ワイ「やろうと思えば何でもできる不思議パワーが使える種族に転生したから色んなモノ模倣してみるわ」 作:rikka
名無しと呼ばれていた大魔族は、幾度も魔王軍の追手を退け続けていた。
そのためその戦闘の癖は魔王軍の将軍――特に魔王に近い者達には共有されていた。
名無しの魔族最大の弱点。
それは、
一度アーティファクトを抜いてしまえば、名無しは無類の強さを発揮する。
これまで人間側でも有数の戦士を屠って来た将軍級で取り囲んでも、三合も斬り合う内に一人は塵に帰っていた。
この最大の理由は当然彼女の尋常ならざる剣技のせいだが、合わせて近接戦ではどれだけの数で取り囲んでも同時に交戦できる個体数に限界があるからだ。
通常の個体ならば四体。
異形型ゆえの巨体を持つ者が混じれば数は減る。
そして名無しの技量は、その程度の差など物ともしない。
初の戦闘時ですら、広範囲を同時に斬る――イコマ・センクウ*1と彼女が呼んだ剣技によって古参の大魔族二体を含む多数の犠牲が出たと聞く。
ゆえに、中距離以上の距離からの魔法による飽和攻撃。
これこそが最も彼女を追い詰められる戦術だと言われていた。
彼女は極めて強力なアーティファクトを使いこなすが、逆に彼女単体で強力な魔法を発動させるのが不得手であるのは分かっていた。
そこにこそ勝機があると。
だが、
――死ねぃ、名無しぃぃっ!!!!!
「……02式」
魔力によって生成された弾に依る飽和砲撃。
そのどれもが彼女の生み出す聖印を模した血の盾によって悉くが阻まれる。
そしてその隙を、彼女は見逃がさない。
「
またも多数の魔族が、あっけなく狩られる。
盾と同じく、女神の魔法――魔力そのもので構成された血液は魔族にとって最悪の刃である。
細かい聖印が散弾と発射され、同胞達の身体に大小さまざまな穴を空ける。
自分も防御魔法で援護に入っているが、数体を救うので精一杯だ。
「おのれぇぇぇぇぇぇっ!!!!」
文字通り、もはや彼女に隙はない。
アーティファクトを封じた所でどうしようもない。
あの恐るべき剣技――魔王軍最強の戦士をして、絶技にして神域の技と言わせたソレを出させないために射程外からすり潰そうとしていた所で、彼女は己の弱点を
「
大技を出して隙が――隙に見える何かを見た戦士が斬りかかる。
だが、届かない。
その程度で届くはずがない。
「
投擲に使った細い奇妙な剣。
それを指の間に挟み、三本の爪として迫った者を細切れに切断する。
(……これは……駄目だ)
押さえられない。
逃げなくてはという恐怖と、なんとしてもアレを破壊し尽くさなくてはならないという本能がせめぎ合っている。
どちらも正しいハズだ。
これには勝てない。
彼女の言う通り、全快したリヴァーレのような最上位の戦士達に加えて優秀な魔法使い――それこそ七崩賢クラスをかき集めないと勝ち目が見えない。
同時に、今ここで何としても殺さなくてはならないと強く感じている。
ただでさえこの名無し――セイバーの成長速度は尋常ではない。
彼女が森を出てからの幾度目かの追撃戦では、七崩賢ですら膝を突いた。
(これが、これが最善だというのですか……シュラハト……っ)
「全員、合わせなさい。狙うのは彼女ではない。エルフの方を」
間違いなく彼女が作ったのだろう自動防御礼装を持つエルフ。
セイバーのマスターである彼女を攻撃すれば、彼女は自分の主人を守らざるを得なくなる。
「……小細工だな、グラオザーム」
「ええ。小細工です、セイバー」
知っている。だがそれしか最大火力をぶつけられる方法がない。
いくら彼女自身の防御礼装を持っているとしても、主人の危機には動かざるを得ないだろう。
シュラハト曰く、最も人間に近い魔族だから。
故に魔王が手元に置きたがり、同時に疎ましい存在となっているのだから。
「……今です!」
名無しを捕殺するために揃えた精鋭百。
既にその数は五十にまで減っているが、幸い対名無しに向けての戦力は揃っている。
色取り取りの殺意が彼女の主人へ向かう。
主人は反応出来なかったのか、あるいは必要を感じなかったのか何もしていない。
「117式……っ」
セイバーが、その直線状に割り入る。
「
これまで常に冷静だった彼女が、わずかに熱を込めた声で地面に拳を叩きつけて血液魔法を発動させる。
これまでにない巨大な聖印。
発動のその瞬間から、彼女の魔力の何十倍に匹敵する魔力を迸らせた盾が完成する。
轟音と共に、
女神の魔法が込められたとはいえ、それは血液なのだ。
単純な攻撃魔法から呪いまで、あるとあらゆる攻撃を撃ち放つ。
それを万が一にも後ろの主人に通すまいと、セイバーは盾を巨大に展開せざるを得ない。
(魔力探知が得意と言えども――!)
こちらの攻撃魔法が途絶えるかどうかの一瞬を突いて、接近する。
戦士がいれば最適だったのだが、使い物になる者達は皆首を落とされた。
「セイバー、覚悟を」
盾が解除されるその瞬間、たとえさほど効果がなかったとしても全力で彼女の五感に干渉する。
ほんの僅か、僅かで良い。
盾を緩めながら次の反撃に移ろうとしている彼女のそのわき腹に向けて、渾身の魔力弾を撃ち込む。
初めて、彼女の身体に穴が空いた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
(あぁ、なるほど)
私の
グラオザームという魔族は彼女に注意を払わずこちらを見ている。
獲ったと思っているのか、あるいは先に
(本当に、君は自分の身体を聖別したのね)
聞いていない。
本当に何も聞いていない。
令呪の型を埋め込んでから日数はあったのに何も話していない。
自分で私の
頬っぺたじゃなくて脇腹、あるいはモカモカの刑をお望みらしい。
「君、セイバーを倒したと思っているみたいだけど」
令呪を通して彼女の状態が伝わる。
確かに穴は空いた。
明確に、彼女はダメージを受けた。
「そんなに無防備なお腹を晒して大丈夫?」
だが、勝手に魔力が彼女の欠けた身体を埋めようとしている。
聖別された血肉が集まり、聖別された臓腑を再現する。
「……ば……かな……」
何度目かの魔族の驚愕の声が耳に届く。
あるいは、絶望だろうか。
彼女の身体が
女神の魔法が、彼女の身体がそう在るべきだとでも言うように、元の姿に戻していく。
後に残るのは、攻撃する対象を迷い無防備な身体を晒す魔族と。
すでに次の攻撃に備えた、私の剣だ。
「女神の魔法……そして聖別。馬鹿な、そんなことが……!?」
グラオザームが咄嗟に後ろに飛びながら防御魔法を張る。
当然だろう、近接に恐ろしく強い彼女の間合いにいる事は死を意味する。
が。
「グラオザーム。我ら魔族は、どこまでいっても『個』の集団だ。それは君も例外ではなかったようだな」
「なにを……」
「
――輝剣の円陣。*2
五本の蒼い魔法の剣を作り出し、それを撃ち出す攻撃補助魔法。
それを発動させるや否や、その五本の剣が寸分違わず一人の魔族を串刺しにしていた。
私にも見えていた。
先ほどの一斉攻撃で、
「――しまっ」
「女神の魔法は、魔力のより強力な探知から追跡まで可能にする」
彼女の右手に、見慣れた黄金の波紋が今度こそ現れる。
「必死に誤魔化そうとしていたようだが、どの個体が私を封じていたかは丸わかりだった」
「っ! セイバー!!」
「さて、君達はこの身との撃ち合いを所望のようだ」
そして彼女が、今度こそ彼女の
「了承だ、乗ってやるとも」
それは槍だった。
いや、槍のような杖だった。
長短二種の刃が先端に取り付けられ、その刃と刃の付け根に魔力が込められた赤い宝石のようなものが納められ、輝いている。
「砲撃戦の時間だ」
グラオザームに逃げ場はなかった。
後ろに飛ばねば、彼女の脇の地面に突き刺さっている剣――鉋という一刀によって斬り裂かれていただろう。
そうして距離を取ったために、セイバーが杖を手に取った。
とっさにグラオザームが魔力弾を打ち込むが、一緒に取り出していたのだろう試作型の防御用月霊髄液がその全てを阻む。
「グラオザーム。君の事は嫌いじゃない。だから、先に宣誓しておく」
赤い魔法の弾が複数形成され、彼女の身体の周りを回転し始めている。
後方の魔族が攻撃を向けるが、その瞬間に回転していた弾丸が飛び出し、相手の頭を吹き飛ばした。
「頭上注意だ。……悪く思え」
その言葉が紡がれた瞬間、グラオザームという魔族は全軍に撤退を命じていた。
――レイジングハート。起きて。*3
――『Stand by Ready』
――『Set up』
夜空に、魔法陣が輝いた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「う……ん……? ……あれ?」
何か、凄くいい夢を見ていた気がする。
何か柔らかい物に包まれていて、このまま目を閉じて包まっていたい気持ちだ。
「……いい匂い」
「呪いが解けたのならば起きなさい、フリーレン」
自分を包んでいた布団が喋り出した。
いや、布団の一部はミリアルデだった。
彼女の外套に包まれて、彼女の身体の熱によって温められている。
「……………………っ! ミリアルデ、魔族は!!?」
「大丈夫」
咄嗟に、何があったか思いだした。
突然の襲撃、燃やし尽くされる故郷、自分達を取り囲んで嬲り殺す――魔族。
「今、必死に
その言葉に、
咄嗟にミリアルデから離れて、魔力探知を展開しながら周囲を見る。
「……………………なんだ、これ」
夜空から、『裁き』が降り注いでいた。
明るい、まるで花のような明るいピンクの輝きが無数に、次々に地面に突き刺さっている。
木々を吹き飛ばし、岩を吹き飛ばし、地面を吹き飛ばし――
あれだけ自分達を嬲り殺していながら無様に逃げまどう魔族達を、次々に消し飛ばしていた。
真っ直ぐ逃げようとするその行く手を遮るように光が落ち、足を止めた瞬間頭上から光が降り注ぎ、あれだけ怖かった魔族が次々に
「音が凄いから防音の魔法を張っておいたわ」
ミリアルデは「避難させた子達は怖がってないかしら」と呑気に呟いているが、そんな事微塵も気にならなかった。
とても現実感がない。
それこそ、『女神様の裁き』としか言えない輝きの豪雨が降り注いでいる。
「……ねぇ、ミリアルデ」
「なに?」
「
「ええ」
空を見上げると、見たことない複雑な魔法陣が多数夜空に輝いていた。
その中の中心である、ひときわ大きな魔法陣の中心に誰かが浮かんでいる。
白い杖だか槍のような物――更に二対四枚の光る羽が生えたソレを構えて、地面に裁きの光を撃ち放っている。
「……なんだかんだでこの虐殺に怒っていたのね。珍しく周囲への配慮を忘れているわ」
「ミリアルデ」
「ええ」
「
当然の疑問だ。
人は空を飛べない。
魔法に長けたエルフだって未だ飛べない。
空を飛べるのは魔物か――あるいは、
「ミリアルデ、あいつは――」
「そこまでよ」
そっと、ミリアルデが私の唇に人差し指を添える。
「彼女は私の従者よ。それで納得して」
裁きの雨が降り止み、だが同時に魔法陣が膨れ上がり、更に巨大な物へと変わる。
輝いていたその周囲に、同じ色の輝く粒子が現れ、その魔法陣の中に取り込まれていく。
明らかにあり得ない。
断じて人間の魔法ではない。
そして、おそらく大魔族でも出来ないだろう膨大な魔力反応が、魔力探知の全てを塗りつぶす。
「……フリーレン、こっちに。多分、凄い衝撃が飛んで来るわ」
音はしない。
ミリアルデの防音の結界が相当に優秀なのだろう。
だが、それでも息を呑むしかなかった。
触れる全てを焼き尽くすだろう輝きが夜空に覆う。
まるで夜明けのように。
あるいは夕暮れのように。
世界を呑みこむような光と魔力が――
「……やっぱりモカモカの刑ね」
そして、
――夜空に浮かぶ全ての星の光を塗りつぶさんばかりの極光が、大地に突き刺さる。
レイジングハート・エクセリオン(魔法少女リリカルなのはA’s~)
馬鹿火力兵装
セイバーはいくつかの方法で魔力をストックしていざという時に魔力を継ぎ足す戦術を取っており、これはその中でも特殊な一つ。
貯めに貯めた魔力をカートリッジとして倉庫の中に常に生成&保管し続けている。
とにかく火力を重視し、純粋な魔力での押し合いで有利に立つために作ったアーティファクト。
とにかく手加減が出来ない。
周囲の被害もなんのその。
非殺傷設定? そんな都合のいい物はありません。
海が割れようが大地が裂けようが天が啼こうが、とにかく目の前に立つ敵を確殺するための杖。
たびたび勧誘業者を煽り倒しているため、万が一業者のトップが飛び出してきた時に備えた切り札の一つ。
今回は色々プッツンしてついブッパしちゃった。