(1)
「柳瀬。こら、柳瀬!」
教員の鈴木の声にはっと目が覚める。数学は苦手だから気を緩めるとすぐ寝てしまう。
「ほら、問2だよ。ちゃんと予習してきたか?」
「え、えーと...原点を通る直線だから、y=mxとまず置いて...」
ネットで調べたりして、必死に解いたこの問題。
「うん、よし。ま、一応は合ってるな。居眠りするくらいならこれくらいはやってもらわんとな。」
一言多いんだよ、このクソジジィ。
言いたくなるのをぐっとこらえながら、ぺこりと一礼してまた席に着く玲奈。
「んなこと言わなくたっていいじゃんか、ね」
隣の席の大吾がなぜかフォローを入れてくれる。精一杯の作り笑いをして、そうだよね、と会釈したが、内心余計なお世話だ、と思ってしまう。自分のひねくれ具合が本当にキモい。
あーあ、また自分が嫌になっちゃう。本当は自分を好きでいたいのに。こんな自分になっちゃったのって、誰のせいなんだろう。
でもさ、結局のところ、やっぱり自己嫌悪の根源って、自分にあるんじゃないのかな。
またどす黒い思想が頭の中でぐるぐる回り始める。
―もういっそ、全て壊れちゃえばいい。
ふと、そんなことを思ってみる。
学校も社会も全部、更地になって1からやり直せれば…
考えてもきりがないので、玲奈は黒板の解答をノートに写すことにした。
(2)
キーンコーンカーンコーン。
7限目後のチャイムの音。クラスメイトが部活や塾へ急ぐ中、円大吾の一日は第二ラウンドを迎える。
パパっと手際よく教科書とノートをカバンに詰め込み、道中クラスメイトや友達に挨拶しながら一階へ急ぎ、自転車を走らせる。
1軒目のバイト先は、スーパーの補充係。笑顔で店員さんたちや店長に挨拶しながら、エプロンを身に着け、早速仕事にかかる。
「大吾くん、お疲れ」「円さん、今日もありがとうね」「大ちゃん、おにぎり食べる?」
仕事をしていると、色んな人が声をかけてくれる。やっぱり人と一緒に何かをするっていいな、とほっこりした気分になる。
こういう瞬間のために大人は仕事をするんだろうな、とまだ高校生ながらに大吾は思った。
しかし、油を売ってもいられない。夕方のタイムセールのラッシュに合わせて、総菜や野菜が飛ぶように売れていく。それらの状況を全体的に把握しながら、手際よく、かつ適切に商品を補充していく――もはや立派なスポーツだ。
午後7時半。今日のシフトが終わり、お茶を飲んで一息つくと、もうすぐに次のバイトの時間になる。
次のバイト先はアパートの近くのコンビニ。
レジの担当だけではなく、やはり製品の補充やコピーの依頼、時には郵便の手配まで対応しなければならない。
時には力仕事、時には情報処理、時には接客…どれだけタイプチェンジしなきゃいけねーんだよ、と突っ込みたくなるほどである。
そうしてシフトが終わるともう10時を回っていた。
「大ちゃん、おつかれ。弁当好きなの一個持ってきな」
と店長が気遣ってくれたので、一番高そうな焼肉弁当を「うぃっす。あざっす」とぺこぺこしながら持ち帰り、アパートの自室に転がり込んだ。
ただいま、と言ってみても返事はない。疲労でくたくたの身体を敷いたままの布団にどさりと下ろし、あ゛ぁぁぁ~~と謎のうめき声を発した。
一日の疲れが体中を駆け巡る。もう何にもしたくねーな、と思った矢先、ぐきゅうううと腹が鳴った。
ため息交じりに体を起こし、冷たいままの焼肉弁当を一口頬張ると、「うまっ」と正直な感想が口から漏れた。
「なんだかんだ言って、生きてるだけでぼろ儲けだよな」
大きな独り言をつぶやきながら、大吾は黙々と晩飯を楽しむのだった。
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本作は、特撮作品「ウルトラマンティガ」の「シン・ウルトラマン」風リメイクを目指して作成しています。
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