ワイ「やろうと思えば何でもできる不思議パワーが使える種族に転生したから色んなモノ模倣してみるわ」 作:rikka
二期放送前までにと黄金郷編まで進めて、その後を読み続けながら走り書きした出涸らし小咄
001:
『ここから南西にある深い森の奥に、魔族が住んでいるかもしれない』
フランメという赤毛の女魔法使いがそんな噂を耳にしたのは三日前、偶然立ち寄った村での村人のなんてことない井戸端会議だった。
森の端で野営していた商隊が、森から突然フードを被った少女が現れて大量の燻製肉や野菜の買取を依頼してきたと話して噂になっている。
森を流れる川に時折、釣り竿らしき残骸が流れている。あるいは不穏な自由民や不法移民が住み着いているのではないか。
森で迷子になった隣村の子供が、角が生えた綺麗な女の子に送ってもらったと言って帰って来た。
もしや、あの森には魔族がいるのではないか。
そんな噂話が広大な森の周囲に点在する村々で流れていたのだ。
(……これは……いるな)
同時にその村々には共通の特徴がある。
魔物に因る襲撃や被害が、明らかに少ないのだ。
噂を聞いたフランメは森を――一番遠い村からでもその深さと険しさが分かるくらい相当な樹齢の木々が生い茂っている森に足を踏み入れ、辺りを見回す。
魔物に棲み着いてくださいといわんばかりの地形だ。
待ち伏せや巣作りに恰好の茂みや大木がいくらでもあり、十分以上の水が流れる川があり、そして近隣の村からは木材目当てに伐採に来る人間も来る。
にも拘わらず被害が出たという話がほとんどなく、それどころか開拓村が今も増えているというのは異常ですらある。
(周囲に餌場が無数にあり、絶好の住処に成り得るのに魔物が棲み着かない理由など一つだ。そこが自分達では及ばない強者の住処だからだろう)
村人はこのような地域で平然と住めることに対して、誰も疑問に思っていない。
つまり、昔からこの一帯は魔物が寄り付かない地域だったと言う事だろう。
どれだけ昔からここを縄張りとしていたのか、考えるだけで恐ろしい。
魔族を見かけたという時点で速やかに軍を動かすか逃げるべきだというのに、こうも呑気だと言う事は少なくともこの近隣では人を喰っていない証拠。
行方不明者が多ければ、さすがに噂になっていたハズだ。
無残な死体が一つでも見つかっていれば、必ず領主が軍を動かし調べていたハズだ。
魔族にしては恐ろしく慎重で、つまりは恐ろしく厄介な個体と言える。
(何百年生きている奴なのか。……くそっ、面倒な事になったな)
フランメは周囲を、普段よりも警戒しながら足を進めていく。
これまで殺して来た魔族は、戦いの最中で魔力を隠す事はあれど基本的には垂れ流しにして周囲に誇示する事を好んでいた。
魔族が住んでいる場所は容易く分かるハズなのだ。
本来は。
だが今の所、大きな魔力は探知できない。
それでも分かる。
ここには魔族がいる。
なぜなら――
「……結界。それも恐ろしく高度だな」
明らかに、魔法が使われた痕跡があるのだから。
「……薄くて探知の難しい結界を何重にも……一枚一枚は凄まじく薄いがそれぞれ違う種類で、その上で対魔結界としては完全に機能している。……これだけ張られていれば森に入れるのは人と普通の野生動物だけか。随分とお優しい結界だ」
込められる魔力を可能な限り薄くしているのは、魔力に敏感な獣を出来るだけ刺激しないための物だとフランメは推測した。
手練れの魔法使いは、そういうわずかな変化でも魔族の気配に気づく事がある。
(……いや、そうか。魔物が人に害を与えれば、森は徹底的に調べ尽くされる。それを警戒したのか)
知らず知らずのうちに、フランメは魔力探知の精度を最大限に引き上げる。
住んでいるかもしれない謎の魔族の情報は可能な限り手に入れておきたい。
ここまで徹底的に隠匿する魔族はあまりに異質で、それゆえ危険だ。
同時に、何が何でも打ち倒そうとは思っていない。
死ねばそこまでなのだ。
逆に、生きてさえいれば機会はいくらでもある。
幸いフランメは命乞いが得意だ。
魔族すら欺いて何度も逃げ出した事がある。
額を地面に擦り付けて「助けてくれっ! なんでもするし、なんなら代わりの人間連れてくるからぁぁ!!」と鼻水垂らしながら泣き喚いて、魔族が油断したり呆れたりしている隙に弱点の心臓や頭部をぶち抜いた経験などもはや両の手では数えられまい。
確実に逃げるために逃走路を確認しながら森の中を進んでいく。
道中で水を補給するためにも、森の中を流れる川に沿って足を進めていくと――
「…………まさか、これが?」
そこには小屋があった。
随分と使い古された、何の変哲もない小屋が四つ。
一つは水車小屋。
川の流れを受け止めて、ガタンガタンと大きな水車が回っている。
フランメのいる位置からは見えないが、音からして恐らく石臼が設置されているのだろう。
その隣にある小屋は……近づいて見なければ分からないが、作業場だろうか。
雨除けに追加された屋根の下に、金槌や火鋏が吊り下げられている。
そして四軒の内最も大きいのは恐らく家畜小屋。
生い茂る木々がその周囲だけ見事に伐採されていて、小屋を含めて柵で囲われ、その内側には豚が放されており、端には鶏小屋まで用意されている。
ご丁寧に消臭の魔法結界が張られており、家畜特有の獣の匂いが漂ってこない。
しかもその向こうには小麦と他の何かの畑が広がっている。
そして残る最後の一つが――恐らく、住まいなのだろう。
どう見てもただの家だ。
下手な村長や商人の住まいより立派かもしれないが、それでもただの家であることには違いない。
誰もいるハズのない森の中に、ポツンとだ。
これで血の臭いの一つもしてくれればまだよかった。
だがその住まいは周囲を花に囲まれていて、まるでそこだけ普通の村の一角のようだ。
異常すぎる。
異様すぎる。
人が作った物にしか見えないだけに、そこだけがポツンと浮いていてとてつもなく気持ち悪かった。
さすがのフランメも、踏み込んで家主と接触するべきかどうか躊躇う。
(森で迷ったというガキの話も聞いてみたが、多少盛ったりボヤけている所はあっても作り話という感じではなかった。……無名で、かつ人食いが目的の奴ならば、殺して行方不明にして存在を徹底的に隠すハズ。そもそも定住はしない。……ここでは殺さず、遠くで食っている? ならば自分は安全な魔族であると誤魔化すために、私を今ここで殺す可能性は低いが)
住人が魔族であり、かつ狡猾な者だった場合、少なくとも考え無しに食い殺す輩ではない。
慎重な輩だからこその隙がある。
覚悟を決めて家まで歩いていく。
その煙突からは煙が立ち上っているため、無人というわけではないだろう。
果たして。
玄関までたどり着くとやや大きめのチャイム・ベルが吊るされている。
ご丁寧にドアには『魔族の住む小屋』『御用の方は御鳴らし下さい』と書いた木札も吊るされていた。
「ふざけているのかイカれているのか外れなのか、一体どれだ」
フランメは思わずそう呟きながらチャイムを鳴らす。
魔法で作ったのか、やけに可愛らしい音を鳴らす鐘が揺れる。
それと同時に、ドアがキィ……と音を立てる。
―― ……驚いた。ここに普通の人間の客人が訪れたのは三百年ぶり。
そうして家主が姿を現す。
うねりを持つ金の髪を後ろで束ねた、美しい少女。
その表情に感情らしい感情はなく、それゆえどこか人形めいた美しさだ。
だが、それよりも目を引くのはその頭部。
前部から後ろに、頭の形に沿うように二本の
まごうこと無き、人を食らう魔族の証がそこにあった。
「魔族の住む小屋へようこそ。用件は?」
「……なるほど」
フランメは、そこらの村人と変わらない程度の魔力しか立ち上らせていない獣を見て、確信する。
「イカれている方だったか」
「なんだお前」
ちょいちょい漏れ出る情報見てると、回想に出て来ない日常パートのフランメは悪乗り方面に舵切ったザインに近いキャラだったんじゃなかろうか
書いてる間に帝国編までたどり着いたわ
帝国中々にやべぇ所だな