ここだけレグルスに兄がいて、幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線   作:ねえ、おなまえは?

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13話 どうしてこう、平和的な解決って出来ないのかなあ?

 

そんな3人を見て、残念そうにため息をつきながら、やれやれと困った様に頭を振って口を開く。

 

 

『僕は争いごととかさあ、さっきも伝えたけど平和主義だから嫌なんだけれど。』

 

 

『君たちがそうすることを選ぶのなら、しかたないかあ』

 

 

 

レグルス、ほら起きて。とレグルスをトントン、と抱えている手で優しく叩く。

 

ううん、ん、とレグルスが目を開き、僕を見つめてパチパチと瞬きを繰り返す。

 

 

 

 

聴いてよーレグルス、僕は平和的に解決したかったんだけどさー、どうにも話し合いで解決するのは難しいらしい。

 

おにーちゃんがしっかり支援するから安心して。

 

レグルスちゃんは自分の権能で身を守ることだけ考えて。

危なくなったら逃げるんだ、戦略的撤退ってやつだよ、逃げたからってレグルスが負けたとかじゃない。

 

 

そういう作戦もあるっていうことだよ。僕は後で合流出来るからさ。

 

 

だから、おにーちゃんのことは考えなくてだいじょーぶだからね!

とスバルたちと改めて向かい合う。

 

 

 

レグルスの兄さんの方は大罪司教じゃないって言っていた。

 

ってことは、こいつには権能がないってことだ。

レグルスの方がやばい、だから兄さんの方は後回しにする!

 

 

 

 

 

 

 

レグルスの権能はもはや自分の心臓を止めることでしか発動できない所まで制限されている、あいつがめちゃくちゃ追い詰められている事実は変わらない。

 

ここまでやってこれた俺たちなら出来るはずだ。

よし!まずはレグルスの奴から倒しきる!とスバルが言い、両頬をバシッと叩いて自らを鼓舞する。

 

 

 

 

僕のことなんてなかったかの様に、居ないかの様に振る舞っちゃって、まあ、レグルスがそれだけ脅威なのは分かるけどね?

 

 

 

でもねえ。

 

 

 

 

 

『おいおい』

 

『名ばかりだろうと僕はレグルスのお兄ちゃんなんだぜ』

 

『差別するなよ』

 

 

『そんなことをするなら』

『後ろの2人はちょっと見ていてもらおーかな』

 

『なーに、これはただの』

 

『僕とスバルくんとの1対1ってことだよ』

 

 

 

 

 

片手を頭に当てて、斜めにじっとりとこちらを見つめながら話し、ゆらりと動いたかと思ったその瞬間、エミリアとラインハルトの服が地面に螺子留められる。

 

大丈夫だ、怪我はない!と言われ安心する。

 

エミリアたちのことに気を取られて、慌てて視線を戻すと視界から消えたレグルスの兄に一瞬怯み、警戒するが、直ぐに落ち着きを取り戻した。

 

 

 

 

 

 

 

 

スバルには相手がどこに行ったのか、どこに居るのか分かった。

 

だから勝ちを確信した笑みをニッと浮かべ、俺が無理そうなら、頼む、力を貸してくれよな!と言うと後ろから承知した!と聞こえる。

 

 

 

俺には頼もしい仲間がいる、大丈夫だ。

 

 

いける!

 

 

「なんていうか、お前見ていると何だかこう、気分が悪いんだ!」

 

「悍ましいんだよ」

 

「気色悪いんだ!」

 

「肌で分かる!」

 

 

「だから!」

 

 

 

 

「っらぁ!残念!ばればれだぜ!場所が丸わかりだ!!」

 

 

スバルの直ぐ近くの、完全に死角になる位置に瞬間移動していた僕に鞭が飛んできてまともに喰らう。

 

 

次も、死角からの接近に完璧に対応して捌き切られる。

 

 

 

 

『まいったなあ、僕、やられっぱなしじゃんか』

 

裂傷からぼたぼたと血を流しながら愚痴る。

 

 

歩き出すと共にまた消えた、だが対応できる、何度やったって同じことだ!

と構える。

 

 

 

が、しかし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いやいや』

 

 

『何回も喰らう訳ないじゃん』

 

『いや、実際何回かは喰らったけれど』

 

『被虐的な趣味がある訳でもないんだからさー』

 

 

 

 

 

突然横から強烈な蹴りを喰らわせられ、体が水路の方へと吹っ飛ぶ。

 

地面をゴロゴロ転がりながら肺の中の空気が押し出されて、げほ、と咳が出る。

 

クソ、痛ぇ。吐きそうになるのを我慢する。

 

それよりも、疑問が勝つ。

 

 

 

「何で、何でだ、俺はお前の居場所が分かっていた、はず、なのに、何で今の一撃に気付けなかった!?」

 

 

 

痛みに悶えながら捻り出す様に呟く。

落ち着け、絶対に答えはあるんだ。

 

考えろ、考えろ、考え続けろ、答えはある、思考を止めるな!!!

 

 

『ああ』

 

 

 

 

『それは簡単なことさ』

 

 

『僕の気持ち悪さを肌で感じる──なんて酷い修辞的表現を君は使うけれど』

 

『要するにそれって気配を感じているってだけのことでしょう?』

 

『だから』

 

 

 

 

 

 

 

 

『僕の気配をなかったことにしたんだよ。』

 

 

 

……は?頭が真っ白になる。意味が、分かんねえ。

 

 

 

「お前、それがどういうことか分かってるのか?お前の能力でなかったことにしたものはもう戻せないんだろ?」

 

 

「つまり、これから先お前は一生誰にも気付かれない人間になったってことなんだぞ!?」

 

 

 

 

 

『?』

 

『そんなの別に構わないよ』

 

 

『気配なんてなくても死ぬわけじゃないでしょう?』

『大切な弟を守る為に僕が気付かれなくなるなんて』

 

『そんなの軽いものさ』

 

 

なんてことはない、と笑いながら、何がおかしいの?と純然たる疑問を浮かべるあいつを視界に入れているだけで寒気がする。

 

見えやしないけれど、禍々しいオーラが出ている気がするぜ、クソ、今は姿を捉えられているけれど、次に消えられたら気配が分からないから、どうすれば……

 

 

 

見ているだけで鞭を握りしめる手が震える、ガクガクと膝が笑う。

クソ、こええ。分かんねえもんって、怖いんだな。

 

 

!!!

 

そうだ、見ていて恐怖で震えるってるんなら、見なければ良い、気配が分からないならもう目ぇ閉じて戦った方がましだ!

 

 

 

 

 

「ラインハルト、頼む!あいつが現れたら、方向を教えてくれ!」

 

「承知した、スバル」

 

 

こっちの攻撃の時に目を閉じちまえば!

モーマンタイだろ!!!!

 

ラインハルトの超人的な反射神経でスバル、右、左、上だ!と指示してもらい、そこへ鞭を打つ。

 

目を瞑っていても、確かな手応えを感じる。

 

 

 

『あらら』

 

 

『これは僕も想定外かもー。』

 

服が破れ、血に濡れて、倒れていた地面からぬらり、ゆらりと立ち上がる。

 

 

 

『酷いなあ、スバルくん』

 

『そんな風にしないでさあ』

 

 

『僕のことを受け止めてよー受け入れてよー』

 

 

 

「はっ!」

「これで分かったか?レグルスの兄さんよ」

 

 

「お前を受け入れるも何も、最初から眼中にねーんだよお前のこと!」

 

 

 

レグルスにさっさと取り掛からないと、逃げられたりでもしたら面倒だ。

 

そのレグルスはというと、後ろで兄の様子をじっと見ている。

 

 

 

 

今気づいた、レグルスに近寄らせない様に、レグルスに被害が行かない様に、守ることができる最善の距離で戦っていたのか、この兄さんは。

 

 

 

 

『僕はさあ』

『別に弟のことを守られればそれでいいんだ』

 

『誰が死んだって構わないよ、だって僕のせいじゃないもの。』

 

 

 

 

『あのね』

 

『人はみんな自分は死なないと思っている』

 

『いつか命が尽きることを頭では理解していても』

 

『それは今日や明日じゃないと思っている』

 

 

 

 

『だけど死ぬ』

 

 

『今日も死ぬし明日も死ぬ』

『事件で』『事故で』

『病で』『偶然で』

『寿命で』『不注意で』

『裏切りで』『信条で』

『愚かさで』『賢さで』

『いつだってみんな死んでいく』

 

 

『でも』

 

 

"そんな中、弟の為に死ねる僕は残念ながら幸せだ。"

 

 

 

「お前の考え方は何かおかしい、歪んでる!!どうしてそういう発想になるんだよ、どうやったらそんな思いに至るんだよ!」

 

「そんな、そんな考え方は人として間違っている!!どうにかしているとしか言いようがない!」

 

 

 

僕の考えに拒否反応を示して、押される様に後ろへ、ぐら、とたたらを踏むスバルくんをさらっと支えてから目に見えない様な速度で僕にラインハルトくんの重い一撃が腹に入る。

 

 

たて続けに正気を取り戻したスバルくんの追撃も入り、意識が飛びそうになる。

 

 

後ろでエミリアさんも立ち上がるのが見える。

 

 

あー、いつの間にか螺子から抜け出していたのかあ。

 

分からなかったな。

 

 

 

 

 

 

「すまないスバル、君の精神が壊されないうちに、彼は倒さなければならない」

 

「だから勝手に手助けをすることを許してほしい」

 

 

 

 

 

 

彼は、吹っ飛んで、壁に勢いよく体がめり込み、ぱらぱらと壊れて壁の欠片が降り注ぐなか、ずりずりと攻撃を受けた体勢のままぺたりと座り込んで、沈黙している。

 

 

なあ、いつまでそうしている気だ?

 

お前が、考えを改めるって言うなら考えなくも──

 

 

 

 

 

 

そう言いかけた時だった。

 

レグルスの兄さんは、血に濡れた綺麗な顔で、まん丸い大きな瞳からつうっと涙をながして、まるで天啓を受けたかの様な顔でぼうっと俺らを見つめていた。

 

 

 

 

それは、その顔は完全に純粋無垢な善人の顔で。

 

 

 

 

その、純粋な、純然たる"良い奴"の顔に、今までの気持ち悪さとはっきりした違いを感じて思わずたじろぐ。

 

 

 

ボロボロの体で、よろよろと壁に手をついて立ち上がりながら話す。

 

 

『……誤解しないでねスバルくん、ラインハルトくん』

 

『別に痛くて泣いているんじゃないよ』

『僕は嬉しくて泣いているんだ』

 

『僕はこんな風に僕を叱ってくれる人をずっと待っていたんだ』

 

『僕の間違いを命懸けで正してくれる人を心から待っていたんだ』

 

 

『本当になんて嬉しいんだろう』

『お陰で目が覚めた!』


 

 

『これで改心したぞ』

 

 

『ありがとう』


 

 

『君たちには感謝するよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『だからこの痛みの恨みは』


 

『スバルくんたちに迷惑をかけないように』

 

 

 

 

『君たちとは何の関係もない その辺の誰かに何かして晴らすとするね』

 

 

にっこり笑って、怪我をなかったことにしたそいつに鳥肌が走る。

 

何で、どうして、お前はそんな考えが浮かぶんだ……?

 

普通じゃない、普通じゃないよお前、とスバルくんが呟いている。

 

 

 

『どうして僕がこうなのか、か』

 

『ふぅむ』

 

『言われてみれば不思議だ』

 

 

『考えたこともなかったなあ』

 

 

『うーんそうだねぇ』

 

 

『たとえばの話だけどさあ』

 

 

『人生は山もあって、谷もあるって言う奴いるじゃん』

『普通の人でも喜んだり悲しんだりするとか』

『幸福な人間もそれ相応の大変な苦労を積み重ねているとか』

 

 

『まあ、およそそんな意味で』

 

『だから人間はみんな平等だって言いたいんだと思うけど』

 

『でもそれで人生は結局平坦だって言う奴は決まって幸せな奴なんだ』

 

『幸せな奴だからそんな悟ったみたいな常套句を言えるんだよ』

 

 

『少なくとも僕は良いことがあったって嫌なことが帳消しだなんて思えたことはない──』

 

"3人で過ごしていた時間、その後、レグルスと過ごしていた時間以外はね。"

 

『何のことはない』

 

『僕は幸せなみんなに』

 

『僕の気持ちを分かって欲しいだけなのかもね』

 

 

 

『簡単だよ!』

 

『ただ受け入れることだよ』

 

 

 

 

『スバルくん』

 

 

 

『不条理を』『理不尽を』


『嘘泣きを』『言い訳を』

『いかがわしさを』『インチキを』

『堕落を』『混雑を』


『偽善を』『偽悪を』

『不幸せを』『不都合を』

『冤罪を』『流れ弾を』

『見苦しさを』『みっともなさを』

『風評を』『密告を』

『嫉妬を』『格差を』

『裏切りを』『虐待を』

『巻き添えを』『二次被害を』

 

 

『愛しい恋人のように受け入れることだ』

 

 

 

『そうすればきっと』

 

 

『僕みたいになれるよ』

 

 

 

トンっと地面を踏んで後ろに下がり、レグルスの横に立つ。

 

レグルスに傷は1つもない。

血や汚れも、服の破れなんかもない。

 

 

安心する。

 

 

よかった、僕はまだ弟を守れている。

 

 

 

 

 

 

 

レグルスは目に見えて分かるほどスバルくんたちにブチギレていた。

 

ビキビキと綺麗な顔に血管を浮き上がらせて、睨みつけながら唸る様に話す。

 

 

「あ!の!!さぁ!!!!!お前も、お前も、兄さんのことをおかしいだとか、普通じゃないとか、あまつさえ気持ち悪いとか悍ましいとか、人様の大切な家族を、僕の大切な双子の兄さんを馬鹿にして、見下して、突き放して、これっぽっちも理解しようとしないくせに上から目線でぐだくだ高説を垂れて何様のつもりなんだよ!!!!兄さんがどんな仕打ちを受けてきたのかも、どんなに酷い言葉をかけられ続けてきたのかも、何にも知らない、知ろうともしない頭空っぽのやつらが兄さんを語るなよ、クソが!!!吐き気がする、お前らはあの村の奴らと何にも変わらない!クソみたいなあいつらと、クソみたいな家族と一緒だ、同じ位唾棄すべき存在だと、今改めて理解したよ。あぁ、僕は寛容で寛大だ。無駄な争いは嫌いな平和主義者だ。だから敵対する相手の事情だってある程度理解して許容するとも。お互いにお互いの理由があってぶつかり合うなんて世界中で起きている。お前らと僕の戦いだって、価値観の違いで起きたものだ。それを、お前らは、まったく兄さんのことを考えもしないで、見ないふりをして!!!こっちが譲歩してやっているんだ、だったらさぁ、お前らもこっちのことを少しくらい受け入れる義務があるよねぇ!?それすらしないなんて、しようともしないなんて、お前らに生きている価値なんてない、兄さんを侮辱するなよ!!!」

 

 

 

『もー、そんなに怒っていたら』

『かっこいい顔が台無しだよレグルス〜』

 

『あのね、人間は理解出来ないことがあっても当たり前だ』

 

『その人がどう生きてきて』

 

『どんな風になったのかなんて』

 

『実のところだーれも気にも留めていないんだよ』

 

 

『だから分からないものを』

 

『拒絶する彼らの気持ちも僕には分かる』

 

『それでも』

 

『大切な弟にそう言ってもらえるなんて』

『僕みたいな奴を庇ってくれるなんて』

 

『僕は幸せだなあ』

 

 

にぱっと笑って、至極嬉しそうにレグルスの頭を片手で撫でる。

 

 

 

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