ワイ「やろうと思えば何でもできる不思議パワーが使える種族に転生したから色んなモノ模倣してみるわ」 作:rikka
内容を変える事はありませんが、あのアニメを見てから本作に私個人が抱いた違和感をちょっとでも薄れさせるために、折を見て微調整を入れようと思いました。
読み返してくださる方の中には違和感を覚えることがあるかもしれませんが、どうかご了承を。
「こう……だったかな……いや、もっと真っ直ぐ……」
村はずれの原っぱの中で、一人の少女が剣程の大きさの棒切れを振り回している。
昨日山菜採りの途中で『赤い剣士』を見かけ、その剣士に救われた少女である。
自分があと一歩で食い殺される所を助けてくれた赤い剣士。
同じ女でありながら、今まで見て来たどんな人より強いと感じたあの剣を真似していた。
「なんだよモニカ、お前女の癖に剣術の真似事か?」
あの時見た剣の振りを、見よう見まねで真似をしている所に村の男児達がやって来る。
十歳前後だろう四,五人そこらの集団は全員手頃な棒を持っている。
あるいはモニカという少女と同じように、剣の練習――という
「うるさいわね。昨日魔物が出たって言ったら真っ先に家に逃げ帰った連中が」
「余計なお世話だよ!」
「だいたい本当に出たのかよ! 姿が見えない魔物なんて!」
一応この中では、モニカという少女が一番年上なのがあるのか、男児も存外タジタジである。
「見たって言ってるでしょ! 放……冒険者の人が気付いてくれなかったら危なかったんだから!」
稀に肉体を残す個体もいるが、魔物は倒されるとその姿が消えてしまう。
目撃者がいないと倒した個体の証明が難しく、稀に情報が錯綜する原因でもある。
「それに、去年の秋頃からここらの開拓村で行方不明になった子供や家畜が出ていたでしょう? 魔物がいたのは間違いないでしょう」
「モニカが見たって奴が本当だとしても、同じとは限らないじゃないか」
「それなら尚更魔物に気を付けなさいな。ここを通ってどこに行こうとしてたの?」
モニカが剣――もとい棒を振り回しているのは村はずれではあるが、それでも人目が届く場所ではある。
対して少年達は、恐らくもっと遠くまで行こうとしていたのだろう。
リーダー格と見られる少年が少しバツが悪そうに目線を逸らし、だがすぐに不機嫌になって不貞腐れる。
「なんで俺達は山に出ちゃいけないんだよ。お前は女なのに一人で外に出て……」
「危ない事を危ない事と分かっていないと取り返しがつかないの。最近魔王軍は大きく後退したらしいけど、それでも魔物は出るし野犬だっているわ」
魔王軍によって荒らされるのもそうだが、それ以外の脅威こそ開拓村の敵と言える。
土の質や水の有無という土地の問題から、そこに住む野生の獣や魔物。
大抵調査団が一度足を運んで、人が住めると判断した場所に少女たちの親や祖父母に当たるキャラバン隊が向かうのだが、大抵本当の問題や脅威というものは、そこに根を張ってから初めて見つかるものである。
「だから柵の外に進んで出ようとするアンタらには任せられないのよ。今一生懸命、残った大人達が柵の内側に石を敷き詰めている意味分かってる?」
「う、うるさいなぁ!おい、お前ら行くぞ! 水汲み場の広場に行こうぜ!」
馬鹿ぁぁぁぁっ! と少女にとって聞き慣れた捨て台詞を吐きながら来た道を戻っていく男の子を――いつか
(強い気配ってのは、ああじゃないのよね……)
つい先日出会った、攻撃したという事実すら悟らせずに大きな魔物の命を一瞬で刈り取った剣士。
その尋常ならざる剣技は、本当の強者の威圧に満ち溢れていた。
端的に言って、モニカはあの剣に心を奪われていた。
「あぁ、モニカちゃん。ここにいたのかい」
もう一度動きを真似して振っていると、老婆の声が響く。
「お婆様? こんな離れまで、どうして?」
血の繋がりこそないが、なにかと少女の世話を焼いてくれた老婆である。
その老婆は杖を突きながら歩いて、
「ごめんねぇ。実は今日、珍しく外からお客様が来てねぇ。良かったら案内して欲しいのよ」
その後ろに付いてきていた、美しい女性を紹介した。
やや短めにまとめられた金の髪、どこか眠たそうな――あるいは儚そうな目。
十人いれば十人が『美人』というだろうその女性は、特に特徴的な物があった。
「旅人のミリアルデよ」
耳だ。
人間やドワーフのとは違う、横に長い少々尖った耳。
「出来れば、売買が出来る場所を教えて欲しいのだけど」
この村で誰も見たことがないだろう、エルフの女性が来ていた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「ええ、それならこっちの乾物一束と……こちらの高そうな食器を全てを頂いても?」
「ああ、あんなに上質な麦を大袋で三つもくれるんなら安いもんだ。なんならアクセサリーやら他の雑貨をいくつか付けてもいい」
「なら――」
ミリアルデという静かなエルフは、当てのない放浪の旅の末にここに来たらしい。
あるいは宿でも取るのか思いきや、キャンプがあるので売買だけさせて欲しいという。
本来ならばそう簡単に余所者を入れる事はないのだが、交換用の食料も持ち合わせているとなると話は変わる。
昨日の魔物騒ぎで、山や森に入るのは慎重にならざるを得なくなった。
それはつまり、春の食料採取の手段が一つ減ったと言う事だ。
確認のために開かれた袋は真っ白な、混ざり物が一切ない小麦粉で一杯だった。
エルフの魔法なのか、空中に浮かぶ不思議な金色の渦の中から出されたのが少々不安だが、それでも食料は食料。
魔族と同様に魔法を使う存在をあまり怒らせたくないというのもあったのだろう。
「基本的な市はここだけなんですけど、今回は小麦粉が手に入るって言う事で皆色々持ち出してて……直あっちの方に臨時の市が出来ると思います」
「そう、なら待たせてもらおうかしら」
白いワンピースをベースに、高そうな薄緑色の外套、そして赤いマフラーを巻いたエルフは余り感情を見せずにボンヤリとそう答える。
きっと本人には見えていないか、あるいはどうでもいいだろうがその様子にアチコチから覗き見ている男共がため息を吐いたりもっと見ようとしている。
さっきのクソガキ共までだ。
男というのは……。
男という生き物は!!!!
「ねぇ」
「え? あ、はい!」
交換品の中にあった、奇妙な粉――なんでもお湯に溶かしただけでスープになるらしいそれを自前のカップに注いで魔法でお湯を注ぐミリアルデさんは、そのままボーっとするのかと思いきや話しかけて来た。
「さっき貴女、棒を剣みたいに振り回してたけど」
「うっ!!」
そしてその内容は、よりによって一番見られたくなかった事についてだった。
棒を振り回して遊んでいる姿など、あまり見られたくないから場所を選んだというのに。
「ひょっとして貴女、昨日セイバーが助けたっていう女の子?」
「へ?」
どこからか取り出した、金属製のマドラーでカップをかき混ぜながらミリアルデさんはこっちの様子を伺っている。
エルフでも身分の高い低いはあるのだろうか。
少なくとも村人はこんな物を持っていない。
ここの人間なら適当な匙で代用するだろう。
「あの剣の振り方、少し彼女の鍛錬のそれに似ていたわ」
「え、あ、そういえば主人の世話って……!」
ふと、昨日出会った彼女の言葉を思い出す。
そうだった、あの剣士様は一人と言ってなかった。
「彼女は私の従者よ。昨日はごめんなさい」
「いえ! 助けて頂いてそんな……」
「でも彼女、帰る時に貴女を抱き抱えたまま走って飛んで跳ねたりしたのでしょう?」
「……まぁ、それは。はい」
きっと鳥型の魔物に捕らわれ攫われる時ってああいう感じなんだろう。
抱き抱えられたと思いきや景色が凄い勢いで入れ替わって、なのになぜか風は感じず、ちょっとした岩や小川をピョンピョンと飛び越えている内に村はずれに着いていた。
「にしても、どうして彼女の剣を? 私は詳しくないけど、彼女の剣技は凄く難しいと思うのだけど」
「……その。見て分かるくらいに鋭くて、早くて……」
どうして、一度見ただけのあの剣がこんなに強く脳裏に残っているのか。
「格好良かったから……です」
無理やり言葉にすればそんなものだろう。
きっと、これまで魔王軍と戦い散っていった勇者たちの物語に憧れているあの悪ガキどもと、そう変わらないのだろう。
「そう……。そうね……」
ミリアルデさんは、手で口元を覆ってしばらく静かになる。
そして――
「買い物はこちらでやるから、貴女、ちょっと村の外に行ってみない?」
「え、でも――」
「大丈夫」
「少し彼女とお話してみて欲しいの」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
『たまに私の予想を覆してとんでもないことを始めるな、マスターは』
――一人で村の外でポツンと待っているのも退屈でしょう?
『一人の方が問題ないのだが……』
「あの、改めて昨日はありがとうございました! セイバー様!」
突然現れた昨日の少女との再会に、獣は頭の中でいきなり仕事を放り込んで来たマスターに苦言を呈していた。
『角の問題がある』
――一応フードが取れても見えづらくなる様に私が魔法をかけているし、なにより一人でポツンと村の外にいる従者なんてかえって目を惹くわ。
『……それは、確かにそうだが……』
実際、村を仕切る柵の外で簡易キャンプを開いて主人を待っている間に、自分を覗きに来た人間の目に獣は気付いていた。
とはいえ、魔族の気配がないとはいえ主人を一人で遠くまで歩かせるわけには行かないし、かといって村の中に入るのは『人を模倣する獣』であることを自覚しているセイバーの選択肢にはなかった。
主人の威を借りて人の中に入り込み、万が一があった時にマスターに嫌疑や憎悪が向かう可能性は排除したかった。
もっとも、当人にそれを言った所で『五百年もすれば消えるわよ』と流されたのだが。
「マスターから聞いている。剣を習いたいと?」
「そ、そこまでは……。セイバー様の暇つぶしにお話でもとミリアルデ様から言われたので」
「……なるほど」
実際、ミリアルデとしても本当に剣を教えるかどうかは別として、たまにはセイバーも他の人間と関わった方がいいという判断だった。
長い時間を生きる中での先達として、あるいは自分の失敗からそう考えたのだ。
「剣そのものに興味がある?」
「え、あ、はい! その……昨日もそうでしたけど、こういう場所だと魔物と戦える力が必要で……昨年の秋に、この村の自警団も半分くらい死んでしまったので」
「……移住は考えなかったのか? 確かにここいらは魔物が発生したら包囲されやすい。危険だ」
「ええ。それでも故郷ですので。それに、今の人員では移住しようにも、守らなきゃいけない人が多すぎて……」
森が深い山の麓にある小さな村。
側には水場として優秀な川が流れていて、どうやら村の内部に引き込んで水汲み場として人工の泉を作っているようだ。
「……魔物か」
ある意味で魔族以上に人類の永遠の天敵と言える存在だろう。
個体によっては長きに渡って人や獣を喰らい続け、恐ろしい成長を果たす獣。
「もし、武技を鍛えるのであれば人間を相手に練習をすべきではない。これだけは覚えていてほしい」
「剣の、ですか?」
「剣に限らず戦法全てだ。人間相手の戦い方が身に沁みつくと、魔物や魔族相手の予想外の攻撃に対応できなくなる」
セイバーは倉庫から、一本の刀を取り出す。
絶刀・鉋。*1
多種多様な性能を持つセイバーのアーティファクトの中では最も凡庸な、ただひたすらに『頑強』であることを求めた一刀。
どれだけ硬い敵を斬っても刃毀れせず、どれだけ重い一撃を受けても罅一つ入らず受け止めて見せた、ある意味で最も
それを引き抜き、近くに転がっている大岩の一つの前に立つ。
「対魔物、対魔族戦において重視される物は人――戦士に依るだろうが、私は『速さ』こそが奴らに対する武器になると考え鍛え上げた」
鞘に納めたまま、腰を落として
そして――
「し……っ!!!!」
抜き放つ。
魔力は一切ない。
力もさほど込めていない。
純粋な技術のみで刀を、目に見えない程の速さで。
先日の魔物の首より重いそれが、それと同じように音を立てて地面に転がる。
「相手に判断させない――あるいは迷わせるほどの速さは、そのまま威力にも直結する」
セイバーが振り返ると、少女は先日同様に唖然として割れた――斬られた大岩を見ている。
「……マスターからも、良かったら教えてみろと言われている。我流ではあるが、基本の基本くらいは教えてあげられると思う」
その少女に対して、セイバーは再び違う刀を宙から取り出す。
手にしている鉋と同じ、セイバーの持つ知識の中で『刀』と呼ばれる細い片刃剣だ。
ただし、その刀には刃がなかった。
握りの部分や形の雰囲気はほぼ同じなのだが、明らかに殺傷を目的とした剣ではない。
「これを握ってくれ」
「はい!」
「そして、これを何があっても離さないで欲しい」
「はい!」
「私は今から、君を攻撃する」
「はい!」
「――はい?」
その剣を少女が握ったのを確認して、セイバーは迷わず少女の首を狙う。
普通の人間ならば――いや歴戦の戦士でもまず反応出来ないその太刀筋が、止まった。
――ギィィィィ……ン……っ
寸止めではない。
偶然でもない。
少女が握った剣が、セイバーの一撃を真芯で受け止めていた。
「元々はオートディフェンサー、つまり自動防御の研究用に作った剣だ」
一方で少女は混乱している。
ただ強く握りしめていただけの剣が
「銘は『電光丸』*2という。自作のアーティファクトだ。攻撃は意識しないとできないが、防御に関してはそれなりの働きをしてみせる」
後に開発した
さらにセイバーは赤い薔薇の花弁を大量に呼び出し、周囲に漂わせて――完全に少女を取り囲む。
「剣の振り方は地道に積んでいくしかない。故に、短期間で対魔族戦における動き方をその身体に叩き込んだ方が早い」
「あの」
「全方位からのランダム攻撃に加えて隙を狙って私が斬りつける。それに対してどう動けば身を守れるのか、身を以て知ってくれ」
「あの!!!」
「よし――始めるぞ」
「ちょおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
Q:なぜオープンゲットをしようと?
A:イシンシシという戦士が取っていた『幕末オープンゲット』という戦法が記録の中にあったから……
※名刀『電光丸』
出典:ドラえもん
登場回数こそ少ないがここぞという時に劇場版で光るひみつどうぐの一つ。
原作(特に劇場版)ではのび太が文字通り無双できる程の脅威だが、セイバー(当時の獣)にはそこまでが出来ず、ひたすら相手の斬撃や魔法を察知してそれを防ぐ事のみに特化した自動防御剣となった。
元より自動防御に関しては、生存にこだわっていた獣にとってかなり力を入れていた分野であり、数々の試作や研究を費やしていた。
多くの魔法やアーティファクトに使われている演算能力はこの時に培われた模様。
そしてこれらの最終形態の一つが、自身が防御のみの試作品を、そしてほぼほぼ完成品となったためにマスターのミリアルデに渡した