ワイ「やろうと思えば何でもできる不思議パワーが使える種族に転生したから色んなモノ模倣してみるわ」   作:rikka

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003:

「……フランメ」

 

 小屋の中の片づけもおおよそ終わり、あと一週間でここでの生活も終わるという頃。

 潰すわけにもいかないと残していた、小さな花壇の水やりをしようとしていた魔族()に、私は杖を突きつけていた。

 

「ふざけているのか?」

「……ふざけていない。あぁ、この半年世話になった。世話になってしまった。悪いとは思っている。今度は本当に……だから――」

「そうではない」

 

 だというのに、コイツは焦りを見せず、表情を全く変えず、いつも通り淡々と言葉を騙る(紡ぐ)

 

「この半年で、君は何度も私を殺そうとした」

「そうだな」

「それらは全て、不意打ちや奇襲だ。確実に私を殺すために。確実に私という個体を処理するために入念に観察し、策を練って殺そうとした」

「……ああ、そうだな」

 

 事実だ。

 何度も殺そうとした。

 コイツは絶対に私を殺そうとしないイカれた魔族だった。

 何度魔法を撃っても受け止め、平然として、そのまま夕飯を何にするか聞いてくるような奴だった。

 

 何度もそうして殺し合い――いや、一方的な攻撃をコイツは受け止めて、そのままなんという事のない日常を過ごしていた。

 

 コイツの精神は、やはり人間のソレではない。

 化け物だ。化け物でしかない。

 

 だが――

 

「ゆえに疑問だ。疑問しかない」

 

 コイツの変わらない表情なき顔が、気を使っているように感じてしまうのは……私のせいなのだろうか。

 

「……なぜ、私に一々声をかけたのだ。なぜ、無言で撃たなかったのだ。今、私の背中はガラ空きだった」

「笑わせるな。お前の反応速度と魔力探知の前では生半可な奇襲は無意味だろう。あの無駄に固い魔力障壁に阻まれるに決まっている」

「そう理解しているのであれば、なおさら矛盾している」

 

 魔物が一歩踏み出す。

 コイツが開発した『地面を平らにする魔法』で下手な街道よりも歩きやすくなっている地面は、つまり互いにとって戦いやすい地形でもある。

 

「毒を盛るなり罠を仕掛けるなり、そうしてどんな手段を用いてでも敵を狩るのがフランメという魔法使いだ。だからわずかでも隙を突くために、そうして魔力を隠している」

 

 やはり、という思いが頭を占めている。

 

「……同じように魔力を隠しているお前ならば、やはり気付くか」

「手の内を自ら晒す行為など、私には愚行にしか思えない」

「……勝つために、か」

「肯定、だが補足する。私の全ては、私が私のまま生き続けるためにある」

 

 怖い。

 この獣が恐ろしくて仕方ない。

 私の魔力が抑えられたものだと気づいたことではない。

 

「私にとって勝利とは、すなわち生存する事にある。敵を倒す事ではない。殺す事ではない」

「…………」

「最後に立っている者であればそれでいい。そこに至る工程が人道――人の持つ社会としての規範に背かない限り」

「同胞の魔族に卑怯者と罵られてもか?」

「? 勝てばいい。敗者に何が言えるというのか」

 

 この生存に対しての執着がだ。

 魔族とは魔力と魔法に縛られているハズなのに、その頸木を外れ、本気で生き延びようとしている事実がだ。

 

 こちらの敵意に鈍感な反応しか見せないくせに、実際の実力を含めて生き残るためにこの獣は間違いなく全力を尽くしている。

 

 そしてそれを貫く上で、人道を重視するとさも当然のように言ってのける思考。

 

 矛盾だ。

 いや、歪だ。

 しかし、その歪さはまるで――

 

 

「フランメ、君の行動は当然のモノばかりだ。こちらが反撃に移らない間に分析し、駆除のために用意を積み重ねるのは当然の事」

 

 

 まるで人間(・・)そのものだ。

 人の感情、感性に訴えるために全てを紡いでいるのだとしたら、これ以上はないだろう。

 

 

「なのに……なぜここでためらう、フランメ。君が私を排するべきだと判断をしたのならば、なぜこんな非合理的な行動に出る」

 

 

 だが――

 

 

「君がそうするべきだと信じたのであれば……この身を討ち滅ぼさねばならぬと確信したのであれば」

 

 

「撃て、フランメ。君はそうするべきなのだ」

 

 

 コイツはそれを越えている。

 背中を無防備に向けたまま、平然とそんな事を言って見せる。

 

 横顔しか見えないが、それでも相変わらずの無表情で。

 花を育て、なんでもない民間魔法を唱え、人と変わらない料理をして席で私を待っている時と全く変わらない表情で……。

 

「……私は、魔族に全てを奪われた」

 

 ポツリと、これまで零したことがなかった内心を口にする。

 

「隣人を、友達を、家族を……故郷を」

 

 なにもかもを失った。

 人の言葉で同情を引き、懐柔し、そうしてから食い殺す。

 化け物達に全て喰われた。

 喰われて、弄ばれ、燃やされた。

 

「憎くてしょうがないんだ。……奴らを皆殺しにしたくて仕方ない……っ!」

 

 魔族(彼女)は何も言わず、小さく頷く。

 

「お前もそうだ! 魔族だ! 下手に賢しい分、捕捉できている今のうちに倒さなくてはいけない!!」

 

 何か言い訳するでもなく、近づくのでもなく、動かずそのまま聞いている。

 

「だから……お前を観察した。隙らしい隙を見せれば突いて……ここで殺さないといけなくて……だが」

 

 何か言って欲しかった。

 

 自分は他の魔族と違うとか、自分は人間に危害を加えないとか。

 

 信じて欲しいとか。

 

 いかにも奴ら(・・)が言いそうな事を言ってくれれば、納得できた。

 

「……共に過ごせば過ごすほど、お前が異質だという事を理解せざるを得なかった」

 

 だが、その手の事をコイツが口にしたのは、出会った時のあの問答だけだった。

 こちらを襲う素振りを期待して隙を見せれば、却って『不用心だ』と叱られる始末だった。

 

「お前は、本当に人に危害を加えない存在なのだろうと……薄々感じている自分がいる」

 

 作る食事はどれも美味かった。

 単なる『代用食』ではこうはいかない。

 

 いや、出会った時に――差し出された茶を口にした時点で薄々分かっていた。

 

 コイツは極めて人に近しい味覚を持ち、『料理』という文化を楽しめる存在だ。

 

「お前ならば……別にいいかもしれない。そう考えている自分に気が付いた時……心から恐怖したんだ」

 

 コイツはおそらく、人里に出たとしてもやっていける。

 おそらく、人類に共存しうる史上初めてにして唯一の魔族だろう。

 

 だからこそ――

 

「お前は……お前という存在は人間に……人類にはあまりに早すぎる……っ」

 

 杖を向けなければならなかった。

 

「お前という魔族(おんな)が現れるには、二千年早かったんだ!!!」

 

 

石を弾丸にする魔法(ドラガーテ)

 

 

 半年前に放った、石の弾丸。

 あの時の奇襲に使った少数ではなく、辺りにいくらでも転がっている全てを用いた全力での攻撃魔法。

 

「……エーティーフィールド*1、広域展開」 

 

 文字通り嵐のように降り注ぐ弾丸を、またしてもあの見慣れない魔力障壁が完全に防ぐ。

 パキィィィン、という妙に甲高い音から、あるいはより大質量の攻撃なら通るかと試してみたが、それが通る気配はない。

 

 

「《破滅の雷を放つ魔法(ジュドラジルム)》!!」

 

 

 ならばと今度は攻め手を変える。

 石という物理的な攻撃性が高い魔法から、魔力そのもので構成された破滅の雷へ。

 

 

「……本当に、君らしくない戦法だ。フランメ」

 

 

 だが、やはりコイツは動じない。

 奴は目の前に張られているオレンジの魔力障壁に手を伸ばすと、まるでその端を掴むような仕草を見せる。

 

「まさか――その障壁はそのまま武器に?!」

「セカンド*2、あるいはアルファ仕様*3だ。上手く避けてほしい」

 

 触れた敵を文字通り破滅へと導く雷は、その魔力障壁を破壊することも、貫く事も出来なかった。

 それどころか、この魔族はかすかに帯電しているその障壁を、まるで板でも投げつけるような気軽さでこちらに向けて投げつけてきた。

 

 攻撃という程の物ではない。せいぜいが牽制だ。

 だが、魔力で構成された壁が帯電したまま迫れば避けざるを得ない。

 果たして、それがどれだけの質量をもっているのか、あるいは呪いが込められているのか解析出来ていない。

 

(思えば、初日の奇襲以外でコイツを見る事はなかったな!!)

 

 恐ろしく展開が早い、だが頑強な魔力障壁。

 実に魔族のクソ魔法らしいトンデモ魔法だ。

 

 とっさにその範囲から逃れる。

 とはいえ、恐らく当てるつもりがなかったのだろう。

 地面に向けて叩きつけられたそれは、視界が一瞬塞がれる程の土煙を上げると同時にガラス細工のように割れて消える。

 

「……っ、もう一発!」

 

 つまり、奴は障壁を一枚使い捨てた。

 即座にまた展開できるのだろうが、ようやく垣間見えた隙であるのは間違いない。

 

「《石を弾丸にする魔法(ドラガーテ)》!」

 

 もっとも発動が早く、もっとも弾速が速い魔法を放つ。

 

(着弾音が……しない!)

 

 あの甲高い音が響かない。

 それはつまり、魔力障壁が展開されていないという事だ。

 

 砂煙が晴れる。

 

 一瞬、期待したのかもしれない。

 一瞬、恐怖したのかもしれない。

 

 奴の身体に穴が空き、奴の魔法で(なら)された大地が血に濡れている事を。

 

 だが――

 

「……盾……いや……剣?」

「そのどちらでもある」

 

 奴は傷一つなく立っていた。

 その隣に、奴がよく使う空間倉庫の魔法を使った証である金色の渦を波立たせて。

 

 真っ赤な刀身を持つ、剣と呼ぶにはやけに長く、分厚く、だが鋭さが見て取れる紅い大剣。

 

 刃に沿うように、金属の細い筒を円の形に並べて固めた不可思議な物が取り付けられており、さらに握りの辺りには、丸いラウンドシールドが貼り付けられている。

 

「――神機*4、起動」

 

 いや、奴が握りを変えた瞬間、『ガチャリ』と音を立ててその盾が真ん中から真っ二つに割れて、剣の左右を守るように収まる。

 

「……随分とガチャガチャした剣だな。お前の切り札か?」

「否。しかし現状に沿う装備はコレが一番だった。まだ未完成品だけど、仕方ない」

 

 今まで、こいつが魔法を使うのはそのほとんどが民間魔法だった。

 近くを通りかかった魔物の討伐の際も、こいつは魔法を使わず剣術のみで獲物を狩っていた。

 どこかで拾ったと言っていた、ありふれた剣や弓。

 私が知る、コイツの攻撃方法はそれだけだ。

 攻撃に使う魔法を見たことがない。

 

「……おい、クソ魔族」

「なに」

「お前の魔法はなんだ??」

「戦いの最中に手の内を晒す馬鹿がいると、君は思うのか?」

「……それも……そうだな。……すま――」

「私の得意とする魔法は、物に魔法を込める魔法だ」

「答えるのか!!?」

 

 手にした赤い大剣の正体を知るための、牽制も兼ねた問いかけにコイツは平然と答えて見せる。

 

 相変わらず読めない。掴めない。

 

 ここで杖を下ろして、引き分けだの降参だのとこちらが言えばそのまま平然とおやつを取り出してティータイムに移ってしまいそうな……。

 

「答える事で君が得るアドバンテージはない。これはそういう武装として作製した物」

 

(だろうな! 魔道具の作成に特化した魔族(・・)の魔法など、どのような代物が出てくるのか皆目見当がつかん!)

 

 先に放った石の弾丸(ドラガーテ)でボコボコになった平地の上で、魔族がついに剣を構えた。

 

「構えろ、フランメ。……今度はこちらだ」

「っ! 早――」

 

 とっさに防御魔法を展開する。

 十全とはいえないが、それでもある程度の攻撃魔法なら持ちこたえられる障壁。

 

「稼働テストにちょうどいい」

 

 だが、それがあっさりと斬り裂かれる。

 障壁が破られる時特有の感覚はない。

 割れるような音もない。

 

 ただ静かに、一瞬で切り裂かれた。

 

 ……いや。

 

「障壁を斬った……いや、削り取ったのか!? 魔力そのものを!!」

 

 横薙ぎの一撃を加える為に、魔族が剣を構える。

 今度は純粋な魔力障壁ではなく、《大地を操る魔法(バルグランデ)》を利用した物理的な障壁を築く。

 今度は裂かれる事はなく大地の壁が刃を受け止めるが、実体がそこに残っているからこそ分かる事もある。

 

「その剣にお前が込めた魔法は……『魔力を吸う魔法』だな!?」

 

 込めた魔力が、神機と呼ばれた赤い剣によって吸われている。

 

「正解」

 

 返す剣で今度こそ大地の盾が切り裂かれ、崩れ落ちる。

 即座に攻撃魔法で迎撃。

 単純な魔力の弾を撃ち込むが、先ほどの盾を展開するまでもなく斬り払われる。

 

(図体からしてあの剣は重くて振りにくいかと思ったが……器用に払いやがる!)

 

 これまで見ていたアイツの剣術は、全て軽い小剣を使った物だった。

 だからこその器用な剣さばきだと思っていたが、その考えは切り捨てるべきだ。

 

(奴はやはり、戦士としてかなり高いレベルで完成していると見るべきだ。なら――)

 

 間合いに踏み込ませてはならない。

 

 空間倉庫の魔法を知っていたのだ。

 ヤツが隠し玉の武器を隠し持っている事も薄々気付いていた。

 

 丸腰だとしても、最初からそうするべきだったのだが――

 

 

―― 君が私を排するべきだと判断をしたのならば、なぜこんな非合理的な行動に出る。

 

 

(あぁ、お前の言う通りだ。お前の――)

 

 杖を向けたのは、半ば反射的だった。

 片付きつつある小屋を見て。

 空っぽに近づきつつある小屋を見て。

 

 自分が郷愁(・・)を感じているのだと、自分のその感情の答えに辿り着いた途端に思わずそうしていた。

 

 何の用意もなく。

 何の仕掛けもなく。

 

 何の覚悟もなく、だ。

 

「受けろ、魔族!」

 

 魔力を目標に収束させ、爆発させる。

 これまで多くの魔族を屠って来た、一番得意な攻撃魔法。

 

 ただし、それを直接ヤツに向けた所で収束中にあの『剣』で斬り払われるのは目に見えていた。

 狙うのは――中間の地面。

 

「――っ」

 

 向こうも、これが距離を取るための牽制である事には気付くだろう。

 この半年の間、自分の前衛を務めていたのだ。その勘働きの良さは分かっている。

 

 だが、斬り払うには踏み込まねばならず、踏み込むには少々遅い。

 そう判断した奴は、先ほどの二つ折りの盾を機動させて防御の態勢に入った。

 

 その姿が、突然膨れ上がった白い閃光によって見えなくなる。

 

(相手の魔力量の限界は見えない。今はとにかく、動きを封じるしか――)

 

 ドラガーテを含めた、攻撃魔法による面制圧攻撃。

 それに移行しようとした時、再びあの『ガシャンッ』という音がする。

 

 盾を解除したか。

 

 そう考えたその瞬間、更にもう一度似たような音が鳴る。

 あの見るからに複雑な機構が動いた音だ。

 

(……剣と盾を複合した武器。……ならば、剣の下に添えられていた筒を束ねたものは……)

 

 咄嗟に地面に手を当て、魔法を発動させたのはこれまでの経験が築いた勘のおかげだった。

 物理的に敵の攻撃を防ぐ、大地という障壁を再び迫り上げる。

 

 正解、と。

 

 奴が呟く声が聞こえた気がしたのと同時に。

 凄まじい轟音と共に大地の障壁が削られ始めた。

 

――ヴァロロロロロロロロロロロロっ!!!!!

 

 まるで、滝口のような終わりのない破砕音が、全く途切れず続いている。

 大地の盾を削っているのは弾丸。

 恐ろしく高密度の魔力で精製されたソレが豪雨のように襲い掛かって来る。

 

「なんでもありかお前の武器は!!」

「現状に沿う装備だと言った」

 

 削られ続ける大地の壁を補強しながら、少しだけ頭を出して覗き見る。

 やはり、あの束ねられた筒だ。

 

 あの筒束が凄まじい勢いで回転して、その時一番上に来た筒から魔力弾が撃ち出されている。

 

(削り取られた魔力があの弾丸になっているのか。クソッ、これで未完成品だと!? アレ一品で城が一つ二つ買えそうな代物じゃねぇか!!)

 

 思わず悪態を吐くが、それで突破口が見える訳ではない。

 

(弾丸を精製する魔力は削り取ったものだけか? ……いや、当然自分の魔力を流し込んでも使用できるだろう。弾丸が尽きるのを待つのは悪手、か)

 

 ならば、壁を補強しながら撃ち返すしかない。

 アレの弱点は、物理障壁に対して有効性が低い事だ。

 魔力弾丸も極めて強力だが物理性が高く、それゆえに防御が比較的容易になっている。

 

(…………待て)

 

 そうだ、明らかにこれは弱点だ。

 

 無論、脅威ではある事には変わりない。

 個人では対応がまず不可能なレベルの速射による飽和攻撃。

 これだけで大抵のクソ魔族は瞬く間に粉微塵となるだろう。

 

 だが、コイツはいつだって慎重だった。

 果たして、奴が弱点をそのままにしているだろうか?

 

「――しまっ」

 

 反射的に、補強し続けた壁から更に距離を取る。

 それは突然砲撃の音が途切れたからでも、更にあの機動音がしたからでもない。

 それよりもわずかに早く、距離を取って攻撃魔法による牽制へと移行しようとしたその時に、

 

 異音が響いた。

 

 クチャア、という。

 

 まるでデカい口を持った魔物が、獲物を喰らうために口を開ける時のような音が。

 ヤツが大地を蹴り、空を斬る音と共に響いた。

 

 来る。

 

 自分が作り出した壁を起点に、魔力を収束して爆発させる。

 

 今度は牽制ではない。

 確実にそこに来ると判断した上で、タイミングを計り確実に当てるために。

 

 だが――

 

 そのための魔力構成は、発動させる直前に突如として喰われた(・・・・)

 突然現れた、漆黒の龍の(アギト)に。

 

「なっ……?!」

 

 召喚魔法の類かと一瞬思うが、それにしては大きな魔力のうねりは全く見えなかった。

 よくよく目を凝らすと、その竜は首から上しか存在していない。

 

 そしてその首はヤツが持つ、赤い大剣(・・・・)から出ていた。

 

 その赤い刃は引っ込んで短くなり、(つば)に当たる部分からその刃ごと飲み込むようにその口を開いて飛び出し、

 

 

――魔力ごと自分の身体に牙を突き立てた。

 

 

「が……っ……!?!?」

 

 咄嗟に張った防御魔法すらすり抜けた。

 魔力で構成しただけの物では相性が悪かったのだろう。

 しかし――

 

「痛みが……全くない?? ぅあ゛……っ!!」 

 

 ダメージは全くない。

 だが奴が剣を振るい、まるで食いちぎるように竜の口を閉じたまま振り抜き、元の剣の形へと戻った時に、その効果がはっきり分かった。

 

「魔力が一気に……持っていかれたのかっ!!」

「勧誘がしつこい魔族に対抗するために作っていた兵装だ。当然、魔法使いにも効果的」

 

 先ほどまでの削り取ったと言える量とは全く違う。

 全体で言えば微細な量とはいえ、恐らく5%程は一気に持っていかれた。

 

 そして、

 

「神機、解放」

 

 反対にヤツの身体には、奪い取ったのだろう魔力が充填し、輝き始める。

 牽制に攻撃魔法を撃ちこむが、奴はそれを容易く斬り払う。

 

(初めて会った時の奇襲でもそうだが、魔力探知が余りに上手すぎる!)

 

 どれだけ早く攻撃魔法を撃ちこんでも、その軌跡を完璧に読まれる。

 

 それに加えて身体能力が劇的に強化されているのだろう。

 度々見かけていた、地面を蹴り進むような独特の距離の詰め方で、一気に接近する。

 

 奴の顔がものすごく近い。

 鼻と鼻が当たりそうな程に。

 防御行動に移るにはとても間に合わない。

 

 奴は右手だけで大剣を軽々と構え、左手には魔力を込めている。

 その左手が伸ばされ、私の肩に乗せて強めに押し込み、

 

 

――すまない。小屋の処理だけ、お願いする。

 

 

 身体強化された速度で通り過ぎながら私の耳元でそう囁き、魔法を発動させた。

 

 それは攻撃魔法でも、私の動きを阻害する物でもなかった。

 

 ただ、突然――

 

 私達が戦ったその場に。

 

 この半年間、私達が暮らしていたこの場所に。

 

 突然、一面の花畑(私の教えた魔法)が広がっていた。

 

 

「―――っ、おい!! 待て!!」

 

 

 一瞬、その光景に目を取られて反応が遅れた。

 咄嗟に振り返る。

 先日までは家畜の小屋があった場所のその先へ。

 

 だが、もはやあの金の髪の少女(同居人)の姿はどこにもなかった。

 

 

「お前は……っ」

 

 

 咄嗟に呼びかけようとした。呼び止めようとした。

 殺そうとした張本人でありながら、咄嗟に。

 だけど――

 

 呼ぶべき名前を知らない。

 

 呼ぶべき名前を聞いていない。

 

 当たり前だ。

 

 いつか、倒さなければならないとして。

 いつか、離別するべき存在であるがゆえの、せめてもの線引きとして。

 

 一度も、その名を知る機会を作らなかったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 息を落ち着けて、しばらく呆然と花畑を眺めてから。

 改めて小屋のドアを開けて、中に入る。

 

 随分と空っぽになったが、いつもと変わっていない。

 本棚は一月前からほとんど空だ。奴の倉庫の中に聖典も含めて大体仕舞った。

 

 残っているのはいつもの椅子、いつものテーブル、いつものテーブルクロスに昨日焼いたパンが数切れ入ったままのバスケット。

 そして――

 

 

「……アイツめ……」

 

 

「洗い物が残ったままじゃないか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………おーい……」

*1
EVA/ATフィールド

*2
弐号機

*3
スーパーロボット大戦

*4
GOD EATER(アリサ仕様)




神機

永遠の下乳枠ことアリサのセットで構築。

魔族や一部の魔物のような、膨大な魔力を用いて攻撃してくる敵を想定して組まれた装備。
原点でのオラクル要素を全て魔力に置き換え、敵の魔力を奪いながら戦える武装として調整中だった。

斬って魔力を削り、距離を取られたらバカスカ弾丸を撃ち込むのが基本スタイル。

基本的な攻撃要素は完成しているが、一番力を入れたかったバレットシステムは未完成のまま。
また味方へのバフであるバーストリンクも実装しようとしていたが、そもそもボッチのために後回しになり続けている。回復バレットも同様。

現在調整中だったのは、捕食機能を担当するパーツに『解析』系と『精製』系の魔法を仕込み、敵の特性に対抗できるブレットを作り出す事。
が、余りに難易度がマストダイだったために停滞中だった。
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