ワイ「やろうと思えば何でもできる不思議パワーが使える種族に転生したから色んなモノ模倣してみるわ」 作:rikka
突然広がった赤い霧が、またも突然中心から起こった爆発によって掻き消される。
――ドゴォォォッ!!!!
恐らくは彼女の血液だろう赤い霧で覆い隠されていたその向こう側から、互いの得物をぶつけ合う二体の姿が見えた。
かたやリヴァーレ。
どんな時も笑みを浮かべている彼が、歯を食いしばって全力を出して振るう得物を、彼女もまた赤い大剣*1で受け止めている。
そう、受け止めている。
魔王軍最強の戦士であるリヴァーレの本気の一撃を、かつての『名無し』が真正面から受け止めている。
取って返し放たれるリヴァーレの斬撃に対して、セイバーは赤い剣を上に放り投げて、空いた両手を胸の前で合わせる。
それと同時に、無数の蒼い軌跡が生まれる。
眼にとまらぬ、その身に――その拳に纏う輝きだけが残る高速の連撃。
それによって大抵の物なら文字通り真っ二つに出来るリヴァーレの斬撃が相殺される。
「そんな……互角? あのリヴァーレと?」
人間の剣士に向けて魔法を放ちながら、すでに破綻してしまった計画をどう修正しようか考える。
(人間だけならばすぐに捕らえられると思ったのがこの強さ。……仮に合流されても、あのエルフとの戦いで魔力と装備を消耗した今の彼女相手ならばリヴァーレで封殺できると踏んでいたのに)
彼女が強い事は知っている。
なにせ、彼女があの森を出てから幾度も追手を出しているが全て撃退され、ついには七崩賢も一人討たれて空席となっているのだ。
だからこそリヴァーレという札を用意したのだが……これほどとは。
(……やっぱり、この人間を使うしかないわね)
あのエルフか老いた人間を捕らえられれば代用出来ただろうが、すでにエルフが張ったのだろう頑強な結界の中にいる。
さらにはその内側、結界の縁に沿うようグルリと突き刺さっている七本の小剣が発するもう一つの結界がソレをさらに補強している。*2
おそらくセイバーの作った
本当に厄介だ。
用意なしの力技で突破するのは、恐らく無理。
「ねぇ、大人しく腕を差し出してくれないかしら? 一本だけでいいの。それで戦いは止められるわ。あの魔法、よくわからないけどセイバーに負担のかかる物だったら辛いわよ?」
剣士は先ほどの『コガラスマル』という剣とは違い、なんの魔力も発していない普通の剣を振り回している。
あきらかに火力は激減し、一対一ならば今度は有利に戦えるハズだというのに……どういうわけか先ほどよりも動きが鋭くなっている。
「人間と一緒にいる魔族なんて危険なの。貴女達人間からしてもそうなのよ?」
こちらの放つ魔力を、今彼女が持っている唯一の魔道具である赤いマント*3で受け流し、先ほどまで撃ち出していた私の剣をこちらに蹴り飛ばしたりして牽制を入れながら、ジリジリと近づいてくる。
「共存なんて夢を持たせる存在は戦争を激化させかねないわ。ここで別れた方がお互い綺麗な思い出のまま――」
まるで瞬間移動のように一瞬で踏み込んで来た剣士の一撃を、かろうじて躱す。
先ほどのような威力はないが、それでも早く鋭い突き。
確実に首を狙っていたそれを、ギリギリで。
(っ、早い。さっきよりも)
防御魔法が間に合わない程の一撃。
先の一戦に比べて攻撃の手が減ったが、その分より守りは固くなり、割と本気で殺す気で仕掛けてみれば、堅実な守りに入って――だが隙を見てリヴァーレの援護をしようとすればすぐさま首を落とそうと踏み込んでくる。
そう見せかけての誘いも試したが、それすらどうやってか見破り、防いで見せる。
「ねぇ、私達には言葉があるでしょう? お話を――」
――ゾンッ!!!!
そして、言葉も通じない。
剣士の目に、先ほどまでの熱はない。
ただ冷たく、ただまっすぐ。
こちらから目を放さず、剣を握っている。
間一髪で避けた一撃が、薄く自分の瞼を切り裂いていた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
脇差を握りしめて蟲と再度交戦して、どれだけ経っただろうか。
時間の感覚はない。
聞こえるのは、妙に耳に響く本来聞こえづらいわずかな音ばかり。
衣擦れの音、周囲を取り巻く風の音、土埃が起こす音。蟲が魔力が解き放つ直前にする微かな異音、自分が地面を踏みしめた音。
目の前の蟲と自分を取り巻く
逆に、目の前の虫がやけにゆっくりと間延びしたように口を開いたり閉じたりしているが、その言葉は全く届かず理解できない。
出来なくていい。
今の自分がやるべきことはただ一つ。
(お師様はヒントをくれた。そのためにも……っ)
確実にこの蟲を足止めしつつ、その機会を伺わなくてはならない。
視界の向こうでは、蒼く輝くお師様がもう一体を相手に渡り合っている。
今のお師様は魔力ストックの回復に専念しているために、武装の修理が後回しになっている。
今振るっている神機も、盾は使えるけど砲戦仕様には変形出来ないし、近・中距離でもっともお師様が使うライヘンバッハは完全に故障。分解整備、あるいは新調しなければならないと言っていた。
(今お師様の残ってる手札は戦闘向けではない物か、あるいはここぞという所で使う切り札のみ)
例えばレイジングハート。
魔術砲撃戦でのお師様の切り札。
肝心のカートリッジは十数発しか残っていないが、それでも火力だけでいえば十分すぎる。
だけどそういったお師様の切り札を使うには、空間倉庫から引き抜き発動させるまでの間がある。
(だから必ず、お師様は一度リヴァーレとやらを
それも――
――『文字通り、まとめて吹き飛ばしてみせるさ』
恐らく、同時に。
そのタイミングを逃さないようにしなければ無駄に消耗してしまう。
蟲は攻めきれない事に痺れを切らしたのか、あの剣を高所で大量に発生させて頭上からこちらを面で制圧して少しでも動きを止めようとし始める。
だけど、問題ない。
全く足を止める必要はない。
落下する剣の風切音が全部聞こえる。
どこに、どれだけの剣が落ちてくるのか。
魔力を撃ち出す時の、空気が押しのけられる音が耳に入る。
どこに、どれだけの範囲の攻防が発生するのか自然と頭に浮かぶ。
まるで飛んでる鳥が上から見ているその目を奪ったかのように、自分の周りの空間が完璧に把握出来ている。
僅かな軌道修正だけで、簡単に被弾を避けられる。
抜刀術の訓練の中で、一瞬を永遠と錯覚するほどに感覚が深く伸びる時があった。
やや本気になったお師様と斬り合った時。あの時と同じだ。
相手が動く時のわずかな音すら嫌に鮮明に拾える。
(コイツの切り札である魔力をそのまま扱う魔法は、自在に使える分かなり直感的な動きがある)
そして蟲は、こちらが突きの姿勢に入るとより速く防御に移る。
さきほどの一戦での『牙突』は、程よく蟲の本能を刺激してくれたようだ。
(上手くいけば、もう一度崩せる)
突き刺さった奴の剣を手に取り、お師様がたまに斧でそうしているように回転を付けてぶん投げる。*4
お師様のように手元に戻って来る事はないが、それでも破壊力だけなら十分あるそれを、蟲は初めて忌々しそうに顔を歪めて回避する。
その向こう側で、戦いが始まってから初めて。
蒼い輝きをより強めて、血と剣で戦い続けるお師様と、目が合った。
そしてお師様とリヴァーレの戦いに明らかに関係ない、こちらに向けて波打っている
来た。
何度も訓練で刃を重ねてきた私の直感が、そう確信した。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「く……っ……!」
どれだけ剣を撃ち放っても。
どれだけ魔法を撃ちこんでも。
「こんなに手こずるなんて……!」
この剣士は崩れない。
攻撃範囲を広めて圧殺しようとしても最小の動きで躱される。
突き技に入る時の剣を引く瞬間を狙って腕を吹き飛ばそうとしても、こちらの魔法の範囲を見切ってかすりもしない。
動揺や焦りを誘うためにセイバーを侮辱してみたり、後ろのエルフ達へ牽制もしてみるのだがそれも効果がない。
一度本当にエルフ目掛けて攻撃してみても動じず、なによりその一撃もエルフの結界に振れる前に彼女が持つ水銀の
「ねぇ、お話くらいしてくれないかしら?」
何を言っても、そもそも耳に入っていないようにただただ無言で剣を振るう。
(赤の勇者の噂に女剣士の話が出始めてから、せいぜい二年と少ししか経っていない。長く見積もって三年だとしても……たったそれだけの時間でこれほどの剣士を育て上げるなんて……)
人間は女に武器を持たせることはしない。
人間の習性を知るために観察していた村は全てそうだったし、襲った時もそうだった。
時折弓矢を使う女はいたが、戦うために鍛えた物ではなく全て狩猟のための物。
自分を目の前にして弓を手に出来る者は珍しく、捕まえるのも容易かった。
だというのに――
「
「! っ……!」
知らず知らずのうちに気が緩んでいたのか、一撃を見落とした。
素早く振り下ろされた剣が、魔力障壁を張ろうと反射的に突き出していた右手の指先を斬り飛ばす。
戦闘に支障はないが――
「すみません! 使わせてもらいます!」
突然、剣士が叫ぶ。
遅れて、後ろから何かが迫るのを感じ咄嗟に距離を取る。
散々耳にした、刃が空を斬る音。
それが自分を通り越して、目の前の剣士に向かって飛んでいく。
後ろで鳴り響き続けている重い激突の音とはかけ離れた、「サクッ」という軽い音と共に――
一本の剣が突き刺さっている。
剣士が手にしている剣と同じく。
なんの魔力も感じない、
それを、剣士は迷わず引き抜いた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「お爺ちゃん?」
ずっと気分が悪そうなエルフを擦っていた老鍛冶が、突然立ち上がる。
立ち上がり、居候の娘が構えた剣をジッと見ている。
「―――――」
エルフの女が不可解そうに見上げているのに気づきもせず、月光に照らされるその刃を見て。
思わず、『誰か』の名前を口にしていた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
これまでの剣と違う、両刃のロングソードに持ち替えて剣士が迫る。
もはや互いに言葉はない。
片方は、もうその
片方は、そもそも耳に入らないため。
(急に武器を持ち替えたのならば――)
魔族はコレを好機と見た。
明らかに緊急用の、いわば予備の武器のまま戦わせるのに不安を覚えてセイバーが手を貸したのだろうと。
(これまでの剣に比べて明らかに重い。だったら振りだって!)
剣を引き抜く瞬間を見て、腕を吹き飛ばす。
片手を失えばもう戦えない。
後はセイバーの元まで引きずって彼女の姿を見せればいい。
大きく上段に構えるついでに斬ろうとしたその剣を、魔族は後ろに飛ぶことで避けてすぐさま攻撃に入ろうとした。
間合いは十分開けた。
踏み込んで来たのならば崩せる。
そのままならば剣を捨てでもしない限り、腕を落とせると。
ただ。
「この切っ先――」
魔族は知らなかった。
――この剣……刀? は未完成なんですよね?
――あぁ。無論、刀としては完成しているがそれだけだ。
――お師様の他の武器みたいになるには?
――君が課題をクリアしたら、だね。
――課題?
「未だ、
――あぁ、課題だ。
――君はこのただの刀で、
――魔法に?
――そうだ。威力でもいいし、それ以外でも当然いい。色々試してみるんだ。
――もし、君がそこまで辿り着けたのならば、私は安心して私の剣を託せる。
眼の前の剣士は、間違いなく
「
強力な戦士のそれに匹敵する威力の斬撃。
その斬撃が、何の魔法も使わず
魔族は予想していなかったその一撃に、対処が遅れる。
攻撃に移ろうとしていた所を、反射的に同時に防御も取ろうとしたために魔力構成に乱れが出て――
その右腕が斬り飛ばされた。
「お師様!!」
――あぁ、よくやってくれた。
それと同時に、破砕音が鳴り響く。
金属同士が激しくぶつかり合い、そして砕ける音。
一拍遅れて、腕を斬り飛ばされ体勢を崩した魔族のすぐ後ろに、轟音と共に土埃が舞う。
「ハハハハ! 一瞬とはいえ、俺を上回ってみせたか!」
「リヴァーレ!?」
魔族最強の戦士が、その魔力で生み出した大剣を砕かれ、地面に叩きつけられていた。
――試作27式
「っ、待――」
――『
そして二体の魔族が何かをする前に、その周囲に多数の金色の波紋から、同じく金色の鎖が撃ち出され、その動きを抑えた。
「魔力が操作できない? ……リヴァーレ!」
「うむ」
巨漢の魔族がその身体に力を込めて、魔力を封じる鎖の拘束を破ろうとする。
一方で、人間の剣士は全力でその場を離れていた。
わき目も振らず、背中も気にせず、エルフが張る結界の中に入ろうと走っている。
そして――
「
人を模倣する獣が、その剣を引き抜いた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「是は、善なる者と共にする戦いである」
青い装飾が目を引く鞘から引き抜いた長剣を掲げ、かつて掲げた宣誓を口にする。
三百年前に作成を始め、だが最も完成が遅れた聖なる剣。
「是は、人に属する者らとの戦いにあらず」
獣の剣は、魔族の魔法を用いて作った『魔剣』である。
それゆえに、この剣だけはそうしてはならぬと試行錯誤をしていた末に、獣が己の身を聖別することで『聖典の魔法に用いる魔力』の抽出が可能となってようやく完成した、約束の一本。
――ねーねー姉ちゃん。
――? なんだろう?
――読み書きを教えてくれるのはいいんだけど、計算とかいる? 指で数えればいいじゃん。
――数は大切な事だ。それを操る術も当然。
――じゃあ実験とか料理、馬術に社交ダンスとアレコレ詰め込むのも?
――……それは…………。
「是は、誰かを守る戦いである」
獣が宣誓するたびに刀身から『カチャリ』と、まるで開錠するような音が響き、同時に清らかな魔力が噴き出す。
――…………どうしてだろう?
――そこから!?
――子供は学ぶものだという知識はあったが……人はなぜ学ぶの?
――いや、俺に聞かれても!!
「是は、女神に恥じぬ戦いである」
この宣誓こそ、獣の根幹。
物語の中心にあった美しい物のために。
そして、漠然としていたそれを共に語り合った、少年のために。
――逆に考えよう。君はどうなりたいんだ?
――俺?
――ああ。人間は成長すれば労働が課せられる。君はどういう仕事を……人間になりたいの?
――…………仕事かぁ。畑仕事なら出来るけど……。
「是は、邪悪との戦いである」
――やっぱ冒険者だよ!
――冒険者?
――旅して、いろんな街に行って色んな魔物を倒して有名になって、歴史に名前を残すんだ!
――………………? 労働なのだろう? お金はどこから発生する。
――村や町の人から依頼を受けて、代価をもらうんだよ。
――なるほど、分かった。なら算術の時間を増やすぞ。
――なんでだよ!!!
――君が飢え死ぬ光景が視えたからだ。
「是は……」
――な~な~、算術より剣を教えてよぉ。強いんだろ~。
――君が計算をキチンと出来るようになればな。
――ワリザンとかブンスーとかよくわからないんだよぉ……
――……やる気が出ないか?
――正直。
――……むぅ。ならば……。
「これは……っ」
――褒章品を用意しよう。
――ほーしょーひん?
――あぁ。君が基礎算術をモノにして、そして体作りと剣術が私の目に適ったのならば
――君に、とっておきの剣を用意しよう。
――ホント!?
――ああ。どんなのがいい?
――そりゃあもちろん!
――すごくかっこいい、勇者の剣みたいな奴だよ!!
「私が『私』であるための戦いである」
最後の宣誓が承認され、込められた魔法が解放される。
未だ人類が解読出来て居ない、『女神の三槍』のような聖典の攻撃魔法を極限まで圧縮し、芯材部に込めた文字通りの聖剣。
人を慈しみ、人を愛し、人を守る、
「人を模倣する獣より、創世の女神様に乞い願う」
今、獣の頭に目の前の敵の事はなかった。
憎い魔族の事も、好敵手の事も、主人に先生も。
結界の中に逃げ込んだ事を確認した時点で、弟子の事もなかった。
ただ脳裏にあるのは、遠い昔の日々。
「どうか、この光が彼の目に留まるように」
あの日失い、失くしてしまった約束。
「どうか、この輝きが……」
発動していた身体強化魔法が収まりと同時に蒼い光が消え、今度は違う輝きが獣の身体から発せられる。
「彼の魂に届きますように」
聖剣が放つ金色の輝きに混じり、温かい淡い緑色の輝き。
獣が祈りを捧げる時に発せられる、女神の魔法の輝きが。
「そう、この剣こそは――!」
そして獣は剣を構える。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「リヴァーレ!」
眼に入るだけで身体が灼けそうな、魔族に致命的な光に身を晒しながらソリテールが叫ぶ。
「そんな……
セイバーという『魔族』が
それほどまでに致命的な輝きが、指向性を以って放たれようとしている。
それは魔族にとって、どんな魔法やどんな刃よりも本能が警鐘を鳴らすものだ。
「おぉ…………」
そして魔王軍最強の戦士も、鎖の拘束を解かんと力を込めつつその輝きに目を奪われていた。
「あの時、白鳥が舞い降りる幻視を見せた技といい、俺を圧倒してみせた青い輝きの魔法といい……」
パキリと、魔力の働きを抑制する金の鎖に罅が入る。
同時に、聖なる輝きそのものとなった剣が構えられる。
――受けろ、正常なる我が同胞らよ。
今まさに振り下ろされんとするその瞬間、鎖が砕けた。
魔力を封じるというその特性上もっとも作成が難しく、ゆえに比較的脆い魔道具である。
それでも、聖剣の本領を発揮するための一瞬の足止めには十分すぎた。
砕けたその瞬間、ソリテールは範囲外に逃れようと必死に飛び始める。
一方で、リヴァーレは――
「相変わらず、お前が創り出すものはどれもこれも――」
その輝きを見て、笑っていた。
――
例え道が決して交わらないと知って尚、それでも同種である魔族が生み出したその輝きに向けて。
「――美しいのぅ」
確かな賛辞を送っていた。
――
その輝きに飲み込まれる、その時まで。
出典:Fate/Prototype
Fate/Grand Order
獣が持つ記録には多種多様な「英雄の剣」が残されているが、種類の違う記録の中で妙に被る物がいくつかある。
被ると言う事は、それほど人間によく知られている剣である。
すなわち、人が――善き人が振るう剣に相応しい物であると考え、その根幹を考えた。
ある少年との語らいの中で徐々に片鱗が見えて来た『善』のための剣として、獣は能力の解放にその戦いが『善』であるための条件が課せられているソレを選択。
密かに森の外へと出てアチコチから素材を回収し、密かに
これがいつか、君が振るう剣だと。
これがいつか、君が人を救うための剣だと。
だが、それは結局叶わなかった。
獣が戻ったその時、少年の首は落とされていた。
物言わぬ躯になり果てた少年と。
それを行い、笑みらしき顔のままそれを割いて差し出して来る怨敵を前にして。
獣は『彼』が振るうために作ったハズの剣を握りしめた。
騎士王が振るいし聖剣――その模倣品は、後に『赤の勇者』と呼ばれる獣の始まりを告げる剣となった。