ワイ「やろうと思えば何でもできる不思議パワーが使える種族に転生したから色んなモノ模倣してみるわ」   作:rikka

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『初めまして、あの子のお弟子さん。私の名前はソリテール。あの子の知り合いよ』

「そのお師様から魔族は敵だと言われているし、私もそれをこの目で見て実感している」

『あら。でも、それなら魔族のあの子の言葉を信じるのは凄い矛盾じゃないかしら?』

「お師様を貴様のような奴と一緒にするな! 失せろ!」

 

 勝手に頭のスイッチが戦闘に切り替わった。

 

 これまでお師様との旅でそういう経験は幾度もあったが、それは決まって『死』が頭をよぎる程の難敵を前にした時だった。

 

『……初めて会った時から彼女には驚かされたのよ。こんなに『同族と思えない魔族』がいるなんて、初めての経験だったから』

「私は『失せろ』と言ってあげたのよ。お師様のよしみで。口を開けとは一度も言ってないわ」

『つれないわね。私はあの子と同じ魔族よ?』

「死臭を漂わせて戯言を……っ!」

 

 扉の向こうにいる魔族は、かなり強い。

 お師様の相互干渉結界を抜いた時点で尋常な相手ではない。

 お爺ちゃんを背中に庇って、小烏丸を構える。

 腰に忍ばせた脇差と合わせて、いつでも対応できるように。

 

『いいえ、同じよ。だからこそ人間といる事で却って警戒される。あのエルフを見たでしょう?』

 

 ……嫌な所を突く。

 

「見ていたのか」

『おかげで結界の解析方法が分かったの。あの子の作った隠れ里の方で勉強しようとしたら、あの子の()()()が襲ってくるのだもの……オルトリンデ*1、だったかしら』

 

 村まで。……本当にお師様を調べてるのか。

 

「のう、嬢ちゃん。隠れ里ってなんじゃい?」

「お師様が魔物が湧きやすい地域に作っている、アーティファクトを用いたほぼ無人の自動農村です。お師様の膨大な蓄えの種の一つですね」

 

 正確には労働・管理役としてアイルー*2を、防衛役としてワルキューレ*3を配備している村だ。

 

 結界に干渉され次第出動し、それが人間ならば交渉を。魔物や魔族ならば殲滅するために近隣のワルキューレ全てが出撃する。

 

(あの里に手を出して、なお生き残っている時点で普通じゃない)

 

『凄い結界だったわ。どれか一枚を解析しようとすると、残る六枚が干渉して結界の魔力構成をその場で書き換える。こちらの魔力と解析パターンを逆に解析して、より強固かつ読み取りにくい物に。本当に……たった三百年で、驚くほどにあの子は成長している』

「……どうやって破った」

 

 魔法に詳しくはないが、あの結界は尋常な物ではない代物のハズだ。

 それを破ったのは、私の知る限りコイツ以外ではただ一人。

 

『うふふ、言ったでしょう? あのエルフが結界を破った時に少し解析出来たの』

 

 あんっっっのクソエルフ! ホントにろくでもない!!

 

『結界の感知範囲ギリギリから、結界の()とも言うべき箇所を選定して一点集中の一撃。アレを私なりに模倣させてもらったわ』

「…………」

 

 どうしよう。狙いが今一分からないが、どうも目的は私の様だ。

 

(というより、私とお師様か)

 

 手元に小烏丸はあるし、いつもの装備も一通り身に着けている。

 

 私が逃げたら追って来るだろうか。

 ……そもそも、お爺ちゃんがいる以上戦うしかない。

 

(お師様は息子さんの襲われた近辺の調査を終えて、こちらに戻ってくると数日前の手紙に書いてあった。こちらに近づいているのは間違いないだろうけど、結界の異常に気付ける距離かどうかは怪しい……)

 

 それに、外はすでに暗くなっている。

 さすがにあの屋敷は出していないだろうけど、キャンプを張ってミリアルデ様とお酒を飲みながら夜釣りなり演奏なりを楽しんでいる頃合いだろう。

 

(スマホとやらもまだ完成してない。それでも呼び出す方法は……あるにはある)

 

 腰のベルトにぶら下がっている、紅白の球。

 お師様が作ったモンスターボールというこの球は家畜の運搬が主な使われ方ではあるが、同時にお師様が『使える』と判断した魔物を捕獲し、ある程度ならば命令できるようにするアーティファクトだ。

 

 今腰に下がっているのは隕鉄鳥(シュティレ)

 ドラゴン並みに頑強な上音速で飛行する、離れて行動する時の手紙の運搬役にして強力な護衛獣。

 

 これを解き放てば瞬時にお師様の元に飛び立ち、手紙がなくとも異常事態に気付いてくれるだろう。

 そして一度変事に気付けば、お師様は文字通り瞬時に駆け付けられる。

 

(問題は……その隙がない)

 

 魔族との戦いを念頭に置いた対魔法戦闘は散々叩き込まれている。

 魔法使いではない自分でも、朧気に魔力の流れは察する事が出来る。

 

『ねぇ、そろそろ顔を見せてくれないかしら。あの子のお友達ならば、仲良く出来ると思うの』

「黙れ」

 

 広域に、魔力がすでに拡散されている。

 おそらくこちらが隙を見せれば、その瞬間に家諸共攻撃するつもりだろう。

 

(魔力を展開し、そのまま固定しているけど濃度を感じない。なら、呪いの可能性はまだあるけど単純な攻撃魔法では恐らくない。多分、物質変換型……)

 

 小烏丸を強く握りしめる。

 刃を交える事は避けられない。

 

「なぜ、私やお師様に関わろうとする」

『……責任を感じているからよ』

 

 だから、これはもはや時間稼ぎだ。

 会話そのものに意味はない。

 

『初めて目にした時から、あの子は誰よりも人間らしかった。観察している間だって、出会った人間から逃げられる事はあっても食べようとも、殺そうともしなかった。ただ、それが当然だというように一人であの森で暮らしていた』

 

『直接会ってみたら、あの子は観察していた以上に感情が豊かだった。本当に、人間そっくり……いいえ、人間そのものだった。だから……』

 

 

 

 

 

 

『連れ帰って、色々()()()の』

 

 ない、ハズだった。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 扉の向こうで、殺気が驚く程濃くなった。

 まるでエルフのように身体の魔力を練っている変わった人間の剣士が、明確に敵意を持った。

 

「ええ、分かっている。私も悪かったのよ。もっと大事に扱うべきだった」

 

 弟子だという人間は、あの『名無し』に()()()魔族と良好な関係を築けていたようだ。

 

 それを知れただけでも来た甲斐があった。

 

 手足を落として動けなくして、あの子に魔王軍に入ってもらうお願いをする時の材料にするつもりだったけど、ついでに自分の研究にも付き合ってもらおう。

 

「本当に後悔しているのよ? 限りなく人間と中身がほぼ同型と気付いて、ちょっと()()()()()もらってから調子が悪くなっているのは気付いていたの……」

 

 かつて、あの子は人間を知るのにとても都合の良い検体だった。

 

 あぁ、本当にもったいない事をした。

 

 知りたい事は山ほどあった。

 

 魔力で肉体を構成している魔族という種族が、どうして内側を完璧に人間のそれを模倣していたのか。

 

 人間との接触なんてまずないほぼ無人の地域の、それも深い森の中にいてなぜああも人間とそん色ない表情を出せるのか。

 

 模倣ではないその感情はどこから発せられるのか。

 

 手足のように扱えて当然の魔法を発動させるのがなぜ苦手なのか。

 

 なぜ魔法だけではなく道具にも拘るのか。

 

「もう少し丁寧に扱っていれば、あと百年……五十年は長持ちしたでしょうに……グラオザームにも怒られちゃったわ」

 

 臓器が完全に人間のソレを完全に再現していると知ってから、歓喜の余り調子に乗ってしまったのが悪かった。

 

 壊れたりしないように丁寧に、丁寧に扱っているつもりだった。

 

 だが、それでも徐々に壊れ始めて、少しでも記録を残すために無理やり覚醒を維持してずっとお話をさせていた時から、とうとう意味のないデタラメな声しか出なくなった。

 

 それと同時に何も口にしなくなったから、近くで()()を回収して口に押し込んだあたりで、とうとう一番研究したかった感情を失ってしまった。

 

 こうなっては得る物がないと、せめて頭の中を知ろうとグラオザームを呼んでみたが、思考の一角に情報の金庫のようなものがあると判明しただけで、それ以外は全て消えていた。

 

 以前のように刺したり剥いだり、焼いてみたりしたがとうとう何の情報も得られなくなってしまった。

 

「どうして実験中、魔族である事よりも人間じゃない事を強調したのか。人の肉を頑なに口にしようとしなかったのか。恐らく魔法で保護していたのだろう情報はなんだったのか。聞きたい事は山ほどあったのに……」

 

 本当に惜しい事をした。

 

 研究が余りに進んでいたので、他者を頼るというもっと効率的な手段を思いつく事に随分と遅れてしまった。

 

 もう少し早くグラオザームを頼っていれば、人間という存在をより深く理解出来ていたかもしれない。

 

 例の守られた謎の記録を解析できて、彼女という存在をより深く知れたかもしれない。

 

「だから、グラオザームが元の森に放棄したハズの彼女がまた動いているって聞いた時は本当に嬉しかったの。でも……」

 

 そして遠くから目にした彼女は、大きく変わり果てていた。

 

 あれだけコロコロと変わっていた表情が、ほとんど変わらない。

 廃棄した頃に極めて近い。

 

 もっとも、廃棄する頃には筋肉の研究のために表皮を剥いでいたので表情は分からなかったが、動かないという意味では変わらない。

 

 なによりも同時に、一目で分かった。

 

 あの子は以前とは別だ。

 人間そのものだった彼女とは違う。

 

「彼女はもう人間そのものの魔族ではなく、人を模倣する魔族らしい魔族になっていた。感情らしいものを失った、よく見る幼い同胞達にそっくりな目をして……」

 

 残念ではあった。

 検体が復活したのであれば試したかった実験を再開できるし、今度は最初からグラオザームを呼んで頭の中を隅々まで調べたかった。

 

「だからこそ、驚いたの」

 

 だけど、彼女は――

 えぇ、本当に驚いた。

 

「魔族にかなり寄ったあの子が、それでも人間の男の子を普通に遊び相手としているなんて」

 

 ドアの向こうから、息を呑む音が微かに聞こえた。

 弟子だというならば、あるいは聞いていたのだろうか。

 

「すぐに食べるか、近くの村を襲う布石かと思ったのになにもしないまま……。もうあの子は魔族だったのに、意識が以前に引っ張られていたのかしら?」

 

 そういう意味で、今の彼女も凄く検体として魅力的だ。

 中身が完全に謎だった存在ではなく、人間の文化や常識に引っ張られている魔族。

 

「だから戻して上げようと、男の子の首を刎ねてお肉をあげたのだけど……彼女をとても怒らせちゃ――」

 

 それまで張りつめていた物が、轟音と共に爆発する。

 

 ご丁寧に物理耐性を魔法で上げていたドアが、粉微塵に。

 

この――

 

 

 

腐れ外道がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「ええ、そう! あの子もあの時、貴女のように怒ったのよ!! やっぱり人間ならそうするのね?」

 

 お師様から剣を教えてもらってから、目の前が真っ赤に染まったと錯覚するほどに怒りを覚えたのは、いつぞやの兵隊崩れだけだった。

 

お前は! お前だけはぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

 

 きっと、お師様はこんな剣の振るい方をしても喜ばないだろう。

 むしろ、悲しむ。悲しませてしまう。

 お師様が剣を教え続けてくれるのは、敵を斬るためではなく自分を守るためなのだから。

 

 それでも、

 

「お爺ちゃん、家ぶっ壊してごめんなさい!!」

「構わん! 何も気にせずソイツをぶった斬れ!!!」

 

 初めて、死んでもいいと思った。

 

 致命傷を負う事になっても。

 

 刺し違える事になっても――それでも。

 

 この魔族だけは――っ

 

「斬る!!」

 

 女――ソリテールという蟲の魔法だろう。

 その周囲に大量の剣が形成され、射出される。

 

(その手の攻撃なんて――)

 

 刀を鞘に納め、腰を低くして構える。

 

 お師様の薔薇に比べれば単調だ。

 

 鯉口を切り、一度納めた刃を抜き放つ。

 

 ()()()()()()()()()

 

『烈風』!!!*4

 

 斬撃に沿う巨大な風の刃が、蟲の剣を全て弾き飛ばす。

 お師様が作り上げた『刀』という剣。

 

 切れ味ならお師様の『鉋』を超えるそれに、お師様が魔法をかけたアーティファクトの真価を使う、巨大な()()()

 

「なるほど、()()()()()。そう……やっぱり」

 

 だけど、肝心の蟲には届いていない。

 最初から予想していたのだろう。魔法の障壁を張って一撃を防いだ。

 

()()()の作る武器は、あの子以外でも扱えるのね?」

小烏丸(この剣)は私とお師様以外使えない!」

 

 これを作った時、お師様は『チューシャキ』という物で抜いた私の血液を使って、この刀に魔法をかけている。

 

 刀としてならばともかく、アーティファクトとしてこれを使えるのは大本のお師様と私だけとなるように。

 ミリアルデ様のいくつかのアーティファクトも同様だ。

 

 より大量の剣を作成し、撃ち出して来る大量の剣の中で、直撃する物を斬り弾きながらジリジリと距離を詰める。

 

「つまり、そうなるように細かい所まで作り込める。……えぇ、やっぱりあの子は連れ帰らないと」

「連れ帰る!?」

「どれだけ貴女と馴染めても、あの子は魔族なのよ? 同じ種族同士で仲良くなれた方が、あの子も幸せでしょう?」

ほざくなぁぁぁぁぁぁぁっ!!!

 

 この、蟲は!!

 よりにもよって、お前が言うのか!!

 

「お師様の日々をぶち壊したのは!!」

 

 

「他ならぬお前だろうが!!! 蟲ぃぃぃっ!!!」

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

――どうしてここに?

――わかんない。お母さんに手を引かれて、気が付いたらここにいた。

 

 今より三百年前、とある『獣』が隠れ住む森に一人の少年が迷い込んだ

 

――人間は、大きい個体が小さい個体を守る習性があるハズだ。そのうち来るだろう。

――……うん。でも……。

――来るまで私の小屋にいると良い。幸い、食料には困っていない。

 

『獣』は自分が人を喰らう『獣』であることを知っていた。

 更に遡る事二百年前、自分という個体が起動してすぐの頃に、姿を見た人間がそう叫んだからだ。

 

――お姉ちゃん、なんで角が生えてるの?

――そういう個体だからだ。どうしようもない。

――……病気?

――いや。……そうだな……人間風に言えば、個性か? ……少し違うな。すまない、他に適切な単語が出てこない。

 

 ただ、目の前の非力で柔らかい肉を見ても食欲は湧かなかった。

 それは、いつも口にしている野草や肉に対してもそうだった。

 それが補給である事を知っていたが、それ以上の意味を見出だせなかった。

 

――()()! お姉ちゃんコレ美味しい!

――……なぜかよく氷をぶちまける料理人の記録を元にずっと模倣だけはしていたが……そうか、美味しいのか。

――? お姉ちゃんはコレ美味しくないの?

――……美味しいとも、不味いとも思わない。……多分、理解できていないのだろう。

 

『獣』は人間の料理のレシピだけは無限に持っていた。

 なぜか頭の中に残っている、多種多様にして膨大な『記録』の中に、そういった物も残っていたからだ。

 

 迎えや捜索が来る気配が全くないまま、少年を発見した冬を越えて、春が始まり、それでも迎えは来なかった。

 

――お姉ちゃん、これは?

――君の知る物語を元にした絵本だ。私が描いた。君は文字を知らないのだろう? まずはこれから始めよう。

 

 少年は捨てられていた。

 まだその地域に人間は多くなく、最も近い開拓村も失敗して引き返す中、食い扶持を減らすために最も足手まといになりそうな存在を捨てるしかなかった。

 

 魔物が追いかけてくる事を考えると、足が遅くなる要因を真っ先に排除しなくてはならないという意見が多数を占めたのだ。

 

 その事実に『獣』が気付くことはなかった。

 記録の中では、親は子を簡単には手放さない物だったから。

 だからこそ、いつか迎えが来た時のためにと少年に教育を施すことにした。

 

――じゃあ、今もお姉ちゃんは味が分からないの?

――あぁ。なるだけ被らないように献立を組んでいるが、栄養はともかく味は大丈夫だろうか?

――……言われてみれば時々似たのが続く時があるかも。

――…………すまない。

 

 そして『獣』と少年の生活が始まった。

 

 春は畑を耕し、

 

――お姉ちゃん! この畑変だよ!!?

――? どうした?

――畑のキャベツがなんかパタパタ動くしキャベキャベ鳴いてる!!*5

――おかしいのか?

――え!?

――え?

 

 夏は狩りと釣りをし、

 

――お姉ちゃんこの川変だよ!!?

――どうしたの?

――川より馬鹿でかい魚が釣れる!! え、これどこ泳いでる魚!?

――?? マグロよ? 当然海を泳いでいるわ。

――ここ川だよ!!?

――ええ。……………………変……なの?

――変だよ!! 絶対に!! 変じゃん!!

――……そう……か…………そう……なの……か。分かった、釣り竿をそっち方面に進めるのは一旦止めておく。*6

――おかしいのはこっちか!!!!!

 

 秋は収穫して蓄え、

 

――姉ちゃん! なんでキャベツが空飛んでるの!!?

――これは私もおかしいと思っていた。

――初めから!! そうじゃん!!!

――……毎回この時期に結界張るの面倒だったのよね。

――じゃあなんで作った……いやそういえばどうやって作ったの!? 魔法!?

――とにかく網を構えて。来るわ。

――……来る? ――うおわぁぁぁぁぁああぁぁぁあああぁぁあっ!!!!????

 

 冬は薪割りをして暖を取る暮らし。

 

――斧や鉈で薪を割る時は一回で割ろうとしないで。君の腕力では負担が大きいし危ないわ。

――なんでコレは普通なの!!???

――え?

――え!!??

 

 同じ日々を繰り返していた『獣』の生活に変化が起こり、初めて生活に求める物が出て来た。

 

――うん、滅茶苦茶甘い! 甘くてさっぱりしてて美味しい! 今姉ちゃんにも分かってるの!?

――ああ、『味覚を共有する魔法』だ。一年かけて作ってみたけど……そうか。これが甘いという事か。

――こんな真っ白なクリームのケーキなんて初めて食べた! 苺と合わさってすごく美味しいよ!

――……君の感じる味覚と同時に、不思議な感覚を知覚してる……これは……これが……。

 

『獣』は『人』を知ろうとした。

 否、知ろうとしなければ駄目だという義務感に近い物を得た。

 

 一人の子供を、一人の男を育てるには、正しく人を知らなければならないと『獣』は考えた。

 

 昔手にした、人間達が生きる指標にしている『聖典』という本を毎日読み込み、それを元に少年と善悪や人生について語り合う。

 

 教える事は出来ない。『獣』は善悪を、自分の記録の概念でしか知らないからだ。

 

 だから語り合い、話し合い、互いの疑問を整理しながら『正しい人間の生き方』を模索していた。

 

 

 

 

 

 

『よかった。今度はちゃんと魔族になったのね? なら改めて、お近づきの印にどうかしら?』

 

 

 

 突然すぎる離別の日が来るまで。

 

 

 

『ずっと手を掛けないから不思議だったけど、切っ掛けがなかったのかしら?』

 

 

 

『もう大丈夫。この子はただのお肉よ? ……あぁ、はい』

 

 

 

 

 

『食べやすいように分けておいたわ。再会を祝って、一緒に食べましょう?』

 

 

 

 

 

 その日、『全知』ですら見逃していたか細い可能性の、その最後の糸に火が灯り――

 

『人を模倣する獣』が魔族へ剣を向けた始まりの日となった。

*1
Fate/grand order

*2
モンスターハンター

*3
Fate/grand order

*4
東京アンダーグラウンド

*5
このすばらしい世界に祝福を

*6
Elona




突然とんでもない未来線が拡散し始めてシュラハトハードが始まった日
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