ワイ「やろうと思えば何でもできる不思議パワーが使える種族に転生したから色んなモノ模倣してみるわ」 作:rikka
「エルフを見かけた?」
「はい。ミリアルデ様以外のエルフなんて初めて見たのでちょっとびっくりしちゃいました」
「えぇと…………お爺ちゃんの小屋に辿り着く前に戦ったじゃない?」
「? 化け物がどうかしましたか? ミリアルデ様」
「……………………いえ…………ごめんなさい、なんでもないわ」
城塞都市ヴァーレからやや離れた所に出現させた小屋の中で、偵察兼買い出しに出ていたモニカが買ってきたお土産を口にしながら、先日改めて出した炬燵を私達三人で囲んでいる。
今度の炬燵は試験的にテーブル部分に調理器具を仕込んだらしい。
はめ込まれている板を外せば、肉や野菜をその場で焼くプレートがあるのだとか。
「ミリアルデ、今エルフはどれくらいいるのだろう?」
「……さすがに数はちょっと分からないわね。人間みたいに管理する国家があるわけでもないし、長く生きる。だから里に定住せず、旅をし続けるエルフも多くいるわ。魔王軍の攻撃が激しい中、もうほとんど残っていないと言われても納得できるし、大勢隠れていると言われても納得できるわ」
「ふむ」
かつてセイバーが屋台を運営した時に販売したテリヤキバーガーは、レシピが広まると同時に各地で独自の変化を遂げている。
肉を変えてソースを変えて、挟む野菜を変えてアレコレと独自の色を出そうとしている。
セイバーが作った物に比べてバンズが硬く、油を吸い込んだ内側との食感の違いが面白いモニカのおみやげを味わいながら、セイバーがかつて救ったエルフ達を思い出していた。
「ただ、生き残っているエルフは皆中央諸国に集まっていると思うわ。あるいは、もっと南に」
「魔王軍が標的にしているからか」
「ええ。セイバーが戦ったあの里の子達も、もっと南に向かうと言っていたでしょう?」
「あぁ、そういえば。……アッグを使ってくれているといいんだが」
「使ってるわ。絶対に」
最新作ほど万能ではないけど、畑を勝手に耕してくれるゴーレムなんてさぞ酷使されているだろう。
基本的に森に自生している物を採って生きているエルフだが、ああいった物があれば必ず畑作に手を出しているだろう。
「ならば好ましい。しかし、ならそのエルフは逃げて来た個体だろうか?」
「見た感じエルフは一人だけでしたが、誰かと一緒だったみたいですよ」
「そうか。ならば問題ないか」
もしそのエルフがいわゆる戦災難民だったのならば、どうにか力になろうとしたのだろう。
正直、そのエルフに同行者がいた事に違う意味でホッとする。
モニカの『小烏丸』を新調して改めて完成させたとはいえ、まだまだ武装は十分に戻ったとは言えない。
そんな状況で、下手に厄介な事に首を突っ込んでほしくなかった。
いえ、辺り一帯を破壊し尽くせる代物ならば山程あるのだが……。
(『バリオン創出ヘイロウ』だったかしら。セイバーが自主的に封印するのも納得の威力だけど、あれでまだ未完成品――どころか一割も出来ていないというのが恐ろしいわ)
しかも聞けば、あの時
その殺傷力のせいである意味全力を振るえなかったセイバーは最近、普段の鍛錬や修復・新調に合わせて『非殺傷型攻撃魔法』や兵装そのものの非殺傷化という物を研究し始めている。
上手くいけば、あのレイジングハートが本当の意味で完成するらしい。
……………………。
あの威力を殺さず浴びせ続けるのはただの拷問じゃなくて?
……え、大丈夫? 問題ない?
むしろ、真の強者とは渡り合う事で親友になれる?
……………………。
………………………………………………………………。
そう、なの?
…………そう。
君程の強者が言うなら、そうなのかしら。
「それでお師様、しばらくはここに滞在するって事で仕事を見て来たんですけど」
「どうだった?」
「とりあえず、橋の修繕が早まりそうな街道沿いの魔物退治でも受けようかと思います」
「? 橋の修繕で、街道?」
「つまり、物資運搬の安全を確保しようということだよ、ミリアルデ」
「ああ。なるほど、そういうこと」
セイバーはモニカのおみやげになにかしらのインスピレーションを受けたのか、紙とペンを取り出して色々書き込み始めている。
三枚目に手を出した時に、ふわりと一枚目が少し風で近づいたので手に取ってみると、予想通りレシピだった。
どうやら歯ごたえのあるバンズが気に入ったらしい。
「人の往来が増えるということは、魔物からすれば餌の行き来する……人間風に言えば、罠を仕掛けやすい獣道の様なものだ。その周囲は魔物の縄張りが増え、襲われる頻度も上がる」
「この地方に騎士団はないのかしら?」
「……巡回はしているだろうが、手が足りていないのだろう」
「はい。なんか、ティナちゃん……って言ったら不味いか。領主様の御息女を拐った
たっぷり氷を入れたグラスに注いだウーロン・ティーをストローで吸い上げながら、モニカが手帳を取り出す。
セイバーが『繊維を漂白する魔法』と『紙を作る魔法』、そして『本を作る魔法』の合わせ技で作った真っ白な紙の手帳だ。
地味に商人への売れ筋商品として、路銀稼ぎに役立ってくれるある意味主力商品。
モニカが持っているのは、その中でも特製品。
わざわざ表紙になめし皮を使っており、立派な逸品に見える一冊だ。
「北のエング街道のさらに上、デッケ地方で魔王軍の先遣隊と小競り合いが起こってるらしいんですが、あの魔族はそこへの補給線の通り道であるこのヴァールを陥落、あるいは閉鎖させて中央諸国軍を孤立させようとしたんじゃないかって兵隊さん達が話してました」
「……偶然とはいえ工作を担当していた将軍を討ち取った、という事か」
「で、一気に兵隊が押し上がって当然向こう側の補給路も守らなきゃいけなくなった……って感じですかね」
「ねぇモニカ。依頼はそんなにあったの?」
「ええ、山ほど」
その手帳は、町で気にかかった物――変わった料理や出来事、祭りや習慣から仕事依頼の内容まで、とにかく色々と書き留めている。
「ちょっとした手紙の配達、山菜取りや狩猟の補助、開墾作業に治水、商隊・輸送隊の護衛と……本当に色々ありますね」
「モニカ、魔物の討伐はなかったのかい?」
「ええ。というより、特定の魔物討伐依頼がないだけといった感じでした。街道を塞ぎかねない魔物を発見次第討ち取れ、みたいな感じでしたね」
「…………それでは報奨金が安いだろう。何を討伐したのか確認も出来ないだろうし」
「はい。なんというか、アレでしたね。前線任せるには不安な傭兵崩れにとりあえず職を与えてちょっとでも安定させよう……みたいな?」
人間との交渉・折衝役を任せた結果、モニカは剣の腕だけでなくその見識も磨かれている。
セイバーはモニカの才能が天賦の域にあるためと謙遜しているが、それを踏まえても私の従者は人を育てる存在としてかなり優秀だと思う。
実力があって時勢を読み取る見識があり、あちこち移動しているので少し作法がバラけているが礼儀正しくも出来る。
いつぞやの時は貴族がモニカに対して護衛と言いつつ妾――愛人のように扱おうとしていたのが透けて見えたために断ったらしいが、その気になればモニカはすぐにでも国に仕官できるし、出世も容易いだろう。
この前の戦いで勝ち切れなかったのを随分と悔いているようだが、そもそも
「……どうします、お師様? 人がアチコチから集まっている分隠れ住むには問題ないでしょうけど、だからこその万が一があります。進路を変更しますか?」
「いや、それには及ばない。ソリテールらとの戦いの余波もあって領主軍の目に留まる可能性が高まったから先生の所を出たが、魔力の回復と合わせて装備品の修理や新調は必須なんだ」
そうだ。セイバーの戦力は大きく低下している。らしい。
魔族相手ならば容易く倒せるし、魔物でも空を飛ぶ竜の群れでもない限り苦戦することはあり得ないし、その気になれば城塞都市を一瞬で吹き飛ばし山に大穴を空けられるが、それでも戦力は低下しているらしい。
戦力ってなにかしら?
本人は魔王は人間が倒すべきだと言っているが、彼女が本気になれば魔王は倒せるだろう。
もっともそうなればセイバーが新たな魔王になってしまい、魔族を統率せねばならない罰ゲームを押し付けられるのだろうが。
「モニカは好きに過ごしていい。依頼を受けるも良し、町の中に宿を取って過ごしてみるのも良し。連絡ならばいつでもつくだろう?」
「そうですね。
そう言ってモニカが、手のひらサイズの薄くて少し重い板を取り出す。
「スマホ。……というよりはスマホ型の多機能型トランシーバーだな。双方が一定範囲内にいれば通話機能とメール・写真の送受信が可能だ」
『スマホ』とやらも『トランシーバー』やらも分からないが、とにかくセイバーは最近生活を便利にすることに力を費やしている。
あまり魔力を消費しないので見守っているが、やはりセイバーとしても武器を作るよりこっちの方が好ましいのだろう。
今は中に入れた物を凍らせる箱を頑張って作っている。
少し前まで出力が難しいと言っていた――実際、入れた魚を腐らせてしまったり、逆に触れただけで砕けてしまった事があった――のだが、お爺ちゃんの所で鍛冶を学んだ事で作成が可能になったらしい。
セイバー曰く、鍛冶技能のおかげで魔力を使わない金属精製が可能になって物体の『リソース』とやらが大きく空いたらしい。「40キロバイトでどうにかやりくりしていたのが急に40テラバイトになった」のだとか。
意味は分からないがいい事なのだろう。
実際、新調した作品はどれも驚くほど進化した。
システムキッチンもこれまでの機能に防カビ、防臭、ぬめり取り機能が通常機能になった。
あまりに出来る事が増えたせいか迷走も増えて、この前のキッチンは蛇口を切り替えると三種類の『
結局取り外していたが。
「もう少し頑張ればアプリケーションの開発も出来たのだろうが、さすがにそれには今の私の魔法精度では根気がいる。当面は通信機能だな」
「いや、これでも十分すぎますよ。本当に私が持ってていいのか不安になる程に」
「ミリアルデとは令呪――私の血液を用いた魔術刻印による繋がりを利用した念話でいつでも会話できるのだが、モニカには無理だからね。価値を理解した上で、最優先で作った」
先日の襲撃の件があるのだろう。モニカとの連絡手段は多ければ多い方がいいとかなり集中してこれを完成させていた。
長距離念話があるとはいえ万が一のためにと、私も持たされている。
……まぁ、正直あって困る物ではないし、存外楽しい。
特に、いつでも写真が撮れるのがいい。
厨房に立っているセイバーの姿や、剣を振ったりセイバーとカードで遊んでいるモニカの姿がたくさんこの板の中に詰まっている。
セイバーに、中身を移し替えて保管できる魔道具を依頼しておこうかしら。
これから先を考えると、膨大な量になりそうだ。
「これがあればいつでも繋がれる。少なくとも半年の間、私も装備の復旧に専念しよう」
「なるほど」
モニカはセイバーの言葉に納得したようで二・三度頷き、再び手帳に目を落とす。
「なら、良い機会ですししばらく私もヴァーレを楽しもうと思います。戦火が遠ざかったとはいえ、安定しているとまでは言えないようですし」
いつものマント以外にも装備を増やしつつある、赤の勇者の『一番弟子』が道を決定する。
「しばらくはここいらの魔物を狩りながら、色々探してみようと思います」
「探す?」
「野草や野鳥、魚のサンプル。お師様、料理の研究も並行してやってるんでしょう?」
「……君は、本当にどこまでも私の弟子だな」
「ああ、頼むよ」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「じゃあ、しばらくはここで仕事するの?」
「そうだ、フリーレン。なにせ橋が壊れて足止めされている以上、金の無心にも行けんからな。幸い前線が押しあがった事で仕事は山ほどある」
「……大丈夫?
「何を言っているフリーレン。ここに魔法を使うのが当たり前の種族がいるじゃないか」
ヴァーレに宿を取って一週間。
私はひたすら魔力を制限しながら先生の攻撃魔法を防ぐ訓練を繰り返している。
先生はその間、時間が空いた時にこの近隣のワルキューレの村に行って例の手紙を持って行った。
あのゼーリエというエルフが、ワルキューレの結界の欠点を埋める結界の魔術構成を書いた物だったとか。
結果として、ワルキューレはすでに結界を進化させて他の村と共有していたけど、参考にさせてもらうと言ってお礼と一緒に彼女達の村への立ち入りを許可されてきたらしい。
今度一緒に中に入ろうって話になった。
ゼーリエは酷くワルキューレやアイルーに執心している。
おかげでヴァーレに辿り着くまで随分と時間がかかってしまった。
こっちは赤の勇者――あの気味の悪い魔族とミリアルデの足跡も辿らなきゃいけないのに、こんなに寄り道させるなんて。
私よりもよっぽど年上だろうに、子供みたいな人だ。
「お前も戦いは経験しているようだが、それでもその数は少ないだろう?」
「……まぁ、そうだね。私達が赤の勇者の後を辿っているのもあって、大体平和だもん」
赤の勇者の通った道筋は魔王軍の攻勢が強まっている時勢とは思えない程に平和だった。
周辺の魔物を大体狩っているのもあるが、なにより魔族がいないことが大きい。
調べていて分かったが、魔族の動きが大体二種類に分かれている。
赤の勇者を見かけるや討ち取ろうとする攻撃的な奴と、その道筋から離れようとする慎重な奴だ。
(魔王軍の中でも、奴の扱いに関しては意見が分かれているのかな……)
赤の勇者が手をかざした瞬間、聖典の気配がする清らかな風が吹いて魔物を吹き飛ばしたなんて眉唾物の話もある。
あのフードの下に角が生えているだろうと知っている私達からすれば笑えない話だけど、
仮に聖典の魔法を発動出来たとしても驚かないって。
本当に、
「大体、
「何を言っている。今を見逃がせば二度と手に入らないかもしれない物があるんなら、買った方が得だろう」
「……得?」
「私達人間はそれを手にするためにかかる貴重な時間を削減できる。エルフであっても、いつまでもダラダラ時間をかけるくらいならば金を使えばいい」
……そうかな。
「例えば貴重な魔導書、例えば入手頻度が低い魔物素材。本来ならば運という曖昧な物に賭けるところを金で解決できる。これは効率的だろう? そして金は無くなるわけではない。稼げる場はちゃんとあるんだ」
……そうかも。
「なるほど」
「分かったか、フリーレン」
「うん。で、どうやって稼ぐの?」
「当面は警備補助だな。街道に魔物が出て前線に影響が出る事を恐れている。一気にドカンとは稼げないだろうが、それでも払いはしっかりしているハズだ」
「……魔物戦?」
「油断するなよ。迂回して魔王軍が襲ってくる可能性だってある」
仕事の斡旋場も兼ねている安宿の一階では、暇を持て余した傭兵たちが時間を潰したり張られている仕事の依頼書を吟味したりしている。
せっかく前線が安定したのに制御できるか分からない傭兵――正確には実績が不明の二流以下の傭兵達を前線に連れて行かなかったのだ。
「一応念のために、前衛を探すぞ」
「……いい人、いるの?」
「だから探すんだよ。とりあえず野郎共は論外だ。……だから、御呼びじゃないんだよお前ら! 散れ! 散れ!」
「男の人しかいないってば、
――おはようございますおば様。仕事は昨日と変わらないですか?
――あらモニカちゃん。今日も来てくれたのね?
――はい、師匠がおば様の料理を気に入ったようで、依頼のついでにまた何か買って帰ろうかと。
――あらあら。
――で、仕事はどうなっています? なにか厄介なのがあれば優先して受けようと思うんですが。
――そうねぇ…………。
そんな時。
黒い髪を後ろで束ねた、細剣を腰に提げた女剣士が、宿の扉を開けて入って来た。
セイバー:ミリアルデの従者。今の世界線の獣。
やろうと思えば大量の試作システムキッチン射出&圧殺という手がある。
見栄えが悪すぎるし調理のための作品なのでやりはしない。
が、ソリテールを目にした時はいつも初手システムキッチン乱舞が脳裏をよぎる。
アーチャー:フランメの同行者。セイバーとそう変わらない装備。
とある大魔族との戦いの過程によっては金色の倉庫が紅くなる。
フランメの我儘に応え続けた結果、料理はセイバーに落ちるが家事技能は最上。
ランサー:魔王が倒されるまで一人で過ごしていた末に、逃げるシュタルクを拾った時に至る。
神機がランススタイルになり、全体的に近接寄りに。
キャスター:紆余曲折の後にゼーリエに飼われた姿。ゼオライマー的な冥王降臨。
コイツとゼーリエでWゼオライマー。
一級魔法使い最終試験:『この魔族を一回殺して見せろ』
ライダー:ヒンメルの時代まで単独で生き抜いた姿。誰も近寄れない海を支配していた。
誰も追いつけない速度で海の上を泳ぎ回る、巨大な金属の船を以って。*1
強襲揚陸潜水艦*2とか作る上で海底都市*3とか作って引き籠ってる。
時折捨てられた人間を拾っては引き入れては教育を施してリリースする生活。
結果伝説の海底都市となって探されることになる。
アサシン:積極的に魔王軍との対決姿勢を示した、最も好戦的な獣。人間に憧れ正義に憧れ、魔族という悪を殺し続けていずれ殺される獣。
バーサーカー:とある少年をマハトによって物言わぬ姿にされた時に至っていた。
魔族を狩り、魔法を収集し、なんとしても少年を取り戻そうとする獣の姿。