街角やダンジョン手前に居るサポキャラ ← わかる
そこまで危険ではないダンジョンの内部に居るサポキャラ ← ギリわかる
どう考えても普通には辿り着けないダンジョンの内部やボスモンスター手前に居るサポキャラ ← ???
ラスダンのラスボス手前にいるサポキャラ ← !?!?!?
ふと思いついたネタ。多分N番煎じ。
黒雲が渦巻く天井、硫黄のような臭いが立ち込める空間、遠くで響く怪物の唸り声。
数多の強敵が跋扈する魔王城、その最深部。
徐々に強まる瘴気は、運命の時──宿敵である魔王との決戦が近いことを、勇者たちにまざまざと感じさせた。
「……ついに、ここまで来たか」
勇者レイトは剣の柄を握る力を強め、深く息を吐く。
「長い道のりだったけど、それももうすぐ終わるのね」
魔法使いシエラが、緊張感と僅かな寂寥感の混じった声色で静かに呟く。
「この先に魔王が……うぉおおお! 燃えてきたぜ!」
戦士グロウが、これまでにない激闘の予感に拳を鳴らし、気合を入れる。
いよいよ決戦の時。誰もが最後の戦いに向けて気を引き締めていた──はずなのだが。
「いらっしゃいませぇ」
あまりにも場違いな、間延びした声が響いた。
「……いや、おかしいだろ!?」
勇者レイトが、思わずツッコミを入れる。
そこにいたのは、一人の女性だった。
黒いローブに身を包み、フードは目深に。長い睫毛が影を落とす目元は眠たげで、どこか幼さを感じさせる。
そんな彼女の目の前に置かれたテーブルにはポーションやエーテルが並べられ、背後には簡素なベンチが置かれている。
もはやお馴染みとなった光景──自らをサポートキャラと称する女性が、簡易的な露店を広げている姿がそこにはあった。
「お疲れさまですぅ……。回復や休憩、それからお買い物はいかがですかぁ……」
眠たげな目を擦りながら、彼女は淡々とそう告げる。
「あ、それじゃあちょっと回復を……じゃねぇわ!!! いやいやいや、何してんの!? ここ魔王城だぞ!? しかも魔王の部屋の目の前!!! なんでいんの!? なんで店広げてんの!?」
「えぇ……? だって、お客さんたち、いつも戦う前に準備しますよねぇ……?」
「いや、まぁ、するけども!!!」
レイトは頭を抱えた。
この女──名前も知らない、素性もわからない。ただ度々遭遇するだけの自称サポートキャラ。
森の奥、海の上、ダンジョン内、町の片隅……どこであっても、重要な戦いを直前に控えた場面であればこの気怠そうな女性はそこにいた。
国が遣わした使者なのか、ただお節介なだけの冒険者なのかはともかく、正直最初の頃は「まあ、便利だし助かるな」くらいにしか思っていなかった。
だが、今回はわけが違うだろう。
ここは魔王の棲まう魔王城の最深部。その辺にいる雑魚敵相手ですら全滅の危険が常に付きまとうような、到底普通の人間では足を踏み入れられないような場所だ。
「お前……どうやってここまで来たんだよ?」
「商売できそうな所を探してたらいつの間にかぁ……?」
「いつの間にかで来るなよ!? 景色とか敵とか、そもそもそれ以前のいろいろがおかしい事に気付けよ!?」
「むしろ、お客さんたちこそ、よくこんなとこまで来ましたねぇ……すごいですよぉ……」
「そっちのセリフじゃねぇんだよなあ!!!」
若干口調が荒くなりつつあるレイトのツッコミをよそに、サポートキャラの女性はあくまでマイペースだった。
テーブルに肘をつき、ゆるゆるとした動作でポーションの瓶を並べ直している。
「ねぇ、レイト……もう気にせず回復していきましょう」
シエラが溜め息をつきながら言った。
「どうせ考えてもわかんねーよ! さっさと準備しようぜ!」
グロウはとっととポーションを手に取る。
「……お前ら、こんな状況を受け入れるの早すぎね?」
「だって、最終決戦を前にして万全の状態で挑めるなら、それに越したことはないじゃない?」
「そうそう。オレも体力が尽きかけてるし、魔王戦前に全快できるなら助かるぜ」
「そ……りゃそうだけども!!!」
「では……休憩スペースを、展開しますねぇ……」
「聞けよ!?」
自称サポートキャラの女性がゆるりと手をかざすと、突然、空間が歪むようにして変化した。
──なんと、そこには、立派なテーブルやふかふかのソファが並び、果物の盛られた皿や温かい紅茶まで用意されていた。
「……いや、今のなんだよ!? 世界中旅してても見たことも聞いたこともない規模の魔法なんだが!?」
「休憩中は、敵が一切寄ってこない仕様ですのでぇ……」
「その仕様はもっと意味わかんねぇんだよ!!!」
ぜえはあ、と、もはやツッコむのも疲れてきたレイトを尻目に、仲間たちはさっさとソファに腰を下ろし、紅茶を口にしていた。
「……くそっ、一人だけ騒いでる俺が馬鹿みたいじゃないか……」
「あ、それならこちらをどうぞぉ……この木の実には賢さが上がる効果があってぇ……」
「やかましいわ!?」
こうして、魔王城の最深部で、ありえないほどの優雅なティータイムが始まったのだった。
続かない