魔法少女リリカルなのはEins 覇王の記憶を受け継ぐ少女 作:ヒアデス
「あっ、なのちゃんとフェイちゃ~ん!」
「シイナさん、来てくれたんだ!」
「トワさんもお久しぶりです」
「フェイトちゃんこそ久しぶり。元気にしてた?」
昼近くになって到着したなのはとフェイトを見つけ、シイナたちは10年ぶりの対面を交わす。
同時に三人はなのはが抱えてる赤子に気付き。
「この子がゆずはちゃん? うわぁ、なのちゃんそっくり~!」
「うん。セツナちゃん、抱いてみる?」
なのはから預かった赤子を恐る恐る抱き上げ、セツナは愛おしげな笑みを向ける。それにつられてゆずはも嬉しそうに「きゃっきゃ」と声を上げた。
その横から「次、次、あたし!」と催促してくるシイナに代わったところで、セツナに尋ねた。
「どうだ? 大学と寮暮らしは?」
「うん。“巣跡”の浄化の研究はうまく進んでるし、ルームメイトともうまくやれて毎日楽しいよ。未だにしーちゃんから3時間おきにメールが来るのはちょっとうっとおしいけど」
「えー、これでも我慢してる方だよー。本当はもっとこまめに直接連絡入れたいぐらいなのにトワに止められてさー」
ゆずはを抱きながら文句を零すシイナの後ろで、トワが呆れのため息を零す。
セツナが大学と寮に入ってすぐの頃は、1時間おきに連絡を入れていたらしい。それをセツナとトワの二人がかりで説得され、なんとか今の状態まで抑えてるとのことだ。
「シイナとトワも仕事うまくやれてるか?」
問いかけるとシイナは風音が鳴りそうなぐらい深く頷き。
「うん。あたしとトワのコンビでうまく行かないわけないじゃないですか!」
「上司や仲間にも恵まれてなんとかやれてます……あの子たちも」
“元メンバー”の事を付け加えるトワに、
「そうか……シオリの
声を潜めて尋ねる俺に、トワもこっそり首を縦に振る。
「はい。でも、シオリも失敗することはありますから。今は復興事業も落ち着いてきて、必ず利益が出せる会社も少なくなっているみたいですから。あてにし過ぎないでください」
「わかってる。預けてるのは一部だけだし、気負わずやってくれと伝えてくれ」
俺の返事にトワはこくりと頷く。
彼女の仲間の一人――
“元魔人”や前科者として色眼鏡で見られる中、苦労の末に会社を立ち上げた彼女への激励のつもりで、損しても責める気は毛頭ない。二・三倍ぐらい増やしてくれるかもという期待もないと言えば嘘になるが。
「健斗さ~ん、お待たせしましたー!」
「――えっ!?」
後ろから声が聞こえた瞬間、三人はびくりと肩を震わせてそちらを見る。そこからは着替えを済ませたアインハルトとティーニエ、今も声を上げながら腕を振っているユミナが見えた。
「すみません、お待たせして」
「いや、なのはたちや他の世界から来た知り合いと話していたからそれほど待ってない……どうしたお前たち?」
ユミナを見ながら顔を青くするシイナたちに尋ねると、三人は彼女に聞こえないようこっそりと……
「いやぁ、あの子の声を聞いた瞬間、“
「そんなはずないと分かってはいるんですけど、万が一生きていて別の人に取り憑いていたらと考えるとつい……」
シイナとトワの説明になるほどと漏らしかける。
ユミナは『魔人事件』の元凶だった“あいつ”と声がそっくりだからな。警戒心が湧くのも無理ないか。
「世界が違う以上、似た声の人間なんて何人もいる。管理局の中だけでも似た声がぞろぞろいるからな。ユーノやヴィヴィオそっくりな声の子とか。そういやユーノは来てないのか?」
俺の問いに、
「仕事がまだ片付かないって。今も頑張ってて夕方までには終わらせるって言ってたけど」
さすが無限書庫の司書長。簡単に休みが取れる立場じゃないか。そういや一緒に飲んだ時も、学校行事や家族旅行に行く暇がないって愚痴ってたっけ。
「ヴィヴィオさんは今、喫茶店にいないようです。隣のクラスの的当てゲームの応援に行っているみたいで――」
「――的当て!?」
メールを見たアインハルトの言葉に反応し、シイナが顔を持ち上げた。
◆
「いくよヴィヴィオ!」
「四つの弾丸、止められるか~?」
『4年B組『ストライクデビル』、
「――ファイアっ!」
実況が危機感を煽る中、四人から魔力弾が撃ち放たれるが、黒い角と尾を付けた執事姿のヴィヴィオは笑みを浮かべて跳びあがり球を弾き、瞬時に身をよじって拳を振るい残りの三発も弾き返した。
『失敗! ヴィヴィオちゃん、四人を相手に見事的を守りましたー!』
「デビルヴィヴィオ、勝利です!」
拍手が沸き上がる中、ヴィヴィオはピースサインを立てながら勝利を宣言する。
それを見て、アインハルトとフーカは唖然とつぶやいた。
「すごい……あの四人の弾を一度に受け止めるなんて」
「リホさん、さっきまで体育館で実況してたのに、いつの間にこっちに来たんじゃ?」
「ヴィヴィオは防御とカウンターはずば抜けてるからな。ベテラン選手でも簡単には崩せん。理保に関してはツッコむだけ野暮だ。実況が出来そうな所に湧いて出てくる生物だと思った方がいい」
さすがにはやてが本気になったらヴィヴィオでも難しいと思うが。ここで本気を出すほど大人げない真似はしないだろう。
「よぉし、さっきのリベンジにここもオレがぁ!」
『おっと、ハリー選手、アームレスリングに続き今度は的当てゲームに挑戦ですか?』
「おう、一戦お相手願うぜ。聖王――じゃなくて悪魔執事さん!」
ハリーは挑戦料の1ミドル硬貨を受付に置き、腕まくりをしながらヴィヴィオと的の前に立つ。
「いいですよ、いつでも来てください」
「よーし、いくぜー――“オレ式・炎の魔球”!」
ハリーは右手から生み出した魔力球を腰だめに構え、ヴィヴィオに向けてまっすぐ――と見せかけて彼女の右へ放つ。
が、ヴィヴィオはすぐに右へ移り、「スマッシュ」と叫びながら拳を振り上げ、あっさりハリーの弾を弾いた。
『ハリーさん失敗! 惜しかったと言いたいところですが、魔球と宣言してしまってはフェイントの意味がありませんよー!』
リホの指摘が響き、観客からも笑いが漏れる。ハリーは顔を赤くしながらも――
「うるせー! 今のはウォーミングアップ! こっからが本番だ。防御が上手くても力技なら……」
「うっ……」
力業と聞いて竦むヴィヴィオを前に、ハリーは再度1ミドル投じて両手を握り魔力球を生成する。
魔力が込められ、弾が巨大化していくが――
『ブブー! 時間切れー! 開始から一分以内に撃たないと無効です。ルール板にも大きく載ってますよね!!』
壁に掛けられているルール板を指すリホとさっきより大きな笑いに、ハリーは顔を赤くしながら弾を消す。あの二人でコントでもやったら受けそうだな。
しかし、思った以上に難しいな。ベテラン選手でも突破できない防御と反射神経、力押しで行こうにも魔力を込めている間に時間切れでお
「はーい! 次あたし、あたしがやります!!」
シイナが右手を上げながら名乗り上げた瞬間、笑いが収まり、会場中の視線が集まる。
シイナは動じた様子も見せずカツカツと歩き、ヴィヴィオの前に進み出た。
「初めましてヴィヴィオちゃん。あたしは久瀬シイナ。お母さんたちが瑞穂にいた頃の仕事仲間だったんだけど」
「あっ、はい。知ってます! その時は母とフェイトさんたちがお世話になったって聞きました」
頭を下げるヴィヴィオに、シイナはまんざらでもなさそうに頬を掻きながら「お世話になったのはあたしたちだって」と返し、背中に載せてるリュックを下ろす。
「次はあたしがやらせてもらう。道具を使ってもいいんだよね?」
「は、はい……ルールに反したり周りに被害が出るようなものじゃなければ……」
ヴィヴィオの返事に「もちろん」と頷き、シイナはバッグから手頃な白い二丁の拳銃を取り出した。
おいおい、あれは十年前にシイナ用の武器として与えた《リヴォルタ》じゃないか。
『久瀬シイナさん、なんと銃を取り出しました! もしかして射的と間違えてますぅ?』
ざわめく観客に混ざって理保も言葉をかけるが、トワは動じず――
「ヴィヴィオちゃん道具を使っていいって言ってたし、そこのルール板にも銃を使っちゃいけませんなんて書いてないじゃない。なら似たようなもんでしょ」
ルール板に指を向けつつ、一緒に入れていたケースから取り出した弾丸を銃の
「おい、シイナ。この世界じゃ火器や魔力を使わない武器は禁止されている。それにそんなもん使ったらヴィヴィオや周りに危険が――」
観客と理保に続いて俺も声を上げるも、シイナは装填を終え両手に一丁ずつ銃を構えながら告げた。
「大丈夫ですって。フィーちゃんに手を加えてもらって、非殺傷・非物理破壊設定ができるようにしてもらいましたし。こっちの税関に通した時もデバイス扱いでパスしてもらいましたから」
フィリーの手でデバイスにか……それなら大丈夫……か?
ちなみにフィーちゃんとは、シイナたちと同じ第67管理外世界の『ダルナザ共和国』に住むEXCEEDSの予備隊員、フィリー・メルキュールのことで、俺たち魔導師に似た力を持つ《魔女》の末裔でもある。あいつも呼んだらしいが、カレドヴルフとの打ち合わせが重なって来れなくなったとの事だ。
「しーちゃん、“あの力”は危ないから使っちゃダメだからねー!」
「大丈夫大丈夫。元狩猟者としてのしーちゃんの腕を信じなさいって!」
注意を飛ばすセツナに腕を振りつつ、シイナはヴィヴィオと対峙する。
武器を持って挑戦する者が現れるとは思わなかったが、ヴィヴィオの力なら跳ね除けられないことはないし、非殺傷内蔵のデバイスなら怪我をすることもないはず。そう思い直してヴィヴィオも構えを取る。
そんな中、ハリーは首を傾けながら声を発した。
「でもよ、ルールじゃ後ろの的を壊さないとダメなんだろ? 銃の弾なんかじゃ当たったとしても小さな穴一つ空くだけだぜ」
その疑問にシイナと同じ狙撃手のラグナやエルス、他一同もうんうん頷く。
一方、シイナの“力”を知るトワとセツナ、なのはたちはじっとシイナを眺める。《魔女》フィリーが手を加えたということは……。
『それでは両者位置について…………スタート!』
「――いくよっ!」
開始宣言と同時にシイナは瞬時に銃を上げ、“ボール大の銃弾”を数発放つ。それを見てヴィヴィオは目を見張るも――。
「――はぁっ!」
ヴィヴィオは数歩前に踏み込み、シイナが放った弾を拳ではじく。その一瞬の間にシイナは右に移り弾を射出する。確かに守備側が動く以上、挑戦者もその場から動いても違反ではないが。
「させません、やあぁっ!」
ヴィヴィオは反射神経を駆使し、斜め横から放たれた球も弾く。が、シイナはその場から転がって逆位置まで行き、伏せたまま弾を放つ。
しかし標準を定めず撃ったせいか、一発はヴィヴィオに向かって真っすぐ、もう一発は的からずれたところに向かっていく。
「はぁ――!」
ヴィヴィオは明朗な掛け声とともに拳を放ち、自身に向けられた弾を弾く。
が、その直後、明後日の方に飛んだ弾がぐにゃりと曲がり、ヴィヴィオの真後ろにある的を吹き飛ばした。
『“スピン・バレット”! シイナさん、銃身と腕をわずかに曲げることで軌道そのものを曲げて的を吹き飛ばしました! 普通の銃弾ならともかく、ボール大に膨らませた弾を曲げてしまうとはっ!!』
実況と観衆が歓声を上げる中、シイナは二丁の銃をくるくる回し、ホルスターにしまうような動作で腰の近くに下げる。
「あたしの勝ちだね。景品はなにかな?」
「うう~、悔しい。でも負けたのは事実ですから景品は差し上げないと。撃たれたのは怪盗の絵だから――今ミッドでやってる探偵アニメの悪役『怪盗ゴーレム』のぬいぐるみを差し上げます!」
ヴィヴィオは的の裏から怪盗の格好をしたゴーレムのぬいぐるみを取り出し、シイナに差し出す。
シイナは苦笑気味に笑いながら受け取り。
「あははっ、ありがとう。セツナー、ぬいぐるみゲットしたよー!! プレゼントしてあげるねー!」
ぬいぐるみを掲げて叫ぶシイナに、セツナは恥ずかしそうに目を伏せながらも誇らしげに笑う。
「もう、しーちゃんったら。プレゼント貰って喜ぶ年じゃないよ」
「じゃあ私が貰っていい? わりと好みだし」
そう言ってくるトワに、セツナは「でも私が貰った物ですし……かわいいから実はほしかったりもするし」と小さく呟く。
そこから離れた所では――
「銃もありか。なら次は俺も挑戦しようかな」
「あたしも。シューターのはしくれとして、あんなの見せられて黙って見ていられないわ!」
レツヤとティアナは待機モードのデバイスを握りながら叫ぶ。
あいつらもいたのか。シイナたちに目を取られて気付かなかった。