ワイ「やろうと思えば何でもできる不思議パワーが使える種族に転生したから色んなモノ模倣してみるわ」   作:rikka

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【朗報】ミリアルデ、まさかの能登様ボイス!

映像化されて声と演技を目にすることが出来たおかげで、だいぶキャラが固まってきた感じがあります

正直、ちょっとゼンゼに寄っていた感がある(ボソッ)
待っていろ、お前とエーレとヴィアベルは絶対に出すからな


赤い勇者と聖女の旅
017:


 雪が解け、小川にその清涼な水が徐々に流れ込んで水嵩が増し、それからしばらくして山の地肌が比較的落ち着いた頃。

 それは山の麓に住む人間にとって、大事な仕事である山菜摘みが始まる時期でもある。

 

 冬の間を蓄えていた穀物や塩や酢で保存していた作物で凌いだ村人にとって、山菜は畑仕事を始める春の貴重な活力だ。

 

「ったく、水汲み終えてすぐに山菜集めて来いってウチの家も無茶苦茶だよ……」

 

 その村落に住むとある少女も、その村の一員として森の中に入り、食用に足る山菜をかき集めていた。

 

 危険なのは百も承知。

 獣だって動き始めているだろうし、魔物だって出る可能性がある。

 それでもこうして女児一人で動かねばならない程、村に人手は残っていなかった。

 

 去年の秋。

 冬を越すために食料をかき集めている時に魔物の襲撃を受けて、多くの男達が死んでしまったからだ。

 

(……そういえば、それなりに歩いているけど珍しく獣の足跡を見ないわね)

 

 また一つ野草――アクが強いために下処理に手間がかかる、つまりは自分の仕事が増えるソレを抜いて籠に盛って、地面を観察して危険の気配に注意しながら次を探す。

 

 そうしてしばらく歩いていると、異音が耳に入る。

 近所の悪ガキ共が棒切れを剣に見立てて勇者ごっこで遊んでいる時のような音だ。

 

(……魔物じゃないわよね?)

 

 細い物を振り回す音となると、少女が馬鹿な男の子(ガキ)のごっこ遊び以外に思いつくのは尻尾を振り回す音だ。

 

 ただ、それにしては間隔が短かった。

 あるいは武器を持った魔族かと思うが、それならこんな意味もなく風を切る音だけがすることはない。

 魔族が武器を振るう時は、殺す時か壊す時だけだというのが少女の認識だ。

 

 恐る恐る、少女はジリジリと音がする方に近づく。

 万が一危険な物だったら、村の人間に警告するために。

 

 道なき道を行き、なぜか切り株だらけになっている真新しい広場を通り抜け、音に一際近づく。

 

 そこにいたのは、赤い()だった。

 赤い外套を身に纏い、なぜか周囲に赤く美しい薔薇の花弁が舞い散る中、細長いのに頑丈そうな片刃剣を綺麗に振り回す赤い()()がそこにいた。

 

 最初は軽いと思っていたその音は、軽いのではなく鋭かった。

 男の子が適当に振る棒切れとは違い、重く硬いソレを易々と振るっている。

 

 思わずごくり、と喉を鳴らすのと同時に、剣士がその手を止めてこちらを見る。

 

 しまった。邪魔をした。

 盗賊らしからぬ立派な服装だ。

 あるいはお忍びの貴族様かもしれない。

 

 そう考えた少女は咄嗟にその場に膝を突いて頭を下げ――

 

 

――ゴトリ……っ

 

 同時に自分のすぐ真横に、大きく重い何かが転がる音がした。

 

「……ぇ」

「危うい所だった」

 

 いつの間にか赤い剣士が側に近寄り、軽く抱き寄せられていた。

 

「身体を透明化させる魔物だ。君の跡を付けていたのだろう」

 

 驚いて振り返ると、一目見て魔物だと分かる巨体が「ズゥゥ……ゥン……ッ」と崩れ落ちていた。

 自分など丸飲みに出来るだろう口のある首を、刎ね飛ばされて。

 

「少し待ってくれ。念のために調べておこう」

 

 少女がなんとなく男だと思っていた剣士は、女性だった。

 バランスを崩していた少女を優しく立たせた剣士は、その左手を小さく振るう。

 すると次の瞬間、その手には聖典が収まっていた。

 

「け、剣士様は、僧侶でもあらせられるのですか?」

「僧侶というわけではない。ただ聖典が使えるだけだ」

 

 握っていた剣はいつの間にか消えて、代わりに緑色の優しい光が手に宿っている。

 

「それと、私はただの旅……いや、放浪者だ。変に畏まらなくていい」

 

 剣士は少女に魔物特有の呪いや毒が残っていないか確認した後に、辺りを見回す。

 

「ここらの魔物は目に付き次第狩っている。ある程度は安全だとは思うが、今みたいなのがいるから気を付けるといい」

 

 どう気を付けろと言うのか。

 位置からして恐らく自分の真後ろにいただろう魔物が塵へと還っていく姿を見ながら、少女は思う。

 

「あ、あの……」

「む」

「も、もしよろしければ村の近くまで送って行ってもらいたいなって」

 

 狼のような魔物ならば見た事もあるし、村が襲撃された時には屋根によじ登ってから弓や石で応戦したこともある。

 

 少女の提案に、外套のフードで顔のほとんどを隠している剣士はピタリと固まる。

 しばらく、より深くフードで顔を隠してなにやらボソボソと話した後に深いため息を吐く。

 

「……近くまでなら。私も、仕えている主人の世話を含めてやる事がある」

「はい! ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「それで村近くまで送って、周囲の()()をして帰って来たと」

「ああ」

「せっかくだから、そのまま村に入ればよかったのに。君の目で買い出しした方が楽じゃない」

「人食いの獣がホイホイ人里に紛れるわけにもいくまい」

「それは人を食べた事がある獣の場合でしょうに……」

 

 とりあえずの新居としてセイバーが建てた小屋は、前の小屋に比べて外見はそう変わらないが中は五倍近く広くなっている。

 移動する拠点として組み立てる以上、物を貯め込むこともあるだろうからと『検知不可能拡大呪文』*1をかなり強く込めているためだ。

 

 私達の寝室と別に、万が一のためにそれなりに多くの客室を完成させた上で、あるいは屋内で栽培も可能かもしれないと太陽灯*2なる物の開発と並行して地下室を拡張し続けている。

 

「それで、身体の方はどう?」

「出発前に言った通り、どうも聖別を終えてから風に属する魔法に関してかなり扱いやすくなっている。並行してローゼスビット*3のような浮かせるタイプのアーティファクトの操作がかなり楽になった」

 

 そして旅の道中でも決して鍛錬を削らないセイバーは、例のエルフの里での戦い以降自分の身体を把握することに専念しているようだ。

 

「魔法以外は?」

「……とりあえず、自己再生は完璧のようだ。あの時グラオザームに空けられた胴体も瞬時に再生したし、試しに腹や腕、足をそれぞれ三度ずつ掻っ捌いたり斬り落としてみたがやはり再生した」

「君は相変わらず自分の身体に関しては無頓着よね」

 

 ただ、その把握に関して時折狂気の向こう側に容易く踏み込むのが問題と言えば問題だ。

 

「というか、どうして三回も斬ったの? いえ、今更とはいえ自分で自分の身体を斬り刻むのがすでにおかしいのだけど」

 

 自分でも嫌らしいとは思うが、あれだけ快適な生活を作り出せる彼女をつまらない理由で失いたくはないのに。

 とりあえず理由を問いただしてみると、「オープンゲット出来るようになりたかった*4」など意味の分からない事を言いだす。

 開けて(オープン)……取る(ゲット)? なにを?

 

 ……拳も飛ばせるかと思った?*5

 飛ばしてどうするの。

 すでに貴女、遠当てという打撃を飛ばす技術を持っているじゃない。

 

「ともあれ、多分今の自分はほぼ不死身に近いと見ている。聖典の魔法も、以前まであった発動に際しての突っかかりのような物を感じなくなったし、効果も明らかに上がっている」

「通常の魔法よりも?」

「……いわゆる攻撃魔法はまだ試していないが……恐らく」

 

 エルフの里で見せたようなとんでもない火力を撃ち出せる彼女だが、彼女の弱点はその魔法の発動にある。

 

 彼女にとって魔法という物は極めて特殊な物らしく、イメージとしてはおおよその現象を可能に出来る程強い物を持っているのだが、その発動に時間がかかってしまうものらしい。

 

 アーティファクトという()()()()というワンクッションを置く事で数々の魔法を使いこなせるが、それはつまり魔法を使い分ける際にアーティファクトを切り替えなくてはならないという欠点を抱えているのだ。

 

「実際、風を操る魔法に関しては自分でも驚くほどスムーズに動かせている」

「……この家を建てるのに使った材木も、全部君が風で()ったのだったわね」

「ああ。乾燥も含めて」

 

 暖かくなってきたので温熱板は作動させていないが、コタツを始め数々の家具は既に新調が終わっている。

 掛布団によって少しだけ温かいそれに足を入れて、彼女と並んで飲むお茶はあの小屋同様、美味なままだ。

 

 かつてのコタツやビーズソファーは、避難させていた幼いエルフ達によって占領されてしまったために手放さざるを得なくなったのだ。

 

 セイバー曰く試作段階だから別にいいというが、そもそも彼女の頭に完成という言葉はあるのだろうか。

 キッチンもそうだが食器洗い乾燥機も、結局更に改良を重ねると言って新しく作っている。

 今の物で三代目。システムキッチンに関しては何百年も改良を重ね続けているため、もはや三桁に達する試作品があるという話だ。

 

 この間は咄嗟の武器として、彼女の空間倉庫の出入り口である金色の渦の中から飛び出して鳥型の魔物を撃ち落としていた。

 

(そういえば地下に陶芸用の竈を追加したいと言っていたな……。木製以外の食器も自作したいとか……それこそ買えばいいだろうに)

 

 ふと、思いついた。

 

「セイバー」

「あぁ」

「君が今日出会ったという少女だけど、村まで送っていったのよね?」

「ああ。出来るだけ人目に付かないように、村の外れまでだが」

「場所は覚えている?」

「もちろん。帰りに似た個体がいないかどうか、探知に引っかかった魔物を掃除していたからここいらの地形ごと把握している」

「そう。なら大丈夫ね」

 

「明日、買い出しとして私が村を訪ねてみるわ。案内をお願い」

 

 いい機会だ。ここらで少しでも散財しておいた方がいいだろう。

 

「……別に止めはしないが、本気かい? かなりの寒村だった。あまり取引できるものがあるとも思えないが」

「取引用に別けて保存している小麦や豆だってあるし、貨幣に関しては当然。金貨だけで何枚あると思っているの」

「出発前に確認したが……シュトラール金貨で四十三枚。ライヒ金貨もほぼ同数……各種銀貨や銅貨も含めた総額となると……うん」

「さすがに少しは使わないと悪いわ」

 

 そもそも私達は放浪者の身でありながら、金がありすぎるのだ。有り余っていると言っていい。

 彼女の作る家具や魔導ランプなどの品の出来が良く、彼女もその程度ならばと半日程度でたくさん作った結果大金持ちになってしまった。 

 

「ちょっとした日用品でも買えればそれでいいのよ。それに君も、普通の人間の村を見るいい機会でしょう」

「さすがに中には入らないぞ」

「えぇ、分かっているわ。ほら、こちらに来てちょうだい」

 

 カップを置いて、彼女の顔に手を添えてこちらを向かせる。

 そしてそのまま、じっと彼女の目を見つめる。

 

「出来るようになったんでしょう? 視界の共有。見る事も、見せることも」

「ああ」

 

 彼女の目に魔力が籠り、そして自分の目に彼女の魔力が流れるのが分かった。

 令呪契約を結んだ時から互いの無事が分かったり、離れていても頭の中で会話ができるようになっていた。

 

 肉体の聖別とやらを終えてからは、さらにその繋がりが強化されている。

 

 今、彼女の目には私が覗き込んでいる彼女の顔が映っているだろう。

 

「ミリアルデ」

「なに?」

「顔が近い」

「君に自分の顔を良く見せたいのよ」

 

 存外、聖別を終えてから彼女も分かりやすくなった。

 相変わらず表情筋は仕事を放棄しているが、それでも困っていることが手に取るように分かる。

 

「鏡で散々見ている」

「『私が見ている君の姿』というのは新鮮じゃない?」

 

 少し眉が八の字になって、だが彼女は反論しない。

 だが仕返しのつもりか、今度は彼女が私の頬に手を添えてくる。

 

「冷たいわ、セイバー」

「先ほどまで水仕事をしていたからね」

「そうね」

 

 食器を洗うアーティファクトを自作したというのに、なぜか時折彼女は自分の手で皿やグラス、カトラリーを洗っている。

 先ほどもそうだ。

 お茶を淹れるのに使ったポットを丁寧に洗っていた。

 おかげで彼女の手は、外から帰って来たばかりのように冷たくなっている。

 

「なら、温めましょうか。お風呂、もう沸いているのでしょう?」

「ああ、先ほど湯船に保温魔法をかけて来た所だ」

「なら入りましょう? 君も材木の調達から魔物の掃討で、少しは疲れたでしょうし」

 

 玄関口から入れば、魔法によって衣類や靴の汚れは落とされる。

 ただ身体や髪は完璧とは言えない。

 

「せっかくよ。髪を洗って角も磨いてあげるわ」

「……別に自分で洗えるが」

「君、私の洗髪をしたり乾かしたりする時は丁寧なのに自分の時は大雑把じゃない」

 

 いつもどおり柔らかい頬から手を放し、変わって見た目に似合わず武骨な手を取る。

 崖を殴り続け、硬い岩盤を殴り続け、いざという時無手でも戦えるようにと毎日削りながら鍛えている手だ。

 

「ほら、おいで」

 

 そして立ち上がって手を引くと、彼女も渋々と立ち上がる。

 

「主人の手を煩わせるのは本意ではないのだが」

「セイバー」

「ん」

「君は私の従者よ」

「その通りだ」

「ならば、従者を労わり整えるのは主人(マスター)の仕事でしょう?」

 

 私がそう言うと、彼女も手を取られた以上仕方ないと観念しているのか、私に合わせて歩き始める。

 

「私だって、たまには君の背中を流してみたいわ」

 

 観念した。

 なんとなく、そう分かった。

 

「……了解だ、マスター。今日は任せるよ」

「ええ」

 

 それでもエスコートをする立場を変えようとせず――というよりはあの小屋での生活で染みついているのだろう。

 

 セイバーが、自分に掴まれるように腕を差し出す。

 

 このまま手を握ったまま歩けばその腕を戻すだろう。

 浴室まではすぐそこで、あまり意味はない。

 

 ただ、せっかくだからその腕に自分の腕を絡めた。

 

「お願いだから、ジッとしてて頂戴ね?」

「待て、何をするつもりだ」

*1
ハリーポッター/ファンタスティック・ビースト

*2
RIM WORLD

*3
機動武闘伝Gガンダム

*4
ゲッタァァァァァァァァッ!!!!

*5
ロケットォォォォォ! パァァァァンチ!!!




主人公セイバーの外見はグラブルのヴィーラをパンツルックにしたイメージで書いております。
角の形は、頭の形に添うように前から後ろに流れる感じで。

ゆえにヘルメットも被れます。安全第一です。ヨシ!

Q:フランメルートで従者(サーヴァント)になるには?
A:なんらかの形で出会ってしまうゼーリエの全力全壊の試練を乗り越えられたら、ゼーリエと繋がった上でフランメの世話係になる可能性があった。
ただし、許容範囲ギリギリ内とはいえ対魔絶殺機動兵器に振れていたのでシュラハト君かなり戦々恐々。

フランメが森に入ってしまった時はお祈りモードに入っていた。

Q:シュラハト君本当にこれでマシだったの?
A:ミリアルデのルートならば森の中で過ごしていた時と同じく、戦うための兵装(アーティファクト)と暮らしを豊かにする家電製品(アーティファクト)や料理の研究の割合が半々なため、戦略兵器級が出てくるのはかなり後になったし、それが使われる機会も激減した。

戦力としての危険度も一番マシ。
防衛、自衛のための兵装(アーティファクト)が主であり、魔族を殲滅するためだけの魔法などは()()()開発されない。

O:フランメ(ゼーリエ)ルート?
A:人間の魔法として百年後にはディバインバスターという名の魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)が一般化されておかしい事になるし、セイバー自身の切り札である『バリオン創出ヘイロウ』や『疑似魔術回路』、『仮想次元連結システム』といった諸々のトンデモの登場や完成度が百年単位で早まる。

Q:シュラハトがもっと危惧していたのは?
A:フランメと共に生き、共に戦い、そしてだからこそより戦いの場が増えた環境の中でフランメを失った時。
その果てに彼女が完全に自我を捨て去る決意をした時こそが最悪の中の最悪だった。
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