ暗に――――。

 

 

 

 油断した一瞬の間にヴィヴィオが無意識に繰り出した反撃を喰らいアインハルトも倒れ、二人揃って地面に倒れ元の姿に戻る。あんなのを見ると……。

 

「勝った気がしないなぁ」

 

「だね」

 

 刀を肩に乗せながらごちる俺に、なのはさんとゴーレムを破られ降参したルーテシアも頷いた。

 

『聖王覇王対決はダブルノックアウト――引き分けに終わりましたー! 『青赤(せいせき)模擬試合』第一回戦は生存者が二人残った青組の勝利に終わりました。が、聖王様と覇王様の対決に引きずられて勝利気分が感じられないようですねー。

 戦闘狂どももとい元六課はまだ模擬戦を続けるようですが、ダブルブレイカーの衝撃で一部のお客さんは帰り始めてますし私も喉が疲れたので実況はここまでです。また次回お会いしましょう!』

 

 

 

 

「じゃ、おやつ休憩とフィールドの再構築したら2戦目いくねー!」

 

「はーい!!」

「俺は遠慮します」

 

 なのはさんの呼びかけに皆が笑顔で応える中、俺は首を横に振って辞退する。

 ウズリポや客達じゃねえがあんな模擬戦に何回も付き合えるか!

*1
レツヤの敵組、アインハルトが所属。

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