シン・ウルトラマンティガ   作:Sashimi4lyfe

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登場人物紹介
静かなる闇


(1)

 

病、飢餓、戦争――

 

かつて人類を死を追いやって来た三大厄災。現代社会において、これらはもはや過去の出来事だ。

しかし、街行く人々の顔に笑顔はない。連日の残業で目の光が消えたサラリーマン。塾帰りの小学生の横を通り過ぎる風俗嬢。引きこもりの子供のために買い物を済ませる専業主婦。

 

生命を脅かす脅威はもう過去のものとなっているというのに、人々の心にはこれまでにないほど闇が深まっている。

そして、この闇こそが、地球(ほし)に眠る太古からの恐怖を呼び覚まそうとしていることに、まだ誰も気づいていなかった。 ほんの数人の、限られた人間たちを除いては...

 

 

(2)

 

ピピピピピピピピ。

 

布団から腕を伸ばし、目覚ましを切る。

もう起きなくちゃ。 そう頭では分かっていても、これから始まる一日を思うと体がベッドを選んでしまう。

 

玲奈(レナ)~!早く起きなさいよ~!」

 

うざい。こっちは眠いんだよ。 1階から聞こえてくる母の声に、過敏に反応してしまう。そのせいか、余計に体が動きたがらない。

ひとたびこのベッドを離れてしまえば、また昨日と同じ日常が待っている。学校に行って、塾に行って、帰ったら宿題と入試の問題集…

でも、このベッドにいる間はそんな日常から守られる。こんなクソみたいなルーティンから逃げることができる。少なくとも、この数分だけは。

 

「いい加減にしなさいよ!もう時間でしょ!」

 

とうとう母が部屋まで上がってきた。つかの間の平和もこれでおしまいだ。 あからさまに嫌な顔をしながら、目も合わせずにトイレに直行する。

鏡に映る、ぼそぼその髪。なんで寝て起きるだけでこんなペナルティがかかるんだろうとふと思う。

身支度を済ますと、食卓には朝食と弁当が置かれていた。ほら、さっさと食べちゃいなさい、という母の言葉に苛立ちを覚えながら、詰め込むようにトーストとコーヒーを咀嚼する。

 

テレビには、またあの起業家の澤井総一郎(サワイ・ソウイチロウ)が映っている。「世界のSAWAI」だかなんだか知らないが、金を持っているだけでこんなにチヤホヤされるものなんだなと思ってしまう。

「またあの人が出てる。あんなにお金があるなら、もうちょっと世の中になるようなことに使ってほしいよね」

そんな中身が空っぽなことを言うぐらいなら黙っててほしい、という本心をコーヒーと一緒に飲み込んで、玲奈は弁当を片手に席を立った。

 

「行ってきます」

「はい、行ってらっしゃい」

 

イヤホンを両耳に詰め込み、お決まりのあの曲を流しながら駅へと向かう。

 

♪WANNA TAKE YOU BABY, TAKE ME HIGHER

'CAUSE I NEED YOUR LOVE INTO MY SOUL♪

 

アップビートの曲調に身をまかせながら、重い身体を改札へと運んでいくのだった。

 

 

(3)

 

「おあっす」

 

おはようございます、としっかり発音する元気も気力もないまま、玲奈は席に着いた。

早速、英単語集を広げ、日課の暗記を始める。

 

「高2で英検準2級は取れないと、国公立は厳しいでしょうね」

 

TickTockで耳にした某有名講師の言葉が脳裏をよぎる。重くのしかかって来そうな不安感をぬぐいながら、右手を止めずにすらすらと英単語を書き留めていく。

 

「おっはよ↑~ございまぁす↓」

 

耳にするだけでイライラっとくるこのイントネーション。アイツが入ってきたのだ。

玲奈の隣の席にドカッと腰を下ろし、はぁ~っとため息を漏らすなり、アイツの取り巻きが騒ぎ始める。

 

「そのイントネーション、おかしくね?」

「もうね、疲れてっから。この際どうでもいいんだよ」

「おっさんかよ。てかさ、今日のテスト、お前勉強してきた?」

「ん?何?テスト?」

「ガハハハ、大吾、お前またかよ~」

 

コイツの名前は円大吾(マドカ・ダイゴ)。そこにいるだけで周りを惹きつけるタイプの人間だ。しかも裏表なく普通に良いヤツらしいから、余計に腹が立つ。

こういう人間を見ると自分の劣等感が心の底から沸き上がってくるので、玲奈は大吾のことを意味もなく毛嫌いしていた。

 

できることなら、こんなひねくれた感情を持つことなく、アイツらみたいにぎゃーぎゃー騒ぎたい。頭を空っぽにして、今持っている若さを使い果たしたい。

でも、今は我慢。受験生だもん。いい大学に行って、お父さんとお母さんを安心させてあげなきゃ。

あれ、でも、私が高校生でいられるのって、今だけだよね?じゃあ、今、私がするべき事って...

 

ふと、ペンが止まる。

 

――考えるのは、やめよう。

 

脳を埋め尽くそうとする思考を振り払い、再び右手を忙しく動かしていった。

 




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本作は、特撮作品「ウルトラマンティガ」の「シン・ウルトラマン」風リメイクを目指して作成しています。
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