シン・ウルトラマンティガ   作:Sashimi4lyfe

2 / 10
円大吾(マドカ・ダイゴ)という青年

(1)

 

「柳瀬。こら、柳瀬!」

 

教員の鈴木の声にはっと目が覚める。数学は苦手だから気を緩めるとすぐ寝てしまう。

 

「ほら、問2だよ。ちゃんと予習してきたか?」

「え、えーと...原点を通る直線だから、y=mxとまず置いて...」

 

ネットで調べたりして、必死に解いたこの問題。

 

「うん、よし。ま、一応は合ってるな。居眠りするくらいならこれくらいはやってもらわんとな。」

 

一言多いんだよ、このクソジジィ。

言いたくなるのをぐっとこらえながら、ぺこりと一礼してまた席に着く玲奈。

 

「んなこと言わなくたっていいじゃんか、ね」

 

隣の席の大吾がなぜかフォローを入れてくれる。精一杯の作り笑いをして、そうだよね、と会釈したが、内心余計なお世話だ、と思ってしまう。自分のひねくれ具合が本当にキモい。

あーあ、また自分が嫌になっちゃう。本当は自分を好きでいたいのに。こんな自分になっちゃったのって、誰のせいなんだろう。

でもさ、結局のところ、やっぱり自己嫌悪の根源って、自分にあるんじゃないのかな。

またどす黒い思想が頭の中でぐるぐる回り始める。

 

―もういっそ、全て壊れちゃえばいい。

 

ふと、そんなことを思ってみる。

学校も社会も全部、更地になって1からやり直せれば…

 

考えてもきりがないので、玲奈は黒板の解答をノートに写すことにした。

 

 

(2)

 

キーンコーンカーンコーン。

 

7限目後のチャイムの音。クラスメイトが部活や塾へ急ぐ中、円大吾の一日は第二ラウンドを迎える。

パパっと手際よく教科書とノートをカバンに詰め込み、道中クラスメイトや友達に挨拶しながら一階へ急ぎ、自転車を走らせる。

 

1軒目のバイト先は、スーパーの補充係。笑顔で店員さんたちや店長に挨拶しながら、エプロンを身に着け、早速仕事にかかる。

 

「大吾くん、お疲れ」「円さん、今日もありがとうね」「大ちゃん、おにぎり食べる?」

 

仕事をしていると、色んな人が声をかけてくれる。やっぱり人と一緒に何かをするっていいな、とほっこりした気分になる。

こういう瞬間のために大人は仕事をするんだろうな、とまだ高校生ながらに大吾は思った。

しかし、油を売ってもいられない。夕方のタイムセールのラッシュに合わせて、総菜や野菜が飛ぶように売れていく。それらの状況を全体的に把握しながら、手際よく、かつ適切に商品を補充していく――もはや立派なスポーツだ。

 

午後7時半。今日のシフトが終わり、お茶を飲んで一息つくと、もうすぐに次のバイトの時間になる。

 

次のバイト先はアパートの近くのコンビニ。

レジの担当だけではなく、やはり製品の補充やコピーの依頼、時には郵便の手配まで対応しなければならない。

時には力仕事、時には情報処理、時には接客…どれだけタイプチェンジしなきゃいけねーんだよ、と突っ込みたくなるほどである。

 

そうしてシフトが終わるともう10時を回っていた。

 

「大ちゃん、おつかれ。弁当好きなの一個持ってきな」

 

と店長が気遣ってくれたので、一番高そうな焼肉弁当を「うぃっす。あざっす」とぺこぺこしながら持ち帰り、アパートの自室に転がり込んだ。

 

ただいま、と言ってみても返事はない。疲労でくたくたの身体を敷いたままの布団にどさりと下ろし、あ゛ぁぁぁ~~と謎のうめき声を発した。

一日の疲れが体中を駆け巡る。もう何にもしたくねーな、と思った矢先、ぐきゅうううと腹が鳴った。

 

ため息交じりに体を起こし、冷たいままの焼肉弁当を一口頬張ると、「うまっ」と正直な感想が口から漏れた。

 

「なんだかんだ言って、生きてるだけでぼろ儲けだよな」

 

大きな独り言をつぶやきながら、大吾は黙々と晩飯を楽しむのだった。

 




ご完読いただきありがとうございます!
本作は、特撮作品「ウルトラマンティガ」の「シン・ウルトラマン」風リメイクを目指して作成しています。
作品の評価・感想など頂ければ執筆の大いな励みになりますので、よろしければご気軽にお寄せください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。