以前似たような作品を連載していたのですが出来に納得がいかず再び書き直すことにしました
ごく普通の高校生常磐ソウゴ。そんな彼には最高最善の魔王にして時の王者、オーマジオウとなる運命が待っている。
彼はこれまでに、ビルド、エグゼイド、フォーゼ、ファイズ、ウィザード、オーズ、鎧武…と続きつい先日にアギトの力を継承してその手に収め、その艱難辛苦が跋扈する覇道を歩んでいる。
そんな彼の元に現れるのは……おや? これはこれはまた奇妙な…
失敬。今から始まるのはなんでもない、我々にありえたかもしれない奇妙な歴史です。
◇
「ウール、お前はサーカスを見たことはあるか?」
ある暑い夏の日、タイムジャッカーの一味にしてリーダーであるスウォルツは、彼の仲間でもあるウールに向かってこんな質問を投げかけた。夏の気持ちの悪い蒸し暑い湿気が、全身をくまなく包んでいた。ウールは青い服の袖をたくし上げながら、適当に答える。
「いきなりなんだよ。もしかして今回のアナザーライダーは見世物小屋のピエロみたいなものだったりするのか?」
「大同役者、或いは道化か…確かにそうかもしれんな。しかし、こればかりは賭けになるかもしれん…オーラには悪いことをした」
くつくつと笑う彼に不思議さと不気味さを同時に感じ取ったウールは、アナザーライダーへの変身者となる者に力を渡しに行った仲間のオーラに、少しばかりの心配の感情が湧き出た。タイムジャッカー…最低最悪の魔王・オーマジオウに代わる『新たな王様』を擁立するべく、平成仮面ライダー達の歴史に介入し、アナザーライダーを生み出してきたテロリストじみた集団である。
仲間というよりもビジネスパートナーの関係が強い3人組であるが、その中でもウールはメンバーへの仲間意識が、多少ではあるが強かった。
「大丈夫なんだろうな…?」
「安心しろ、ウール。道化師には2つの役割がある。即ち…笑うか、笑われるかだ…前者で終わればそれでいいが果たしてどうなるかな」
意味深長で完全な理解が難しい彼の言葉に、ウールは考えることを放棄してスウォルツが買ってきたコーラを飲み始めるのだった。
夏の空は、青いまま。
◇
「あなたにとびきり良い知らせと少しばかり悪い知らせがあるの」
タイムジャッカーの一味であり紅一点でもあるオーラは、傲慢さすらも感じられる態度でその手に持つアイテム…アナザーライダーの力を何物にも与えられるアナザーウォッチのスターターを押して起動させる。紫色の光が宿ると同時に、表面にアナザーライダーの顔が浮かび上がり、音声がその名前を告げる。
『ダークドライブ…!』
「といっても、あなたには聞こえないでしょうけどね、お人形さん?」
あざ笑うような言葉と共に目の前の人物にウォッチを埋め込む。すると変身者となったその人物の全身を黒い靄のようなオーラが全身を包み隠してアナザーライダーへと変貌させる。その名前は…
「今日からあなたが、仮面ライダーダークドライブよ」
仮面ライダーダークドライブ、または仮面ライダードライブ・タイプネクストの記憶と力を奪いなり替わった怪人が、オーラの目の前に現れる。その姿は全身が漆黒に包まれた異形の怪物であった。
人の形はおよそ保ってはいたが全身には罅が刻まれた黒い鎧を身に纏い、その隙間からは油じみたどろどろの液体が漏れ出している。頭部はレーシングカーの選手が被るようなヘルメットの形をしていたが、右側が大きく潰れていて、その中からは捻れた黄金の角が生えている。
胴体にはたすき掛けにされたタイヤのホイールがめり込んでおり、ゴムの無いそれは後から無理矢理埋め込まれたような歪さを感じられる醜悪なデザインとなっていた。腹部には車の運転席にあるメーターらしき画面が幾つもはめ込まれていたが、そのどれもが針を止めており、もはや動かないのだと知らされる。
バイザーのような目の奥には、『DARK‐DRIVE?』『2035』の文字が瞳のように水色の光をもって浮かび上がっていた。
その姿を見てオーラはほくそ笑み、誕生したばかりのアナザーライダーへとついてくるように命令を下す。アナザーダークドライブは、まるで糸で吊るされた人形のようにふらりと力なく立ち上がると生まれたばかりの小鹿の如くよたよたと彼女の後ろを付いていく。そんな姿に気を良くしていたオーラであったが、彼女はとあることを見落としていた。
アナザーダークドライブのバイザーに浮かぶ文字、それが一瞬だけ『DRIVE‐TYPE NEXT』へと変化していたことに。
◇
「目撃されたのはここでいいのか、ジオウ」
「うん。ここでいいはず…」
怪物が目撃されたという情報が多発していた交差点の路上において、仮面ライダージオウこと常磐ソウゴと仮面ライダーゲイツである明光院ゲイツはその情報に従って、アナザーライダーが現れるであろう時間帯で待ち伏せを行っていた。果たして、その結果は吉と出るのか凶と出るのか…夏の暑い空気が、夜を包んでいた。
待ち伏せを始めてから一時間。情報通りの時間帯に、それは現れた。
「ジオウ!」
ゲイツの鋭い声が、少しばかり眠くなっていたソウゴの耳に突き刺さり、機能を休めようとしていた脳みそを強制的にたたき起こされる。現実に引き戻された彼の目の前には、およそ現実離れした怪物が二人を迎えるかのようにして佇んでいた。事故に遭ったレーシングカー、あるいはスクラップにされた車の残骸の寄せ集め。
そういった悪趣味なデザインをした怪物。こういった類の化け物を、ソウゴたちは良く見知っていた。
「「アナザーライダー!」」
仮面ライダーの歴史を簒奪しそのものに成り代わる魔人たちの名前。ジオウたちと幾度となく戦火を交えてきた怪人であるが、その様子は少しおかしかった。ソウゴたちを目視しているにもかかわらず、一切動こうとしない。じっとバイザーの形をした目を光らせてじっと見つめている。まるで観察する研究者のような仕草に、二人は困惑を覚える。
「なんか…不気味…」
「俺たちがいるのに何をしているんだこいつは…」
それまでのアナザーライダーたちは、それを邪魔するジオウたちに対して負の感情をむき出しにして襲い掛かって来るのが常であったが、そのアナザーライダーは何もすることなく、電源の切れたロボットの様に立ち尽くしていた。感情を感じられない動作に、ソウゴたちは言いもしれぬ気持ちの悪さに襲われた。
「とにかく…早く倒すぞ、ジオウ!」
「分かった。行こう、ゲイツ!」
『ジオウ!』
『ゲイツ』
それでも歴史を歪めている悪であることには違いない。二人は気を取り直すと、すぐにお互いの変身用アイテムであるライドウォッチを起動して、腰にあらかじめ巻いてあったベルトことジクウドライバーにはめ込んで一回転させてその力を呼び起こす。
『ライダーターイム!』
背後に巨大な時計の形をしたエネルギーが出現し、それが彼らを包む結界となって守護する。装甲が形成されて役目を終えた時計状のエネルギーが崩壊すると「ライダー」と「らいだー」の文字が打ち出されてアナザーライダーへと向かうが、すぐに手刀で弾かれた。物理的に戻された文字たちはソウゴたちの顔面にはまり、仮面ライダーへの変身を完了させる。
『仮面ライダージオーウ!』
『仮面ライダーゲイツ!』
黒と銀とマゼンタの三色の装甲が、力強く鮮やかな印象を見る者に植え付ける。顔面は時計らしい仮面へと変わり、左右で長さの違う二つのアンテナは長針と短針を象っていた。仮面には、マゼンタ色の「ライダー」が輝いていた。
彼こそは、平成の仮面ライダーの力を受け継ぎ、過去、現在、未来を全て従える時の王者となる者。その名は仮面ライダージオウ。
ゲイツが変身した姿は、ライドウォッチと同じく赤と黒で染め上げられた、力強さを感じるデザインとなっていた。顔面はデジタル時計を思わせる鋭利なフォルムであり、仮面は黄色い『らいだー』の四文字で覆われている。ジクウドライバーの液晶は『GEIZ』『2068』の文字を表示していた。
彼の名は仮面ライダーゲイツ。2068年の世界において最低最悪の未来を変えるべく誕生した叛逆の仮面ライダー。
そんな二人の姿を見てようやく敵だと認識したアナザーライダー…アナザーダークドライブは腰を大きく落として脚を開き、曲げた右膝に同じく右腕を載せて前方を見据えると、くぐもった気の抜けた声で二人に呟いた。
「スタートアワミッション…」
どこか儀式めいたセリフとやる気の抜けた無理矢理取らされたポーズであるが、ポーズの方にだけジオウたちは見覚えがあった。間違いない。それはもう既にジオウたちが持っているレジェンドライダーの1人が同じポージングをしていたのを知っていたからだ。
「ドライブアーマーとおんなじポーズだ…!」
「ならば奴はドライブか、それに準ずるアナザーライダー!」
打てば響くような素早さで正解に近い推論を繰り出した二人は、それぞれ新しいライドウォッチを取り出して起動させる。アナザーライダーはそのオリジナルのライダーの力でしか完全な撃破は不可能である。だが、大きなダメージを与えれば一時的ではあるが撃破が可能となる。そして2人がそのために選んだ力のチョイスは…
『ドライブ!』
『ディ・ディ・ディ・ディケイド!』
市民の平和を守るべく見えざる悪意と戦った警察の仮面ライダードライブと、「世界の破壊者」の異名を持ち平行世界を流離う仮面ライダーディケイド。
『アーマータイム!』
ジクウドライバーの片側に装填されたウォッチが回転と同時にその力を解放。それぞれがアーマーとなってアナザーダークドライブの前方に立ち塞がる。アナザーダークドライブがそれらを払いのけるとたちまちにアーマーはバラバラとなって二人の全身に装着される。
『DRIVE! ドライブ!』
『カメンライド・ワーオ!ディケイ・ディケイ・ディケーイードー!』
『ライドヘイセイバー!』
『ジカンザックス!』
二人はアーマー装着と同時に手持ちの武器を取り出してアナザーライダーへと切り掛かるが、幽霊のようにふらついていたアナザーダークドライブはここで爆発的なまでの反応を見せる。
一手目、横合いから薙ぐ様にして放たれたジカンザックスを蹴り上げ、同時に腹のメーターらしき箇所を割る勢いで叩きつけた途端に、アナザーダークドライブの体が急加速して地面を陥没させる勢いで足を戻す。
二手目、先程の衝撃で巻き上がった粉塵を煙幕代わりとして、急加速の勢いでジオウの背後へと回り込んで上段へのハイキックを繰り出す。咄嗟にライドヘイセイバーで防御したが、勢いまでは殺せずに衝撃でノックバック。
三手目、同じくドライブアーマーの力で加速空間に突入してきたゲイツに対して拳を顔面めがけて正面から放つ。これをジカンザックスで防ごうとしたゲイツの視界が、自身の武器で塞がれた隙に再びメーターを打ち据えて加速の倍率を変更してパンチの威力を増幅し、ガードごと打ち抜いて吹き飛ばす。
「なら!」
『フィニッシュタイム!』
『ビルド! スクランブルタイムブレーク!』
ライドヘイセイバーにビルドライドウォッチを装填して技を発動。赤と青のエネルギーを纏った刀身を地面に突き刺して溢れ出すパワーの奔流が地面を割りながらアナザーダークドライブを飲み込まんとする。
「遅いな」
ようやく喋ったアナザーダークドライブの一言は余りにも簡素で機械的。しかし真正面から迫り来る力の瀑布に対しては余裕が感じられ、なんとも言えない不気味さをジオウたちの瞳に映し出していた。
四手目、再び加速したアナザーダークドライブはジャンプで空中へと逃れ、その後に地面へとスピードの乗った拳を地面に叩きつける予定であったが…
『疾風! ギワギワ・シュート!』
「…!」
突如としてアナザーダークドライブ以上のスピードで空気を切り裂く蒼い閃光がその体を貫いて撃墜。使われた力は、シノビ、クイズ、キカイという未来のライダーたちの力を結集して作られたゲイツリバイブウォッチ。
「やられっぱなしでは終われんからな。やれ、ジオウ!」
「ありがとゲイツ!」
『ヘイ! ビルド!』
『ビルド! デュアルタイムブレーク!』
『スクランブルタイムブレーク!』
スクランブルタイムブレークを発動した状態で更にビルドの力を引き出したデュアルタイムブレークを上乗せ。単純な力押しであったが、胴体を射抜かれ、地面に打ち据えられて隙を晒したアナザーライダーにはこれしか撃破に持っていける方法は無い。
「せやああああ!」
「これは…!」
虹色の輝きを放つライドヘイセイバーを思いっきり振り回して、下から力一杯に振り抜いて重々しい衝撃と金属音が一瞬奏でられた後に、アナザーダークドライブの体は地面に叩きつけられて擦るように転がっていく
「やったかジオウ!」
「いや、手応えはあったけど…まだだと思う…」
「お前がそう言うならばそうなんだろうな」
その言葉通りに煙を突き破ってアナザーライダーは立ち上がる。元からヒビが入っていて痛ましい装甲であったが、更に損壊してオイルのような粘性の高い液体が湯水のごとく吹き出していた。
もはや撃破を待つのみ…死に体の姿を見てそう思った二人であったが、その直後に思惑は覆される。
「なるほどな…」
先程までの機械的な音声とは違うはっきりと感情が感じられる透き通った声が二人の耳朶を打つ。アナザーダークドライブは自身の深い傷跡を撫でると、バイザーを輝かせて更に感情の乗った声と共に右手を突き出す。
「お陰で…だいぶ自分の力が理解できた…!」
「「させるか!」」
「遅い…!」
二人が今度こそをトドメを刺そうと駆け出した瞬間、手から放たれた水色の波動が二人のみならず彼らのいる空間を強引にねじまげる。仮面ライダードライブと戦った怪人であるロイミュードが使用する特殊技能の重加速。
その効果は、受けたものを全てのスピードを何十分の一にも落とすというもの。これを防げるのは同じ仮面ライダードライブの力のみ。だが、それをアーマーとして纏うゲイツですら動けない凄まじいどんよりが二人を襲っていた。
「また遠からぬ未来で会おう仮面ライダーたち…グッバイ」
余裕に満ちた声でそう告げるとアナザーダークドライブはそのまま戦場から走り去る。それと同時にどんよりも解除され、後には二人のみが残された。
「やられたな…」
「振り出しになっちゃったね…」
◇
その後もアナザーダークドライブの行方を追って情報を探していたジオウたちであったが、あの戦闘以降アナザーライダーは二人を警戒したのかまるで姿を見せなくなり、足取りが追えなくなっていた。ただ、幸いなことにウォズの口からアナザーライダーのオリジナルは判明した。
「それは仮面ライダードライブではなく、その発展型で2035年の未来で活躍する仮面ライダードライブ・タイプネクストだろうね。またしても力が入手できないライダーだ」
「未来のライダーかぁ…久しぶりじゃない?」
「感慨に浸っている場合ではないぞ、ジオウ。ジオウⅡやリバイブの力があるから撃破は問題ないにしても奴はかなりのやり手だ」
シノビ、クイズ、キカイと3人の未来の仮面ライダーを知っており、そのアナザーライダーと交戦した彼らだからこそ分かるが、対応するオリジナルの力が無いアナザーライダーはまさにゾンビの様に復活を続ける。
「ライダーの名前が分かっても肝心の居場所が分からなければどうにもならん」
「裏で何か企んでいるのかもしれない。もしかしたら連続して寄せられた目撃情報も我々をおびき寄せる為の罠だったのかもしれないね」
「だとしたら何が目的なんだろう」
「仮面ライダードライブ・タイプネクストこと仮面ライダーダークドライブはロイミュード108の世界征服に利用された経歴があるが…余り参考にはならないね」
アナザーライダーの詳細が不明な為に少しでも持てる情報から推測を重ねるが、完全に手詰まりとなりかけていた。過去の事例を遡ろうにもアナザーライダーの変身者たちが皆千差万別の理由を持つが故に経験則も余りあてにはならない。
詰みかと思われたその時、ソウゴの仲間のツクヨミが、彼らの拠点であるクジゴジ堂の扉を開けて入って来る。
「ソウゴ! ゲイツ! ウォズ! アナザーライダーを目撃したって人がいたから連れて来たわ」
「ありがと!」
「早く聞かせろ!」
「ゲイツくん、余り逸り過ぎるのは君の悪い癖だよ? 少しは落ち着いた方がいい。ここは紳士的に…」
アナザーライダーの情報を得ようとリビングでごちゃごちゃしていた3人の野郎の塊を無視して、ツクヨミを無視して後ろに着いて来ていた人をクジゴジ堂の中へと招き入れる。ソウゴたちの姿を見たその人はどうやら女性らしいが、少し萎縮した姿を見せてしまった。
「大丈夫よ、彼らは悪い人ではないから…自己紹介からしましょう」
ツクヨミの落ち着いた声に冷静さを取り戻したのか少女は早速彼女の背から姿を現して自己紹介を始める。雪のように白く長い髪を一本に結い後ろに垂らしている。フード付きの黄色のパーカーを着ており、その瞳は日本人らしく夜のように黒い。身長はソウゴと同じくらいであったが、顔立ちはいくぶんか幼く可愛らしい。
「あの…その…狩野似迦です!アナザーライダーを追っているんでしたよね! それならば私知っていますよ!少しの間ですが一緒に捜査をしませんか⁉」
先ほどまでの畏まった雰囲気はどこへやら、目の前のソウゴの手を握ってニコニコと溌剌とした物腰と態度にソウゴたちは二の句が継げなかった。
「いや、君は情報提供をしてくれるだけで…」
「大丈夫です!私のお父さんは警察官ですので!これでも自分の身を守ることならば出来ます!」
「うーんじゃあ一緒にやろっか!」
「はい!よろしくお願いします!」
二人とも話がトントン拍子に進んでいく。とりわけて深い話をするわけでも無く疑うような素振りを見せることも無く、初対面の相手を簡単に信じて突き進んでしまうその向こう見ずで明るい性格が似通っていた両者は、ここで異様なまでの噛み合いを見せていた。
当然。そんな考えることを放棄したような二人の有り様を見た残りのメンバーの反応は…
「ジオウ!」
「ソウゴ!」
「我が魔王?」
当然、ソウゴに非難が集中するのであった。
アナザーダークドライブ
スペック
身長199.5cm
体重108.0kg
能力:高速移動、重加速
変身者:不明