自機・星野アイで実績『クイズ王』解除プレイ   作:海毛虫

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8.みちしるべ

 

 

 思考ログ 斎藤壱護

 

 

"渋谷で、とんでもない原石を見つけた"

 

"よく手入れされた紫紺の髪、健康的であるが透き通ってもいる完璧な肌、しなやかに動く体からみても運動慣れはしている、服装はガチガチに作り込まれた精巧なロリィタでメルヘンな衣装に所々に同じ意匠が用いられている登山バックレベルの大きく機能的な鞄を背負っている……見た目の世界観が作り込まれ過ぎて人間的な背景が見えん、スタイルや骨格からして恐らく11、12才くらいだろうか"

 

"が、そんな分析をしている暇など全く無かった。それはとんでもない位、歩くのが早かったのだ。それは流れ星が一瞬で消えるのに似ていて、俺はみっともなく走り出した"

 

"人に何度もぶつかりながら、やっとの思いで声をかける"

 

"勿論、そんなカッコ悪い内心はおくびにも出さないようにするのも忘れない"

 

『ちょっといいかな、お嬢さん、俺は───』

 

"情けないことに、俺は言葉を失った。原石だなんてとんでもない。こりゃ、野生の(スター)だ"

 

"目だ。人の、男の脳を焼き尽くす星のような瞳"

 

"こんな奴、一度でもみたら俺は絶対に忘れない。故に、コイツはまだ芸能界(この業界)にはいない、誰の手垢もついていないと断言出来る"

 

『地下アイドルへの勧誘かな?それも新興事務所の社長自ら』

 

"俺は再び開こうとした口を止められてしまった"

 

"その声が、快活で玲瓏で綺麗な声、いや違う"

 

"なんで俺の背景まで全部知っているんだ"

 

『えっと、君、どこかで俺と』

 

『いやいや、初めましてだよ。えっと、最初はスカウトさんかな?と思って見てみたけど、明らかに人相がスカウト向きじゃない。カリスマ風的なやつでそういう事もあるかもしれないけど、芸能事務所に女の子スカウトするなら無精髭と癖っ毛くらいは整える筈かな〜って。そうするとただの不審者のおじさんやナンパ目的のおじさんの可能性が高くなるけど、それも違う。貴方がつけている縁無しタイプの薄色サングラスって明らかに相手に威圧感と警戒心を与えちゃうから、ナンパ目的ならまずつけない、ここ駅構内だし、改札近いから警備員さんとかも怖いでしょ。素人やナンパが初めてだ〜って人の可能性もあるけど、それにしては声をかける時の躊躇いが一切無かった、寧ろ声をかけられない事を焦ってたよね?隠そうとしてたけど、ちょっと息切れてたし。だとすると、何らかの芸能事務所のお偉方が町で偶々私を見つけた、とかかなって。でも大手だと正規の応募があるから、結構お若いしイケイケだから新興芸能事務所の社長さんかな〜って思ったんだ』

 

"俺は、三度言葉を失った。何だコイツ、あまりにも変人過ぎる"

 

『アイドルの方も大体似たような感じで推理したけど聞いとく?』

 

『───いや、いい。うん、君の言う通りだ。俺は最近起業した芸能事務所・苺プロの社長で、君に声をかけたのも今、新しく作っている地下アイドルユニットへの勧誘だ。その、話は〜』

 

『いいよ、こういうお話の導入を無視して効率ばっかり追いかけると、色々つまんなくなっちゃうし。というか、さっきだいぶ脅かしたのに食らいついてくるとか、肝の座り具合もいい感じだし文句なしかな。社長さんが奢ってくれるなら、お話くらいは聞くよ』

 

『じゃあ、そこのスタバで───』

 

『いや、今日私、昼はトルコ料理・夜はペルー料理を食べる予定なんだ。どっちか奢ってくれるなら、お話聞こっかなぁ〜』

 

『わ、わかった』

 

"こうして俺は、星野アイを見つけたのだ"

 

"見つけてしまった、というべきかは、今でも悩んでいる"

 

 

 

 ▲▲▲

 

 

 はい、星野アイがほぼ原型留めてないくらいの狂人に育ってしまった所から再開です。

 

 なにが、いけなかったんでしょうね。

 

 悪さしてるのは、推理・服飾・料理・物語……まぁ、全部ですね。

 

 しかしながら、取ってきた人生方針を顧みてみると、彼女の根底、性根は全く同じ。目の星もバッチリ消えていませんし、理屈の上では、皆様が知っている星野アイです。

 

 ただ、その複雑な内心の出力・表現方法が増えて、周囲からみたらより訳がわからなくなっただけなのでしょう。

 

 本人もゲーム内で回想していましたが、知る事とは決して良い事ばかりではありません。

 

 例えば、あまり何も知らない状態であれば、

 

『嘘を本当にする』

 

『何かを愛したい』

 

 この二つがぼんやりと、しかし確かな形であるだけです。

 

 しかしこれが変に知識付くと、

 

『嘘を本当にする』

→問題を単純化するなら自己肯定感が低いだけかも

→国民性的問題として一般化するなら同調圧力に屈している自分に対する自己嫌悪

→フロイト的な原因論に基づき、過去の因果(私の場合はお母さん?)からくる問題として直視して、乗り越えたいのか、アドラー的な目的論に基づき、こうありたいという未来の自分の像があって、そこに至るためにこの問題を脳が作り出しているのか。

→そもそも、私に限らず誰であれ、言葉なんて口に出した瞬間、全て嘘になる。自分の心を100%正確に言い表せる言語なんて存在しないから。多かれ少なかれ意図とはズレてしまう。

→何を以て真とするか。数式や物理法則と違って、人と人との間に真実なんて無い、それが現実。誰かにとっての真実は、別の誰かにとっての嘘である。

─────

───

 

 はい、こんな感じで膨れ上がります。気分としては脳に沢山の超高温の熱気が詰まった風船を入れられたみたいで、正直とても疲れます。

 

 バカの方がレスバ強いというのも、自己批判や問題の構造解析、複数択の処理をしなくていいからでしょう。

 

 ……ホームズが麻薬吸っていた理由も何となくわかります。頭の回転が良い人が知識豊富だと、思考の暴走が止まらなくなるので、酒や薬で脳に靄をかけておきたいのですね。私自身はシャーロキアンでも何でも無いので、知ったかぶりでしか無いのかもしれませんが。

 

 では、話を戻し、現状について解説していきましょう。

 

 このイベント『抹茶ラテにつられて』は、原作において斎藤壱護が星野アイをアイドルに口説き落としたお話です。

 

 で、問題は今の星野アイを斎藤壱護が口説き落とせるかどうか。

 

 このイベントはかなり強力な補正を持っており、基本的に結果は原作通りになります。

 

 しかし、その『かなり強力な補正』を今回は超えうる圧巻の能力値やスキル群を有しています。最早、私にもどちらがどう話を進めるのか、全く予想出来ません。

 

 私に出来ることは、星野AIの思考を読みながら、出てきた選択肢を慎重に選ぶ事だけです。

 

 

『イベント・抹茶ラテに釣られて

 

 星野アイは渋谷にきていた。

 理由は、

 画材の買い足し、異国料理の体験、最新ファッショントレンド情報の収集、F値の小さい広角レンズの吟味、知らない分野の学術書の立ち読み、各店舗の廃棄品漁り

 

 ……実質ただの女の子のショッピングだ。

 

 そんなこんなで、縮地擬き歩法を使いながら効率よく用事を済ませていくと、駅構内で何者かに呼び止められた。

 

"また芸能事務所や夜職のスカウトさんかな、うーん、今回はどう脅かしてお引き取り願おっかな"

 

 星野アイは、スカウト撃退手段をいくつも持っていた。ネイティブ発音英語で返答する、カルト宗教の美人局の振りをする、普通に速力で振り切る、etc

 

 今回選んだのは、個人情報全抜き法

 

 身なり、立ち姿、顔の造形、表情や視線から相手のバックボーンを瞬時に予想し、当てて脅かすのだ。

 

 アイ自身は時間的余裕があるなら、毎回これをやりたい位、人間観察の練習になる手法であるが、今回はやる事沢山。まぁ、英語にするか、と脳をクイーンズイングリッシュ仕様に変更しながら振り向くと、これまで見てきたスカウトマンのテンプレートとは些か外れたタイプのように思えた。

 

 というかそもそも、駅構内、それも改札付近の目立つ場所で話しかけるなんて妙な話だ。歌舞伎町関連の創作物や任侠ものを読んだ経験から判るが、こういうのは意外と厳格に、シマ、ナワバリというものが決められているのだ。フィールドワークで、実際にそういったものが実在しているのも把握している。

 

 総合的に考えると、今回のことは明らかなイレギュラー・例外である。

 

 アイはそう思考すると、瞬時に方針を切り替えて対象人物のプロファイリングに移る。

 

"中肉中背、立ち方やルックスからして、芸能界にいるとはいっても一度も表舞台に立ったことが無い完全裏方タイプかな。で、やっぱり最初に目につくのは、人相の悪さだね、顔の骨と表情筋の感じからして、これ生まれつきかなぁ、色々苦労が多そう。チラ見えした腕や開いた胸襟から見える範囲に入れ墨無し、香水もそっち系の人御用達の系統じゃないし、ヤカラの人じゃないね。よかったよかった。うん、そうだと仮定すると、……クレヨンしんちゃんの園長先生みたいな感じかな、人相のせいで就活失敗して、何らかの出会いがあって、この業界に飛び込んだ、みたいな。少なくとも惰性で労働してる感じはないし、職業に対するモチベーションは高そう。運命的な出会いがあったのかな……?意外にキャピキャピのアイドルソングにハマっちゃってたり───"

 

 容姿を解析し、背景を予測し、類型と比較し、物語を組み上げ、人生を見る

 

 成る程、面白そうな人だ、と星野アイは所感を抱いた。

 

 同時に少し揶揄いたくなり、このプロファイリング結果をぶち撒けてみた。

 

 反応は上々、結果も正解、打てば響くとはこういう事を言うのだろう。

 

 話を聞く事はすでに彼女の中で既定事項になっていたが、折角なら迷う素振りを見せてより良い条件を引き出すというのもまた、交渉術の練習だ。

 

 抹茶ラテ一杯で済まされるのをサクッと阻止し、今日の昼食代を浮かせることに成功したのだ』

 

 取引

 星野アイ⇄斎藤壱護

 相手の要求

 アイドルグループB小町への加入⇄お給金

 キャラクターAIコメント

 "よく考えなくても小学生で公的に出来るアルバイトなんてこれくらいしかないよ!おかねほしい!"

 

 ……なんか星野AIが、最初からアイドルになるのに乗り気ですね。

 

 まさかの決め手は金欠という。そういえばパッシブに『重度の金欠』がついてましたね。

 

 ……うーん、壱護とアイの難しい交渉や愛に関する談義無しとは、色々大丈夫でしょうか。

 

 医者になったらサクッとアイドル辞めそうですね、この子。

 

 いや、医師免許は最速で24歳だから丁度いいと言えば丁度いいのか。

 

 取り敢えず、話が簡単で助かりました。承諾ボタンをポチッと。

 

 はい、あっさりですがこれで未来の伝説のアイドル・星野アイはそのスターダムの第一歩を踏み出しました。

 

 では、今回はここまで。次回からは地獄の地下アイドル時代。沢山いる変なファンと性格が悪すぎるグループメンバー。

 

 それらをバッサバッサと薙ぎ倒して踏み台にし、まず芸能界を駆けあがろうと思います。

 

 ……あぁ、あと、さりなちゃんの寿命もこの時期でしたね。上振れまくった超ステータスを使い思いっきり輝いて、今際の際に良い夢を見せてあげましょう。

 

 ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 ▲▲▲

 

 

 

 対話ログ トルコ料理店にて 雑談

 

 

『───ほい、これが住所と連絡先。明日1時に事務所に来てくれ。……はぁぁっ、何とか競り落とせた〜』

 

『よかったね社長さん。私が金欠で』

 

『いや、うん、俺にとってはホントに僥倖な話だったが、なんでそんなに金が無いんだ?一寸の隙もないくらい精巧な身なりを見る感じ、お金がないようには見えないんだが』

 

『いやいや、この服自作だし、その辺の廃棄服や布片適当にバラして作ったから原価0円だよ』

 

『は?その服を、お前がか?だって靴や鞄、アクセサリーまで同じ意匠で……』

 

『うん、だから全部自作だって。デザインから書き起こして作ったんだよ。ふふん、私ってば可愛いだけの女じゃないの。こう見えて縫い物得意なんだ〜』

 

『……いや、これは、……どう考えても、そんな次元の話じゃねぇ、───アイ、B小町の衣装デザインもやってみないか?』

 

『お賃金増えたりする?』

 

『勿論だ!外注やレンタルしなくて良くなるだけでどれだけ効率が良くなるか!よし、じゃあお前をB小町の衣装としても───』

 

『社長さん、ちょっと待って。……ちなみに他に何か外注してたりするの?』

 

『いやいや、さしもの天才服飾家小学生でも、そう何個もプロの仕事を出来る訳ないさ、いいか、芸能の現場っていうのは、色々なプロフェッショナルによって成り立っているんだ。大道具や小ど『それなら、出来るよ』』

 

 

『ロケ弁』

『半分以下の原材料費で五百倍は美味しいもの作れるよ』

『カメラマン』

『前、写真コンクールで入賞したんだ〜』

『会場下見』

『フィールドワークは得意中の得意!』

『音響』

『絶対音感持ちだし、音楽会開く時に毎回機材触ってる』

『う、運転』

『私、12歳だよ。出来る訳ないじゃん』

『……そ、そりゃそうか』

 

 

『ん〜、で、今言ったの全部私がやったらどれくらいお賃金増える?』

 

『いやいやいや、そりゃあくまで出来るってだけで、お前の生身は一個しかないだろ』

 

『?、どうして体が一個しかなかったら、何個も別のお仕事出来ないの?』

 

『え、そりゃだって……』

 

『私は、全部一人でやってきたよ?お母さんなんにもしてくれなかったから。ご飯は自分で作って、お金足りないから畑作って、お洋服だってどんどんボロボロになっていくから自分で直して……ううん、今のはお母さんを責めてる訳じゃないの、お母さんを助けてあげられなかった、私の力不足って話なだけ』

 

『───ッ』

 

『私は私がやりたくてやった事に後悔はないし、心の底から楽しかったっていうのはホントだけど、それでもやっぱり、お金が無かったのがいけなかったのかなぁ、って思うこともあって、……だから今日の話は、まさに渡りに船!私、色々出来るし、出来るようになるから、じゃんじゃん頼ってね』

 

『───』

 

『……ありゃ、社長さん、目が合わなくなっちゃった』

 

『……お前、この話は、大人の人とかに相談したりしたのか?』

 

『したけど、別に誰も手伝ってはくれなかったよ。みんな、「君なら大丈夫だ〜」だとか「よく出来た子だ〜天才だ〜」って口だけ。大好きなセンセだって、今は私なんかより、今にも死んじゃいそうな、ホントに助けが必要な子を助けてる最中だから、出来ることは出来る私が邪魔しちゃいけないし』

 

『先生?』

 

『そ、センセ。一年間、付きっきりで私を助けてくれたお医者さん。私はもう十分助けられてるの。あの人はいつも、助けが必要な人の所に行くから、もう助けられた私が邪魔しちゃいけない、いや、次は私があの人を救わなきゃいけないの。センセの心はね、ずっと痛い、寒いって叫んでて、でもセンセはそれを上手く隠しちゃう。あの年の七夕の事だったかな、ちょっとそこに踏み込もうとした時に失敗?しちゃって、センセの方が不安定になって、それであの時最終的にお別れすることになったから、自業自得な話だよ』

 

『……あー、クソ、何つーかだな。あんまりちゃんとした大人やれてねぇし、今も子供を商材にしようとしている俺が言えた話でもねえけどよ。お前はゼッタイ、報われるべき子だし、俺はそうしたいと思えたし、それを助けたいと思える。詰まるところ、お前はとても『推し甲斐』があるんだ。アイドルになってみろ、どいつもこいつも、お前のことを支えさせてくれ!ってわんさか寄ってくるぞ。あー、だからその、これからは一人じゃなくなる、っつーか、だから何だって話でもあるんだか……』

 

『───ッふふ、あはははっ、『推し』、推しかぁ。うん、いいねそれ。今やっていることは、私が歩いている道は、正しくなくったって、"普通"じゃなくったって、君にあっているって、背中を押して貰える。それって、とっても幸せな事だと、私は知ってるから』

 

 

 

『改めて、───アイドルやるよ、私』

 

 

 

『私自身が道に迷った時、進むべき方向が分からなくなった時、私が私を取りこぼさないために』

 

 

 

 *

 

 

 

 

 ───星明・『ポラリス』を習得しました。

 

 

 

 

 

 

 

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