ワイ「やろうと思えば何でもできる不思議パワーが使える種族に転生したから色んなモノ模倣してみるわ」   作:rikka

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033:

 この小屋に辿り着いたばかりの頃に目にした赤い外套を身に纏った『勇者』の背中に、ようやく安堵の息を吐く。

 

「……よかった……ギリギリじゃったか」

 

 ボロボロになった鍛冶小屋。

 その最初の破壊痕であるドア周りに目を向ける。

 

 小烏丸という刀の力によって、()()ごと吹き飛ばされたドア周り。

 その近くには紅白の特徴的な塗装のあのボールが、真ん中からパッカリと割れて転がっていた。

 

 その割れた――いや、開いたボールを、オレンジ色の小鳥がくちばしで突いて遊んでいる。

 

 戦いが始まったその瞬間、嬢ちゃんが弾き飛ばしたドア周りの残骸に紛れて飛び立った隕鉄鳥(シュティレ)が。

 

 

「本当に……あの嬢ちゃんときたら……」

 

 

「あの一瞬で、あれだけの怒りに飲まれながらもよく機転を利かせられたもんじゃ」

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

「お師様!」

「モニカ、良く耐えた。その上で隕鉄鳥(シュティレ)を使って異変を報せてくれたおかげで駆け付けられた」

 

 ここ最近はずっと執事の格好をしていたお師様が、戦いのための服を纏って立っている。

 

「申し訳ありません。小烏丸を……」

「構わない。鍛冶を習う事になってから、アレは打ち直そうかと考えていた物だ。それよりも君が無事だった事の方が喜ばしい」

 

 なぜか吐き気を催した時のように口元を押さえているミリアルデ様をそっと立たせて、下がらせる。

 

「それと……ミリアルデ様は大丈夫なんですか?」

「え……えぇ……。ちょっとセイバーが、とんでもない方法で空を飛んだから……動悸と吐き気が収まらないの……」

「なにしたんです?」

「いきなり巨大な筒を取り出したと思ったら私ごと中に入って爆発を起こして、その勢いで飛んだの」

なにをどうしてなんですって?

「人間砲弾を距離に合わせて巨大化させたものだ。マスターに保護魔法はかけていたし、使用した大砲は使用後すぐに消滅する仕様だから問題ない」*1

「すごく……すっごくグルグルしたわ……ぉぇ……っ」

 

 ヨロヨロしているミリアルデ様を下がらせたお師様はいつもの倉庫を発動させて、その両手に対魔族戦の装備をはめ込む。

 その左手には女神の紋章を彫りこんだナックルガード。

 右手にはグローブを。

 

 共に握りしめたら内側に針が飛び出し、お師様の血液を効率的に抽出しばら撒く、血闘術をよりスムーズに放つための装備だ。

 

「モニカ」

「はい」

 

 お師様が作り出した巨大な十字架の盾の向こうで、二体の魔族が構えている。

 お師様を魔王軍に取り込むため。

 それが叶わないのならばきっと、殺すため。

 

「リヴァーレは強い。才ある君とはいえ、さすがに無謀だ。対魔法戦に重きを置いて磨いている君ではまだ早い」

「はい、分かります」

 

 お師様が現れてから闘気をみなぎらせている巨漢の一体は明らかに強い。

 隙を突かれたとはいえ、お師様の作った小烏丸を砕くなど尋常ではない剛力だ。

 

 その膂力に裏打ちされた威力と早さに、自分では押し切られてしまうだろう。

 

「その上で聞く。モニカ、君はソリテールに勝てるか?」

 

 ソリテール。

 あの蟲。

 つい先ほど、その喉元に切っ先を届かせ――後一歩の所だった忌々しい蟲。

 

「……()()()()()()()()

 

 本当に残念だ。

 かなうのであれば、お師様の目に触れさせる前に仕留めておきたかった。

 

「一度追い詰め、横やりがなければ仕留められました。だけどそれは読み合いに勝った上での不意の一撃だったため。警戒されれば純粋な技量勝負になり、千日手になるかと」

 

 これも正確ではない。

 

 ある程度手札を知った以上、あの蟲相手ならばそう簡単に崩されない自信はあるが、それでも相手は魔族。

 

 身体にダメージが入っている事もそうだが、そもそもの種族差がある以上体力が尽きるのはこちらが先に違いない。

 

 ミリアルデ様が援護に入ってくれれば分からないが、下手にミリアルデ様を戦いの場に出して万が一捕らえられたら本当に詰みだ。

 お爺ちゃんもこれは同じだ。

 

 一応、お師様にはまだ切り札があるけど……。

 

「だから、引き付けと時間稼ぎに全力を注ぐつもりです」

 

 そう答える。

 

 すると、お師様が少しだけ振り返った。

 

 さきほど初めて見た激怒の顔ではない。

 

 無表情で、だけどほんの少しだけ左右の口角が上がった――食事の後、洗う前の空になった皿を見ている時のようないつもの安心する顔で、

 

「本当に、君はいつも私の期待の先を行く」

 

 いつものように、褒めてくれた。

 

「ソリテールを押さえてくれ。マスターは先生の守りを。大丈夫」

 

 そして再び前を向き、拳を握りしめる。

 

 

「文字通り、まとめて吹き飛ばしてみせるさ」

 

 

――お話は終わりかしら?

 

 

 血の十字架を解除し、再び魔族と向き合う。

 

 これまでの旅で戦った魔族とは明らかに違う、大魔族に。

 

「お前の相手は私だ、蟲」

「……本気のようね」

 

 相手は侮っている。

 小烏丸を失った事で対抗手段を失ったと思っている。

 

 私が突き付けた脇差を見て、明らかに嗤っている。

 

 風が使えなければ戦えないと思っているのか。

 大幅に間合いが小さくなって戦えるのかと嗤っているのか。

 

 あるいはその両方か。

 

「ねぇ、セイバー」

 

 欠片も私を見ていない。

 

「戦う前に、教えて欲しい事があるの」

 

 お師様の口角が元に戻り、本当の無表情へと戻る。

 この蟲相手にもう一度勝ちの目を見つけるのは難しい。

 崩されればお師様が不利になるので、先ほどの攻防のような無茶な賭けに出るつもりはない。

 

(それでも……叶うならば、一太刀だけでも……っ)

 

「……なんだ」

「貴女がヴィーラだった頃にあった、厳重に守られていた記憶ってなんだったのかしら?」

 

 蟲の言葉に、お師様が少し反応する。

 

 お師様が油断するとは思えないが、因縁がある以上引っ張られるかもしれない。

 そう考え脇差を握る手に力を込める。

 

「……地獄への駄賃に教えてやる」

 

 お師様の言葉に、リヴァーレという魔族が意外そうにしている。

 あるいは、口すら開かず開戦すると思っていたのかもしれない。

 

()()だ。……それに付随する知識も含めて」

「? 物語?」

「様々な人間が紡いだ多種多様の『作り話』だよ」

「??」

 

 私にも何のことか分からない。

 だが、それ以上に蟲の方が困惑している。

 

 笑っているように見える顔のまま、確実に固まっている。

 

「そんなものを、どうしてあの子は……」

「価値がないと?」

「だって、作り話なんでしょう? 何の役に立つの? 魔法を使ってまで保管する意味は?」

「……恐らくはこの外見を以って『ヴィーラ』*2と自らを名付けた個体が、何を考えていたかは分からない。彼女の記憶は疾うに擦り切れていて、そのほとんどは私の中から消えている」

 

 

「ただ――」

 

 

「人は『物語』の中に多くの物を託す。託せるのだ、ソリテール」

 

 

「それが単純に、娯楽として消費される事が前提なのだとしても」

 

 

「書き手の嗜好や思想を。善と悪の何たるかを。そしてその善悪は果たして正しくそうだったのか」

 

 

「人の理想を。希望を。無念を。醜悪を。欲望を。恋を。笑いを」

 

 

「現代か、過去か、あるいは見たことない未来や異なる世界を舞台にして」

 

 

「人が社会を構成する要素を取り上げ、織り交ぜ、そうして紡がれた物語に人は価値を見て後世に繋いでいく」

 

 

「形が変わっても。意味が変質しても。確かに残り続けるモノを人間は生み出す」

 

 

「そうして生み出された数多の物語が、語られる人間の理想である営みが、理想である善と悪が」

 

 

「受け継がれていく様を、――私は美しいと思ったのだ」

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

(あぁ、やっぱり)

 

 全く理解できない。

 なぜそうなったのかの切っ掛けすら想像できない。

 それほどに、目の前の存在は――かつての検体は奇怪な存在となって再誕した。

 

()()はもう、魔族じゃないわ)

 

 危険だ。

 極めて危険な存在になった。

 

 後ろに下がってしゃがみ込んでいるエルフは、コレに背を向ける事を当然としている。

 さきほど自分を追い詰めた剣士は、コレに近づけさせるものかと刃を突きつけている。

 エルフの背中をさすっている老いた男は、コレが現れた時に安堵した。

 

 人間と魔族の共存という、多くの同胞を戦争へと引きずり込んだ危険な『夢』を実現しかねない存在が現れた。

 

『ヴィーラ』ならば別によかった。

 

 確信を持って断言できるが、あれはそもそも魔族ですらなかった。

 理由は分からないがアレは完全に中身が人間で、だからこそどうしようもなかった。

 

 どちらにもなじめず、どちらにもなれず。

 遅かれ早かれ人間に殺されるか、魔族に殺されていただろう。

 

 現に自分もそう考えた。

 断じて同族ではないと確信できたからこそ『検体』にする事になんの抵抗もなかった。

 

 だが、コレは違う。

 

 魔族だ。

 魔族になりながらもそう成らなかった。

 

 結果、コレは致命的な存在になった。

 

 魔族の皮を被った、人間とも違う『ナニカ』だ。

 

 下手に魔族に近しい分、多くの同胞を『夢』へと惑わしかねない。

 

(現に、魔王様もこの子の存在を求めている)

 

 せめて管理しなくてはならない。

 

 魔族側の――魔王様の下で。

 

 でなくては――魔族は泥沼に引き摺りこまれかねない。

 

「ほう、ならば俺の相手はお前か」

「……どうやら、肩はつながったようだな」

「貴様の一撃、飛翔(ひしょう)白麗(はくれい)。見事であった。俺が深手を負わされたのは何世紀ぶりか」*3

 

 リヴァーレに同行を頼んだのも正解だった。

 リヴァーレは彼女に惑わされる事はない。

 ただ単純に、強者との闘争を求め、そのために人間を襲い続ける純粋な魔族の戦士。

 

「……あの時は、私を捕まえるようにと手加減を命じられていたからだろう? 君にとってやるせない戦場だったはずだ。ゆえに、次に会った時は謝罪すると決めていた。……私の力が足りず、申し訳なかった」

「ハハハハハ! 人間側に立ちながら、魔族にも気を配るか。相変わらず不可解な娘よ。だが――」

 

 リヴァーレが、その魔力を放出する。

 

「それがお前の良い所なのだろう。娘――いや、セイバー」

 

 それに合わせて、先ほどの女の子が間合いを詰めてくる。

 

 エルフとの戦いでアレは魔道具の多くを失っている。

 回復アイテムすら使えないだろうし、遠くの人間を回復させるあの赤い筒束は破損しているのは確認済み。

 

「ねぇ、やっぱり下がっていてくれないかしら。本当に危ないのよ?」

「お師様の邪魔はさせないと言っている」

「そう……分かったわ」

 

 今度こそ、足を捥いで、手を捥いで、激痛から苦悶と涙を零すこの子の姿を目にすれば――

 

 アレもさすがに止まるだろう。

 

「もう一度遊んであげる」

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 拳を握りしめる。

 同時に、ナックルガードの内側に仕込んだ針が飛び出し、外皮を貫き血を吸いだす。

 

 痛みはない。感じない。

 再起動した時からそうだった。

 この身体は、痛みという物に対して強い耐性がある。

 この身体は()()()()()()()()()()

 

「行くぞ、リヴァーレ」

 

――02式

 

 だからこれまで、身体が機能しなくなるギリギリまで暴れ回る事が出来た。

 それでどうにか、魔王やその配下達を退け続ける事が出来た。

 

 今はもう、それは許されない。

 

散弾式連突(シュロートンフィッシャー)

 

 ただ目の前の敵を倒すだけでは、また失ってしまう。

 戦いが終わってすぐ身体が動かせなければ、また守れない。

 

「グラオザームが言っていた血闘術とやらか!」

 

 こちらが拳で戦うのであれば、いつものリヴァーレならば拳で応対する。

 だが今、リヴァーレは手にした両刃の大剣の腹で打ち放った血液の散弾を受け止める。

 

「恐ろしい技よ。対魔に特化した、もはや高位の聖水に等しい血液の技。身体で受け止めればそれだけで相当な痛打となるだろう」

 

 常に成長し続けなければ、()()()私が私に課した『隣人を幸せにする』という誓いを守れなくなる。

 

「それを見破ったのはさすがだ。大抵の魔族はそれを理解せず、初見の一撃で大抵討ち取れるのだが」

 

 再び隣人を得たあの日の前も、後も。

 

 主人である彼女を守るために。

 私を「お師様」と慕ってくれるあの子のために。

 

 あの日の『彼』との約束を守るためにも。

 

 鍛錬を欠かした日は一日たりともない。

 

血楔防壁陣(ケイルバリケイド)

 

 拳を地面に叩きつけ、リヴァーレの周囲に巨大な血の十字架を作り出す。

 直撃させる目的ではない。

 一瞬の間を作り出すための牽制だ。

 

「拘束目的か!」

 

 リヴァーレはすぐさま剣を振るい、その全てを一撃で破壊してみせる。

 

 だが、十分だ。

 

――輝剣の円陣

 

「ぬぅ……っ!!」

 

 蒼い魔力で構成した五本の小剣。

 射出したその内の一本がリヴァーレの肩に突き刺さり、微かな――だが確実にダメージを入れる。

 

 血闘術だけが私の武器ではない。

 

 私が私となる前の存在。

 かつて『ヴィーラ』と名乗っていた誰か。

 

 彼女が残した多くの知識こそが私の武器。

 イメージこそが重要となる魔法の世界で、恐らくは私だけが持つアドバンテージ。

 

 拳を更に握りしめ、大量の血液を抽出する。

 並行して体中の骨という骨に仕込んだ『造血の魔法』に干渉し、身体の動きを維持する。

 

 自分の身体に関しては不思議と知識がある。

 骨の位置、内臓の位置、筋肉の構成から血管の配置まで、その悉くを把握している。

 

 だからこそ、私は一切の無駄なくこの身体を使い尽くせる。

 

「今度はこちらの番よ!! セイバー!!!」

 

 しかしやはり、戦士としてリヴァーレは私の遥か上にいる。

 

 呼吸を読まれたのだろう、次の血闘術の技を撃ち込む前の一瞬を狙われた。

 

 それを防ぐための牽制の一撃として魔力刃を撃ち込んだのだが、動きを止めるには足りなかったか。

 

(やはり、まだあの『巨漢の紳士』*4に技も心も追いついていないか)

 

 だが――

 

 血ではなく、祈りと共に魔力を体に通す。

 

大統領流――」

「ぬぅ!?」

 

 それと同時に両肩のその上に、自分で発生させた重力を感じる。

 魔法で構成した半透明の巨腕のみが、そこに膨れ上がっている。

 

 その腕――存在しない二つ目の左右の拳を握りしめ、

 

闘気浸透拳*5

 

 こちらの顔を殴り飛ばすつもりだったその剛腕を相殺する。

 

「魔力の拳とはな! しかも妙にヒリ付く!」

「君を相手に何度戦ってきたと思っている」

 

 グラオザームと同じく、何度も戦ってきた敵の一人だ。

 対策は常に更新している。

 

 今度こそ拳を握りしめ、血液を回す。

 

6th

 

 ただし、使うのは血闘術ではない。

 

煙幕*6

 

 大量の血液を霧状にして散布し、全てを覆い隠す。

 いつぞやの時と同じように足を狙う一撃ごと、聖別した血液の霧がリヴァーレを覆う。

 

「――っ、ぐぉ……中々に……重い……!」

 

 特に攻撃性があるわけではないただの目くらましは、それだけでリヴァーレの動きをわずかながらに削っている。

 

「魔族の君には、私の放つ全てが致命的だ」

「同じ魔族でありながらそのようだな!!」

 

 それでも長く生きた大魔族――魔王軍最強の戦士を自称する男の嗅覚は確かだ。

 確実に移動したこちらを嗅ぎ分け、血霧ごと斬り裂くように大剣を振るう体勢に入っている。

 

「5th。黒鞭改め――赤鞭

 

 ならば、相手を動かせばいい。

 血闘術を磨く中で、血液自体が私のさらなる手足となっている。

 

 そしてその手足である血を霧にした煙幕のなかで、私には中の動きが手に取るようにわかる。

 

 血液で作成した鞭がリヴァーレを捉える。

 

 無論、それでリヴァーレほどの剛力の持ち主を封じられる訳がない。

 

 すぐさまその膂力を以って拘束を引きちぎる。

 

 聖水そのものでの拘束。並みの魔族や魔物ならば耐えがたい激痛が走るソレをあっさりと。

 

 だが、引きちぎるその一瞬こそ――

 

(胴体が空いたぞ、リヴァーレ)

 

 左手で倉庫から武器を引き抜く。

 金属製の、記録でいう『近未来的』な左腕の肘から先を覆う手甲。

 

 細菌を用いた兵器による被害が拡大した世界で作成された補助兵装。

 

 AMG-78。*7

 

 左手の手の甲を覆う部分から、チャージが完了した事を報せる緑色の輝きが発せられる。

 

 その下に装備しているグローブが血液を抽出し、その一撃を補強する。

 

「受けろ」

 

 純粋な膂力ではどうしようもない差がある最強の戦士の胴体に、利き手ではない左手の拳を叩き込む。

 

――ドゴォ……!!!!

 

 自分の細腕では逆に拳が砕けかねないその巨漢に突き立てた左腕から、確かな手ごたえを感じる。

 

 あのリヴァーレの口から微かとはいえ苦悶の声が零れ、地面を踏みしめたままとはいえ大きく後ろに後退させた。

 

「く、ふっ……ハハ……ハハハハハハハ!!!」

 

 かつての自分では、集中した連撃でどうにか拮抗するのがやっとだった相手が、笑っている。

 

「戦い方を随分変えたな。果たしてどうなるかと思ったが……強くなったな、娘!!」

「背負うモノが増えたのでね。容易く捨て身で勝ちを拾うような真似はもう許されない」

「ほう。貴様は荷物が増えると強くなるのか。デタラメだな」

「そうだな。デタラメだ」

 

 ここまでは様子見だ。

 ここからが本気だ。

 

 より速く、より重く迫る攻撃を捌きながらダメージを与えなくてはならない。

 

「だが、それが私だ」

 

 身体――骨から筋肉、神経、眼球。

 思いつく限りの私という個体を構成する全てに聖句と並行して仕込んでいた魔法を起動させる。

 

「私という『人を模倣する獣』は、そういう存在になった」

 

 相対する相手の魔力の流れを感じ取り、その動きの予測を網膜に魔力投影する――いわば疑似的な『予知』を可能として見せ、同時に連動して身体の反応速度を上げ、身体作動効率を最適化させる私の切り札の一つ。

 

「だから――私は負けないんだよ。リヴァーレ」

 

 それを、起動させる。

 

 

 

 

 

――EXAM-SYSTEM stand by*8

*1
北斗の拳/南斗人間砲弾

*2
グランブルーファンタジー

*3
北斗の拳/南斗水鳥拳奥義

*4
クラウス・V・ラインヘルツ/血界戦線

*5
ライドンキング

*6
僕のヒーローアカデミア/ワン・フォー・オール6th

*7
BIO HAZARD 7『DLC』 END OF ZOE/Advanced Multi purpose Gauntlet 78

*8
機動戦士ガンダム外伝THE BLUE DESTINYY/EXAM(エグザム)システム




□□ □は転生者だった。

□□ □はここがファンタジーの世界であると知った。

□□ □はその外見から、知っているキャラクターの名を付け世界に順応しようとした。

□□ □は自分が長命であることに気付き、決して忘れないようにと多くの物語や役に立ちそうな知識を、触りしか知らない物でもとにかく詰め込み魔法で保護し、劣化することがないように念入りに刻み込み、外から読まれないように守りを固めた。

そして□□ □はとある女に出会い、その存在の全てを解体され尽くした。

もはや□□ □であった者は存在しない。

ある大魔族がその末路を憐み、生まれ故郷らしいとある森に帰したが、それはただの死にきれなかっただけの魔族の残骸だった。

時間が立てば魔力の塵に帰る、ただそれだけの存在だった。

しかし

□□ □が残した記録は、劣化することなくそこに残っていた。

もはや肉塊でしかないソレは、機能が停止に近づくにつれて刺激される生存本能に従い、生存のためのヒントを求めて『記録』を探り始めた。

その果てに、肉体そのものが活動を停止しても肉体の機能を思考のみで取り戻す術に辿り着き、無意識の中魔力も動員してその術を模倣した。*1

強く人体を意識していたために人間のソレと遜色なかった身体は、ついに鼓動を取り戻した。

心臓を動かし、肺を動かし呼吸を再開させて空気ごと魔力を取り込み、血液を循環させて肉体と機能を修復させる。

その果てに。

空っぽの知識に『記録』を流し込み。
空っぽの身体に『魔力』を流し込み。

『物語』にあった多くの『人物』の動きを模倣し、在り方を模倣し、生活を模倣し、感情を模倣し、信仰を模倣し、

ここに、『物語』が生み出した『人を模倣する獣』はついに『個』を再構築して起動した。

*1
雲体風身(うんたいふうしん)/龍狼伝

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