魔法少女リリカルなのはEins 覇王の記憶を受け継ぐ少女   作:ヒアデス

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今回から話の都合でレツヤ視点になります。


第9話 温泉ハプニング

「はあっ? あれからずっと練習してたのかよ!?」

 

 元六課組の模擬戦の見学を抜け、ずっとミット打ちとスパーリングをしていたというヴィヴィオとアインハルトに呆れの声を上げる。そんな俺にヴィヴィオは照れ笑いを返した。

 

「あははー、ちょっと気合入っちゃって……ママたちはまだトレーニングしてるの?」

 

 ヴィヴィオの問いにキャロとエリオは頷く。

 

「練習の仕上げと明日の打ち合わせだって」

 

「夕食までには戻ってくると思うよ」

 

「さて、お楽しみはまだまだこれから。ホテル・アルピーノ名物、私が掘り当てた天然温泉が待ってるわ♪ レツヤとエリオも一緒に入る?」

 

 ルーテシアのたわ言(誘い)にエリオはぶんぶん両手と首を振る。

 

「いやいや! 入らないよ!!」

 

「俺はもちろんエリオも女湯に入ろうとすれば即逮捕される歳だ。*1いつも通り男だけでゆっくり浸からせてもらう」

 

 そう言ってやるとルーテシアはわざとらしくちぇーと口を尖らせ、キャロは顔を真っ赤にする。

 4年前はキャロもエリオと入りたがってたらしいが、さすがに今は羞恥心が沸いたらしい。反対に誘いをかけてくるルーテシアはどうかと思うが。

 

 

 

 

 

 

「あ~、経営者と娘はあんなんでも温泉は最高だな」

 

 御神さんたちの故郷(海鳴という町)の旅館にあったものに似た和風の露天風呂に浸かり、蕩けた声を上げる。そんな俺を見てエリオは心配そうな声をかけた。

 

「レツヤさん、お疲れですか? 今日はほとんど休んでたみたいですけど」

 

「休暇取ったばかりにもかかわらず昨日までメガーヌさんに扱き使われてたからな。去年も開業で忙しいからって手伝わされたっけ」

 

 そう言うとエリオは微笑みを浮かべ、

 

「それだけ信頼されてるってことですよ。ルーテシアの同僚としても友達としても。“4年前”に比べたら仲良くやれてるだけいいじゃないですか」

 

 4年前レリックをめぐって彼女たちと戦った時を思い出し、「まあな」と小さく返す。

 犯罪行為とはいえあの人なりに考えての行動だったみたいだし、それを邪魔した事で恨まれてないだけマシか。

 

「それにしても、この温泉もまた大きくなってますね。滝湯なんて前に来た時はなかったのに」

 

 岩場を掘って作った滝湯を見ながら、エリオは感嘆の声を上げる。片や俺は呆れの息とともに返事を漏らした。

 

「ルーテシアが里帰りするたびにあちこちテコ入れしてるみたいだからな。召喚魔法と召喚虫(むし達)を駆使すれば客がいない間に拡張できるって言ってたし」

 

「そういえばお客さんは? せっかくの連休なのに、僕たちが来てるからって貸し切りにしちゃっていいんでしょうか?」

 

 エリオの問いに俺は肩を竦める。

 

「さあな。なのはさんたちから宿泊料取れるし、明日めいっぱい稼がせてもらうと言っていたが」

 

 明日の予定を思い出し、まさかと思う。そういえば向こうも土日で休みなのに“あいつら”が来てないし。

 そう思いながらも温泉の心地よさに(ひた)っていると……。

 

 

「きゃーー!!」

「いる! 何かいるっ!!」

 

 ……?

 衝立の向こうから聞こえる女子たちの悲鳴に、俺たちは怪訝な顔になりながら向こうを見る。今の声はキャロとティアナだ。

 

「どうしたー!? 何かあったのかーー?」

 

 口に手を当てながら声を張り上げると向こうから――

 

「お湯の中に何かいて! やんっ!」

 

 珍しく慌てたルーテシアの返事と悲鳴が返ってくる(若干棒読みだった気がするが)。

 

「僕が見に行ってきます!」

 

 エリオはバスタオルを腰に巻き、そのまま駆け出していく。

 その直後――

 

「やーーっ!!」

 

 リオの絶叫とともに向こうから真っ裸の女が打ち上がり、ドボーンと盛大な水しぶきをあげて俺の前に落ちてくる。

 

「いててっ。あのチビッ子、よくも…………えっ?」

 

 

 頭を押さえながら起き上がってきた青髪の女は、至近距離にいる俺に気付くや顔を真っ赤に紅潮させ……。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「ぎゃーーー!!!」

「エリオくんのエッチーー!!」

 

 セインが叫ぶと同時、向こうからもキャロの悲鳴が響き渡る。

 ちょうどあっちも闖入者と鉢合わせてしまったらしい。

 

 

 

 

「もう、ダメだよセイン! こういうイタズラは」

 

 脱衣所でバスタオルを巻いた状態で正座させたセインを前に、スバルはむっとした口調で彼女を叱りつける。なお、俺とエリオを含めた一同は寝間着や浴衣に着替えている。

 

「みんなが転んでケガでもしたら笑い事じゃすまなかったし」

 

「さっきのも見ようによっては不同意猥褻(わいせつ)だしね。この場で逮捕してまた隔離施設送りにしてあげましょうか?」

 

 ティアナの脅しにセインは「うっ」とうめく。続いて、

 

「まったく、こんなのがあたしの姉かと思うと涙が出てくるわ」

 

 ノーヴェまでそう言って盛大なため息を漏らす。

 そこまで聞いてセインは「う、うう~~」と漏らし――

 

「なんだよ~!! ちょっとみんなを楽しませようと思っただけじゃんかよ~~!!!」

 

 セインはじたばた腕を振り回し、涙ぐみながら叫ぶ。

 

「お前らは楽しそうなのに、あたしだけ食材の差し入れとイクスが来る前の下見終わったらすぐ帰るなんて切なすぎるじゃんかよ~~!! 自慢じゃねえがあたしはお前らほど精神的に大人じゃねーんだからな!!

 

 ほんとに自慢にならねえな。一応ナンバーズじゃ中堅のはずだろう。

 俺たちのほとんどはセインに呆れた目で見るが……

 

「――ってちょっと待って! イクスが来る前って、イクスもここに来るの!?」

 

 セインが漏らした一言を聞きつけヴィヴィオは尋ねる。セインは動きを止め、こくりと頷いた。

 

「あ、うん。健斗から聞いたところ覇王もヴィヴィオと仲良くしてるしイクスも来たがってたから、問題なければ明日オットーたちと一緒にここに来るって。まずかった?」

 

 その問いにヴィヴィオはぶんぶん首を振る。

 

「ううん! 私は大歓迎! スバルさんとティアナさんは?」

 

 いいでしょう? と言いたげに尋ねるヴィヴィオに二人は笑みを浮かべ、首を縦に振る。

 

「もちろん! あたしもイクスに来てほしいと思ってたところ!」

 

「部外者がいたら困るわけでもないから問題ないと思うわ。ヴィヴィオたちもいるし」

 

 その答えにヴィヴィオはぱあっと顔を輝かせる。

 

「ところでセイン。メガーヌさんはお前が来てること知ってるのか? 食材の差し入れと言ってたが」

 

 俺の問いにセインはコクリと首を縦に振った。

 

「うん。食材渡してイクスたちが来るのを伝えたら、明日の料理手伝う条件で今夜一泊泊めてもらえることになった。温泉に入るのも了承済み」

 

 温泉も了承済みだと……。

 まさか今回の騒ぎの黒幕は……。

 

 

 

「レツヤく~ん、体と目の保養は出来た~?」

 

 夕食の際、意地悪そうな笑みを浮かべたメガーヌさんに尋ねられた瞬間、思わず飲んでいた茶を吹き出しかけ、セインも顔を真っ赤にした。

 ――やっぱりあんたの差し金か!!

 

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

『リリにちは~! さあ、元六課&子供組の休暇合宿二日目にしてメインイベント! 『青赤(せいせき)模擬試合』が始まります! 実況はデビルークカレッジ二年、卯敷 理保(うづき りほ)ことウズリポが務めさせていただきます。解説にはホテル・アルピーノの女将、メガーヌ・アルピーノさんと聖王教会からお越しの《冥王》イクスヴェリア様をお招きしています。よろしくお願いします』

 

『よろしくお願いしま~す』

 

『よ、よろしくお願いします』

 

 短い青髪の司会者ウズリポに紹介され、メガーヌさんが笑みを浮かべながら頭を下げ、赤髪の女の子イクスが緊張したまま挨拶を返す。カルナージに来て早々、さっそくとっ捕まっちまったらしいな。

 三人を映すモニターの下では、都市型フィールドを取り囲むように大勢の見物客で溢れ、黒いエプロンを着けた売り子たちがお菓子を載せたトレーを手に歩きまわっていた。

 

「翠屋異世界出張販売でーす! 観戦のお供に地球のお菓子はいかがですか~!」

「おにいさん、このシュークリーム食べてみない? 上手く焼けたからおすすめだよ!」

「双眼鏡、試合を見るための双眼鏡はいかがですか~! 肉眼だけだと名シーンを見逃しちゃうかもしれませんよ~」

 

 翠屋のエプロンを着けた七瀬さん、アリシア、和服の仲居さんたちが商品を売って回る。それを見てフェイトさんとなのはさん、ルーテシアも呆れた顔になった。

 “稼がせてもらう”ってこういう事かよ。セインにアリサさんとすずかさんまで売り子に加わってるし。

 

「と、とりあえず全員集まったから説明いくよ。試合プロデューサーのノーヴェ、お願い」

 

「あ、あたしですか? じゃあえーと……」

 

 なのはさんに話を向けられ、ノーヴェはきょどった返事を返しながら俺たちを向き、模擬戦のルールを伝える。

 昨日聞いたし、去年とまったく同じだから聞きなおすまでもない。

 

 要は六課と七課の合同訓練と同じ、『青組』と『赤組』に分かれて先に全滅した方の負けってルールの模擬戦だ。

 ただしあの時と違い、過剰な継戦や無理な復帰を防ぐため各自『DSAA試合用タグ』を付け、それぞれの体力に合わせて設定されたライフポイントが0になった瞬間『戦闘不能』となり、戦いに復帰できなくなる。

 俺とコロナは『青組』、ルーテシアとミウラ、エリオは『赤組』、後の面子は“原作”と同じだ。

 

「じゃあ青組、勝利目指して頑張っていくよ!」

 

「赤組も負けないようにいくよ! せーの!」

 

 

「――セットアップ!

 

 

 デバイスを掲げながら皆はそれぞれのバリアジャケットに身を包む。

 その上から……。

 

『みなさん、準備はいいですね~?』

 

 尋ねてくるウズリポにそなのはさんとフェイトさんは頷きを返す。それを見てウズリポは片手を上げ……。

 

『それではーー、試合開始ーー!!』

 

 彼女が高々と宣言した直後、ガリューが銅鑼を打ち鳴らしモニター越しに轟音が響き渡る。

 それを合図にスバルとノーヴェが魔法陣を展開した。

 

「ウイングロード!」

「エアライナー!」

 

 二人の周りからいくつもの光の道が延び、フィールド中に張り巡らされる。

 俺たちはすぐさまスバルが敷いたウイングロードに跳び乗り、フィールドに向かって駆けだした。

 

「まずは俺とスバルが斬りこむ。他は適度に迎撃とバックアップ」

「はいっ!」

 

 皆は威勢のいい返事を返し、後ろに続いてくる。向こう(赤組)もアインハルトとノーヴェを筆頭にエアライナーの上を疾駆し、フィールドめがけて駆け下りてきていた。

*1
数え年でレツヤ17歳、エリオ14歳。

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