青井さんリトライ!+ゴスハss   作:覚絵テネ

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2/3はブル〇カみたいなビジュアルノベル形式を想像しながら読んでください()


青い花と金の花

(0/3)

 

――身を投げ出した床は、夢か現か区別がつかなくて。板張りだったり、フローリングだったり。せっかくきれいな床に、汗と涙が落ちていく。

 

こういう時はたいてい悪夢だ。

青井は朧な意識で周囲を見る。そこは家のベッドか、あるいはどこかのデパートだった。意識がはっきりしないので、どちらとも言い切れない。

 

そこで青井は泣いていた。連日の酷暑の影響かもしれないし、理由などないのかもしれない。

とにかく泣いていた。

 

えんえんえん。

 

そうしていると制服を着た男の人が来て「みっともない、泣いてはいけません。さあ立ち上がって。迷子センターに行きましょう」と言った。

 

私は従うでもなく、一人歩き始めるでもなく、泣くのです。

 

えんえんえん。

 

(1/3)

 

 90点。平均よりずっと上。青井は光紗とー形式上はー2人で育てたマリーゴールドに対し、そういう評価を下した。

 まず発色がよろしい。聖母の金(マリーゴールド)の名に恥じない鮮やかなオレンジ。顔を近づけてみると、少し甘い香りがする。萎れている花弁や虫食いもあるが、神経質にならねば問題ない。

 水やりをすると、水滴が黄金色の光を吸って、宝石のように煌めいた。

 

「綺麗に咲きましたね」

 

 そよ風が吹き、花弁と共に金色の髪が揺れた。光の反射のせいか、彼女の頬は赤らんで見える。

 金子光紗さん。青井の……大切な人である。学校の課題で、二人組で一つの鉢植えを育てるというのがあった。青井は熱を出したにもかかわらず、光紗さんは立派にマリーゴールドを育ててくれた。

 

「はい、光紗さんにばかりお世話をさせて申し訳ないです……」

「青井さんは熱を出していたんだからしょうがないですよ。それに、テストも頑張ったんだから」

 

 金子さんと話すのは楽しい。

 話がうまいし、何より素のままの自分でいられる。彼女と話す度に、人間として劣った部分が浄化され、成長しているような気さえする。

 だから、この恩のようなものはいつか返したい。

 その最初に、このマリーゴールドはできるだけ綺麗なままに……

 

「あ、金子じゃん!」

「おや、先輩。こんにちは」

「その花、綺麗に育てたね〜」

「いえ、先輩のアガパンサスはとても元気ですね。このマリーゴールドはところどころ萎れちゃってますし」

「やろ?頑張ったけんな〜」

 

 ……平和な会話。その裏で、青井はショックを受けていた。

 

 『萎れちゃってますし』?そんなふうに、下げる、格下げする、謙遜する?なんで。せっかくあなたが綺麗に育てた鉢植えを……

 

「お、青井もおはよう。」

「……おはようございます」

 

 ポトリ。アガパンサスが花軸ごと落ちた。

 

(2/3)

 

「わかってはいるんです」

 

 青井は【あなた】に事情を話した。【あなた】は学校に赴任してきたカウンセラーで、悩める生徒たちから信頼されている。

 

「私にとっては光紗さんが育てたマリーゴールドは特別だった。でも光紗さんにとってはそうじゃなかった。それに、マリーゴールドを下げるような言い方も、先輩と和を保つための儀礼的なものだった」

【……でも、ひっかかってるんだ】

「そうなんです……私、余計な所ばっかりに気を回して、面倒くさいですよね……」

【そんな事はないよ】

【何かを大切にできるのは、とても素敵なことだから】

「え、えへへ…」

 

 青井は赤らめた頬を掻く。

 

【金子さんに、その気持ちは話してみるつもり?】

「い、いえ!そんなことはしません……私が一人で思い込んで悩んで、ってしてただけですから……でも」

【言ってみて】

「どうしても……わたし、ああいう人付き合いにおける小技とか……その、汚らわしい気がするんです」

【そっか】

【でも、色々なことを考えられるのは、青井さんの長所だよ。色々なことを疑ってみて。そうしたら、最後にはその意味がよくわかるかも】

 

「はぁ……こんな自分が嫌になります。先生は、自分が嫌になった時どうしますか?」

 

【嫌になった時……はあまりないけどね。強いて言うなら、自分を変えたいときは……好きな人と同じことをするかな。その人に近づける気がするから】

 

 

(3/3)

 

 廊下をゆく足が、今日ばかりは力がこもっていた。

 

「青井さん、おはようございます」

「あ、おはよー」

「おはよ……」

 

 光紗さんは今日も私に大きく挨拶をしてくれる。

 思えば、名前も含めて挨拶をしてくれるのは彼女だけだ。名前も含めて挨拶をするから、私がこのクラスに溶け込めるようになった……気がする。

 

 きっと、この挨拶一つにしたって金子さんの処世術なのだろう。

 

 ……考えれば、愚かな話だ。

 私自身、その恩恵を大いに受けておきながら……自分に関わることは遠ざけようとするなんて。

 

 今はせめてその好意に全力で報いよう。

 

「おはようございますー!」

 

 青井、気持ち的には一世一代の元気な挨拶だった。

 

 ふわり、気持ちのよい風が吹いて。光紗は思わず顔を綻ばせた。

 

 

(4/3)

 

 黄金色の花弁が空を舞った。

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