ここだけレグルスに兄がいて、幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線   作:ねえ、おなまえは?

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ふぅん、へえ、そんな名前なんだー。


10話 おぼえとこーーーっと

 

で、屋敷に来てみたらさ。

 

 

えーっと、どうなってるのこれ?

何で教会で花嫁さんたち纏めて全員氷漬けになっているのさ??

 

 

 

いいや、僕は見たぞ!

銀の髪の女の子がみんなを氷漬けにして立ち去るのを。

 

 

ふぅん、へー、殺しちゃったんだー。

 

 

いやまだ死んでいないか。

 

仮死状態、ね。時間が経って、本当に死んじゃったら悲しいな。

 

だから、僕の手で彼女たちの命を、纏めてなかったことにする。

 

 

 

あれ?

"仮死"状態だったとはいえ、定義上、死は死だから、これレグルスの権能まずいんじゃないの?

 

とりあえず様子見しなくちゃね、とアリバイブロックでドンパチやっている所の近くの路地裏に移動する。

 

 

 

おっと、黒髪の男の子がなにやら命からがら逃げているじゃないか。

多分追いかけて来ているのはレグルスだろうな。

 

ってことは、さっきの彼女のお仲間かな?

 

 

 

 

よぉし、声をかけてみるぞ!

彼が視線を逸らしたその隙に近寄り後ろから声をかける。

 

僕は体力があれだから、そこはほらベストペインで少しだけ強化してさ。

 

 

 

 

『ねえ君』

 

スバルは突然話しかけられたことに驚くが、一般人を巻き込む訳には行かない。

 

 

「おま、ここはあぶねぇから逃げろ!」

 

焦りながら、その身に何かが這い寄る様なぞわりとする感覚を無視して、伝える。

 

 

 

が、しかし残念ながら相手は混沌より這い寄るマイナスだ。

 

『あのさ』

 

『僕、教会の方から来たんだけれど』

 

『教会から入れ違いで出て行ったあの子って君の知り合いかなあ?』

 

 

『銀髪のかわいい女の子だったな』

 

『あはは』

 

 

瞬間、スバルは先程から感じていた嫌悪感に飲み込まれ、反射的にお前、エミリアたんに何かしたのか!?と喰らいつく。

 

 

 

 

 

『いや全然』

『僕は君の名前も知らないよ』

 

 

 

『でも、ふぅーーん』

 

 

『君の大切な人の名前はエミリアっていうんだ』

 

 

 

 

 

 

『おぼえとこーーーっと』

 

 

 

ゾッとした。

 

全身に鳥肌が立つ。

 

なんだこいつ、なんなんだこいつは。

 

理解できない、同じ人間なのか分からない、訳のわからない人間を前に身動きできないでいるが、背後からレグルスが迫って来ていることを瞬時に思い出し意識がこちらへ戻ってくる。

 

 

 

彼は目を離した隙にどこかへと消えていった。

離れてくれて、助かった、と思ったのは何故なんだろう、とにかく近くに居て欲しくなかった。

 

 

 

 

 

 

教会があった方向に突如現れた氷柱を見て、あのクソ売女が突然居なくなった理由が分かった。

 

レグルスはなんの罪もない妻たちが、僕が厳選した花嫁たちが殺されてしまったのだと理解して嘆く。

 

 

なんて奴らだ!

 

こいつらは目的の為に、手段を選ばず、犠牲を払ってどうして、こんな非道徳的な行為を、当たり前の様に行えるのだろう!

 

 

 

 

スバルの元へエミリアも合流して、攻撃をレグルスに放つ。

 

 

「そういえばエミリアたん、教会から来る時になんかこう、変な奴に会わなかった?大丈夫だった?」

 

「??えっと、誰のことをスバルが言っているか分からないけれど、私は誰とも会っていないわ」

 

「そっか、ならよかった」

 

 

心から、安心した。

 

唯の一般人に警戒しすぎたか。

 

 

さて、スバルの考えの通りなら、この攻撃は通るはずだ。

 

確実に一撃を喰らわせた手応えを感じた、と思ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「本当に笑っちゃえるくらい不遜で、どうしようもなく低俗で、呆れるくらい無能で、信じられないくらい厚顔で、救いようがないぐらい下等。で、色々やってくれたみたいだけどさあ。残ったのが盛大な犠牲だけ?それってどんな笑い話なわけ?どう挽回するのかなあ?」

 

だが、レグルスは傷1つなく、まったくもって健在だった。

 

呆れ果てた様子でこちらを見る。

 

 

そんなはずがない。

だって、お前が俺に騙されて権能の効果はお前がベラベラと種明かしをして、とスバルがレグルスに食い下がる。

 

 

「負け犬の遠吠えが気持ちいいね。ははは、なんとでも言いなよ。君たちがそうやって好きなだけ、負け惜しみを口にするのは敗北者の権利だ。それを優越感を味わいながら聞くのは勝利者である僕の権利……ああ、悪くない!悪くないなぁ!」

 

 

 

 

 

エミリアは、分かっていた。

だから、こんな状況であっても落ち着いていた。

 

とても、とても静かに、でも心の底から湧いて出るレグルスへの怒りを飲み込みながら、淡々と話す。

 

 

 

「53人。53人よ。それが、あなたが無理やり押さえつけていた女の人の数。私は、命の数を数え間違えたりしないわ」

 

 

で、それで?

だから?

なんだっていうんだ?

 

数を数えられて偉いねって?

 

エミリアを馬鹿にした様に、レグルスが嘲りながら話し続ける。

 

 

 

彼女たちのあの覚悟をを胸に、怒りに震える手をぎゅうっと強く強く握りしめて、エミリアは続ける。

 

「私、すごーく怒っているから。もう許してなんてあげない」

 

「あなたって、本当に恥知らずね」

「私は花嫁に相応しくないって騒いでいたのに」

 

 

キッとレグルスを軽蔑の目で見つめる。

 

「スバル、レグルスの心臓はここ。いま、私の胸の中にあるわ」

 

 

「うるさいな。グダグダと偉そうに自分たちの権利ばかり主張して。それよりも、僕の妻たちを殺してくれた責任はどう取るんだよ?僕の理想の花嫁たち……あれだけ集めるのに何年かかったと思ってるんだ?花嫁たちがみんな殺されて、僕をクソみたいな寡夫にする気か?新しい妻が見つかるまでの、繋ぎになる義務が君にはあるだろうが!」

 

 

僕の主張は正しい。

そうすることがお前の義務で、僕に与えられた当然の権利だ。

 

僕の考えこそが、正しい。

そんなの当たり前すぎて話にならない。

 

 

そして、先程のエミリアの発言を思い出してレグルスは、髪を掻き上げながら、呆れを通り越して、憐憫に思いながら、ふふ、ははは!と嗤った。

 

ああ、本当に頭が悪いのかなぁ。

 

自分が何を言ったのか、その結果がどうなるのか理解できていないのかなぁ?

 

 

てめぇ、何がおかしいんだよ!?とうるさく噛みつく馬鹿な間男に教えてやる。

 

 

「あのさぁ、意味分かってる?そんなことを言って、自分たちで自分たちの首を、ぎりぎりっと絞めてるんだってことを理解していないか、それすらする気も無いのかなぁ!?」

 

 

「あっ、試してみれば?他に僕の心臓が宿る場所があるかどうか。簡単だよ。今、目の前にいるその女を殺せばいいんだ。できる?できるわけないよねえ?」

 

 

笑いに嗤い、そんなことなんてできるはずがないと分かりきっているから、幼稚で出来の悪い演劇でも見せられているかの様な気持ちになって、馬鹿にしながら2人に言う。

 

 

 

笑えるよ、あぁ本当に。

もはや哀れみすら感じる。

 

だってそんなことなんて、手にかけるなんて出来る訳がない、自称精霊騎士とかいうあの間男なんかが、そんなに大切にしている浮気女を手にかけるなんて絶対的にありえないのだから。

 

 

でもさぁ、もしそうなったらそれはそれで笑えるなぁと、くつくつと笑いを押し殺して呟く。

 

 

 

 

 

レグルスはおおいに侮っていた。

出来もしないことを、どうにもならないことをひっくり返そうともがく醜い姿を見て、余裕の表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

でも、2人は違った。

これまで、色々な苦難を乗り越えて2人が積み上げてきた、信頼の格の違いを、レグルスは予想できなかったのだ。

 

 

 

レグルスの低俗な想像なんて、私たちは軽々と超えてみせる。

 

エミリアはスバルを信じ、スバルを見つめて、身を任せる。

 

 

スバルは覚悟を決めて叫ぶ。

 

「来いよ、見えざる手!!!」

 

インビジブル・プロヴィデンスが、エミリアに入っていく。

 

 

「なんだ。──そこにいたんだね、ジュース」

 

 

 

エミリアの心臓に纏わりつく擬似心臓を見つけた、捕まえ、寄生したレグルスの擬似心臓を引き剥がし、握りつぶす。

 

 

さぁて、これでお前をぶっ飛ばせるな。

 

反撃開始の時間だ。

 

 

 

 

エミリアとスバルが、安心していると、1人蚊帳の外にされたレグルスがその馬鹿みたいな茶番やそのくだらない三文芝居の説明をしろよとイライラした様子を見せる。

 

 

 

 

 

お前、気づいていないのか?

 

スバルが、静かに言う。

 

 

 

 

 

 

 

「足元、濡れているぞ」

 

 

 

 

 

 

 

え?──は?ありえない。

 

 

僕の、完璧な権能が、解除されている、なんて、何で、ありえないことだった。

 

 

足元がパシャリと水に、確かに浸っていた。

 

 

それに気を取られた時にはもう遅かった。

 

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