「ああー......。今日も癒したなぁー。......てか、こんな店にこうも需要あるのな。開いといてなんだけど」
誰に言うでもなく、声の主は溜め息混じりにそう呟く。声の主は、薄暗い部屋の中にいる。
部屋の中にはリラックス効果のあるアロマや、なんとも眠気を誘うような心地の好い音楽も流れている。
ーーーここは、ブラックマーケットの隅にひっそりと建つ完全予約制の添い寝屋......『止まり木』。
声の主である店主、「
「さて、今日はもう予約も入ってないし店仕舞いでもーーー」
”すみません......。お店、空いてますか......?”
「ん?あぁ、すみません......。ウチ、予約制でして。今日はもう店仕舞いーーー」
”あぁ......そうでしたか......。すみません、また、出直します......”
「はぁ......。ほら店、入んな。外の看板片付けて、鍵閉めてくるから中で待ってて」
”え?いや、えぇ......?”
ルイは閉店間際に来た男の手をひっ掴むと、店内に放り込んで外の片付けを手早く終わらせる。
(たくっ、なんちゅう草臥れた格好で来てやがんだよ!あんなん、ほっとけるかっ!)
ウチは完全予約制だ。飛び込みの客なんぞ、これまで何度もお断りしてきた。......けど、幸薄そうな顔にこびりついた深い隈。着ている仕事着?は、上等なもののようだが手入れをする余裕もないのか、よれて薄汚れている。パッと見では浮浪者でも通るかもしれない。それにだーーー。
(あんなに疲れきった顔見ちまったら......癒してやりたくなっちまうだろうがっ!)
まあ、なんやかんや言いつつも、単にルイの母性本能を刺激されたという話である。
「さて、と。お待たせしました、お客様。こちらへどうぞ」
”あ、あの?さっき、今日は店仕舞いって......”
「ええ。ですから外には、”閉店”の札も出してきましたよ?」
”ええ......?なら私がここにいるのは、不味いんじゃぁ......”
「四の五の言わずに、黙ってそこのベッドに横になりやがれ♪お客様♪」
”は、はいっ!!”
ルイは男が自分の圧に負けて、素直に横になったのを確認すると店内の照明を落とし、男の横に寝転がる。
暗闇の中、静かな音楽とアロマの香りだけが二人を包み込む。
”あの、何故、貴女まで私の横で寝てるんです......?”
「ウチは添い寝屋ですよ?そりゃ、添い寝するでしょ」
”......えっ!?ここって、そういうお店だったんですか!?”
「どういうお店と勘違いしていやがるか知りませんが、ウチは健全なお店だぞ♪......今は何も考えず、黙って休みなさい♪」
”あっ......”
ルイは驚いて飛びすさろうとする男を素早くホールドすると、自身の胸へ埋めさせ頭を優しく、一定のリズムで撫でてやる。ついでに背中も子供をあやすように、ポンポンとゆっくりと優しく叩く。
駄目押しに、耳元で子守唄を歌ってやれば直ぐに寝息が聞こえてきた。
(よっぽど疲労が溜まってたんだな......。ふふっ♪なんだよ、無防備な寝顔は結構、可愛いじゃねぇか♪今は、ゆっくりお休み......)
こうしてキヴォトスの夜は更けていくのであった。
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”ん......んん......。あれ......?ここは......”
ーーーふにゅんっ
「あんっ♪」
”ふにゅん......?それに、女の人の声?”
「......お客様?ウチは健全な店だと、昨日お伝えしたはずだぞ♪......はよその手をどけな」
”うわあっ!?ご、ごめんなさい!?”
「ふあぁー......。あ、洗面所はあの扉の奥ね。トイレはその横。あー、でも昨日は風呂に入らずに寝てるから、ちょっとアンタ臭うね.......。先にシャワー浴びてきな?ほれ、こっち」
”展開についていけないっ!?”
ルイは男を脱衣所に連行し、押し込むと扉を閉めて洗面所に向かう。洗顔し、諸々の朝のルーティーンを終わらせる頃にはシャワーの音が聞こえてきた。どうやら観念したらしい。
脱衣所へ向かい男の衣類を洗濯機へ放り込み、洗濯する。代わりの服を用意するが、大きめのジャージしかないのでそれを置いておく。下着?流石に男物は無ぇーよ。男ならノーパンでも大丈夫だろ。
そこまでしてから、アタシはキッチンへ向かい朝食を作り始める。簡単なもんでいいよな?えーと......目玉焼きとトーストにヨーグルト、あとはコーヒーでいいか。ジャムはお好みでってな♪
”あ、あれ!?わ、私の服は......!?”
「おー、汚かったから今洗ってるぞー!悪いけど、そのジャージでも着ててくれー!」
”そこまでしてもらってるとは......。あのぉ......ところで、下着は......?”
「女物の下着を着ける趣味でもあるのか?」
”ないよっ!?うぅ、ノーパン......”
......なんだろう。なんか知らんが、コイツと出会ってから気持ちが浮わついてんなー?アタシ、普段はプライベートでもここまで他人の世話なんか焼かないんだがな......?
そんな風に考え事をしていると、いつの間にか男が近くまで来ていた。
「お、来たか。んじゃあ、朝飯食おうぜ。足りなかったら、追加で焼いてやっからな?」
”何から何まで、ありがとう。......頂きます”
「うい、召し上がれ。あ、ジャムはお好みで好きなの使いな?」
”あれ?このジャムって、もしかして......”
「ん?......ふっふっふ、気づいたかね?お察しの通り、全部手作りだぞ☆味わって食いやがれ♪」
”うん!凄く美味しそうだね!うわ~、どれから食べよう......!”
「......そんなに喜ばれると、何か照れちまうだろうが」
”んぐんぐ......。ん?何か言った?”
「何でもないぞ☆」
ーーー男女、朝食中......。
”ふぅ、ご馳走さまでした”
「はい、おそまつさんでした。ところでアンタ、今日は仕事休みなん?」
”ううん、あるよ。今日は午後からなんだ”
「そっか。ウチは今日、店休日だからさ。さっき服も乾燥機に突っ込んだから、乾くまでは休んでなよ?」
そう言ってルイは鼻歌交じりに、食器類を洗い出す。
そんなルイの背中を見つめて、男は声をかける。
”その、さ。君は、何で私にここまでしてくれるんだい?自分で言うのもなんだけど、昨日の私は不審者のような風体だっただろう?そんな怪しい男に、なんで君は優しくしてくれるの?”
男の言葉に食器を洗う手を止めて、ルイはタオルで手を拭きながら背を向けたまま答える。
「アタシだって、普段はここまで他人に世話は焼かないよ。正直、自分でも不思議に思ってるくらいさ。だから、そうさねぇ......敢えて答えるならーーー」
そう言って振り返ったルイは、男に向かって微笑みながら告げる。
「アンタに、アタシの母性をくすぐられたからかもね?」
”......君は、凄く素敵な女性だね。昨日からずっと、君の魅力に圧倒されてばかりだよ”
「んなっ!?アンタ、よくそんな台詞をさらっと言えるねっ!?この、女誑し!今までそうやって何人、女を落としてきたのさ!」
”ええ!?心外なんだけどっ!?そんなつもりは無いしそれに、私なんかを想ってくれてる子なんていないよ!”
「本気で言ってるなら、そのうち誰かに襲われちゃうぞ♪いや、わりとマジで」
”あれー!?どっかで誰かに言われたなー!その台詞ー!”
「心当たりあるんじゃねぇか!」
そうやってふざけていると、乾燥機が止まった音が聞こえてきてこの騒ぎは終わりを向かえた。
男が乾燥機から取り出した衣服に着替え、脱衣所から戻ってきた際にそう言えば......と、声をかけられる。
”ここって、結局のところどういったお店なの?あと、お互いに自己紹介してなかったよね?”
「今更!?」
”え、大事なことでしょ?”
「そうだけども!......はあ、もういいや。おほん!この店は添い寝屋『止まり木』。日常に疲れた誰かのために寄り添い、休んでもらうための場所さ。ちなみにアタシは、店主の”癒夜志ルイ”。何度も言うが、「健全」なお店だぞ♪」
”添い寝屋......。だから昨日は、一緒に寝てくれたのか......。うん、お陰さまで昨日は、久しぶりに安眠できたよ。ありがとう、ルイ”
「さいで。......で?アンタは何処の何方か、教えてくれないのかい?」
”おっと、そうだった!申し遅れました、私は連邦捜査部S.C.H.A.L.E......通称「シャーレ」の先生です。よろしくね?”
「ほうほう、アンタがあの噂のシャーレの先生......ん?シャーレの先生?」
”うん。先生です”
(シャーレの先生って......原作の超主要人物じゃねぇかぁーーーッ!!)
”あれ?どうしたの、頭抱えて?”
「あ、あはは......ナンデモナイヨ?」
”???”
これがアタシと先生との長い付き合いの始まりになるなんて、誰が想像できたかよ......。
などと語ってみるけど、続くかどうかは反響次第ってな!あばよっ!
アタシは何を言ってるんだ......?
メインをほったらかして、ついやっちゃうんだ☆
感想お待ちしてます。