ワイ「やろうと思えば何でもできる不思議パワーが使える種族に転生したから色んなモノ模倣してみるわ」 作:rikka
「ぁ……あぁ……」
――グァァァァ……ァァァ……ッ
その日は少女にとってなんてことのない、いつも通りのつまらない日々が繰り返されるハズだった。
いつものようにお母さんに朝起こされて、いつもの味のしないパンをかじって日課である水汲みに行かされて、それから――本当は山菜集めに行くはずだった。
だが、帰って来た時に――そこは地獄になっていた。
隣の家のおじさんが、血まみれで壁にもたれかかったまま動かない。
道で遊んでいたら怒るおじいさんは、あおむけに倒れて大きな犬の様な魔物に生きたまま弄ばれている。
離れたところで剣戟や魔法の音が聞こえる。
きっと守衛さん達がまだ戦っているのだろう。
「なんだ、こちらにまだ人間がいたのか」
「子供だ。肉は少ない」
「使役した魔物の餌や玩具にはちょうどいいだろう」
だが、今自分の周りには誰もおらず、目の前には頭に角を持つ
そしてその周りには、顔を知っている人たちを食い漁っている魔物がいる。
「早くここを落として、エルフ共の巣を探す拠点にせねばならん」
魔族の男がこちらに手をかざす。
殺される。
「た、助けて……」
それが分かっているのに、足が動かない。
ただただ震えるばかりで、欠片も動いてくれない。
「さっさと死ね、小娘」
その言葉に咄嗟に目をつむり――
――死ぬのはお前達だ。成長のない同胞らよ。
閉じた瞼の向こうから、何かを切り裂く音が響いた。
「――なっ!?」
「馬鹿な……お前は――!?」
「――神機、起動」
続けて似た音が二つ。
鋭く。
重く。
切り裂く音が続いた。
「すまない。遅くなった」
恐る恐る、目を開ける。
「もう大丈夫」
そこには赤いコートをはためかせて、同じように赤い大きな剣を持ってる人が立っていた。
フードで頭が見えないが、声で分かる。女の人だ。
抑揚がなくて、感情が酷く分かりづらくて少し怖くて――
「私が来た」
それでも、とても頼れる背中がそこにあった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「ミリアルデ、生存者を頼む」
「まったく、いきなり私を抱えて飛んだと思ったら……」
思った以上の無茶をしたのか、日課どころか家事すらままならない程に消耗した彼女の回復を待つ事七日。
『血の匂いがする。かなり濃い』
当初予定していた家畜を魔法具と交換してくれそうな人里を探して歩いているうちに、道中の護衛として付いてきた魔族君はそういうや否や私を抱えて飛行魔法を使用し、地面すれすれを滑るように飛び立った。
まだ目を細めても点にしか見えなかった開拓村へと駆け付けるや否や、ようやく完成したという赤い大剣を引き抜き、目に入る魔族や使役されている魔物たちを次々に斬り倒していった。
「神機、砲戦形態に移行」
だが、この村を襲った魔族たちはかなり多い。
現に今も私たちに襲い掛かろうとしている、犬や狼に似た魔物が飛び掛かってきているが――
「薙ぎ払う」
片っ端から吹き飛ばされる。
剣が引っ込み、砲戦形態と呼ばれた金属筒を束ねた武装が、魔力弾を目に見えないほどの速度で吐き出していく。
形容しがたい轟音と共に、ありとあらゆる魔物が吹き飛ばされていく。
周囲の建物ごと。
「……市街戦が記憶以外では初めてというのもあるが……やりづらい」
もっとも、この村はすでにボロボロだった。
ここで吹き飛んだ所で魔物を倒せれば人間はそれで良しとするだろう。
だが、彼女は違うようだ。
この村の人間と同じく、その生活の場であるこの村そのものも守るべき物に数えている。
「バレットチェンジ」
カチリと、神機の形を変える時とは違う音がする。
この所の手入れ作業を眺めている時には聞かなかった音だ。
泣きじゃくっている女の子をとりあえず引き寄せて抱きしめている間に、魔族は更に行動を進める。
神機を持つ両手が輝く。
その輝きは、聖典の――女神の魔法を行使した証。
「半径五十メートルの負傷者把握。……
一瞬、彼女がここに来て魔族側に立ったのかと思った。
鉄筒の先から、先ほどまでのような破壊の青い弾丸ではなく、淡い緑の弾丸が発射され――そこらに倒れている人間に突き刺さったからだ。
その意図が一瞬分からなかった自分の目に入ったのは、まだ立ち上がる気力が湧かなくとも、確かに瀕死だったハズの村人たちの傷が徐々に塞がりつつある姿だった。
(……あれほどの深手を癒す聖典の魔法は聞いたことない。ましてや、それを加工し射出、治癒が完了するまで残留させるなんて……教会関係者が見たら目を剥いて発狂しそうな真似だね)
小屋どころか最小の村と言っていい姿になりつつある私の家候補といい、この魔族は隠れる気があるのだろうか。
魔族君は傷が癒されつつある怪我人たちの様子を見て、何か不満でもあるのか首を傾げながら神機をいつもの大剣へと変形させる。
「結界を張って、出来る限りの人を中に入れてくれると助かる」
「……まぁ、君の日々の献身に応えるにはそれくらいの労働は当然か。君は?」
「? 疑問を持つ余地があるだろうか」
そしてそれを倉庫の中に戻した彼女は、今度は同じくらい大きな
「残っている敵を掃討する」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「どうした!? 何が起こっている!?」
剣を握りしめていた開拓村の衛士長は、思わず声を上げていた。
窮地だから――ではない。
その窮地が、突然覆ったからだ。
――馬鹿な、一体どこから攻げっ!!
――魔力探知に引っかからないだと……っ……そんな馬鹿なはなぶっ!!
――人間どもは放っておけ、一度引いて攻撃元をばっ!!!
ずっと魔物の襲撃からこの町を救い続けてきた兵士達を一方的に嬲り殺していた魔族たちが、今度は一方的に嬲り殺されていた。
どこからともなく飛んで来る――飛んで来ているのだろう何かに、例外なく頭を吹き飛ばされて黒い塵となって消えていく。
「狙いは全て頭。……そういう魔弾か」
今の今まで戦っていた、手で触れた物を錆で覆わせる魔族が距離を取り、魔力障壁を張って頭を守る。
途端にその障壁にカカカカッ! と軽い音と共に火花が走る。
「とにかく当てる事に特化した弾。それさえ分かれば対処は容易い」
人間そのものにしか見えない化け物が、見えない程の速さで飛来して来ているだろう弾丸の発射方向を見据え――
――そうだ。そうして守りに入ってくれると助かる。
次の瞬間、その身体がグシャア! と音を立てて砕かれた。
「な……っ!?……????」
そこらの村娘と変わらない少女が、その身の丈を超える
「貴様か!」
「馬鹿め、姿を――」
突然魔族を殺した怨敵を殺すべく、他の魔族もそれぞれの武器や魔法を以って少女に殺到する。
だが、
「ライヘンバッハ、再起動」
少女がその棺桶を持ち直し、真っ直ぐ地面に足部を叩きつけると同時に、爆発音とともに再び何かが発射される。
その何かは轟音と煙を吐きながら、魔法で攻撃しようとしていた魔族へと真っ直ぐ飛び掛かり、そして爆発した。
自分達が呆然とそうしているように、突然の事に魔族達すら何も出来ていない。
ただし武器を手に殺到していた魔族達は速度を落とさない。
武器を手に、少女の身体を切り刻み、叩き潰そうとし、
「術式詠唱破棄、
そのどれもが、届かなかった。
彼女の赤いコートの下から零れ落ち、瞬く間に広がった銀色に輝く液体によってその全てが防がれる。
「邪魔」
そして全員に出来たその隙を、少女は逃さなかった。
鎖で繋がれた取っ手を握りしめ、どう見てもそこらの斧より重いだろう棺桶をまるで
「……神機より扱いやすいが、魔力消費が激しいのが難点か」
なんという事のない――強いて言うなら男が着るような服の上から赤いコートを羽織った少女が、瞬く間にその場にいた敵を全て一掃してみせた。
その事実に衛兵の誰もが動けなくなっている。
「指揮しているのは?」
「…………え」
「衛兵を動かせる人は誰」
フードを被っていて顔が少し見えづらい少女が、自分を探しているのだと理解して突然脳が回り始める。
「あ、ああ! 助勢に感謝する。私が衛士長だ」
「向こうで私の連れが結界を張っている。すぐに住民の避難を」
「――! すまん、助かる!」
「それと、皆一度ここに集まって」
用意されたという避難場所があると聞き、成さねばならない事が次々に脳に浮かび、その順番を整理している時に少女から妙な指示を受ける。
「ここにとは……ここに?」
「どこでもいい。怪我している人達を一か所にまとめて」
「あ……あぁ……」
切迫した状況だった所で、突然敵がいなくなり――しかしまだアチコチに魔族がいる事で兵士達が少し判断に迷っている。
だが、一瞬でこの絶望的な状況を覆した少女の言葉だ。
私はすぐさま「集まれ!!」と叫んだ。
動けない程の者が、他人の肩を借りて私と少女がいる場所まで集まるのを彼女は確認すると、コートの下に手を伸ばす。
一瞬、なにかが光った後に彼女は、大きな石程の小袋を取り出し。
「応急処置。本格的な回復は後で」
それを地面に叩きつけた。
同時に淡い緑色の――まるで僧侶が使う女神様の魔法のような輝きを纏った粒子が沸き上がり、周囲へと拡散していく。*2
最初は不可解な顔をしていた衛兵達は、すぐに異変に気が付いた。
――怪我が……。
――痛みが引いている!?
――腕が! 腕が生えた! 元通りだ!!
――う、動かなかった足が動く! 感覚があるぞ!
魔族とそれが使役する魔物の群れという強大な敵の前に、もはや立つのがやっとの衛兵達が次々に回復している。
ただの怪我から手足の欠損まで、光に触れた者はその怪我が完璧に治っていた。
それに気付いた兵士達は、淡く輝きながら漂う粉末を少しでも浴びようと殺到している。
だが――
「……応急処置にしては随分と凄まじい効果だが……これは一体?」
だが、あまりに回復しすぎている。
いくら聖典の魔法の使い手と言えど、これほどの真似が出来る物なのだろうか。
さすがにこれは不自然だと少女の方を向くと、
「…………なんだ、これ…………」
当の少女が絶句していた。
先ほどまで全く表情を変えずに魔族を狩っていた彼女が、目を見開いて呆然としている。
「人相手なら最初からこうなのか、それとも……聖典を刻み込んだから? まだ途中だし文字も判別が難しい程小さくなっているのに……」
彼女はポツポツと何かを零しながら、その手になにかしらの女神の魔法を発動させる。
この村を守るようになってそれなりに経ち、様々な僧侶を見て来たがこれほどの輝きは見たことがなかった。
「いや。とにかく問題はない。敵は私が討つ」
しばし呆然としていた少女は、再び棺桶を手に取る。
「すまない、頼む。私達は救助とその護衛に専念する」
今ここにいる兵士の誰よりその背は小さいのに、この場の誰よりも頼もしいその背中は、次の戦場に向けて動き出していた。
「そうだ。君の名前は?」
「……名らしい名はない」
「ただの職人だ」
この後、村を襲った全ての魔族は、その使役獣ごと駆逐された。
逃走すら許さず。
一匹残らず。
獣が駆る魔弾によって沈黙し、まるで最初から彼らが存在しなかったように全て黒い塵となって消えていった。
そして開拓村の生き残りは、亡くした者達へ思いを馳せ、そして自分達を守り復興も手伝った二人の美しい少女の事を語り継いでいった。
紅い外套を着た少女の、その圧倒的な強さを。
ありとあらゆる魔法や攻撃から民を守り抜いた結界を張ったエルフの献身を。
数ある勇敢な冒険者の物語の一つとして、魔王軍先遣隊をほぼ単独で壊滅させた少女と、強力な結界魔法を用いて多くの人を守り抜いたエルフの話は近隣の村々で共有され、広がっていったのだった。
「魔族君」
「………………」
「どこに行っても聖女様とかミリアルデ様とか呼ばれて厄介な事になっているんだけど」
「………………」
「家畜も交換どころか複数もらって、君の予定を三段は飛ばして牧場がほぼ完成しているんだけど」
「………………」
「ついでに、一度里に戻ったらエルフにまで話が流れていて面倒だったわ」
「………………」
「ねぇ、魔族君」
「………………」
「君も、『奇跡の聖女』とか『赤の勇者』とか言われてるんだけど」
「…………ミリアルデ」
「うん」
「どうすればいいのだろうか」
「私の言葉よ」
「止めてくれ。謝るから頬を突かないでくれ」
「……脇腹もだ、ミリアルデ」
超過剰武装多目的棺桶『ライヘンバッハ』
簡単にいうと機関銃にミサイルランチャー、レーザー砲を詰め込んだ上で本当が打撃武器として使える鎖付き改造棺桶。
棺桶。
『Fate/Grand Order』にてアラフィフことジェームズ・モリアーティ(アーチャー)の通常武装として登場
原点では魔弾の射手の力を用いた必中の武器として登場するが、主人公は以前作ったとある槍を参考に、絶対に頭部(絶対の弱点)を狙う連射武器として作製。
近接も砲戦も可能な武器な対魔族兵装としてメインウェポンの一つである『神機』を作成したが、必ず形態を切り替える必要があるため、対多数戦では取り扱いは難しくなっていた。
そこで似たような取り扱いが出来る武装として作製したのがコレ。
かなり強いのだが、多数の魔法弾丸や疑似ミサイルに必中の概念を付与して湯水のように使うので魔力消費がかなり早い。
『神機』と違い、魔力吸収まで組み込めなかったためである。