ワイ「やろうと思えば何でもできる不思議パワーが使える種族に転生したから色んなモノ模倣してみるわ」 作:rikka
「やはり、木製だと強度に問題があるな」
遡る事一年と半年。
海鮮が豊富なグランツ海峡を目指して旅を続ける赤の勇者一行が、老鍛冶師シュレートと出会う前。
程よく拓けた川沿いの土地を発見したセイバーはいつもの小屋を設営して、地元の食材の調査のために即席の釣り竿を作って川に糸を垂らしている。
「釣れないんですか?」
「いや、数匹釣れたのだが……あまり獲る人間がいないためか随分肥えてずっしりしていて、しかも元気でね。正直何度か、折れるかもしれないと冷や汗が出る場面があったよ」
セイバーがチラリと隣を目で示すと、そこには透明なビニールという物を空気で膨らませて作った簡単な生け簀が設置されていて、中には釣った川魚が泳いでいる。
それどころか必死に跳ねて生け簀を飛び越えようとする個体が数匹いる。
「すぐ
「念のために泥抜きをするつもりだ。ワタを抜いた後で塩と小麦粉で洗っても落ちるだろうが……確実なのは泥抜きとの併用だからな」
「臭いと食べられませんか」
「……というよりは、命を頂く以上最大限の敬意を払いたい。獲って食べられたのに「臭くて不味い」なんて吐き捨てられたら余りに浮かばれないだろう」
「まぁ、私が魚の立場ならそもそも食べられたくありませんが」
「……それは確かにそうだ」
セイバーは初めて見る魚に、色々な調理法を試すつもりなのだろう。
すでに後ろには簡易コンロが設営されていて、油や各種香草、調味料が揃っている。
「よし。おやつがてら、朝に釣った物をそろそろ食べてみるか。モニカ」
「はい! 鍋を温めておくんですね?」
「ああ。それと一緒に皿を一枚火にかけて欲しい」
「…………お皿を?」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「また変わった事をやってるわね、セイバー」
セイバーが釣り竿のテストと地元食材の採取を兼ねて川で何かをやっているので屋敷から出てみた。
どうせ一人では暇なので元よりそのつもりで、セイバーが作ったアウトドア用の折り畳み椅子を持ち出してモニカとセイバーの側に腰を落ち着かせる。
「あぁ。前々から魚の焼き方は研究していた。皮は火が入りやすく、気を付けないと必要以上に焦げてしまうし、身もしっとりさせるのかホロホロになるまで焼くのかで大きく差が出る」
今はモニカが、皿の一枚を火にかけて温めている。
いつもセイバーが食事を盛り付ける前にお皿を温めているのは知っているが、今日は文字通り焼いている。
モニカがわざわざ暖炉用のトングを持ってきている。
「前々から実験してみたかったんだ。記録の中に、一枚の皿を火入れした上でその上に皿を乗せて、その熱で魚に緩やかに火入れをするという技法があってね」*1
「……ミリアルデ様、お師様ってこういう実験よくするんですか?」
「練習でアレコレするのはよく目にしていたけど、こういうのは初めてかしら」
「ちなみに練習って?」
「淹れたてのカフェオレの表面に、白い泡で絵を描いたりしてたわ。猫とか、ウサギとか」
「何それ凄い」
「セイバー、今度またやってちょうだい」
「任せてくれ。今でも練習は欠かしていない」
本当に多芸な魔族だ。
絵を描かせても上手くて、たまに気に入った風景があるとそこに足を止めてキャンバスを用意してデッサン用の木炭ペンを取り始めるし、なんでか知らないけど人間のダンスも得意だ。
真冬にちょうどいい大きさの凍った池を見つけた時など、更に魔法でしっかり凍らせてから。靴の下に刃をつけた奇妙な靴で自在に滑って、ジャンプしてクルクル回ったり踊ったりしてみせた。
なんでそんな事出来るのかしら。
普通に歩いているような足さばきで後ろに下がるとか……本当に、どうして?
「それで、セイバーは何をしてるの?」
「あぁ、せっかくだから専用の木枠を作っている」
モニカがお皿を焼いている横で、釣り竿を地面に突き刺したフックに引っ掛けたままセイバーは木材を削っていた。
「そのままでは熱が拡散してしまうし、保温という意味でも安全面でもあった方がいい」
「お師様ー。そろそろいいんじゃないですかー?」
「あぁ、こっちも出来上がった。それじゃあ始めようか」
セイバーが、いつものキッチンとは違い平らな調理台と魔導コンロのみの簡素な調理場に立つ。
…………。
いえ、これでも本来ならば十分すぎるだろう。
魔導コンロがそもそもセイバーの作品だった。
どんな所でもこれ一つで安定した火が起こせて、ツマミを回すだけで強弱を調整できる優れモノ。
私が商人への販売禁止品に認定した、まだ人間には早すぎる魔道具だ。
セイバーは、先に下処理を終わらせて捌いていた魚を柔らかい紙で包んでいる。
そうして水気をしっかり取ってから、油を引いた鍋に皮を下にしてサッと焼く。
いつもならば冷たい状態から火にかけるのだが、今日は皮だけしっかり火を通したらそれを取って同じように軽く身に火を入れて、それから二枚重ねとはいえ十分な熱がある皿の上に乗せる。
同時にセイバーが良く使う、『虫を完全に取り除く魔法』と『肉にどこまで火が通っているか分かる魔法』を発動させてジッと見ている。
「さて、後は皿の熱が下がるまでにちゃんと火が入るか見ておこう」
「熱が入ったらこのまま食べるの?」
「いや。失敗の場合さらに火入れする予定だが、どちらにせよ物足りないだろう。以前思いついた一種のディップにしてバゲットと共にいただくとしよう」
「大丈夫?」
「魚から骨を全て取り除く魔法を使っている。小骨は一本も残ってないよ」
どちらにせよ、どうやらしばらくは待つようだ。
「セイバー、それならお茶を淹れて頂戴」
「了解した、マス――」
お茶でも飲みながら、二人の釣りを眺めていよう。
そう考えていた時に。
――ほう、本当にいたか。魔族モドキ。
魔術砲撃が、飛んで来た。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「っ! ディストーションフィールド*2、ならびにATフィールド*3同時展開!」
咄嗟にお師様が魔術防壁を展開する。
物理的・魔術的な攻撃を確実に防ぐ防壁に加えて、空間を捻じ曲げる事で攻撃を捻じ曲げる障壁の同時展開。
訓練でしか見たことがない、お師様最大級の防御の組み合わせ。
それが発動したという事は――
――いいかモニカ。この魔法は今の私が持つ最大級の防壁だ。
――これを私が発動させた時は、とんでもない強敵が現れたという事を意味する。
――戦う事より、逃げる事を考えてくれ。
砲撃が障壁に直撃する。
外側のディストーションフィールドがその効果を発揮せず次のオレンジのシールドに当たる。
その瞬間にお師様が同じ組み合わせを更に二組その後ろに出現させる。
(アレでも一層じゃあ耐えきれないなんて……っ!)
どうにか拡散する魔力の輝きに目を細めながら刀を握りしめ、引き抜く。
先日、斬撃を威力をそのままに飛ばす事に成功した事で認められ、完成させてくれた愛刀。
「お師様! ミリアルデ様を連れて下がります!」
「頼む。こちらは――」
――させると思うか。削らせてもらうぞ。
膨大な魔法陣と共に、とてつもない数の攻撃魔法が飛んで来る。
ミリアルデ様も月霊髄液を発動させて戦闘態勢に入っているが、とてもミリアルデ様だけで捌ききれる量ではない。
お師様なら防げるだろうが、範囲が広すぎる。
直撃を避けたとしても、衝撃が馬鹿にならない。
刀を構え、鯉口を切る。
「ずらします!」
「合わせる」
たった一言で、お師様は分かってくれる。
私の刀は、対魔族戦を目的に作られている。
完成する前からこの刀身そのものは、対魔術式をこれでもかと込められている。
相手の魔法を真芯で捉えれば受け止める事も、切り裂く事もできるのだ。
「お師様命名――っ!」
当然、これから撃ち出される風も。
「烈風!!!」
大量の魔力を巻き込んだ風の一撃。
清らかな浄化の風そのものの刃が大量の魔力弾へ襲い掛かり――容易く蹴散らされる。
だけどその速度は微かに、だが確実に落ちる。
「レイジングハート、セットアップ」
そしてお師様が杖を引き抜く。
切り札の一つ。魔術砲撃戦で敵を圧殺する魔力砲台。
「ディバインバスター三十門展開、魔力装填……斉射開始」
それが周囲に、襲撃者と同じように魔法陣を展開してこちらに向かってくる攻撃魔法を迎撃する。
大きな滝のような、途切れる事のない轟音の中お師様の砲撃が途切れることなく発射され続けるが――
「……っ……不味い」
ディバインバスターは通常砲撃といえど、先日将軍級の魔族を一方的に防御ごと撃ち抜いた程の威力がある。
にも関わらず、それが掻き消される。
かろうじて展開が間に合った防御魔法で防ぐ事には成功したが、迎撃が間に合っていない。
相手の魔法を貫く事が敵わず、どうにか威力を減退させて
「モニカ、マントは使わないで」
「先日頂いたアレですか!?」*4
「多分、耐えきれない。ベルトの方もだ」*5
お師様はそういうと同時に、倉からもう一本杖を引き抜く。
機械的なレイジングハートとは真逆の、特に特徴のないねじれた銀の杖。
「
それを握りしめた瞬間、お師様の砲撃魔法の威力がとんでもない物になった。
「十倍の火力だ。これならどうにか……」
魔法がぶつかり合う轟音が明らかに遠ざかる。
押され気味だった砲戦が、今度はこちらが押し始める。
攻撃している何者かも本気ではなかったのか魔力を込めて、再び魔法がぶつかり合うが、今度は互いの中間の距離での押し合いへと変わる。
――驚いたな。
何者かが、攻撃の手を止める。
同時に、お師様も。
「魔族とは魔法に長けた生物であるのはその通りだが、まさかこれほどの存在がいるとは」
「……確かに私は魔族――人を模倣する獣だが、交戦するつもりはない、主人と弟子の安全を確保するためにも、一度攻撃の手を止めてもらえないだろうか」
再び、砲撃が放たれる。
今までのどの一撃よりも眩しく、重い一撃を。
「カートリッジセット、
その一撃に素早く、お師様が杖を向ける。
「ディバインバスター」
お師様の一撃もまた、先ほどまでの攻撃よりも強力な一撃となってそれを迎撃する。
「……先にカートリッジとやらではなく、銀の杖を抜いた。なるほど、そちらの方は準備に一段階必要なのか。あのまま圧殺していれば違う物も見れたか?」
「解析していないで、こちらの話を聞いてちょうだい」
冷静にこちらの――お師様の魔術兵装を分析している化け物に対して、ミリアルデ様が前に出る。
同じように長い耳を持つ小柄な化け物に対して、一応は同族らしいミリアルデ様が説得を試みている。
「確かに魔族だけど、この子は人を襲わないわ」
「お願いだからちょっと待ってください!!」
またも一撃が放たれる。
お師様だけを狙った一撃を、お師様が先ほども使った二重結界を三層展開して無力化する。
けど、あの絶対としか思えなかった守りがたった一撃で割れそうになっている。
「そう言って結果食われた者がどれだけいると思う。人間はともかく、それなりに生きているエルフならば知っているだろう」
「その上で言っているのよ」
お師様も武器を仕舞って、害意がない事を示す。
私は逆に、いつでも剣を抜けるようにする。
下手すればミリアルデ様ごと巻き込みかねない魔法を何の躊躇もなく撃った敵相手に警戒を解けるほど、私は強くない。
「いざとなれば自害させられる。手綱はあるのよ」
「……魔力を通した血液を介した手綱。……貴様、自分で自分の身体をいじったのか。その身体強化……いや、身体稼働速度の高速化を目的とした術式に介入出来る引き金を自作して渡すとは……」
おそらく、令呪の事だろう。
私はミリアルデ様がアレを使う所は基本的に戦闘でしか見ていない。
ミリアルデ様の魔力を流し込んで、お師様の魔法や身体を一時的に強化するために。
あとおしおき。
「だが無意味だ。武術に長けた魔族に魔法使いは無力だと知っているはずだろう。お前が命令を下す前にそいつはお前の首を刎ね飛ばせる。対応するには、お前はそこのモドキに心を許し過ぎている」
「だったらとっくにミリアルデ様は殺されてますし私も食べられてます! まずは話を聞いてください!!」
砲撃が十倍になって返ってきた。
お師様が結界だけでまた防ぐが、あれだけの魔法を防ぐには魔力消費が激しいだろう。
前に聞いたことがあるが、お師様の魔法や兵装は魔王軍と一人で戦っている時に身に付けた物で、その結果一秒でも早く敵を倒す事に特化したのだと。
だからその分、防御に関する魔法はとにかく素早く頑丈な物を展開する事だけに注視した結果消費の激しい物になったと。
一人だけならともかく、私達を守るとなれば相当キツいハズだ。
「話を聞けって――」
どう見ても話が通じる相手ではない。
お師様は私達を守りながら、仕掛けず耐えて話を聞いてもらうつもりのようだが、これでは絶対に息切れの方が早い。
相手が魔族でないのならば血闘術だって効きが悪い。尚更不利だ。
だったら――
「言ってんでしょうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
お師様がこれを完成させてから、魔剣として使った事はまだない。
普段から強力な風の攻撃に慣れ過ぎると、それを失った時に戦えなくなるから。
お師様に着いていけなくなってしまうから。
だけど、今は――っ!
「烈風!!!」
砲撃の隙をついて飛び出し、風を刃にして刀身に込めて、撃ち放つ。
耳の長い化け物が、やはり魔法でそれを防ぐがお師様への圧が減った。
「モニカ!!?」
「お師様! 無理です! 突破口を開くしか!!」
「…………っ……そうだな。仕方ない」
お師様は優しい。
これまでの旅で確信を持っている。
だからきっと、エルフの形をしている敵を傷つけかねない一手を放つ事に躊躇うだろう。
だからこそ、私が。
「仕掛けます!!」
いつもはあまりやらないパーティ戦。
連携も当然訓練しているけど、いざという時のために一人で切り抜けられるようにと戦闘は少数ならば私に任されている。
でもこれほどの敵相手ならば、単体だろうと連携が必要になる。
「レフト&ライト、起動」*7
私の左右に発現した金色の渦から、銀色の肢体が現れる。
顔のない淑女、顔のない従者。
「いざという時のミリアルデの追加護衛として調整を繰り返していたメタルゴーレムだ。君のサポートに回す」
「ありがとうございます!!」
「マスター、防御アーティファクトの全てを展開して下がっていてくれ」
「ええ。気を付けて」
そしてお師様も、武器を抜く。
辺りに薔薇の花弁*8が舞い、白く縦に長い盾のようなもの*9が舞い、そして細かく光る粒子*10が展開される。
「……ほう」
その輝きを見て、敵は笑っている。
「魔力探知の阻害か。面白いな」
「こちらを探知する誘導式攻撃魔法が数を揃えられると押し切られてしまうのでな。それを無力化するために開発した」
「……物に魔法を込める魔法。それ自体も面白いが、なにより作製のために開発した魔法の数々が素晴らしい。その一点だけは好感を持っているぞ、魔族モドキ」
「ならば夕食に誘いたい。魔族相手ならばともかく人類に属する物とは、刃ではなく言葉と料理で語り合いたいと思っている」
砲撃が、再び放たれる。
対してお師様は、今度は防御魔法を使わない。
大きく跳躍してその一撃を躱すと同時に、剣を引き抜く。
「マテリアブレイド、抜剣」*11
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「全体化、セット。『プロテダ』、*12『シェルダ』*13並列起動。発動」
どう決着をつけるか。
それを考えながら獣は剣を引き抜き、弟子と自分に最上位の防御補助魔法をかける。
マテリアブレイド。
目的に特化した魔道具を用いなければ魔法の発動そのものにラグが出てしまう自分の癖を矯正するための剣。
特定の魔法を全力で込めた多種多様の疑似宝石を発動媒体として作った剣に装填することで、苦手な魔法戦を可能とする魔剣の一つ。
「……本当に面白い物を作るな。使い手の好みに合わせて調整が出来る魔法剣か」
「申し訳ないが、我々の旅は続いている。ゆえに、道を切り開かせてもらう」
――ブリザガ
モニカへの牽制として、敵性エルフに対して氷塊の魔法を放つ。
無論、こんな基本的な魔法では届かない。
あっさりと発動起点から距離を取られて躱されるが、それでいい。
「おおおおっ!!!!」
その先にはモニカがいる。
風を操ってわずかながらに
「まさか、魔法使いより先に魔剣を使う小娘が空を飛んでみせるとはな」
それをエルフは魔法一つで防いで見せる。
それはいい。予想通りだ。
だが身じろぎ一つもしないとは思っていなかった。
今のモニカの一撃は、飛んでいる竜を叩き落とせるほどの威力があるというのに。
(ミリアルデも魔力は相当なものだ。だから令呪契約を用いてからは、私自身の通常魔力も増えているんだが……このエルフは尋常ではない)
それでも、殺すわけにはいかない。
モニカやミリアルデも目当てとする賊ならばともかく、言っている事自体はまともなエルフだ。
この身は人を模倣する獣。
人を模倣した姿で紛れ込み、人を模倣した言の葉で誑かし、その肉に牙を突き立て貪る危険な野生生物だ。
それは危機感から駆除しようとするのは普通の話である。
この旅の切っ掛けとなった、彼女のように。
(だからこそ……)
殺すわけにはいかない。
そんなことをすれば、
(逃げるタイミングを、間違うわけにはいかないな……)
からくり仕掛けの淑女二体がエルフに襲い掛かる。
片方はレイピアのように細く鋭い爪を伸ばして。
片方はその額にらせんの角を起動させ、貫通力のある魔力砲撃を放って。
そのどちらも防ぐ。
初歩的な障壁だけで、本来ならば撃ち貫けるはずのレフト&ライトの魔力砲撃をその濃度だけで無力化する。
「マテリア・チェンジ」
元々一人で魔族と戦い続けるために作った剣だ。
こうして肩を並べて戦う相手が出来ると思っておらず、魔法の効果を複数にする連結装填が可能な穴は限られている。
前衛の一人と二体が稼いだ僅かな時間の間に、防御補助のマテリアを抜き、切り替える。
「ヘイスガ」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
(妙に未来がブレてハッキリ見えなかったのはこの魔力で形成された粒子が原因か? 一対一ならともかく、複数を相手取ると存外厄介だな)
見た目以上に良く仕上げられている女剣士の動きが、突然加速し始める。
(対物理、対魔耐性の上昇に肉体活性……違う……まさか、部分的な時間操作か? 余りに手数が多すぎる。なんなら捕まえて研究材料にしてみたいと、僅かに考えてしまう程には興味深い)
「あのモドキを近づけさせると不味いか。コイツらでさえこのレベルだ。しかし――」
もっとも練りが低いハズの女剣士でさえ相当鍛えられている。
油断していい小娘ではない。
風を操る魔法そのものは、まだ訓練が足りないのかそもそも出来ないのか型が限られているが、純粋な剣術が恐ろしく厄介だ。
歴戦の戦士を越える速度を最大限に活かして、不足気味の威力を補っている。
「なるほど。『夢』で見た時はまさかと思ったが、それ以上だ」
それを援護する二体のメタルゴーレムもまた強力だ。
小娘とほぼ同等の早さに、念力型と雷撃型の魔法を組み合わせてこちらの障壁を確実に削っていく。
額の突起から発射される魔力砲撃は貫通力が高く、これも油断できない。
「面白い、興が乗った」
そして問題の魔族モドキは、驚くべき魔法を作り出している。
この一人と二体を強化した驚くべき補助魔法。
身体強化魔法は実際に
先ほどの氷塊を発生させる魔法など正にそうだ。
「削って様子を見るだけの予定だったが――」
突然、自分がいる
一見目立たないが、恐るべき魔法だ。
どういうイメージを元にして組み上げたか不明だが、あれが広まれば『防御魔法』という概念が消し飛ぶ。
実に、興味深い。
ゆえに――
「少し本気で殺してやろう」