ワイ「やろうと思えば何でもできる不思議パワーが使える種族に転生したから色んなモノ模倣してみるわ」   作:rikka

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Q:モカモカの刑とは?
A:モカモカの刑だよ

Q:キエサルヒマ大陸がトトカンタの――
A:ああ!!


015:

 一方的な惨劇になるハズだった一戦は、エルフの里側の勝利に終わった。

 圧倒的な数を割いた、七崩賢が率いる魔王軍の部隊が壊滅したという報せは人間とかかわりを持つエルフによって近隣の村々に広まっている。

 近いうちに、聖女と赤の勇者の新しい伝説となるだろう。

 

「で、その勇者様は里の北側を、君の魔法でも戻せない程の草一つ生えない更地にしたわけだけど申し開きは?」

 

ぁぁあぁぁあぁぁぁぁあぁぁぅぅうぅぅぅううぅぅぅぅぅうぅぅ…… 

 

 衝撃の余波でボロボロというか、燃え盛る火災ごと一切合切を吹き飛ばした愚者に制裁を執行しながら、私は尋ねる。

 

 言え。言ってみてちょうだい。

 私の対魔結界だけでなく三重の対物結界がなければ避難に使ってた食糧庫も絶対に危うかったんだぞ。外側の結界が破れていたし。

 

 無事を確認にいったら全員もれなく気絶していたのよ?

 

 ベッドの上に押さえつけて、ひたすらセイバーの頬をこねている。

 ぁぅぁぅ言っている従者はせめてもの抵抗か、こちらの手の動きに合わせて顔を左右に動かして軽減しようとしている。

 

 姑息な。思いっきり挟み込んであげるわ。

 

「で?」

「……ぅ゛う?」

「あの大暴れの理由は? というよりは、ほとんどの魔族を殲滅した上でグラオザームを含む数名を見逃した理由だけど」

 

 昨日は一晩中くすぐり倒したために、戦闘や修復以外でも体力を使い果たしているのだろう。

 珍しくぐったりしたまま――今日の朝食も事前に作り置きしていたシリアルにミルクをかけた物とサラダだった。

 

 戦闘もそうだが後始末に多種多様な魔法を使ったのが響いているのだろう。

 

 念のために動きを封じておこうと馬乗りになっていたが、抵抗や逃亡する気はやはりないようだ。

 彼女の肩の上あたりに手を突いて彼女の胸に顔を乗せる。

 

 ……呼吸に合わせて、胸が上下している。

 分かってはいたけど、やはり身体そのものは平気のようだ。

 

「まず、魔王軍を殲滅した事だが……やはり怒りがあった」

「……まぁ、当然ね」

 

 魔族の気配がすると言った彼女の警告に続く、逃げていたエルフの一団を救出したという報告の念話の時だ。

 いつも淡々と話すイメージがある彼女に、珍しく嫌悪が言葉の節々に漏れていた。

 

「仕方ないかもしれない、とも思っている自分がいる。魔族は人食いだ。いうなれば、君達でいう牛や豚、魚を相手にするようなものなのだろう」

 

 そこに自分を入れないのはどちらなのだろう。

 本能がやはり人の肉を求めているのか、それとも角付きという事で外しているのか。

 

「それでも、言葉を使えるのだ。意味の本質を解せずとも、少なくとも人間と同じ言語で我々魔族は意思疎通が出来ている」

「……魔族同士での相互理解も私は少々懐疑的だけど……」

「否定は出来ない。それでも、最低限の情報の共有、交換は出来ている」

 

 確かに、あれだけの殲滅砲撃を放ちながらも一人だけ逃がしたグラオザームという個体とはそれなりに会話が成立していたようには見えた。

 

「だからこそ、言葉を使い意思の疎通そのものは出来ても、そこから先に進めない――進もうとしない同胞達への憤りや不満は昔からあった」

「そこに今回の侵攻……」

「虐殺だ。意味の薄い殺戮だ。私が私であるためにも、断じて許すわけにはいかなかった」

 

 彼女の活躍や、事前に彼女が作っていた道具のおかげで多くの命が救えた。

 

 だが、犠牲が出なかったわけではない。

 

 戦闘の後、彼女が《大体何でも直す魔法(レ・パーロ)》で直して回ったために、里はおおよそ復興した。

 中には彼女の最後の一撃の余波で直す対象そのものが蒸発している場所もあったが、《完全に復元する魔法(フィクサービーム)》とやらでそれすら完全に戻して見せた。*1

 

 そのおかげで、多くの遺体を保護する事が出来た。

 彼女は、一瞬あの砲撃で消し飛ばしたのではと少し顔を蒼褪めさせていたが数は足りていた。

 そもそも、気にするエルフはそんなにいないだろう。

 

 棺を作り墓を建て、弔いの儀を行った上で里の結界を私と彼女でより強固なものに張り直した。

 

 それが一番魔力を使ったようで、疑惑の目を向けてくるフリーレンを無視して連れて帰る事になって今ここにいるわけだ。

 

「でも、あれだけの攻撃魔法を使ったのは? 言っては何だけど、幻影魔法が利かなくなった以上いつもの神機やライヘンバッハで十分対処できたと思うのだけど……」

 

 むしろ、無駄に魔力を消耗しただけに見える。

 確かに数は多かったが、それでも精々が一部隊。

 あのレイジングハートというアーティファクトは、対軍兵装とでも言うべきものだ。

 

 常に効率的に、そして周囲への破壊を最小にして戦う彼女らしくない選択と言えるだろう。

 

「……ミリアルデ」

「ええ」

「私はずっと、暴力とはそもそも忌避すべきものだと考えている」

 

 とても魔族から程遠い言葉に、顔を彼女の胸にうずめたまま頷く。

 

「殺害も当然だ。確かに食べていくのに動物に植物――生命を取り込まねば生きていけないのが魔族だ。人だ。……エルフもだろう?」

 

 再度、頷く。

 日頃の食事の時に、彼女がいつも女神への祈りに付け加える一言を思い浮かべる。

 

 いただきます、と。

 

「だからこそ、殺害に無駄があってはならない。そうなりうる暴力が近い所に在るべきではない。命に差をつけ選別し、取り込む身だからこそ……」

 

 あぁ。彼女の言葉はそういう事なのだ。

 食事もまた罪の一つ、業の一つと捉えているのかもしれない。

 

「力を振るわずに済むのならばそれに越したことはない。ましてや戦闘ともなれば逃げるのが最善だと、そう思っていたのだ。魔王軍の追跡を受けても」

「今は違う?」

 

 少し、雰囲気が変わった。

 両腕をベッドと彼女の背中の間に差し込んで、ゴロリと一回転する。

 

「暴力は争いを止める。暴力は恐れられる物だから。そして――」

 

 私が息苦しくなると思ったのだろう。

 彼女は身体の位置を調整しながら更に半回転して、いつも寝る時のように互いに身体を向け合って横になる。

 

「暴力は、行使しなければ理解されない。行使が可能であることを示さなければ……やはり、止められない」

 

 違うのは、珍しく眉が八の字になっている事だ。

 あまり見ない、困っている時の顔だ。

 

「つまりあの裁きの光は……グラオザームという魔王軍でも貴重な戦力に対する()()?」

 

 恩があると言っていたのは本当だろう。

 あの時彼に腹部を撃ち抜かれても、彼女は大して気にしていないようだ。

 

 ひょっとしたら無意識に、生きて欲しいと思ったのかもしれない。

 あるいは――もう、戦わないで欲しい、か。

 

「効果があったかは分からない。そもそも、シュラハトならば見ているハズだ」

「『全知』のシュラハト。未来視を持つと言われている魔王の腹心ね」

「レイジングハートを含む切り札を……。私がソレらを使う可能性があれば……だが」

 

 あぁ、だからか。

 念のためにあえて使って見せたのか。

 

「ミリアルデ。私の行動は聖典を規範としている」

「ええ、知っているわ」

「暴力を推奨しないのは、聖典にも記述がある事だ。そして私の記録にもある」

「そうね」

「にもかかわらず、常こうして聖典の教えに背く行動を取り、矛盾し続けてしまうのは……私が魔族だからだろうか?」

 

 ……相も変わらず生真面目だ。

 

 食事のグレードが少々下がったことを一生の不覚と言わんばかりに謝罪するのと同じく。

 もう少し適当に生きればいいだろうに。

 

「……君が正に言った通り、生きる事にどうしても力は付いて回るわ。聖典の教義は、要するに人と人の社会のためにある。その社会の中でもその通りには行かないの。異種族となれば尚更だわ」

 

 心なしかしょんもりしている彼女に近づいて、もう一度腰と背中に手を回して引き寄せる。

 

「君の聖典の研究成果を見させてもらったけど、その中にさえ攻撃魔法があったでしょう?」

「……『女神の三槍』……」

「そんなものがあるのかと、正直驚いたわ。他にも色々あった」

 

 そうだ、そもそもその聖典の中にそれがあるのだ。

 どれだけ隣人を愛し、不義に力ではなく言葉を以って立ち向かえと言っていても、人間に――生命にとって暴力は切り離せないのだろう。

 

「攻めて来た魔族達がそうだったように、どうしようもない連中というのはいるのよ」

 

 忘れそうになるくらい、それこそ話している内にポロリと角が取れるのではないかと思う程にセイバーは話が通じる魔族だ。

 生真面目すぎるきらいはあるが、下手なエルフよりも人間的で、そして文化的な存在だろう。

 

「どうしても戦わなくてはならない時はある。どうしても討たねばならない相手はいる」

 

 攻めて来た連中がそうだ。

 彼女が本当に魔族なのか疑わしくなるほどに、逆にアイツらは彼女と同種なのかと疑ってしまう。

 

「暴力も所詮は力であり、生まれ持った物よ。人が歩くために備えられた『足』という機能は『蹴る』事が出来るように。物を持ったり作ったりするための『腕』という機能で『殴る』事が出来るように」

 

 彼女だって分かっているハズだ。

 だからこそ、生活を豊かにする物と同じくらい武器を作り出し、防具を生み出している。

 

「だから聖典の言葉を、私なりにより鮮明な言葉にするのならば、おそらくその是非は『動機』に左右されると思うのよ」

「……動機」

「君はなぜ、戦ったの? 私が令呪契約を完了させて呼び寄せる前から、君は戦っていた」

 

 本音を言えば、もっと根幹から聞いてみたくはあった。

 なぜ、同種の動きに倣わないのか。

 なぜ、魔王軍というもっとも君の存在を認めてくれるだろう輪に入らないのか。

 

 ただ、きっとそこに踏み込むにはまだ早すぎるのだろう。

 

「……奴らは殺しを楽しんでいた」

「ええ」

「軍を名乗っておきながら規律の一つも持たない、ならず者の集まりでしかない」

「そうね」

「なにより――」

 

「君に危険が迫っていた」

 

 ただされるがままにされていた彼女が、私がそうしているように身体に手を回して来る。

 

「私の手の届かない所で、君が襲われたんだ」

 

 

――『まったく……呼ぶのが遅い、マスター』

 

 

 ふと、令呪契約を完了させて彼女を呼んだ時の彼女の言葉が蘇る。

 

(あれは限りなく本音だったのね……)

 

 自分が令呪の型を通して彼女の無事を分かっていたように、彼女も自分が無事だという事は分かっていただろうに。

 

「……君は今回力を行使した。それに対して、目撃したそれぞれがそれぞれの評価を下し、態度や行動に現れるでしょう」

 

 救われたエルフは安堵を、あるいは恐怖を。

 蹴散らされた魔族からは絶望か、あるいは憎悪を。

 

「そしてそれらは、私にとってどうでもいい」

「どうでも?」

「変わらないということよ」

 

 セイバーの正体に勘付いたあの子は……警戒だろうか。

 この小屋に避難している娘がいると知るや、慌てて回収に来ていた少女。

 周りに洩らしていないのは、言っても信じられないと考えたのか……。

 

「他にどんな理由が付与されていても、君が私のために力を行使したことには変わらないでしょう?」

「ああ」

「ならば私は、君を肯定するわ」

 

 まぁ、考えても仕方ない事だ。

 

「他の誰がどう言おうと、君が力を行使しようとしたその動機は()なる物だったと断言する」

 

 いずれにせよ、私と彼女は()()()()()()()()

 

「……だけど、君の力に対してこれから様々な働きかけがあるでしょう。恭順、庇護、取り込み……排除、そして敵視」

「……あぁ」

「だから、それが来た時に改めて一緒に考えましょう?」

 

 腕の中で、彼女が目をパチクリさせている。

 

「君は私の従者(サーヴァント)で、私は君の主人(マスター)なのだから」

 

 彼女は静かに、納得したかのように頷いた。

 

「あ」

 

 かと思いきや、突然わずかに身体をこわばらせる。

 

「どうしたの? セイバー」

「そろそろ昼食の時間だろう。すぐに準備を――」

 

 食事の用意のためにとセイバーが起き上がろうとする。

 

「いいえ。今はいいわ」

 

 そうさせないように彼女の身体を引き寄せて、足を絡ませて動きを阻害する。

 

「む……空腹じゃないのかい?」

「少しね。でも今は――」

 

 

 

 

 

「このまま君と、怠惰な眠気に身を任せたいわ」

 

 

「……………………わかったよ、マスター」

*1
電光超人グリッドマン

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